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たんそせんいは、どうやって つくるの?

炭素繊維はどうやって作られるのか

炭素繊維はどうやって作られるのか

分野:技術

つりざおや じてんしゃの フレームには、くろくて かるい ぼうざいが つかわれて いる ことが ある。もって みると おどろく ほど かるいのに、なかなか おれない。

この ざいりょうの 名前は「たんそせんい」。じつは、この せんいが 生まれた きっかけは、電きゅうと 竹だった。

釣り竿や自転車のフレームには、黒くて軽い棒材が使われていることがある。持ってみると驚くほど軽いのに、なかなか折れない。

この材料の名前は「炭素繊維」。実は、この繊維が生まれたきっかけは、電球と竹だった。

釣り竿、自転車、ゴルフクラブ、そして旅客機の機体まで。「軽くて強い」という相反する性質を両立させる材料として、炭素繊維はさまざまな分野で使われている。

その意外なルーツをたどると、発明王エジソンの電球と、京都・八幡の竹にたどりつく。

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1. たんそせんいは、鉄より かるくて、じょうぶだ

1. 炭素繊維は、鉄より軽くて、じょうぶだ

1. 炭素繊維は、鉄より軽く、強度は10倍にもなる

たんそせんいは、その 名の とおり「たんそ」の つぶが つながった、かみの毛より ずっと 細い いとの ような ものだ。この 細い いとを、めんの ように たくさん たばねて、かためて つかう(ただし ほんとうの めんでは なく、たんその いとの たばだ)[1]

おもさは、おなじ 大きさの 鉄と くらべると、やく 4分の1しか ない。それなのに、ひっぱる 力に たえる 強さは、鉄より ずっと 大きい[1]

炭素繊維は、その名のとおり「炭素」の粒がつながった、細い糸のようなものだ。この糸を束ねて、かためて使う[1]

重さは、同じ大きさの鉄とくらべると、約4分の1しかない。それなのに、引っぱる力に耐える強さは、鉄よりずっと大きい[1]

炭素繊維は、JIS規格上「質量比で90%以上が炭素でできた繊維」と定義される素材で、PAN系の単繊維では太さが5〜7マイクロメートルほどしかない。この極細の繊維を数千本〜数万本束ね、樹脂で固めて複合材料として使うのが一般的である[1]

代表的な炭素繊維を鉄と比較すると、比重(同じ体積あたりの重さ)は約4分の1、比強度(重さあたりの強さ)は約10倍、比弾性率(重さあたりの変形しにくさ)は約7倍とされる。数値は繊維の種類や比較条件によって幅があるが、「軽いのに強い」という、金属だけでは両立しにくい性質を兼ね備えた素材である[1]

2. はじまりは、エジソンの 電きゅうと、京都の 竹だった

2. はじまりは、エジソンの電球と、京都の竹だった

2. 1880年、エジソンが電球に「炭にした竹」を使った

1880年ごろ、はつめい家の エジソンは、長い 時間 光りつづける 電きゅうを つくろうと、いろいろな ものを ためして いた。木、糸、かみの毛まで ためしたが、なかなか うまく いかなかった[2]

さいごに たどりついたのが、竹を むしやき(たんかさせる こと)に した フィラメントだった。とくに、日本の 京都・八幡やわたの 竹が いちばん 長もちした。この 竹は、やく 1,000時間も ひかりつづけたと いわれて いる[2]

1880年ごろ、発明家のエジソンは、長い時間光りつづける電球を作ろうと、いろいろなものを試していた。木、糸、髪の毛まで試したが、なかなかうまくいかなかった[2]

最後にたどりついたのが、竹を蒸し焼き(炭化させること)にしたフィラメントだった。とくに、日本の京都・八幡(やわた)の竹がいちばん長もちした。この竹は、約1,000時間も光りつづけたといわれている[2]

