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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

鳥は 人より 目が いいの? ── 「いい」を 4つに わけて みよう

鳥は人間より目がいいのか ── 鮮明さ・速さ・色・視野で比べる

鳥は人間より目がいいのか ── 空間解像度・時間分解能・紫外線・視野という4つの物差し

分野:生きもの

りくに すむ どうぶつで、いちばん 大きな 目を もつのは ダチョウです。ところが ワシは、ものを 見分ける 細かさで、ダチョウの 6ばいだと いわれます[1]。

鳥は 人より 目が いい、と よく いわれます。でも 「いい」には、いろいろ あります。細かさ、はやさ、色、見わたせる 広さ。ひとつずつ 見て いきましょう。

陸に住む動物のなかで、いちばん大きな目をもつのはダチョウです。ところが、ワシの視力(ものの細かさを見分ける力)は、そのダチョウの約6倍と、猛禽類の総説にまとめられています[1]。

目の大きさと見え方は、別のことのようです。では「鳥は人間より目がいい」は、本当でしょうか。「いい」を細かさ・速さ・色・視野に分けて、順に見ていきます。

陸上動物で最大の目をもつダチョウと比べると、オナガイヌワシや旧世界のハゲワシ類の視力は約6倍だと、猛禽類の総説(Mitkus ほか 2018)は述べる[1]。目が大きいことは、そのまま見え方の良さにはならないことになる。

では「鳥は人間より目がいい」は正しいのか。「いい」を、鮮明さ(空間解像度)・速さ(時間分解能)・色・視野の4つの物差しに分け、種ごとの測定値を複数の論文でたどる。ワシが得意な物差しと、小鳥が得意な物差しは、同じではない。

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1. 「目が いい」って、なにが いいの?

1. 「目がいい」は、何を物差しにするかで変わる

1. 細かさを見分ける力(空間解像度)── ワシは人の約2倍、セキセイインコは人より低い

ワシは、人の 2ばいぐらい 細かく 見分けられる、と いわれます[1][2]。ものの 細かさを 見分ける 力を、視力しりょくと いいます。

ところが、セキセイインコは ちがいます。しまもようを どこまで 見分けられるかを 数で あらわすと、人は 30から 60ぐらい、セキセイインコは 10.5 でした[3][4]。数が 大きい ほど、細かく 見えます。この はかり方では、人より 細かい しまを 見分けにくい ようです。

ただし、これは 1しゅの 数です。小鳥ぜんぶが そう、とは いえません。

「目が いい」は、「足が はやい」に にて います。みじかい きょりで はやい 子と、ながい きょりで はやい 子は、ちがう ことが あります。ただし ほんとうは、目の 「いい」は 1つに まとめられません。だから ものさしを 4つに わけて 見ます。

猛禽類の総説(Mitkus ほか 2018)によると、オナガイヌワシや旧世界のハゲワシ類の視力は、人間の約2倍です[1]。縞模様の細かさを見分ける力は、1度の角度の中に縞が何組入るか(cpd)という数で表せます。オナガイヌワシでは、最大で132〜143 cpd と測られました[2]。人間は、視力1.0で約30 cpd、目の中心のいちばん細かく見える部分でも60 cpd ほどが目安です[3]。

ところが、すべての鳥がそうではありません。セキセイインコの明暗の縞の視力は、約10.5 cpd と測られています[4]。人間の目安(約30〜60 cpd)より低い数字です。ただし1種だけの値なので、小鳥全体には広げられません。

「いい」の中身を分けると、鮮明さ、速さ、色、視野の4つになります。物差しごとに、得意な鳥はちがうようです。まず、鮮明さでワシが人間の約2倍になる、目の作りから見ます。

鮮明さは、縞模様をどこまで見分けられるかで測る。単位は cpd(cycles/degree、視角1度の中に縞が何組入るか)だ。オナガイヌワシの最大視力は132〜143 cpd で、深い中心窩の構造から計算した解像度(約140 cpd)とほぼ一致した[2]。猛禽類の総説は、この種と旧世界のハゲワシ類の視力を、人間の約2倍とまとめる[1]。

人間側の基準で倍率は変わる。視力1.0は約30 cpd に当たり、中心窩の最大は約60 cpd 程度とされる[3]。この記事は総説の「約2倍」を目安にとどめ、細かい倍率は言わない。

一方、セキセイインコの明暗の縞の視力は約10.5 cpd だった(Lind & Kelber 2011 の値を Mitkus ほか 2017 が引用)[4]。視力1.0(約30 cpd)の約3分の1にあたる。1種の値であり、小鳥や鳥全般の値ではない。

したがって「鳥は人間より目がいい」は、鮮明さだけを見ても、種によって答えが変わる。次に、ワシの鮮明さを支える目の作りと、その代償を見る。

2. ワシの 目は、どうして 細かく 見えるの?

