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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

ミツバチは なぜ きゅうに「ひっこし」するの?

ミツバチは、なぜ巣を出て「引っ越し」するのか

ミツバチは、なぜ巣を出て「引っ越し」するのか ──「分蜂」という本能

分野:生きもの

ミツバチの すばこから、ある日 とつぜん、女王バチと 半分の はたらきバチが いなく なって しまう ことが ある。

だれかに つれさられたのでは ない。ミツバチたちが、じぶんの いしで、「ひっこし」を したのだ。

ミツバチの巣箱から、ある日突然、女王バチと働きバチの半分がいなくなってしまうことがある。

誰かに連れ去られたわけではない。ミツバチたちが、自分たちの意思で「引っ越し」をしたのだ。

ある朝、養蜂家が巣箱を開けると、女王バチと働きバチの半数ほどが、忽然と姿を消していることがある。

前の記事では、養蜂家がトラックでミツバチを運ぶ「転地養蜂」を見た。今回は逆に、ミツバチが自分の本能で行う引っ越し、「分蜂」を追う。旅立つのは新しい女王か、古い女王か。数万匹の群れは、新しい住みかをどう決めるのか。そして養蜂家にとって、分蜂とはどんな出来事なのか。

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1. 「ぶんぽう」って なに?

1. 「分蜂」って何?

1. 分蜂は、なぜ起こるのか

すばこの 中に ミツバチが ふえすぎて ぎゅうぎゅうに なると、はたらきバチたちは、あたらしい 女王バチを そだてる ための とくべつな へやを、いくつも 作りはじめる[1]

その あたらしい 女王バチが 生まれる、ちょっと まえ。もとから いた 女王バチが、はんぶんくらいの はたらきバチを つれて、すばこを 出て いく。これが 「ぶんぽう(すわかれ)」だ[1]

巣箱の中でミツバチが増えすぎてぎゅうぎゅうになると、働きバチたちは、新しい女王バチを育てるための特別な部屋(王台)を、いくつも作り始める[1]

その新しい女王バチが生まれる、少し前。もといた女王バチが、半分くらいの働きバチを連れて、巣箱を出ていく。これが「分蜂(巣分かれ)」と呼ばれる現象だ[1]

コロニー内の個体数が増え、巣の中が過密になると、働きバチは新しい女王バチを育成するための特別な巣房「王台」を複数作り始める[1]

新しい女王バチが誕生する直前、もとの女王バチが群れの半数前後の働きバチを引き連れて巣を離れる。この現象を「分蜂(巣分かれ)」と呼ぶ[1]

1つのコロニーには女王バチが1匹しかいられないため、新女王の誕生は、旧女王にとって巣を出るきっかけになる。分蜂によって、1つの群れが2つに分かれ、コロニー数が増えていくことになる[1]

2. でて いくのは、あたらしい 女王バチでは ない

2. 出ていくのは、新しい女王バチではない

2. なぜ「新女王」ではなく「旧女王」が旅立つのか

ふつうに かんがえると、あたらしく 生まれた 女王バチの ほうが、家を 出て いきそうな 気が する。でも ぶんぽうで 家を 出るのは、もとから いた 女王バチの ほうだ[1]

あたらしい 女王バチは、うまれた すばこに のこり、そこの あたらしい 女王と なる。もとの 女王バチは、じぶんが そだてた すばこを あとに ゆずって、じぶんは あたらしい すみかを さがしに 出る[1]

普通に考えると、新しく生まれた女王バチの方が、家を出ていきそうな気がする。でも分蜂で家を出るのは、もといた女王バチの方だ[1]

新しい女王バチは、生まれた巣箱に残り、そこの新しい女王となる。もとの女王バチは、自分が育てた巣を後にゆずって、自分は新しいすみかを探しに旅立つ[1]

直感的には、新しく生まれた個体が巣を離れるように思えるかもしれない。しかし実際に旅立つのは、既に産卵実績のある旧女王の方である[1]

新女王は羽化した巣にとどまり、そのコロニーの後継者となる。旧女王は、自らが築いてきた巣・貯蜜・育児中の幼虫を新女王に託し、半数の働きバチとともに、まだ何もない状態から新しいすみかを探すことになる[1]。既存の資産を守るのは新参者、リスクを取って旅立つのはベテランという、直感とは逆の役割分担になっている。

3. 木の えだに ぶらさがる「はちの かたまり」

3. 木の枝にぶらさがる「蜂球」

3. 次のすみかが決まるまで「蜂球」を作って待つ

すばこを 出た 女王バチと はたらきバチたちは、すぐには あたらしい すみかへ 行かない。近くの 木の えだなどに、いったん かたまって ぶらさがる。これを 「はちの かたまり」と いう[2]

この かたまりは、テントを はって いっぱく する ような ものだ。ただし ほんとうは、テントでは なく、はたらきバチどうしが あしを つなぎあって、まん中に いる 女王バチを まもって いる[2]

あたらしい すみかが 見つかるまで、数時間から、長くても 1しゅうかんほど、その ばしょに とどまって いる[3]