1878年ごろから、エジソンは長寿命の白熱電球用フィラメントの開発に取り組み、金属から木綿糸、髪の毛にいたるまで数千種の植物・素材を試したとされる。最終的にたどりついたのが、竹を炭化させたフィラメントだった[2]

1880年、来日していたエジソンの助手が京都府知事の紹介で竹の産地を訪れ、地元の資料によれば、石清水八幡宮に近い八幡(やわた)産の真竹が採用されたと伝えられている。この竹を使ったフィラメントは、約1,000時間もの点灯を記録したという。炭化させた植物繊維で発光させるという点では、この竹フィラメントは後の炭素繊維の遠い先駆けと見ることもできるが、構造や製法は現在の炭素繊維とは異なる、あくまで電球の発光体としての利用だった[2]

3. 1959年、日本人が 今の たんそせんいを 生み出した

3. 1959年、日本人が今の炭素繊維を生み出した

3. 進藤昭男が、PAN系炭素繊維の製法を発明した

今、せかいで つかわれて いる たんそせんいの もとを つくったのも、日本人だ。1959年、大阪おおさかの けんきゅうじょに いた しんどう あきおさんが、ある せんいを むしやきに すると、じょうぶな たんそせんいが できる ことを 見つけた[3]

しんどうさんは、この つくりかたを とっきょに した あと、たくさんの かいしゃに ぎじゅつを おしえた。それが、日本が いまも たんそせんいで せかいを リードして いる りゆうの 1つに なって いる[3]

今、世界で使われている炭素繊維のもとを作ったのも、日本人だ。1959年、大阪の研究所にいた進藤昭男さんが、ある繊維を蒸し焼きにすると、じょうぶな炭素繊維ができることを見つけた[3]

進藤さんは、この作りかたを特許にしたあと、たくさんの会社に技術を教えた。それが、日本が今も炭素繊維で世界をリードしている理由の1つになっている[3]

1959年、通商産業省工業技術院(現・産業技術総合研究所)の研究者だった進藤昭男は、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を蒸し焼きにすることで、強度の高い炭素繊維が得られる製法を発明した。同年9月に特許を出願し、1962年に特許公告された[3]

進藤はその後、この技術の指導者として30社近い企業に技術移転を行ったとされる。特定の企業だけが独占するのではなく、業界全体に技術を広めたこの取り組みは、後に経済産業省から「進藤モデル」と名づけられ、公的研究機関のあるべき姿の一例とされている。現在、炭素繊維の世界市場で日本企業が大きなシェアを占めている背景には、この技術移転の歴史がある[3]

4. 白い いとを、なんども やいて 黒く する

4. 白い糸を、何度も焼いて黒くする

4. 耐炎化・炭化・黒鉛化という3つの工程を経て作られる

たんそせんいは、はじめから 黒い わけでは ない。まず、白い アクリルの いとを つくる。それを、空気の 中で 200℃から 300℃くらいの 火で じっくり やく[4]

つぎに、空気の ない ところで、1,000℃を こえる もっと 強い 火で やく。すると、いとの 中の たんそ いがいの ものが ぬけて いき、たんそだけが のこった、黒い せんいに かわる[4]

炭素繊維は、はじめから黒いわけではない。まず、白いアクリルの糸を作る。それを、空気の中で200℃から300℃くらいの火でじっくり焼く[4]

次に、空気のないところで、1,000℃を超えるもっと強い火で焼く。すると、糸の中の炭素以外のものが抜けていき、炭素だけが残った、黒い繊維に変わる[4]

PAN系炭素繊維の製造は、まずアクリロニトリルを重合させたPAN繊維を作ることから始まる。このPAN繊維を空気中で200〜300℃に加熱する「耐炎化」という工程を経て、繊維を熱に強い構造に変える[4]

続いて、窒素などの酸素を含まない気体の中で1,000〜1,500℃に加熱する「炭素化」の工程で、炭素以外の成分が抜け、炭素の含有率が高い繊維になる。より高い弾性率が求められる用途では、2,000〜3,000℃というさらに高温で処理する「黒鉛化」の工程を経ることもある[4]