2. ワシの目の中には、よく見える場所が2つある

2. 中心窩が2つ ── 狩りの型と対応する目の作りと、暗さに弱い「昼の目」

目の おくには、とくに 細かく 見える ところが あります。中心窩ちゅうしんかと いいます。ワシには、ふかい 中心窩ちゅうしんかが あります。その つくりから けいさんした 細かさは、じっさいに はかった 細かさと、ほぼ おなじでした[2]。

ワシなど 多くの 猛禽類もうきんるいは、中心窩ちゅうしんかを 2つ もって います[4]。ふかい ほうは、よこの ほうの とおくに いる えものを 見つけるのに やくだちます。もう 1つは、まえを 見る ための ものです[1]。

この 2つめは、えものを おいかける 鳥には あります。しんだ 動物を 食べる 鳥には ありません[1]。

ただし、くらく なると、ワシの 目は きゅうに 見えにくく なります[1]。ワシの 目は、明るい 昼の ための 目の ようです。

ワシの目の奥には、特に細かく見える場所(中心窩)があります。オナガイヌワシの深い中心窩の構造から計算した解像度は約140 cpd で、実際に測った視力(132〜143 cpd)とほぼ一致しました[2]。

多くの猛禽類は、この中心窩を2つもちます。中央の深い中心窩と、頭の側面に近い側にある浅い中心窩です[4]。

獲物を追いかけて捕まえる猛禽類は、正面を見るための浅い中心窩をもち、死肉を食べる猛禽類はもちません。深い中心窩は、横のほうの遠くにいる獲物を見つけるのに役立つそうです[1]。「2つ」は多くの種に当てはまることで、全種ではありません。

代わりに、暗さには弱くなります。猛禽類の目は、暗い所で働く桿体が少なく、中心窩には細い錐体がぎっしり並ぶため、光が弱くなると性能が急に落ちます[1]。ワシの目は、明るい昼向きにできていると考えられます。

多くの猛禽類は、深い中心窩(中央)と、浅い側頭側の中心窩の2つをもつ。鳥は視細胞を6種(桿体・双錐体・4種の単錐体)もつ[4]。オナガイヌワシでは、深い中心窩の解剖学的な最大解像度(約140 cpd)が、行動実験の最大視力(132〜143 cpd)と合っており、鮮明さの上限がこの構造で決まる、と読める[2]。

2つめの中心窩は、狩りの型に対応する。獲物を追う猛禽類は、正面視用の側頭側の中心窩を追加でもち、死肉食の猛禽類はもたない。深い中心窩は、側方の遠い獲物の発見に役立つ[1]。「2つ」は多くの種の特徴で、全種ではない。

代償もある。桿体の密度が低いことと、中心窩に細い単錐体が密に並ぶことが重なり、光が弱くなると性能が急に落ちる[1]。鮮明さの高い猛禽類の目は、明るい環境に合わせた「昼の目」だと言える。

3. 小鳥の 目は、どのくらい はやいの?

3. 速さの物差し ── 小鳥は1秒に約140回の点滅を見分ける

3. 時間分解能 ── CFF 最大146 Hz の小鳥と、猛禽類の中の差

2つめの ものさしは、「はやさ」です。光を ちかちかと つけたり 消したり して、だんだん はやく します。はやく しすぎると、ちかちかが 見えなく なり、ずっと 光って いる ように 見えます。ちかちかが 見えなく なる 1びょうの 回数が、目の はやさの めやすです[6]。

人は 1びょうに 60回ぐらい と いわれます。ただし、明るさなどで かわります。もっと はやい ちかちかを 見分けた、と いう ほうこくも あります[6]。

ヨーロッパの 小鳥、マダラヒタキは、1びょうに 多い ときで 146回の ちかちかまで 見分けました。へいきんは 138回ぐらいです[5]。ほねの ある ほかの どうぶつで、それまで いちばん とされた 数より、40〜50回ぐらい 多い そうです。