巣箱を出た女王バチと働きバチたちは、すぐには新しいすみかへ向かわない。近くの木の枝などに、いったん集まってぶらさがる。これを「蜂球(ほうきゅう)」という[2]

テントを張って野宿するようなものだ。ただし本当は、テントではなく、働きバチどうしが足をつなぎ合って、真ん中にいる女王バチを守っている[2]

新しいすみかが見つかるまで、数時間から、長くても1週間ほど、その場所にとどまる[3]

巣を離れた女王バチと働きバチの集団は、すぐに新しい営巣地へ向かうわけではない。近くの樹木の枝などに、一時的に密集してぶら下がる。これを「蜂球(ほうきゅう)」と呼ぶ[2]

蜂球は、働きバチどうしが足を絡めて連結することで作られ、集団の中心に女王バチを保護する構造になっている。晴天・無風の日中に形成されることが多いとされる[2]

蜂球は定住のための巣ではなく、次の候補地が決まるまでの仮の野営地であり、数時間から長くても1週間程度で解散し、次の営巣地へと移動する[3]

4. つぎの すみかは、みんなで きめる

4. 次のすみかは、みんなで話し合って決める

4. 偵察バチが8の字ダンスで次のすみかを決める

はちの かたまりが できると、なかの 一ぶの はたらきバチ(ていさつバチ)が、あたらしい すみかの こうほを さがしに とんで いく[4]

よい ばしょを 見つけると、かたまりに もどって、「8の字」の ような うごきの ダンスを おどり、みんなに その ばしょを つたえる[4]

リーダーが 1ぴきで きめるのでは ない。何百びきもの ていさつバチが、それぞれ 見つけた ばしょを ダンスで うったえあい、いちばん よい ばしょに、みんなの 気もちが まとまって いく[4]

蜂球ができると、中の一部の働きバチ(偵察バチ)が、新しいすみかの候補を探しに飛んでいく[4]

良い場所を見つけると、蜂球に戻って、「8の字」のような動きのダンスを踊り、仲間にその場所を伝える[4]

リーダーが1匹で決めるのではない。何百匹もの偵察バチが、それぞれ見つけた場所をダンスで報告し合い、もっともよい場所に、みんなの意見がまとまっていく[4]

蜂球を形成すると、一部の働きバチが偵察バチとなり、樹洞などの新しい営巣地の候補を探索する[4]

好条件の候補地を発見した偵察バチは、蜂球に戻り、8の字ダンスによって方向・距離・場所の評価を仲間に伝える。生物学者トーマス・シーリーの研究によれば、何百匹もの偵察バチがそれぞれ見つけた複数の候補地について、場所と評価をダンスで伝え合い、特定のリーダーの判断によってではなく、もっとも優れた候補地へと集団の合意がまとまっていくという[4]

中央集権的な意思決定者を持たない集団が、分散した情報をもとに、結果として合理的な単一の結論にたどり着く。この仕組みは、集団的意思決定の研究例としてもたびたび取り上げられている[4]

5. ようほう家に とっては こまった できごと

5. 養蜂家にとっては、困った出来事

5. 養蜂家は、分蜂をどう防ごうとしているのか

ぶんぽうは、ミツバチに とっては しぜんな ことだ。でも ようほう家に とっては、こまった できごとに なる。はたらきバチが 半分に なると、はちみつを あつめる 力も 半分に なって しまうからだ[5]

そこで ようほう家は、女王バチを そだてる とくべつな へやを こわしたり、すばこの 中を 広げて ぎゅうぎゅうに ならないように したり、じぶんで すばこを 2つに 分けたり する ことで、ぶんぽうを ふせごうと して いる[5]

分蜂は、ミツバチにとっては自然なことだ。でも養蜂家にとっては、困った出来事になる。働きバチが半分になると、はちみつを集める力も半分になってしまうからだ[5]

そこで養蜂家は、王台をこわしたり、巣箱の中を広げてぎゅうぎゅうにならないようにしたり、自分で巣箱を2つに分けたり(人工分蜂)することで、分蜂を防ごうとしている[5]

分蜂はミツバチにとって群れを増やすための自然な行動だが、養蜂家にとっては、働きバチの半数と収穫予定だった採蜜量を一度に失う出来事になる[5]

そのため養蜂家は、王台を定期的に取り除く、巣箱内に十分な空間を確保する、群れを計画的に2つに分ける「人工分蜂」を行うなど、複数の対策を組み合わせて分蜂の発生を管理している[5]

6. ニホンミツバチは、ひっこしが すき?

6. ニホンミツバチは、引っ越し好き?

