このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

はいはいを しない 赤ちゃんも いるの?

ハイハイは、赤ちゃんが必ず通る道なのでしょうか

乳児の運動発達とハイハイ ── 順序・個人差・移動経験がもたらすもの

分野:からだ

赤ちゃんは、はいはいを してから 歩く。そう 思って いる 人は 多いでしょう。ところが、はいはいを しないで 歩きはじめる 子も います。

はいはいは 何か月ごろに できるように なるのか、して いる とき 赤ちゃんには 何が 見えて いるのか。研究で 分かって いる ことを 見て いきます。

赤ちゃんは、首がすわり、寝返りをして、座り、這い、やがて歩き出す。多くの人が、そんな順番を思い浮かべるのではないでしょうか。ところが、健康なのに四つんばいのハイハイをしないまま歩き出す子も、少数ですがいます。

運動発達の目安、ハイハイをする子としない子のちがい、ハイハイで得られる経験が何を変えるのかを、調査と研究から順にたどります。

乳児の運動発達は、首のすわりから独り歩きへと進む順序で語られることが多い。しかし国際比較の縦断研究では、健康な子の一部が四つんばいのハイハイを経ずに歩き始めている。日本の全国調査、WHOの多国間研究、アドルフらの実験研究にもとづき、発達の順序と幅、移動経験が知覚と学習に及ぼす影響を整理する。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. 何か月ごろに 何が できるの?

1. 首のすわりから独り歩きまで、目安の月齢

1. 全国調査が示す到達月齢 ── 「9割以上ができる」時期

赤ちゃんが できるように なる ことには、ふつう 次の 順番じゅんばんが あると 言われます。首が すわる、ねがえりを する、ひとりで すわる、はいはいを する、つかまって 立つ、ひとりで 歩く、です。

日本の 国の 調べでは、9わり 以上いじょうの 赤ちゃんが できる ように なる 月れいが まとめられて います[1]。首の すわりは 生まれて 4〜5か月に なる まで、ねがえりは 6〜7か月、ひとりすわりと はいはいは どちらも 9〜10か月、つかまり立ちは 11〜12か月、ひとり歩きは 1さい 3〜4か月 です。

これは 「9わりが できる 月れい」で、「はじめる 月れい」では ありません。はいはいを はじめる 子は、もっと 早くから います。

厚生労働省の調査から

日本の乳幼児身体発育調査では、90%以上の子ができるようになる月齢が示されています[1]。首のすわりは生後4〜5か月未満、寝返りは6〜7か月未満、ひとりすわりとハイハイはどちらも9〜10か月未満、つかまり立ちは11〜12か月未満、ひとり歩きは1年3〜4か月未満です。

「できる」の意味に注意

この数字は、ほとんどの子がその月齢までにできるようになる、という区切りです。始める時期の目安ではありません。調査でのハイハイは「はって移動できるもの」とされています[1]。ひとりすわりと同じ月齢の区切りに並んでいることも、意外に感じられるかもしれません。

厚生労働省の乳幼児身体発育調査(一般調査)は、各動作を「できる」子が90%以上になる月齢を示す。首のすわりは生後4〜5か月未満、寝返りは6〜7か月未満、ひとりすわりとハイハイはともに9〜10か月未満、つかまり立ちは11〜12か月未満、ひとり歩きは1年3〜4か月未満である[1]。

読むうえでの注意が2つある。第一に、これは「90%以上が可能な月齢」であり、開始時期ではない。第二に、調査上のハイハイは「はって移動できるもの」と定義されており[1]、動き方の型(四つんばいか、腹ばいか)までは、ここから読み取れない。調査年は今回、原文から確認していない。

2. はいはいを しない 子は、どれくらい いるの?