パラパラまんがを めくる ところを 思いうかべて ください。ゆっくりだと 1まいずつ 見えます。はやく めくると 1つの 動きに 見えます。小鳥の 目は、人より ずっと はやく めくっても、1まいずつ 見分けられる ような ものです。ただし ほんとうは、まんがは 絵が かわりますが、この ちかちかは 明るさが かわる だけです。

研究した 人たちは、この はやさは、木の たくさん ある 森を はやく とんで、とんで いる 虫を つかまえる くらしに 合って いる、と 考えて います[5]。ただし しらべたのは 小鳥 3しゅ だけです。

猛禽類もうきんるいの なかでも ちがいます。ハヤブサは 少なくとも 129回、ハリスホークは 81回でした。はやく とんで、はやい えものを ねらう 鳥ほど、目も はやい ようです[7]。

速さにも物差しがあります。臨界フリッカー融合周波数(CFF)です。光を点滅させ、点滅を速くしていくと、あるところからちらつきが消えて、連続した光に見えます。その境目の、1秒あたりの点滅の回数がCFFで、目が変化を見分ける速さの目安になります[6]。

人間のCFFは、一般に50〜90ヘルツ(1秒に50〜90回)で、60ヘルツ前後とされることが多いようです。ただし明るさやコントラストで変わり、500ヘルツまで区別できたという報告もあります[6]。

2016年の研究では、ヨーロッパの小鳥3種のCFFが測られました。最大値は、マダラヒタキが146ヘルツ、シロエリヒタキが141ヘルツ、アオガラが131ヘルツです。ほかの脊椎動物で最高とされた値より、約40〜50ヘルツ高い数字でした[5]。マダラヒタキの平均は約138ヘルツで、人間の60ヘルツ前後の2倍ほどです。ただし人間側の値には幅があるので、「2倍」は目安です。

著者らは、この速さを、昼に活動し、密な森を高速で飛びまわり、飛んでいる虫を捕らえる暮らしに合わせて選ばれた結果とみています。そして、素早さはワシの鮮明さより、鳥に一般的な特徴かもしれないと述べます[5]。測ったのは小鳥3種で、鳥がみなこの速さだとは言えません。

猛禽類の中にも差があります。明るい条件のCFFは、ハヤブサが少なくとも129ヘルツ、セーカーハヤブサが102ヘルツ、ハリスホークが81ヘルツでした。速く飛び、速い獲物を狙う種ほど、時間分解能(変化を見分ける細かさ)が高い傾向です。ただし、各種1〜3羽の結果です[7]。

時間分解能は、臨界フリッカー融合周波数(CFF)で測る。点滅光の周波数を上げていき、ちらつきが連続光に見えはじめる点滅回数(Hz)だ。人間のCFFは一般に約50〜90 Hz(60 Hz前後とされることが多い)で、明るさやコントラストに依存する。500 Hz まで変調光と一定光を区別できた、という報告もあり、人間の限界を60 Hz に固定はできない[6]。

Boström ほか(2016, PLOS ONE)は、マダラヒタキ・シロエリヒタキ・アオガラのCFFを測った。最大値は146・141・131 Hz、平均は138.2・128.1・130.3 Hz。ほかの脊椎動物で示された最高値より約40〜50 Hz 高い(要旨は ca. 50 Hz、本文は around 40 Hz)[5]。146 は最大値で、条件によって変わる。人間の60 Hz 前後との比は、平均値で約2倍だが、人間側の値が幅をもつため、「約2倍」は目安にとどまる。

著者らは、この高速な視覚を、昼行性で、密な森を高速で飛びまわり、飛んでいる虫を捕らえる生活への選択の結果とみなす。素早さは、ワシの鮮明さよりも、鳥に一般的な特徴かもしれないと述べる[5]。検査は3種で、「鳥はすべて速い」とは言えない。

猛禽類でも、種で差がある。Potier ほか(2020)は、明るい条件のCFFを、ハヤブサで少なくとも129 Hz、セーカーハヤブサで102 Hz、ハリスホークで81 Hz と報告した。速く飛び、速い獲物を狙う種ほど、時間分解能が高い。個体数は各1〜3羽で、非常に明るい条件での値だ[7]。

4. 人に 見えない 色が、鳥には 見えるの?