5. 日本の 会社が、いまも せかいで つよい

5. 日本の会社が、今も世界で強い

5. 日本企業がボーイング787の機体を支えている

日本の 大きな かいしゃが、いまでも せかいの たんそせんいの おおくを つくって いる。とくに 東レと いう かいしゃは、せかい でも トップクラスの わりあいを しめて いる[5]

アメリカの ひこうき メーカー・ボーイングしゃの ひこうき「787」には、東レの たんそせんいが つかわれて いる。きたいを かるく する ことで、りょこうきの ねんりょうも すくなくて すむ[5]

日本の大きな会社が、今でも世界の炭素繊維の多くを作っている。とくに東レという会社は、世界でもトップクラスの割合をしめている[5]

アメリカの飛行機メーカー・ボーイング社の飛行機「787」には、東レの炭素繊維が使われている。機体を軽くすることで、旅客機の燃料も少なくてすむ[5]

進藤による技術移転の歴史もあって、現在も炭素繊維の世界市場では日本企業のシェアが高い。とりわけ東レは、世界シェアで長年トップクラスの地位を占めている企業として知られる[5]

東レは航空機メーカーのボーイング社と独占供給契約を結び、「787」型機の主翼や胴体など、機体の主要な構造部材向けに炭素繊維複合材料(CFRP)を供給している。787では、機体の構造材料に占める複合材料の重量比がおよそ半分に達する。複合材料をアルミ合金より軽い材料として多用することで、機体を軽くし燃費を高めることが狙いとされる[5]

6. つりざおから ロケットまで、いろいろな ところで つかわれる

6. 釣り竿からロケットまで、いろいろなところで使われる

6. スポーツ用品から人工衛星まで、幅広い用途がある

たんそせんいは、かるくて じょうぶな とくちょうを いかして、つりざお、じてんしゃの フレーム、ゴルフの クラブなど、いろいろな どうぐに つかわれて いる。ひこうきや、うちゅうを とぶ じんこうえいせいにも つかわれて いる[6]

炭素繊維は、軽くてじょうぶな特徴を生かして、釣り竿、自転車のフレーム、ゴルフのクラブなど、いろいろな道具に使われている。飛行機や、宇宙を飛ぶ人工衛星にも使われている[6]

軽量かつ高強度・高弾性率という特徴から、炭素繊維はスポーツ・レジャー用品(釣り竿、ゴルフシャフト、テニスラケット、自転車フレーム)、自動車、航空機、人工衛星まで、幅広い分野で使われている。同じ強度を保ちながら重量を減らせるため、燃費や機動性が重要な乗り物ほど採用が進んでいる[6]

身のまわりで、くろい ぼうざいを さがして みよう

身のまわりで、黒い棒材をさがしてみよう

製品の素材表示から、炭素繊維の使われ方をたどる

家に つりざおや、じてんしゃ、テニスや バドミントンの ラケットが あったら、くろくて つやの ある ぼうざいの ぶぶんが ないか さがして みよう。もって みると、おもさに おどろくかも しれない。

