1. ヒツジは、かおを わすれない
1. ヒツジは、顔を忘れない
1. 2001年、ヒツジの「顔なじみ」を突き止めた実験
2001年、イギリスの がくしゃが、「ヒツジは かおを わすれ ない」と いう けんきゅうを はっぴょうしました [1]。
ヒツジに ほかの ヒツジの かおの しゃしんを たくさん 見せて しらべたところ、ヒツジは、50とうもの ヒツジの かおと、なかよしの 人の かおを、2年いじょうも おぼえて いられる ことが わかったのです[1]。
2001年、イギリスのケンブリッジにある研究所のキース・ケンドリックたちは、「ヒツジは顔を忘れない」という研究を発表しました[1]。20頭のヒツジに、ほかのヒツジの顔写真をたくさん見せ、片方を選ぶとえさがもらえるように教えたところ、ヒツジは正面からだけでなく横顔でも正解を選び続けました。
有名人の顔でも分かるのか
ヒツジは最大50頭ものヒツジの顔と、なじみのある人間1人の顔を、少なくとも2年間覚えていられることが分かりました[1]。2017年には、同じ大学の研究者たちが、8頭のヒツジに、見たことのない有名人4人の顔写真を覚えさせる実験を行い、正面からの写真ではおよそ8割の正解率で選び出すことを確かめました[2]。
2001年、イギリス・ケンブリッジのバブラハム研究所のキース・ケンドリックらは、学術誌『ネイチャー』に「ヒツジは顔を忘れない」という論文を発表した[1]。20頭のヒツジに、ほかのヒツジの顔写真25組を見せ、片方を選ぶと餌がもらえるように訓練したところ、ヒツジは正面からだけでなく横顔でも正解を選び続けた。
有名人の顔でも分かるのか
ヒツジは最大50頭ものヒツジの顔と、なじみのある人間1人の顔を、少なくとも2年間覚えていられることが分かった[1]。2017年には、同じくケンブリッジ大学のフランツィスカ・クノレらが、この能力をさらに詳しく調べた。8頭のヒツジに、エマ・ワトソンやバラク・オバマなど、見たことのない有名人4人の顔写真を学習させたところ、正面からの写真では79.2%の正解率で選び出した。顔が傾いた写真では66.5%まで下がったが、これは人間が顔を識別するときの低下率と同程度だった[2]。ふだん世話をしている飼育担当者の顔も、写真だけで71.8%の正解率で見分けられた[2]。
2. さかなも、人の かおを 見分ける
2. 魚も、人の顔を見分ける
2. 2016年、テッポウウオが示した「脳が小さくても顔が分かる」という発見
さかなも、人の かおを 見分けられる ことが あります。
2016年、けんきゅうチームは、みずでっぽうの ように 水を ふきかける「テッポウウオ」と いう さかなに、人の かおを おぼえさせました。すると、テッポウウオは、 はじめて 見る たくさんの かおの中から、おぼえた かおを 見つけだす ことが できたのです[3]。
魚が人間の顔を見分けられると聞くと、意外に思うかもしれません。2016年、イギリスとオーストラリアの研究チームは、水鉄砲のように水を吹きかけて虫を落とすテッポウウオという魚に、人間の顔を見分けさせる実験をしました[3]。
脳の小さな生きものでも顔が分かる
魚に1枚の顔写真を覚えさせたあと、その顔と、見たことのない44人の顔を並べて見せたところ、テッポウウオは平均81%の正解率で、覚えた顔に水を吹きかけて選び出しました[3]。この発見が重要なのは、魚には、人間や哺乳類が顔を見分けるときに使うとされる「大脳新皮質」という脳の部分がないのに、学習によって顔を見分けられたことです。
