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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

水草は、どうやって 水を きれいに するの?

水草は水槽の水をどうきれいにするのか ── 魚のふんの「その後」を追う

沈水植物による窒素吸収と水質 ── アンモニウム選好、過剰負荷、枯死時の再放出(2008〜2022年の研究)

分野:生きもの

おさかなの 水そうに 水草を 入れると、水が きれいに なる、と いわれます。水草は、水の 中で なにを して いるのでしょう。

じつは 水草が すきな ごはんの ひとつは、おさかなの ふんに ちかい ものらしいのです。どういう ことか、いっしょに 見て いきましょう。

魚を飼う水槽では、水草を入れると水が澄む、とよく言われます。ところが水草が好んで取りこむ栄養のひとつは、魚のふんに近い形のもの(アンモニウム)らしいのです。

なぜ手前の形なのか。取りこんだあとで水はどうなり、水草が枯れたらどうなるのか。池や実験の研究から、そのあらすじが分かります。

水草(沈水植物)は、魚のふんなどに由来する窒素を、アンモニウムを好まれる窒素源として取りこむとされる[3]。水槽では窒素が硝化を経て硝酸に変わっていく[1]。

では吸収の速さはどれほどか、多すぎればどうなるか、枯れたら栄養はどこへ行くのか。2008〜2022年の資料から、水草と水質の関係が分かる。ただし水槽のコケとの競争を直接示した査読論文は得られていない。

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1. おさかなの ふんは、水の 中で どう なるの?

1. 魚のふんは、水の中で姿を変えていく

1. 硝化 ── アンモニアから硝酸への酸化

おさかなの ふんや、たべ のこしからは、アンモニアと いう ものが 出ます。水そうの 中の ちいさな 生きもの(バクテリア)が、これを すこしずつ べつの ものに かえて いきます。

アンモニア、つぎに 亜硝酸あしょうさん、さいごに 硝酸しょうさん。バトンを つなぐ リレーのように、じゅんばんに かわって いくのです[1]。ただし 本当の 水そうは もっと ふくざつで、リレーのように きれいには 進みません。

アンモニアから硝酸へ

魚のふんや食べ残しからは、窒素を含むアンモニアが出ます。これを水の中の細菌(硝化細菌)が、亜硝酸を経て硝酸に変えていく反応を、硝化といいます[1]。

魚を飼う水槽のような閉じた水では、出てきた窒素は最終的に硝酸の形で残りやすいと考えられます。水槽の中で硝酸がどれだけ増えるかは、ここでは扱いません。

硝化とは、アンモニアが亜硝酸を経て硝酸へ、硝化細菌によって生物学的に酸化される反応である[1]。魚の飼育水のように循環の閉じた水では、排泄物由来の窒素はこの経路で最終的に硝酸として残ると考えられる。

ただし、水槽での硝酸の蓄積量を示す一次資料は今回の調査では得られていない。以降の章は、この一般論を出発点に、水草がどの窒素形態を使うかを扱う。

2. 水草が すきな ごはんは、どれ?

2. 水草に好まれる窒素は、アンモニウム

2. 窒素源の選好 ── アンモニウムを取りこむ

水草は、水の 中の アンモニウム(アンモニアに ちかい ぶぶん)を、じぶんの からだの ざいりょうに して います[2]。

水の 中に すむ 植物の 研究では、アンモニウムは 水草が 大きく なる ための、すきな ごはんだと 書かれて います[3]。

取りこんで、体の一部にする

水草などの水生植物は、水中のアンモニウムを取りこみ、自分の体をつくる有機物の窒素に変えます[2]。植物が吸うぶんは、水中のアンモニア態窒素の濃度を大きく左右するとされています[2]。

「好まれる窒素源」

水中に沈んで育つ植物についての2022年の論文は、アンモニウムを「好まれる窒素源」と呼んでいます[3]。硝酸を吸えないという意味ではありません。

水生植物はアンモニウムを吸収して有機態窒素に同化する。植物による吸収は水中の全アンモニア態窒素(TAN)濃度を大きく左右する[2]。2022年の池での実験論文は、アンモニウムが沈水植物の成長にとって好まれる窒素源であると位置づけている[3]。

「好まれる」は硝酸を利用しないことを意味しない。

3. ごはんが 多すぎると、どう なるの?

