1. 耳と 中には、名前が ある
1. 「耳」と「中身」には名前がある
1. クラストとクラム ── 用語の整理
パンの 外がわの かわを クラスト、まん中の 白い ところを クラムと いいます[1]。耳は クラストの ことです。
クラムを よく 見ると、ちいさな あわが たくさん ならんで います[1]。この あわの おかげで、中は ふわふわします。
この メモでは、耳と 中が、やく あいだに どう ちがって いくのかを 見ます。
2. 中は、水が あって あつく なりにくい
2. 内側は、水があるので温度が上がりにくい
2. クラムの温度 ── 中心は約98℃に達するとされる
パンの 中には、水が たっぷり ふくまれて います。オーブンで あたためられると、その 水が すこしずつ 水蒸気に かわります。
水が 水蒸気に なる とき、まわりの ねつを うばいます。パンの まん中は、100どに ちかい 98どぐらいまで なると いわれます[3]。オーブンより ずっと ひくい おんどです。
たとえば、ぬれた タオルを ひなたに ほす ところを 思いうかべて ください。かわくまでは、タオルは あつく なりにくいと いわれます。パンの 中では、水が うごいたり、あわが あったり します。タオルと おなじとは かぎりません。
中の 水分は、やいている あいだも 40〜45パーセントぐらいと、Wikipediaに 書いて あります[2]。ひとつの めやすです。だから 中は、しっとり ふわふわの ままです。
水が熱を持っていく
生地の中には、たくさんの水が含まれています。オーブンで熱せられると、その水が水蒸気に変わっていきます。水が蒸発するときは周囲の熱を使うので、水が残っているうちは、温度がなかなか上がりません。
資料には、焼いている最中のクラムの中心が、水の沸点に近い約98℃に達すると書かれています[3]。オーブンの温度よりずっと低い温度です。水分の蒸発も、温度の変化に関わると考えられます。
たとえるなら、鍋に水を入れて火にかけたときと似たところがあります。ただし、パンの中で温度が決まる仕組みまで、この例で説明できるわけではありません。Wikipediaには、焼いている間のクラム内部の水分が40〜45%ほどとされる、と書かれています[2]。一つの目安です。
3. 外がわは、かわいて こげ色に なる
3. 外側は、水が抜けて高温になる
3. クラストの形成 ── 乾燥・高温・褐変反応
いっぽう、外がわは どうでしょう。オーブンの あつい くうきに いちばん ちかい ところなので、水が どんどん にげて いきます。
水が へると、ねつが うばわれなく なります。すると、外がわは 100どを こえて、オーブンの おんどに ちかづいて いきます[3]。
耳に なる ぶぶんの 水分は、20パーセント いかに なり、いちばん 外がわは 10パーセント いかに なると いわれます[2]。中の 40パーセントと くらべて、ずっと からからです。
あつく なった 外がわでは、さとうと アミノ酸の はんのうや、さとうが ねつで かわる はんのうなどで、茶色い いろと こうばしい においが できます[3]。
水が減ると、温度が跳ね上がる
外側は、オーブンの熱い空気に直接さらされています。水分が蒸発して減っていくと、水が熱を奪う働きが弱まり、温度がぐんぐん上がります。資料では、クラストは最終的にオーブンの温度に近いところまで上がるとされています[3]。
クラストになる部分の水分は20%以下、いちばん外側では10%以下になるとされます[2]。中身の40〜45%と比べると、クラストになる部分は中身の半分以下、いちばん外側は約4分の1以下です。
茶色い色と香りが生まれる
表面が高温になると、糖とアミノ酸の反応や、糖が熱で変化する反応などによって、茶色い色と香ばしい香りのもとができます[3]。これが「焼き色」です。条件にもよりますが、160℃を超えるとこの反応が速く進むとされています[2][3]。
外側では水分が蒸発によって失われ、温度が上昇する。クラストは最終的にオーブンとほぼ同じ温度まで達するとされる[3]。水分量は、クラストとなる部分で20%以下、最外層で10%以下とされ[2]、クラムの40〜45%と比べて大きく低い。20%以下は、クラムの半分以下、10%以下なら4分の1以下に相当する。
表面温度が高くなると、糖とアミノ酸のメイラード反応や、糖の熱変化(カラメル化)などで着色成分が生じる。Wikipedia は、pH 5.0〜5.5 の条件で160℃以上になるとメイラード反応が著しく進む、とする[2]。Bakeinfo も、糖とたんぱく質分解物による褐変反応が160℃を超えると非常に速く進むと述べる[3]。この160℃は条件つきの値であり、固定値として扱わない。