魚が人間の顔を見分けられると聞くと、意外に思うかもしれない。2016年、イギリスのオックスフォード大学とオーストラリアのクイーンズランド大学の研究チームは、水鉄砲のように水を吹きかけて虫を落とすテッポウウオに、人間の顔を見分けさせる実験を行った[3]。
脳の小さな生きものでも顔が分かる
魚に1枚の顔写真を覚えさせたあと、その顔と、見たことのない44人の顔を並べて見せたところ、テッポウウオは平均81%の正解率で、覚えた顔に水を吹きかけて選び出した。明るさや色を統一した条件では、正解率は86%まで上がった[3]。この発見が重要なのは、魚には、人間や哺乳類が顔を見分けるときに使うとされる「大脳新皮質」という脳の部分がないからだ。研究を率いたケイト・ニューポートは、「多くの人間の顔を見分けるのは、実は意外と難しい作業だ」と述べている[3]。大脳新皮質に相当する構造を持たない魚でも、学習による顔画像の識別ができることを示した発見だった。
3. ハチも、なかまの かおを おぼえて いる
3. ハチも、仲間の顔を覚えている
3. 2002年、アシナガバチの「顔」による個体識別
かおを 見分ける ちからは、ヒトや どうぶつだけの ものでは ありません。
2002年、がくしゃが、「アシナガバチ」と いう ハチの なかまが、なかまの かおの もようを 見て、だれが だれかを 見分けて いる ことを 見つけました [4]。かおの もようを ぬりかえると、 ほかの ハチが その ハチを こうげきする ように なったのです [4]。
顔を見分ける能力は、脊椎動物だけのものではありません。2002年、アメリカの生物学者エリザベス・ティベッツは、アシナガバチの一種が、仲間の顔の模様で個体を見分けていることを発見しました[4]。
顔にペンキを塗ってみると
このハチの顔には、個体ごとに異なることのある黄色い模様があります。ティベッツが、なじみのあるハチの顔の模様をペンキで塗り替えて巣に戻したところ、仲間のハチたちは、見た目が変わった個体を、それまでより激しく攻撃するようになりました[4]。このハチの仲間は、力の強さの順番(序列)によって、食べものや仕事が決まる社会をつくっています。
顔を見分ける能力は、脊椎動物だけのものではない。2002年、アメリカの生物学者エリザベス・ティベッツは、アシナガバチの一種(Polistes fuscatus)が、仲間の顔の模様で個体を見分けていることを発見した[4]。
顔にペンキを塗ってみると
このハチの顔には、個体ごとに異なることのある黄色い模様がある。ティベッツは、なじみのあるハチの顔の模様をペンキで塗り替えて巣に戻したところ、仲間のハチたちは、見た目が変わった個体に対して、それまでより激しく攻撃するようになった。模様を変えずに塗っただけの対照実験のハチには、そうした変化は起きなかった[4]。このハチの仲間は、食べものや仕事、繁殖に関わる役割や機会などが、力の強さの順番(序列)によって決まる社会をつくっている。顔を見分けられることで、複雑な序列を保っていると考えられている。昆虫の個体認識の複雑さを示す重要な発見だった。
4. なぜ、いろんな 生きものが かおを 見分けられるの?
4. なぜ、いろんな生きものが顔を見分けられるの?