4. 紫外線が見える目 ── 雌雄が同じに見えない鳥たち

4. 4種めの単錐体と紫外線 ── 「雌雄同色」の9割超は、鳥の目には雌雄で色が違う

3つめの ものさしは、色です。これまで 調べられた 鳥は、どれも、人に 見える 色の ほかに、紫外線しがいせんか むらさき色に 強い さいぼうを もって いました[8]。どちらに 強いかは、鳥の しゅるいで ちがいます。紫外線しがいせんは、人には 見えない 光です。

おすと めすが、人には おなじ 色に 見える 鳥が います。スズメの なかまなど 139しゅを しらべると、9わりより 多い しゅで、鳥の 見え方では、おすと めすの 色が ちがって いました[9]。人には 見えない 色の ちがい(紫外線しがいせんも ふくみます)が、その りゆうに なる ことが あります。

ただし、これは 鳥の 目の しくみから けいさんした 見え方です。鳥が 見分けて いる ところを、じかに 見た わけでは ありません。

人の 目には そっくりな 2わでも、鳥の 目には、ちがう 鳥に 見えて いるのかも しれません。

色の物差しでは、鳥は人間と目の作りが少しちがいます。調べられた鳥はどれも、人間の可視域に3種の単錐体をもち、さらに紫外〜すみれ色の短い波長側に感度のある4種めの単錐体をもちます[8]。紫外線に強いのか、すみれ色に強いのかは、種によります。

人間の目には見えない色の差も、鳥には見えている可能性があります。人間には雌雄が同じ色に見える(雌雄同色と思われていた)スズメ目139種を、鳥の視覚のモデルで比べた研究があります。90%以上の種で、雌雄の色が違っていました。紫外線を含む、人間には見えない色の差が一因になることがあります[9]。

ただし、これは鳥の目の性質をもとにした計算上の見え方で、鳥自身が雌雄を見分けていることを直接示したものではありません。

人間の目には「そっくりな2羽」でも、鳥の目には、ちがって見えているかもしれません。

調べられた鳥はどれも、人間の可視域に3種の単錐体をもち、加えて紫外〜すみれ色の短波長側に感度をもつ4種めの単錐体をもつ(4色型)。どの波長域に強いかは種による[8]。

Eaton(2005, PNAS)は、人間には雌雄が同じ色に見える(単型)と思われていたスズメ目139種を、鳥の視覚のモデルで解析した。90%以上の種が、鳥の視覚では雌雄で色の異なる二色型だった。紫外線を含む、人間には見えない色の差が一因になることがある[9]。この節の数字は、論文の要旨にもとづく。

これは鳥の視覚をモデルで計算した結果で、鳥が実際に雌雄を見分けたことを直接示したものではない。

5. ネズミの 通り道は、紫外線しがいせんで 光って 見える?

5. 有名な話に、あとから疑問が出た ── チョウゲンボウとハタネズミ

5. 猛禽類の紫外線感度 ── 1995年の報告と、2013年の再検討

1995ねんの ろんぶんは、こんな ことを ほうこく しました。チョウゲンボウと いう 小さな タカの なかまは、ハタネズミの 通り道に ひきよせられる。ネズミの おしっこが 紫外線しがいせんで 光って、道すじが 見える から だ、と いう 考えです[10]。

ところが、2013ねんの 研究が、チョウゲンボウなどの 目を しらべました。目の レンズなどは、紫外線しがいせんを あまり とおさない、と はかられました[10]。

それで 研究した 人たちは、ネズミの おしっこは、自ぜんの なかでは、たしかな 目じるしに なりにくい、と 考えました。1995ねんの 話が まちがいと 決まった わけでは ありません。「うたがいが 出て いる」と いう ところです。

ワシや タカは 昼の 目、小鳥は 紫外線しがいせんが 見える 目。おなじ 「鳥」でも、目の つくりは ちがう ようです。

猛禽類は、色の点で、多くの小鳥とは対照的です。ノスリ、ハイタカ、チョウゲンボウの目は、角膜と水晶体が紫外線を吸収するため、紫外線への感度が低くなります[10]。

このことが、有名な話に疑問を投げかけました。1995年のNature論文は、チョウゲンボウが、ハタネズミの尿が紫外線を反射して描く通り道に引き寄せられると報告しました[10]。ネズミの通り道が、紫外線では目立つという考えです。