3. 好きな栄養でも、多すぎれば傷む

3. 高濃度アンモニウムの影響 ── 池での18か月の実験

すきな ものでも、たくさん ありすぎると こまります。同じ 研究では、アンモニウムが とても 多いと、水草が かえって いたむ ことが あると 書かれて います[3]。

池で 18か月 ようすを 見た じっけんでは、ホザキノフサモと ネジレモと いう 水草が、ある 多い りょうでも しばらくは、水草が おおく ひろがり、せも たかい ままでした[3]。ただ、これは 池での じっけんです。おうちの 水そうの 「安心な りょう」では ありません。アンモニアは おさかなには どくに なるので、水そうに いれる えさは、おうちの 人と 相談して、すこしずつに しましょう。

池での18か月

この実験では、ホザキノフサモとネジレモという水草に、アンモニウムを多めに与え続けました。アンモニウム態窒素(NH4-N)7 mg/Lでも、短い期間はどちらも被度(水面を覆う割合)と草丈が高く保たれ、ネジレモはNH4-N 18 mg/Lにも耐えうると評価されています[3]。

この数字は水槽の安全値ではない

これは池の実験の値です。家庭の水槽で魚と暮らす水草にそのまま当てはまるわけではなく、アンモニアは魚にとって有毒でもあります。水草に耐えられる量と、魚が無事でいられる量は別に考える必要があります。

アンモニウムは沈水植物の成長に好まれる窒素源である一方、高濃度では植物を傷める[3]。18か月の池実験では、ホザキノフサモ(Myriophyllum spicatum)とネジレモ(Vallisneria natans)はNH4-N 7 mg/Lの負荷でも短期には高い被度と草丈を示し、ネジレモはNH4-N 18 mg/Lにも耐えうると評価された[3]。

これは池での値であり、家庭水槽の安全基準ではない。アンモニア態窒素は魚には有毒であり、水草の耐性の高さと水槽全体の安全性は別問題である。和名は本メモ作成時点で個別に確認していない。

4. 水草は、どれくらい はやく 食べるの?

4. 根のない水草が、栄養を吸収する速さ

4. 根なし沈水植物マツモ属の吸収速度と浮草への影響

マツモと いう 水草には、根が ありません。それなのに、水の 中の えいようを どんどん すって いく ことが わかって います[4]。

ある じっけんでは、マツモの いる 水で、はじめの 4日間に えいようが ぐんと へりました。すると、すぐ そばに いた ウキクサ(水の うえに うかぶ 草)は、えいようが たりなく なって しまいました[4]。水草どうしが、えいようを うばい あって いたのです。ただ、この じっけんの あいては コケでは なく ウキクサです。

根がないのに吸える

マツモは根のない沈水植物で、葉や茎から水中の栄養を吸います。実験では、最初の4日間に水中の窒素とリンを速く取りこみ、水の中の無機の窒素とリンの濃度を下げました[4]。

相手は浮草

栄養が減った水では、同じ容器に入れたウキクサが育つのに必要な水準を下回りました[4]。ただし競争の相手はウキクサで、水槽のコケ(付着する藻類)ではありません。水草とコケが栄養を取り合う様子を直接示した資料は、今回は見つかっていません。

根を持たない沈水植物マツモ属(Ceratophyllum)は、実験の最初の4日間に、溶存無機リンを50、窒素を860 µg/g生重/日の速さで吸収したと報告されている[4]。単純な比では、窒素の吸収速度はリンの約17倍である。この吸収の結果、水中の無機窒素とリンの濃度は、ウキクサ(Lemna)にとって最適な水準を下回るまで低下した[4]。

この数値は葉の表面の付着生物(エピフィトン)を含む実験系のものであり、競争相手もウキクサである。コケ(付着藻類)との競争にそのまま一般化はできない。

5. 水草は、まわりの 草や コケと たたかう?

5. 相手を止めるのは薬のような物質か

5. 競争の機構 ── pH上昇・窒素枯渇とアレロパシー

水草は、ほかの ものの そだちを 止める、くすりのような ものを 出して いるのでしょうか。

マツモと ウキクサの じっけんでは、ウキクサが そだたなく なった 大きな 理由は、水の pH(すっぱさ、からさの めやす)が 高く なった ことと、えいようが たりなく なった ことでした[4]。くすりのような ものでは ありませんでした。

いっぽう、ヒメヒルムシロと いう 水草が 生えた 池では、水の 中の わるい も(あおこ)が ふえにくく なりました。なにかを 水に 出して いる らしいと 考えられて います[5]。これは 池の あおこの 話で、水そうの コケとは べつです。

実験が示した仕組み

マツモがウキクサを抑えた主な仕組みは、水のpHが高くなることと栄養(窒素など)が足りなくなることだと結論されています[4]。マツモを入れた水に栄養を足しても、ウキクサの成長は大きくは変わらなかったため、他の生物を止める物質(アレロパシー)は主因ではないとされました[4]。

池のヒメヒルムシロの場合

一方、ヒメヒルムシロが群落をつくる池の水は、有害なアオコ(藍藻のミクロキスティス)の増殖を抑え、水草がある間はその効果が続きました。他の生物の成長を抑える物質が出ているとみられます[5]。

つまり、水草がほかの植物や藻類を抑える仕組みは、種類や場所で違います。ここで分かったのはマツモ対ウキクサと、池のアオコの二つで、すべての水草やコケに当てはまるとは言えません。

マツモがウキクサ(Lemna)を抑える主な仕組みは、高いpHと窒素の不足であり、アレロパシーは確認されなかったと結論された[4]。栄養補給下でマツモ処理水がウキクサの成長に有意な影響を与えなかったことから、アレロパシーの関与は否定されている[4]。

一方、ヒメヒルムシロ(Potamogeton pusillus)の群落がある池の水は、シアノバクテリアMicrocystis aeruginosaの増殖を抑え、水草が存在する間その効果が続いた。培養ろ液も増殖を阻害したことから、アレロケミカルの放出が示唆される[5]。前者はマツモとウキクサの実験、後者は池のアオコの研究であり、いずれもコケ(付着藻類)とは別の対象である。

6. 水草が かれたら、どう なるの?