4. 顔を見分ける能力と、社会をつくる生きもの
ヒツジも、テッポウウオも、アシナガバチも、ぜんぜん ちがう なかまの 生きものです。でも、みんな なかまと むれを つくって くらして います。
だれが だれかを おぼえて おく ことは、なかまを たすけたり、じぶんの みを まもったり する ために、とても やくに 立つのです。
みなさんが がっこうの クラスで、ともだちの かおを おぼえると なかよく なれるのと、にた かんじです。ただし、 どうぶつたちは べんきょうで おぼえて いるのでは なく、 くらして いく中で しぜんに おぼえて いく ようです。
ヒツジ、テッポウウオ、アシナガバチ。これらはまったく違うグループの生きものですが、共通点があります。いずれも、仲間どうしで群れをつくったり、決まった相手と関わり続けたりする「社会性」を持つ生きものだということです。
顔(あるいは顔にあたる目印)を見分けられれば、「この相手とは前にも会った」「この相手には気をつけた方がいい」といった判断ができます。だからこそ、顔を見分ける能力は、脳の大きさや進化の道すじが大きく異なる生きものたちの中で、それぞれ育っていったと考えられています。
ヒツジ、テッポウウオ、アシナガバチ。これらはまったく違うグループの生きものだが、共通点がある。いずれも、仲間どうしで群れをつくったり、決まった相手と関わり続けたりする「社会性」を持つ生きものだということだ。
顔(あるいは顔にあたる目印)を見分けられれば、「この相手とは前にも会った」「この相手には気をつけた方がいい」といった判断ができる。群れの中で誰が誰かを覚えておくことは、身を守ったり、食べものを分け合ったり、序列を保ったりするときに大きな意味を持つ。だからこそ、顔を見分ける能力は、脳の大きさや進化の道すじが大きく異なる生きものたちの中で、それぞれ独自に育っていったと考えられている。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
じぶんでも、みぢかな どうぶつを かんさつして みましょう。
あんぜんな ばしょで できる こと
- ペットを かって いたら、かぞくの かおを 見分けて いるか かんさつして みる。 なきごえや しっぽの ふりかたが、人に よって ちがうか くらべて みましょう。
- こうえんで、ハトや スズメが 人から にげる ようすを かんさつして みる。 いつも えさを くれる 人と、そうでない 人とで、にげかたが ちがうか、そっと 見て みましょう。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「ヒツジは、かおを 2年いじょう おぼえて いられる」だけで じゅうぶんです。
自分でも、身近な動物を観察してみましょう。
今日できること
- ペットを飼っていたら、家族の顔を見分けているか観察してみる。鳴き声やしっぽの振りかたが、人によって違うか比べてみましょう。
- 公園で、ハトやスズメが人から逃げる様子を観察してみる。いつもえさをくれる人と、そうでない人とで、逃げかたが違うか、そっと見てみましょう。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「テッポウウオって、どうやって水を飛ばすの?」だけでも十分です。
顔を見分ける能力という視点を持つと、身近な動物の行動がより興味深く見えてきます。
手を動かして確かめる
- ペットを飼っていたら、家族の中でも態度が変わるか観察してみる。世話をする人と、そうでない人とで、反応の違いがあるか比べてみましょう。
- 身近な野鳥(ハトやスズメ)が、人によって警戒心の強さが違うか観察してみる。えさをくれる人を覚えている可能性があります。
一次情報にあたる
アシナガバチの顔認識について、エリザベス・ティベッツの研究室では、その後の追加研究も継続して発表されている。
気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「テッポウウオは81%の正解率で顔を見分けた」という一文でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:学術誌Nature・Scientific Reports・Royal Society Open ScienceとProceedings of the Royal Society Bに掲載された査読済み論文を使っています。
- Kendrick, K.M. et al., "Sheep don't forget a face" - Nature(学術論文)。 https://www.nature.com/articles/35102669 (2001年、20頭のヒツジによる顔認識実験、最大50頭のヒツジの顔と人間1人の顔を2年以上記憶できることについての解説)
- Knolle, F. et al., "Sheep recognize familiar and unfamiliar human faces from two-dimensional images" - Royal Society Open Science(学術論文)。 https://royalsocietypublishing.org/rsos/article/4/11/171228/93504/Sheep-recognize-familiar-and-unfamiliar-human (2017年、8頭のヒツジによる有名人の顔写真識別実験、正解率79.2%・66.5%・71.8%の各数値についての解説)
- Newport, C. et al., "Discrimination of human faces by archerfish (Toxotes chatareus)" - Scientific Reports(学術論文)。 https://www.nature.com/articles/srep27523 (2016年、テッポウウオによる人間の顔識別実験、正解率81%・86%の数値についての解説)
- Tibbetts, E.A., "Visual signals of individual identity in the wasp Polistes fuscatus" - Proceedings of the Royal Society B(学術論文)。 https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2002.2031 (2002年、アシナガバチの顔の模様による個体識別、模様の塗り替え実験についての解説)
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