2. 5か国の研究で見えたこと ── 通らない子も、ふつうの範囲

2. WHO多国間研究 ── 4.3%と、到達月齢の幅

ガーナ、インド、ノルウェー、オマーン、アメリカの 5つの 国で、816人の 赤ちゃんが 協力きょうりょくした 研究が あります。4か月から 24か月まで、おって 見ました[2]。

すると、およそ 23人に 1人(4.3%)は、手と ひざで 進む はいはいを しませんでした。みんな 健康けんこうな 子です。

はいはいが できる ように なる 月れいも、5.2か月から 13.5か月と、大きな はばが ありました。ひとりで 歩く 月れいは 8.2か月から 17.6か月です。この はばは、健康けんこうな 子の 「ふつうの ちがい」だと 書かれて います[2]。

心配な ときは、けんしんや 小児科しょうにかで 聞いて みると いいでしょう。

4.3%の子は、ハイハイをしなかった

WHOが行った運動発達の研究には、ガーナ、インド、ノルウェー、オマーン、アメリカの816人が協力し、4〜24か月のあいだ追跡されました。健康な子の約90%は、五つの動作を共通の順序で達成しました。一方で、4.3%は四つんばいのハイハイをしませんでした[2]。約23人に1人の計算です。

「ふつう」の幅は広い

ハイハイができるようになった月齢は、5.2〜13.5か月の幅でした。ひとりで座るのは3.8〜9.2か月、ひとりで歩くのは8.2〜17.6か月です。これは外れ値を除いた範囲で、研究は、健康な子の幅のある違いを表す範囲だと説明しています[2]。

腹ばいの時期も、ない子がいる

アドルフらが28人を追った研究の要旨では、15人が腹ばいで進む時期を経て四つんばいになり、13人は腹ばい移動の時期を飛ばしたとされます[3]。発達は、決まった段階を順に上る形ではないようです。

月齢の目安から外れて気になるときは、数字だけで決めず、乳幼児健診や小児科で相談するのが安心です。

WHO Multicentre Growth Reference Study の運動発達研究は、ガーナ・インド・ノルウェー・オマーン・米国の816人を4〜24か月で追跡した。健康な子の約90%は共通の順序で五つの運動を達成した一方、4.3%は四つんばいのハイハイを示さなかった[2]。「五つ」は、6項目のうち順序が共通だったものを指し、4.3%は、ハイハイという動作自体が観察されなかった子の割合である。

達成月齢の幅(1〜99パーセンタイル)は、四つんばいのハイハイが5.2〜13.5か月、ひとり座りが3.8〜9.2か月、独り歩きが8.2〜17.6か月であった。この幅は健康な子の幅のある違いを表し、平均ではない[2]。

Adolph ら(1998)の縦断研究(28人)の要旨によれば、15人が腹ばい移動の時期を経て四つんばいに移り、13人はその時期を飛ばした。要旨の範囲では、発達は厳密に固定された段階の連なりではなかったことになる[3]。個々の子の受診の目安は、ここでは述べない。

3. はいはいで まなんだ ことは、歩く ときも つかえるの?

3. 這って覚えた「この坂は危ない」は、歩くと使えない

3. 姿勢に結びつく学習 ── 36度の坂の実験

はいはいを した けいけんは、月れいよりも、まわりに 合わせて うまく 動く ことに つながる、と 研究者の カレン・アドルフは まとめて います[4]。

こんな 実験じっけんも ありました。歩きはじめの 赤ちゃんに、とても きゅうな 坂を 見せます。はいはいの しせいで 近づくと、赤ちゃんは 坂を おりるのを やめました。ところが、その すぐ あとに 立って 歩く しせいで 近づくと、同じ 坂を おりようと したのです[4]。

「あぶない」と 分かった ことが、はいはいの 体の 中だけに 入って いる ようです。歩く 体では、もう一度 ためす ひつようが あるのかも しれません。

ただし これは 実験じっけん室の 坂での お話です。おうちの 中の あんぜんに、そのまま あてはめる ことは できません。

月齢より、動いた経験

発達心理学者のカレン・アドルフは、乳児の動き方の研究で、状況に合わせてうまく動き方を選べるかどうかは、月齢よりも、移動の経験の長さのほうがよく予測した、と述べています[4]。

這う姿勢と、歩く姿勢

歩き始めたばかりの子に、36度の急な坂を見せる実験がありました。這う姿勢で坂に近づくと、子は降りるのを避けました。ところが、その直後に歩く姿勢で近づくと、同じ坂を降りようとしたそうです[4]。「この坂は危ない」という学びが、姿勢ごとに結びついていて、別の姿勢では学び直しになる、と説明されています。