家に釣り竿や、自転車、テニスやバドミントンのラケットがあったら、黒くてつやのある棒材の部分がないかさがしてみよう。持ってみると、重さに驚くかもしれない。

スポーツ用品店やカタログで、「カーボン」「CFRP」といった表示のある製品を探してみよう。同じ種目の道具でも、素材によって価格や重さがどれくらい違うかを見くらべると、炭素繊維という素材の価値が実感できるはずだ。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. フリー百科事典『ウィキペディア』「炭素繊維」、コトバンク「炭素繊維」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/炭素繊維 https://kotobank.jp/word/炭素繊維-95241 (炭素繊維がJIS規格上「質量比で90%以上が炭素でできた繊維」と定義されること、単繊維の太さがPAN系で5〜7マイクロメートルであること、鉄と比較して比重が約4分の1・比強度が約10倍・比弾性率が約7倍とされることはウィキペディアおよびコトバンクによる)
  2. 国土交通省「地域観光資源の多言語解説文データベース」石清水八幡宮エジソン記念碑、八幡市「八幡ストーリー エジソン記念碑」。 https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R2-01481.html https://www.city.yawata.kyoto.jp/yawata-story/introduction/introduction008.html (1878年ごろからエジソンが白熱電球の長寿命フィラメントの材料を数千種類試したこと、最終的に竹を炭化させたフィラメントにたどりついたこと、1880年に来日していたエジソンの助手が京都府知事の紹介で竹の産地を訪れ京都・八幡産の真竹が特に優れた性能を示したこと、この竹を使ったフィラメントが約1,000時間点灯したとされることは国土交通省の多言語解説文データベースおよび八幡市公式の解説による)
  3. フリー百科事典『ウィキペディア』「進藤昭男」、戦後日本のイノベーション100選「炭素繊維・炭素繊維複合材」、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)訃報記事。 https://ja.wikipedia.org/wiki/進藤昭男 https://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00053&test=open https://www.aist.go.jp/aist_j/news/announce/au20161101.html (1959年に通商産業省工業技術院の進藤昭男がポリアクリロニトリル繊維を蒸し焼きにする炭素繊維の製法を発明し同年9月に特許出願、1962年に特許公告されたこと、この取り組みが経済産業省により「進藤モデル」と名づけられたことはウィキペディアおよび戦後日本のイノベーション100選による。技術指導を行った企業数が「30社近く」であることはAISTの訃報記事による〈ウィキペディア等にある「28社・1965〜1982年」という具体的な社数・期間は、今回一次資料で確認できなかったため本文には採用していない〉)
  4. 炭素繊維協会「炭素繊維の製造工程」、フリー百科事典『ウィキペディア』「炭素繊維」。 https://www.carbonfiber.gr.jp/material/manufacture/ https://ja.wikipedia.org/wiki/炭素繊維 (PAN系炭素繊維がPAN繊維を空気中200〜300℃で加熱する耐炎化工程、窒素等の不活性ガス中1,000〜1,500℃で加熱する炭素化工程、高弾性率を目的にさらに2,000〜3,000℃で加熱する黒鉛化工程を経て製造されることは炭素繊維協会の製造工程解説による。同協会のPAN系開発history頁の耐炎化温度〈200〜350℃〉はピッチ系の不融化工程の温度と記載が近接しており誤読しやすいため、工程別に温度を明記した製造工程頁の数値を優先した。工程の呼称・概略はウィキペディアとも共通する内容として確認した)
  5. 東洋経済オンライン「東レ・炭素繊維50年目の飛躍」、ITmedia「ボーイングはなぜ東レと炭素繊維の独占供給契約を結んだのか」、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)関連資料。 https://toyokeizai.net/articles/-/4391?page=4 https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/0902/16/news015.html https://www.aist.go.jp/aist_j/news/announce/au20161101.html (東レが炭素繊維の世界市場で長年トップクラスのシェアを占めていること、ボーイング社と独占供給契約を結び787型機の主翼・胴体など主要構造部材向けにCFRPを供給していることは東洋経済オンラインおよびITmediaの報道による。787の機体構造重量の約50%をCFRPが占めることはAISTの資料による。機体重量の具体的な軽量化率〈約20%等〉は、比較対象や条件を明確に裏づけられる一次資料が確認できなかったため、本文には記載していない)
  6. フリー百科事典『ウィキペディア』「炭素繊維」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/炭素繊維 (炭素繊維が航空機・人工衛星・自動車・ゴルフシャフト・釣り竿・テニスラケットなどスポーツ・レジャー用途を含む幅広い分野で使われていることはウィキペディアによる)

なおした ところ

更新履歴

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