6. ニホンミツバチは、なぜ分蜂・逃去しやすいのか

日本には、むかしから いる 「ニホンミツバチ」と、外国から きた 「セイヨウミツバチ」の 2しゅるいが いる。ニホンミツバチは、すばこの 中の ようすが 気に 入らないと、ぶんぽうだけで なく、すばこ ぜんいんで、べつの 場しょへ 出て いって しまう ことも ある[6]

ある ようほう家さんは、「ニホンミツバチは ぶんぽうが うまく いかず、すう年で むれの 数が へって しまった」と 話して いる[6]

日本には、昔からいる「ニホンミツバチ」と、外国から持ち込まれた「セイヨウミツバチ」の2種類がいる。ニホンミツバチは、巣箱の中の環境が気に入らないと、分蜂だけでなく、巣箱ごとまるごと、別の場所へ引っ越してしまうこともある[6]

ある養蜂家は、「ニホンミツバチはどうも分蜂がうまくいかず、数年で群れの数が大きく減ってしまった」と話している[6]。セイヨウミツバチは19世紀半ばから飼育管理の技術が発達し、より家畜化が進んでいるとされる[6]

日本には在来種の「ニホンミツバチ」と、明治時代以降に導入された外来種の「セイヨウミツバチ」の2種が生息している。ニホンミツバチは、巣内の環境が悪化すると、分蜂とは別に、群れ全体で巣を放棄して移動する「逃去(とうきょ)」という行動をとることもある[6]

ニホンミツバチを飼育するある養蜂家は、「群れは1つから2つ、2つから4つというふうに分蜂で増やしていけるはずだが、ニホンミツバチはどうもうまくいかず」、飼育している群れの数が大きく減ってしまったと話している。同氏は別に、気温など外的環境の影響を受けやすく、ここ数年は飼育に苦戦しているとも語っている[6]

セイヨウミツバチは19世紀半ば以降、飼育管理の技術とともに家畜化が進んだ種とされ、比較的コロニーの管理がしやすい。一方でニホンミツバチは家畜化の程度が低く、本能的な分蜂・逃去の傾向がより強く残っているとされる[6]

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

もし はるから 夏に、木の えだに 大きな はちの かたまりを 見つけても、さわったり、スプレーを かけたり しないで、そっと はなれて 見まもろう。数日で、どこかへ とんで いく はずだ。心ぱいな ときは、市や 町の まどぐちに れんらくしよう。すんで いる まちの ホームページで、「ミツバチ」や「ぶんぽう」の おしらせが 出て いないか、さがして みるのも おもしろい。

もし春から夏に、木の枝に大きな蜂球を見つけても、さわったり殺虫スプレーをかけたりせず、そっと離れて見守ろう。多くの場合、数時間から数日で、どこかへ飛んでいく。不安なときは、自治体の窓口に相談しよう。住んでいる自治体のウェブサイトで、ミツバチの分蜂に関する案内が出ていないか探してみるのもおもしろい。

春から初夏にかけて、樹木の枝などに蜂球を見かけることがある。刺激を与えなければ攻撃してくることは少ないとされているため、駆除やスプレーの散布はせず、自治体の案内に従って静かに見守るのが基本的な対応とされている。数時間から長くても1週間ほどで、次の営巣地へ移動していく[3]。多くの自治体は分蜂に関する注意喚起のページを公開しており、実際にどのような案内が出ているかを調べてみると、身近な地域で起きている出来事として実感しやすくなる。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. 一般社団法人日本養蜂協会「ミツバチの生態」。 https://beekeeping.or.jp/honeybees/habits/ (コロニーの群勢が確保されると新しい女王が誕生すること、旧女王蜂が半数前後の働き蜂を伴ってコロニーを出て新しい営巣場所を探すこと)
  2. 「分蜂のしくみ」ニホンミツバチ養蜂の始め方。 https://honeybee.harekaze.jp/entry/what-is-the-swarm (晴天・無風の日中に分蜂が行われること、女王と働き蜂が近くの木などに一時集合し蜂球を作ること、一部の働き蜂が新しい営巣場所を見つけると集団で移動すること)
  3. 太宰府市公式ホームページ「ミツバチの分蜂(巣分かれ)はやさしく見守ってください」。 https://www.city.dazaifu.lg.jp/soshiki/10/3454.html (蜂球は新しい巣を探すための一時的な集合であり、むやみな駆除をせず様子を見ること、数時間から1週間ほどでいなくなること)
  4. 日刊ゲンダイDIGITAL「『ミツバチの会議』トーマス・シーリー著、片岡夏実訳」。 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/148749 (数百匹の偵察蜂が新しい営巣地の候補について場所と評価を8の字ダンスで仲間に伝え、もっとも優れた場所に合意がまとまるという、トーマス・シーリーの研究内容の紹介)
  5. 秋田屋本店養蜂部「養蜂の手引き|分蜂を防ぐには」。 https://akitaya-yoho.com/?mode=f14 (分蜂で働き蜂の半数が失われ採蜜量が減ること、王台の除去・巣箱内の空間確保・人工分蜂といった養蜂家の分蜂対策)
  6. ポケットマルシェ「西洋ミツバチと日本ミツバチはどこが違うの?養蜂家さんに教えてもらいました」。 https://poke-m.com/stories/715 (セイヨウミツバチが19世紀半ば以降家畜として改良されてきたこと、ニホンミツバチに「逃亡癖」があること、ニホンミツバチを飼育する養蜂家による、分蜂がうまくいかず群れの数が減少し飼育に苦戦しているという証言)

なおした ところ

更新履歴

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