1. さかさまは、らくなの?
1. 手でにぎらず、爪で引っかける
1. ぶら下がりの基本 ぶら下がるための足の向き
ひとが ぶらさがる ときは、手で ぎゅっと にぎって、うでの きんにくを ずっと つかいます。だから つかれます。
こうもりは ちがいます。ながい つめを えだや てんじょうに ひっかけて、その つめで からだを ささえます[3]。さらに、あしの ゆびには、つかれにくくする しくみが あります。
うしろあしは、ひざが うしろむきに なるように、ぐるっと 180ど まわって ついて いると いわれます[3]。この むきなので、ぶらさがる のに つごうが よいようです。
2. あしの 中で、なにが かたまるの?
2. 腱とさやがかみ合うしかけ
2. 腱ロック機構(TLM)の構造
ゆびを まげる すじの ひもを 「けん」と いいます。この けんは、「さや」と いう くだの 中を とおって います。
こうもりの さやの 内がわには、小さな でこぼこが あります。けんの ほうにも こぶが あって、この ふたつが かみ合うと、けんが その 場で とまります[2]。
ぎざぎざの 歯が かみ合って、もどらない けっそくバンドに にて います。ゆびを まげる きんにくが 休んでも、ゆびは にぎった ままに なると 説明されて います[2]。
ただし けっそくバンドは、本当の しくみと 同じでは ありません。たとえ、です。
足の指を曲げる筋肉は、腱(けん)という丈夫なひもで指先につながっています。腱は、腱鞘(けんしょう)という細いさやの中を通ります。
コウモリのさやの内側には、小さなひだ(うね)が並んでいます。腱のほうにもこぶのある部分があり、両方がかみ合うと、腱が固定されます。バット・コンサベーション・インターナショナルは、指を曲げる筋肉が縮むのをやめても、固定されたままになると説明しています[2]。
引っぱると入っていくのに、逆には戻らない結束バンドの歯のようなしくみで、「腱ロック機構」と呼ばれます。結束バンドはあくまでたとえで、実際の構造は骨と腱の細かなつくりです。
このしくみは15科のコウモリで調べられ、大半の種で腱の腹側にこぶのある部分が見つかったと、1993年の論文の抄録にあります[1]。
3. あしが 細いと、なにが むずかしいの?
3. 細い足は、地面が苦手
3. 細い後肢と地上での制約
こうもりの うしろあしの ほねは、ほにゅうるいの 中でも とくに 細いと いわれます[4]。とぶ ために、からだを かるく したのだろうと 考えられて います。
そのぶん、おりる ときの ショックで あしを いためやすいそうです[4]。
じゃあ 「ほねが よわいから 地めんを あるけない」のでしょうか。それは まだ 決められません。ある 研究では、あるけない しゅるいの ほうが、あしに 大きな 力が かかって いました[8]。ほねの つよさだけでは 説明できないようです。
ちすいこうもりは 地めんを はしれる れいがいとして 知られて います[7]。
4. とびたつ ときは、どうするの?
4. 高い所から、落ちるだけで飛び始める
4. 飛翔開始のジャンプと落下離陸
おおくの こうもりは、どうくつや やねうら、木の 上で やすみます。とびたつ ときは、そこから 空中に おちる だけで、とび はじめられます[6]。
高い ところから ぽとっと おちると、そのまま とびはじめられます。細い あしで 地めんを けらなくても いいのです。
いっぽう、地めんに いる 時間が 長い しゅるいは、じゅうりょくに さからって とびあがらなければ なりません[6]。
そのときは、つばさの きんにくが 力を 出して ジャンプします。しらべた 5しゅるいの こうもりで そうでした[6]。
洞窟・屋根裏・木でねぐらをとるコウモリの多くは、宙に落ちるだけで飛び始められます。これは、2011年の論文が「多くの種で飛び立ちはそれほど難しくない」と述べている点です[6]。逆さにぶら下がっていれば、足を離すだけで飛行に入れる、という暮らし方に合っています。
一方、地上で過ごす時間が長い種は、重力に逆らって飛び立たなければなりません。調べられた食虫性の5種は、地面からのジャンプで、翼の筋肉が力を出していました[6]。主役は後ろ足ではなく翼です。
チスイコウモリでは、ジャンプで上向きの力を出すのは胸側の前肢で、後ろ足は体の姿勢を安定させる役目と報告されています[7]。
ただし「落ちるために逆さまになった」と決めることはできません。飛び始めやすいという事実は、逆さの暮らしと合っている、というところまでです。
5. てんじょうに とまるのは かんたん?