水分の少なさ(硬さ・歯ごたえ)と褐変(色・香り)が同時に起きることで、クラスト特有の食感と風味ができあがる。
4. やけた あとは、耳が やわらかく なる
4. 焼いたあと、耳がしっとりしていく
4. 焼成後の水分移動 ── クラストの軟化
パンを やいた ばかりの ときは、耳が しっかりして いて、中は とても やわらかいと いわれます[1]。
でも しばらく おいて おくと、中に あった 水が、すこしずつ 外がわへ うつって いきます[1]。水が そとへ にげにくい ときは、耳が しっとり する ことが あります。
むかし、食べた パンの 耳が、あさより ゆうがたの ほうが やわらかかった、という ことは ありませんか。もし そうなら、この 水の いどうの せいかも しれません。
5. ほぞんの しかたで、耳は かわる
5. 保存の仕方で、耳の変化は変わる
5. 条件による違い ── 保存と焼き型
ただし、耳が いつも やわらかく なるとは かぎりません。ふくろに いれず、空気に さらして おくと、水が にげて、かえって かたく なる ことも あるでしょう。
耳の あつさや かたさは、生地や、やく ときの かたちにも よって かわります。
柔らかくなるとは限らない
水分が内側から外側へ動く話は、あくまで、水分が外に逃げにくい条件のときのものです。耳の柔らかさの変化は、保存条件によっても変わるため、一律にはいえません。
また、耳がどのくらい硬く厚くなるかは、生地の配合や、焼き型に蓋があるかどうかなどでも変わります。
クラストの軟化は、水分が外へ逃げにくい条件での説明である。水分移動による軟化は保存条件でも変わるため、一律にはいえない。
また、クラストの厚さや硬さは、生地の配合、焼き型(蓋の有無など)によっても異なると考えられる。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
おうちに しょくパンが あれば、耳と 中を、ゆびで そっと おして みましょう。どちらが かたいか、どちらが しっとりして いるか、くらべて みて ください。
やきたての パンを かう ことが できたら、おなじ パンを、ふくろに 入れた ものと、入れない ものに わけて、あさと ゆうがたで 耳の かたさを くらべて みるのも おもしろいです。
くわしく 知りたい とき
パンを つくる 会社の ホームページには、パンの 科学を 書いた 「ミニ百科」の ような ページが あります。おうちの 人と いっしょに 見て みましょう。
今日できること
食パンの耳と中身を、それぞれ指で押したり、ちぎってみたりして比べてみましょう。色、香り、硬さの違いを言葉にしてみると、焼成中に起きたことが想像しやすくなります。
同じ食パンを、袋に入れて保存するものと、空気にさらしておくものに分け、次の日に耳の感触を比べるのもおすすめです。
さらに調べるなら
山崎製パンの「パンのミニ百科」には、パンの構造や製法に関する解説があります。パンの構造や製法の解説を読んでみましょう。
今日できること
食パンの耳と中央を、色・香り・触感の3点で比べ、その差が本メモの水分・温度の説明とどう対応するかを考えてみる。袋に入れて保存したものと空気にさらしたものを分け、翌日に同じ場所を触って比べれば、保存条件による違いが体感できるかもしれない。
資料を読むなら
山崎製パンの「パンのミニ百科」(日本語)は、パンの構造や製造の基本を扱う一次資料である。水分の数値や温度は、Wikipedia や BIRT(Bakeinfo)の解説で確認できる。水分移動のモデルの詳細に興味があれば、原論文(Ureta ら、2019 など)を探して読んでみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の水分・温度の数値のうち、クラスト部分の水分量や褐変の温度は二次資料に基づく。
- 山崎製パン「パンのミニ百科」 https://www.yamazakipan.co.jp/entertainment/pan_ency/index.html (クラスト・クラムの名前、焼成後の水分移動)
- 「クラスト (パン)」 Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88_(%E3%83%91%E3%83%B3) (焼成中の水分量、褐変、焼成後の軟化)
- Science of Bread Making, Bakeinfo (BIRT) https://www.bakeinfo.co.nz/facts/bread/science-of-bread-making/ (クラムの中心温度、クラストの温度、褐変反応。英語の資料)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。