6. 枯れた水草は、栄養を水にもどす

6. 枯死・分解に伴う再放出

水草が とった えいようは、水草の からだの 中に あります。その 水草が かれて とけて しまうと、アンモニアが また 水に もどって しまうと 書かれて います[2]。

だから、かれた 葉を 見つけたら、はやめに とる ことが、水を きれいに たもつ ヒントに なりそうです。ただ、水そうの 中での ききめを はかった しりょうは 見つかって いません。

吸った栄養は、返ってくることもある

植物の吸収は水中のアンモニア濃度を大きく下げますが、植物が枯れて分解されると、アンモニアが再び水に放出されます[2]。

ここから、枯れかけた葉を早めに取り除くことは、栄養を水にもどさないための方法になりそうです。ただし水槽の中で、その効果を直接測った資料は今回の調査では得られておらず、この点は資料からの推測にとどまります。水草は、水をきれいに保つ助けになりますが、放っておけば水質を守り続けてくれるわけではない、というのが読み取れることです。

植物の吸収はTAN濃度を大きく制御するが、植物が枯死して分解されるとアンモニアが放出される[2]。すなわち、水草による窒素の除去は、体内に固定されている間に限った一時的な効果であり、分解が起これば水中に戻る。

枯葉を取り除けば、分解で栄養が水に戻るのを減らせそうだ(推測)。なお、沈水植物が遮光や酸素供給を通じて水質を改善するとされる報告(福井県の試験研究資料)は、原文を確認できなかったため、本メモでは扱わない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

水そうの ある おうちや 学校、おみせで、水草の 葉を、1週間 まいにち 同じ 時間に 見て みましょう。水を ゆらしたり、手を 入れたりは しません。見るだけです。

葉の 色が かわった ところ、葉の ひょうめんに つく ものの ようす、かれかけた 葉が ないか、ノートに かいて みましょう。かれた 葉を 見つけたら、水そうを 世話して いる 人に 教えて あげましょう。

今日できること

水槽のある家や学校、お店で、水草の葉を一週間、同じ時間に見てみましょう。水に手を入れたり、水槽をゆすったりはせず、見るだけにします。

葉の色の変化、枯れかけた葉の位置、葉の表面に付くものの様子を書き留めると、水草の変化を記録でき、日ごとの様子を比べられます。枯れた葉を見つけたら、世話をしている人に伝えましょう。

もっと知りたくなったら

図書館では、水草や、水草を育てる方法の本が探せます。「水草」「水質」「硝化」といった言葉を手がかりにしてみてください。

水槽のある場所での観察

水槽を世話している人の許可を得て、水草の葉の色、枯葉の出た位置と日、水槽の水の澄み具合を1週間、同じ時間帯に記録する。水槽には手を入れず、観察だけにとどめる。枯葉が出た後の水草の様子を記録し、第6章の説明と見比べる材料にする。

資料を読むなら

Frontiers in Plant Science 2022の2本の論文(出典[3][4])は、池や実験容器での沈水植物の栄養競争を扱う。英語だが、図と要旨だけでも流れがつかめる。日本語では、J-STAGEの武田ほか(2011)が、ヒメヒルムシロとアオコの関係を報告している。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号は、下のリストの番号に対応します。水槽のコケと水草の競争を直接示した査読論文は得られておらず、池や実験容器の研究から一般的な仕組みを整理しています。

  1. Wikipedia「Nitrification」 https://en.wikipedia.org/wiki/Nitrification (硝化の反応経路)
  2. Boyd (2008)「Nitrogen a Limiting Factor in Aquaculture Production」Global Aquaculture Advocate https://www.globalseafood.org/advocate/nitrogen-a-limiting-factor-in-aquaculture-production/ (植物の吸収と枯死時の放出)
  3. Frontiers in Plant Science (2022)「Effects of High Ammonium Loading on Two Submersed Macrophytes」 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9330597/ (アンモニウムの選好と高濃度の影響。池での実験値)
  4. Frontiers in Plant Science (2022)「Disentangling the mechanisms sustaining a stable state of submerged macrophyte dominance」 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9660258/ (マツモの吸収速度と、ウキクサとの競争の仕組み)
  5. Takeda et al. (2011) Journal of Water and Environment Technology 9(1) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwet/9/1/9_1_21/_article (ヒメヒルムシロとアオコ)

なおした ところ

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