5. 逆さの姿勢のまま、天井に止まる
5. 天井への着地という力学的課題
こうもりは ふつう、頭を 下に して とまります。でも、その しせいでは、その場で ふわふわ うかぶ ことが できません[4]。
てんじょうに とまる には、空中で くるっと まわるような うごきで、つめを てんじょうに とどかせます。細い あしを いためないよう、そっと つく 必要が あります[4]。
2015ねんの 報告では、こうもりが 空中で くるっと はんてんして、てんじょうに とまる とき、うごく いきおい(かんせい)を うまく つかって いると されました[5]。
6. まだ わからない ことは?
6. 分かっていないこと
6. 未解決の点
けんの しくみが、すべての こうもりに あるのかは、まだ はっきり しません。しらべられた おおくの しゅるいで 見つかった、と いうところまでです[1]。
また、「なぜ さかさまに なったのか」も 答えは 決まって いません。とびたちやすい という いい ところは あるようですが、そのために なったとは いえません。
腱ロックがすべてのコウモリにあるのかは、はっきりしていません。調べられたのは15科で、大半の種で腱にこぶのある部分が見つかったという報告です[1]。
なぜコウモリが逆さにぶら下がる暮らしになったのかも、決着していません。飛び立ちやすいという利点は確認されていますが、それが理由で進化した、とまでは言えません。
ただ、足のしかけ、細い後ろ足、落ちて飛び立つ暮らしが、たがいに合っているのは確かなようです。
7. ふくろを フックに かけて みよう
7. 手で持つ・引っかける、を比べる
7. 出口 引っかけて支える/原典に当たる
おもい ふくろを、手で ぎゅっと にぎって もって みます。しばらく すると、手が つかれますね。
つぎに、ふくろの もち手を、あんていした いすの せもたれに ひっかけて みます。手を はなしても、ふくろは おちません。ささえて いるのは、ひっかかって いる ところです。
こうもりの あしは、これに すこし にて います。でも、本当は けんが かたまる しくみで、にぎる 力を ゆるめても はなれません。そこは ちがいます。
おもすぎる ふくろは つかわないで、足に おとさないように しましょう。
重すぎない買い物ぶくろを、手で握ったまま腕を下ろして、どれくらい持っていられるか試してみてください。次に、持ち手を安定した椅子の背もたれに引っかけます。手を離しても落ちません。
支えているのは、握る力ではなく、引っかかっている場所です。コウモリの足は、そこにさらに、指の腱が固定される工夫を足したものと考えられます。ただし、本物のしくみは、ふくろとはまったく別物です。足の上に落とさない重さにとどめてください。
写真や動物園の展示でコウモリを見る機会があれば、足の指がどこに引っかかっているかを見てみてください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
アクセス日はいずれも2026-09-29。原文が確認できなかったものは、抄録や検索結果の抜粋、紹介記事に基づく。
- Quinn & Baumel, Journal of Morphology 216:197-208, 1993(抄録)。 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/jmor.1052160207 (腱ロック機構の構造と、調べられた科の数について。検索結果の抜粋のみ確認)
- Bat Conservation International「Where the Upside is Down」。 https://www.batcon.org/where-the-upside-is-down/ (腱鞘のひだと腱のかみ合いについて)
- Texas Parks & Wildlife「Background for Teachers (Hanging Around with Bats)」。 https://tpwd.texas.gov/education/resources/keep-texas-wild/hanging-around-with-bats/background-for-teachers (爪で支えること、後ろ足の向きについて)
- Riskin et al., Journal of Experimental Biology 212:945, 2009「Bats go head-under-heels」。 https://journals.biologists.com/jeb/article/212/7/945/19086/Bats-go-head-under-heels-the-biomechanics-of (細い後ろ足、天井への着地について)
- ナショナル ジオグラフィック日本版「コウモリの天井への反転着地」の紹介記事(PLOS Biology 2015の紹介)。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/111800326/ (空中で反転して天井に止まる観察について。原論文は未確認)
- Journal of Experimental Biology 214:2182, 2011「No apparent ecological trend to the flight-initiating jump performance of five bat species」。 https://journals.biologists.com/jeb/article/214/13/2182/10319/No-apparent-ecological-trend-to-the-flight (落下による飛び立ちと、翼の筋肉のジャンプについて)
- Schutt et al., Journal of Experimental Biology 200:3003, 1997/Riskin & Hermanson, Nature 434:292, 2005。 https://journals.biologists.com/jeb/article-abstract/200/23/3003/7660/The-Dynamics-of-Flight-Initiating-Jumps-in-the?redirectedFrom=fulltext (チスイコウモリの飛び立ちジャンプと地上での例外について。検索結果の要約のみ確認)
- Riskin et al., Journal of Experimental Biology 208:1309, 2005「Testing the hindlimb-strength hypothesis」。 https://journals.biologists.com/jeb/article/208/7/1309/15998/Testing-the-hindlimb-strength-hypothesis-non (骨の強さと地上での動きの関係について)
なおした ところ
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