ところが2013年の研究は、猛禽類の目の測定などから、ハタネズミの尿は自然の状態では確かな視覚の手がかりになりにくいと考えました。紫外線の手がかりは、ハタネズミや小鳥を狙うときには、ほとんど重要ではないという結論です[10]。

ここで「1995年の報告は否定された」と決めるのは、早すぎます。あとの研究で疑問が出された、というところです。科学の結論が、あとの測定で見直される例といえます。

猛禽類の目は、角膜と水晶体が紫外線を吸収するため、多くの鳥とは対照的に、紫外感度が低い。Lind ほか(2013)は、ノスリ・ハイタカ・チョウゲンボウで、眼の媒質を紫外線の50%が通る波長を、およそ369〜379 nm と測った[10]。

これは、1995年の Viitala ほか(Nature)が報告した内容と食い違う。チョウゲンボウが、ハタネズミの尿が描く紫外線反射の通り道に引き寄せられる、という報告だ。Lind ほかは、眼の測定などから、ハタネズミの尿は自然状態で確かな視覚の手がかりとは考えにくく、紫外線の手がかりはハタネズミ・小鳥との関係でほとんど重要でないと結論した[10]。

「否定された」ではなく、「疑問が出されている」と読むのがよい。Lind ほかの論文には、訂正文(corrigendum)も出ている。

6. 目が あたまの うしろに あったら?

6. 視野の物差し ── ヤマシギは頭のまわりをほぼぐるりと見わたす

6. 視野 ── ヤマシギの水平ほぼ360°と、両眼視野の最大幅12°

4つめの ものさしは、見わたせる 広さです。ヤマシギは、目が あたまの うしろの 上の ほうに あります。よこに ぐるりと、ほぼ 1しゅう 見わたせる、と いわれます。あたまの 上の ほうも、ひろく 見わたせる ようです[11]。

2つの 目で いっしょに 見える ところは、まえの ほんの すこしです。いちばん 広くても、はば 12どぐらいと いわれます[11]。うでを のばした ときの こぶし 1つぶん(10どぐらい)より、すこし 広い くらいです。

うしろまで 見える かわりに、りょう目で 見る はんいは せまい ようです。ただし、これは ヤマシギ 1しゅの 話です。

視野の広さも、鳥の得意分野です。ヤマシギは、目が頭の後方の上のほうにあり、水平方向でほぼ360度を見わたし、頭の上のほうも広く見わたせるとされます。両目で重なる範囲は前方の狭い部分で、最大幅は約12度です[11]。腕をのばしたときのこぶし1つ分が約10度なので、こぶしより少し広いくらいです。

頭を動かさずに、ほぼ全周を見張れるということです。そのかわり、両目で同じものを見る範囲は、ごく狭くなります。

目の位置は鳥の種類ごとにちがいます。これはヤマシギ1種の測定値で、鳥全体の値ではありません。

Martin(1994, J Comp Physiol A)のヤマシギの視野の研究によると、目が頭の後方上部にあり、水平方向でほぼ360°を見わたし、頭上方向にも広い視野をもつ。両眼で重なる視野の最大幅は12°で、くちばしの向きに直角の方向に現れる[11]。

腕を伸ばしたこぶしが約10°なので、両眼視野はそれより少し広い程度になる。水平360°は「ほぼ」の値で、1種の測定だ。頭を動かさずに全周を見張れる代わりに、両目で同じ対象を見る範囲は狭い、というつり合いが読み取れる。

7. 公園で、鳥の 目の ばしょを 見て みよう

7. 鳥の目の位置を、自分の目で見比べる

7. 出口 ── 目の位置を観察し、原典で測り方を読む

おうちの 人と いっしょに、こうえんや 庭で 鳥を さがして みましょう。見る ところは、目の ばしょです。かおの よこに あるか、まえの ほうに あるか。とおくから、そっと 見て ください。すや ひなには、ちかづかない ように します。