実験室の坂での結果なので、家の中の安全の話に広げることはできません。

Adolph(2008)は、乳児の移動の適応的な選択を、月齢より移動経験のほうがよく予測したと整理する[4]。適応的な反応は、月齢よりも、その姿勢で動いてきた経験の長さのほうがよく予測していた。

同じ総説が紹介する実験では、歩き始めの乳児は、経験のある這う姿勢で36度の危険な坂を試されると降りるのを避けたが、その直後に歩く姿勢で試されると同じ坂を降りようとした[4]。危険の学習が姿勢ごとに結びついており、姿勢が変わると学び直しが要る、と解釈される。ただし、統制された実験室の坂での結果であり、家庭での事故予防に直接つなげる根拠にはならない。

4. はいはいを する 子には、何が 見えて いるの?

4. 這う子は、床を見ている時間が長い

4. 視野と視線の比較 ── 這う子と歩く子

13か月の 赤ちゃん 30人が てつだった 研究が あります。はいはいを する 子と、歩く 子の 15人ずつに、めがねの ような きかいを つけて、何を 見て いるかを しらべました[5]。

見て いる 高さは、はいはいの 子が 平均へいきん 66センチ、歩く 子が 135センチと 出ました。およそ 2ばいの ちがいです。

はいはいの 子は、はんぶん くらい(54%)の 場面で ゆかを 見て いました。歩く 子は 3わり 弱(28%)です。お母さんや お父さんを 見る 場面は、はいはいの 子が 37%、歩く 子が 54%でした。

はいはいの 子は、下を 見ながら 進んで いる ようです。歩く 子は、はいはいの 子より、お世話を する 人を 見る ことが 多かったそうです。

13か月の子の目線を測る

カレン・アドルフらの研究グループは、13か月の30人(這う子15人、歩く子15人)に視線を測る装置をつけてもらい、遊んでいるときの視野と視線を調べました[5]。子の平均的な経験は、這う子が約4.6か月、歩く子が約1.9か月でした。

66cmと135cm

視野の高さは、平均で這う子が約66cm、歩く子が約135cmでした。約2倍の差です。這う子は場面の54.4%で床を見て、歩く子は28.5%でした。養育者を見た割合は、這う子が36.6%、歩く子が54.1%です[5]。

這う子の視野には、壁が少なく、床が多く入っていた、と報告されています。同じ部屋にいても、動き方が変わると、見える景色が変わるようです。

Kretch, Franchak & Adolph(2014)は、13か月児30人(這う子15人:ハイハイ経験の平均4.6か月、歩く子15人:歩行経験の平均1.9か月)に頭部装着型の視線計測装置をつけ、自由遊びでの視野と視線を比較した。視野の高さは、這う子で平均約66cm、歩く子で約135cmだった。這う子は場面の54.4%で床を見たのに対し、歩く子は28.5%であり、養育者を見る割合は這う子36.6%、歩く子54.1%だった[5]。

這う子の視野は壁が少なく床が多く、歩く子は視線を前方の養育者に向ける傾向があった。この数値は二次的な要約経由であり、原論文の表での再確認は今回できていない。30人・13か月児という小さな標本での結果でもある。ここから、移動様式が「見える世界」を変えうる、という仮説までは立てられるが、学習への長期的影響までは示されていない。

5. 歩きはじめたら、どれくらい 歩くの?

5. 歩き始めは、1時間に2000歩以上

5. 歩行練習の量 ── 「ハイハイの次」の数字

歩きはじめの 赤ちゃんは、1時間に 2000歩より 多く 歩くと 研究で 報告ほうこくされて います。12〜19か月の 子の 平均へいきんは 2368歩で、こけた 回数は 17回でした[6]。

14か月の 子では、1時間に 進む 長さが、およそ 7つぶんの サッカー場だと 紹介しょうかいされて います。

これは 歩く ときの 数字で、はいはいの 数字では ありません。でも、体を 動かして ためす 回数が、とても 多い ことは 分かります。

何千歩も歩き、何度もころぶ

12〜19か月の子が自由に遊ぶ1時間を数えた研究では、平均2368歩、転んだ回数は平均17回でした。14か月児の場合、1時間に2000歩を超え、進んだ距離は合わせて約7フットボール場ぶんに当たる、と紹介されています[6]。