双眼鏡そうがんきょうが あれば、つかって みましょう。ただし、たいようは ぜったいに 見ない ように します。

鳥が 見つからない ときは、ずかんや しゃしんでも できます。3しゅ えらんで、目が よこか、まえか、くらべて みましょう。

近所の公園や庭で、鳥の目がどこについているかを見比べてみましょう。顔の横についているのか、前のほうについているのか。ハトやスズメなど、身近な鳥で十分です。離れた場所からそっと見て、巣やヒナには近づかないようにします。双眼鏡を使うときは、太陽を絶対に見ないでください。

鳥が見つからないときは、図鑑や写真でも比べられます。3種を選んで、目の位置と暮らしぶり(地面を歩く、木にとまる、水辺にいる)を並べたら、目の位置から暮らしぶりを予想して、本で確かめてみてください。

観察の手順は単純だ。公園や庭で鳥を見つけたら、目の位置(顔の横か前か)と、その鳥のいる場所や動き方(地面、木の上、水辺)をメモし、視野の広さとの関係を仮説にする。近づきすぎず、巣やヒナには近づかない。双眼鏡で太陽を見ない。写真や図鑑で、種の数を増やして比べてもよい。

資料を読むなら、次の順がよい。Boström ほか(2016)は、小鳥の点滅の見え方を、どんな方法で測ったか。測った鳥の数と、最大値と平均値の関係に注目できる[5]。Eaton(2005)は、「鳥の視覚のモデル」をどう作ったのか[9]。Lind ほか(2013)は、1995年の報告のどこに疑問を出したのか、訂正文と併せて読むとよい[10]。猛禽類の目の全体像は、Mitkus ほか(2018)の総説にある[1]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:猛禽類の目についての総説・論文、小鳥の点滅の見え方の論文、紫外線の見え方の論文、視野の論文を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Mitkus ほか「Raptor Vision」(2018、Lund大学の論文情報)。https://portal.research.lu.se/en/publications/raptor-vision (ワシの視力と人間・ダチョウとの比較、中心窩の使い分け、暗さに弱いこと)
  2. Reymond (1985) Vision Research 25(10):1477(オナガイヌワシの視力の論文、要旨)。https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0042698985902263 (オナガイヌワシの最大視力と、中心窩の構造から計算した解像度)
  3. Kalloniatis & Luu「Visual Acuity」Webvision。https://www.webvision.pitt.edu/book/part-viii-psychophysics-of-vision/visual-acuity/ (人間の視力1.0の基準と、中心窩の最大値の目安)
  4. Mitkus ほか (2017) Journal of Comparative Neurology(猛禽類の中心窩の論文、序論でセキセイインコの値を引用)。https://corbolab.wustl.edu/publications/Mitkus2017.pdf (猛禽類の中心窩が2つあること、視細胞の種類、セキセイインコの視力)
  5. Boström ほか (2016)「Ultra-Rapid Vision in Birds」PLOS ONE。https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0151099 (小鳥3種の点滅の見え方の測定値と、著者らの解釈)
  6. 「Critical Flicker Fusion Frequency: A Narrative Review」Medicina (2021)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8537539/ (CFFの意味と、人間の値の幅)
  7. Potier ほか (2020)「How fast can raptors see?」Journal of Experimental Biology。https://journals.biologists.com/jeb/article/223/1/jeb209031/224571/How-fast-can-raptors-see (猛禽類のCFFの種による差)
  8. Cuthill ほか「UV vision in birds」国際鳥類学会議(Durban)の発表。https://www.internationalornithology.org/PROCEEDINGS_Durban/Symposium/S45/S45.4.htm (鳥の錐体の種類と、紫外線に感度が高い4種めの錐体)
  9. Eaton (2005) PNAS「Human vision fails to distinguish widespread sexual dichromatism ...」。https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.0501891102 (人間には雌雄同色に見える鳥139種の、鳥の視覚での見え方)
  10. Lind ほか (2013)「Ultraviolet sensitivity and colour vision in raptor foraging」Journal of Experimental Biology。https://journals.biologists.com/jeb/article/216/10/1819/11547/Ultraviolet-sensitivity-and-colour-vision-in (猛禽類の紫外線感度と、チョウゲンボウとハタネズミの話への疑問)
  11. Martin (1994)「Visual fields in woodcocks」Journal of Comparative Physiology A。https://link.springer.com/article/10.1007/BF00192728 (ヤマシギの視野の広さ)

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