これは歩行の数字で、ハイハイの歩数ではありません。ただ、乳児が体を使って試す回数の多さを想像させてくれます。前の章の坂の実験のように、経験が動き方を変えていく背景には、こうした積み重ねがあるのかもしれません。

Adolph ら(2012)は、12〜19か月の歩行児の自由遊び1時間あたりの歩数を平均2,368歩、転倒を平均17回と報告した。14か月児は1時間に2,000歩超を歩き、累積距離は約7フットボール場ぶんに及ぶ[6]。この数字は検索で得た要旨の抜粋にもとづき、歩行に関するものであって、ハイハイの歩数ではない。

第3章の結果と合わせると、移動の経験は、質だけでなく量の面でも大きい。ただし、この量が発達の原因なのか、発達した結果として増えるのかは、この資料からは決められない。

「見える 高さ」を 体験たいけんして みよう

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

やって みよう

  • ひざを ついて 部屋を 見わたす。 家の 人と いっしょに、ひろい あんぜんな ばしょで ゆっくり、ゆかに ひざと 手を ついて、部屋を 見て みましょう。立った ときと、見える ものが ちがうかな。
  • 赤ちゃんの 話を 聞く。 家の 人に、小さい ころ はいはいを したか、聞いて みましょう。しなかった 人も、いるかも しれません。早い おそいを くらべる ためでは ありません。

今日できること

  • 床の高さから部屋を見る。ひざと手をついた姿勢で、床と壁のどちらが多く見えるか、机の上に何があるか、確かめてみます。ものにぶつからない広い場所で、ゆっくりやります。
  • 身近な人の話を聞く。家族に、自分がどう動き始めたかを聞いてみましょう。ハイハイの時期や型はさまざまで、早い遅いの比べ合いをするためではありません。

自分で確かめてみる

  • 目の高さと視野を比べる。立った姿勢と四つんばいの姿勢で、同じ部屋の同じ方向を見て、床と壁がどれくらいの割合で見えるかを比べる。ものにぶつからない広い場所で、ゆっくり行う。乳児の視線測定の結果と、どこが似て、どこが違うかを考える。
  • 数字の読み方を確かめる。出典[1]の「90%以上が可能な月齢」と、[2]の「1〜99パーセンタイルの幅」が、それぞれ何を表す数字かを整理し、開始時期の目安と混ぜないで読み比べる。

資料を読むなら

WHOの運動発達研究(Acta Paediatrica, 2006)は英語の論文で、5つの国の816人を追い、達成月齢の幅を表にまとめている。Adolph(2008)の総説は、移動経験と学習の関係を、坂の実験を含めて紹介している。厚生労働省の調査概要は日本語で読める。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:公的な調査資料と、学術論文の公開情報を使っています。

  1. 厚生労働省 乳幼児身体発育調査 調査結果の概要(PDF)。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/73-22-01.pdf (各動作が90%以上できる月齢、ハイハイの基準)
  2. WHO Motor Development Study, Acta Paediatrica (2006)。 https://cdn.who.int/media/docs/default-source/child-growth/child-growth-standards/indicators/motor-development-milestones/who-motor-development-study-windows-of-achievement-for-six-gross-motor-development-milestones.pdf?sfvrsn=3425c1dc_0 (ハイハイをしなかった子の割合、達成月齢の幅)
  3. Adolph, Vereijken & Denny (1998) Learning to crawl, Child Development。 https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1467-8624.1998.tb06213.x (腹ばい移動の時期の有無。要旨で確認)
  4. Adolph (2008) Learning to Move, Current Directions in Psychological Science(PubMed Central)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2658759/ (移動経験と適応的な動き、36度の坂の実験)
  5. Kretch, Franchak & Adolph (2014) Crawling and walking infants see the world differently, Child Development(PubMed Central)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4059790/ (這う子と歩く子の視野の高さと視線)
  6. Adolph et al. (2012) How do you learn to walk? Thousands of steps and dozens of falls per day, Psychological Science(PubMed)。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23085640/ (歩き始めの歩数と転倒の回数)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。