でんぱは、どうやって こえを はこぶの?

電波はどうやって声を運ぶのか ── 基地局とセルの話

電波はどうやって声を運ぶのか ── 基地局とセルの話

分野:技術

スマホで はなす こえは、目に 見えない「でんぱ」に のって、 あいての ところまで とどきます。

でも、つかえる でんぱの しゅるいには かぎりが あります。 この きじでは、かぎりの ある でんぱを、たくさんの 人が どうやって つかって いるのかを 見て いきます。

スマホで話す声は、目に見えない「電波」に乗って、相手のところまで届きます。

でも、使える電波の種類には限りがあり、大きなアンテナ1本だけでは、すぐに足りなくなってしまいます。この記事では、限りある電波を、たくさんの人がどうやって使っているのかを見ていきます。

スマートフォンで交わす会話は、目に見えない電波に姿を変えて相手まで届く。しかし、通話に使える電波の周波数には限りがあり、1本の大きなアンテナだけで街全体をまかなおうとすると、すぐに容量が足りなくなってしまう。

1947年、アメリカのベル研究所で書かれた1枚のメモから生まれた「セル」という考え方、移動しながらでも通話が切れないしくみ、そして1979年に世界に先駆けてこれを始めた日本の話まで、電波が声を運ぶしくみをたどる。

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1. でんぱに こえを のせる しくみ

1. 電波に声をのせるしくみ

1. 電波に声をのせる ── 変調というしくみ

スマホの マイクは、声を でんきの しんごうに かえます。 この しんごうを、そのままの 形では とおくまで とどけにくいので、でんぱの 形を すこしずつ かえる ことで、 声の じょうほうを のせます。この やりかたを「へんちょう」 と いいます[1]

声を、目に 見えない でんぱに のせて はこぶような かんじです。あいての スマホが、その でんぱを うけとって、また 声に もどします。

スマホのマイクは、声を電気の信号に変えます。この信号をそのままの形では遠くまで届けにくいので、電波の形を少しずつ変えることで、声の情報をのせます。このやり方を「変調」といいます[1]

声を、目に見えないトラックにのせて運ぶようなものです(ただし本当は、荷物をのせるのではなく、電波の形じたいを声に合わせて変えています)。相手のスマホが、その電波を受けとって、また声にもどします。

スマートフォンのマイクは、声(空気の振動)を電気信号に変換する。しかし、この電気信号をそのまま電波として送信しても、遠くまで正確に届けることは難しい。そこで、電波そのもの(搬送波)の振幅や周波数を、送りたい信号に合わせて変化させることで情報を伝える。この技術を「変調」という[1]

受信側では、変化した電波の波形から、元の音声信号を取り出す「復調」という逆の処理が行われ、スピーカーで再び音に変換される。

2. でんぱは、かぎりが ある

2. 電波には、限りがある

2. 電波資源の有限性という課題

でんぱには、たくさんの しゅるい(しゅうはすう)が ありますが、その かずは かぎられて います。もし、まちじゅうの 人が おなじ 1本の おおきな アンテナだけを つかって はなそうと すると、すぐに でんぱが たりなく なって しまいます。

むかしの くるまの でんわは、この もんだいの ため、 いちどに つかえる 人の かずが、とても すくなく かぎられて いました。

電波には、たくさんの種類(周波数)がありますが、その数は限られています。もし、街じゅうの人が同じ1本の大きなアンテナだけを使って話そうとすると、すぐに電波が足りなくなってしまいます。

昔の自動車電話は、この問題のため、同時に使える人の数が、とても少なく限られていました。

電波(周波数)は無限に存在するわけではなく、利用できる帯域には限りがある有限の資源だ。1つの強力な送信アンテナで広い範囲をカバーする方式では、同時に利用できる通話の数が、使える周波数の数によって厳しく制限されてしまう。

実際、1940年代から普及し始めた初期の自動車電話(モバイルテレフォン・サービス)では、1つの都市で同時に通話できる台数がごくわずかしかなく、順番待ちが発生することも珍しくなかった。

3. 1947年、1まいの メモから うまれた かんがえ

3. 1947年、1枚のメモから生まれた考え

3. 1947年 ── ベル研究所の1枚のメモと「セル」の誕生

1947年12月、アメリカの けんきゅうじょで はたらいて いた ダグラス・リングと いう 人が、なかまの アイデアを 1まいの メモに まとめました。まちを おおきな 六かくけいの 「セル(へや)」に くぎり、それぞれに ちいさな アンテナ (きちきょく)を おく、と いう かんがえかたです [2]

おふろの タイルのように、六かくけいを すきまなく ならべる イメージです(ただし 本当は、でんぱは 目に 見えないので、 じっさいに タイルが しかれて いるわけでは ありません)。 となりあわない セルどうしなら、おなじ しゅうはすうを もういちど つかっても、でんぱが まざりにくい ことが わかりました[3]

1947年12月、アメリカの研究所で働いていたダグラス・リングという人が、なかまのレイ・ヤングのアイデアを1枚のメモにまとめました。街を大きな六角形の「セル」に区切り、それぞれに小さなアンテナ(基地局)を置く、という考え方です[2]

お風呂のタイルのように、六角形をすきまなく並べるイメージです(ただし本当は、電波は目に見えないので、実際にタイルが敷かれているわけではありません)。となり合わないセルどうしなら、同じ周波数をもう一度使っても、電波が混ざりにくいことが分かりました[3]

こうして、限られた種類の電波を、街のあちこちで「使い回す」ことができるようになり、同時に通話できる人の数を大きく増やせるようになりました。

1947年12月11日、ベル研究所のダグラス・H・リングは、同僚W・レイ・ヤングのアイデアを社内メモにまとめた。都市を多数の六角形の区画(セル)に分割し、それぞれに送信出力の小さな基地局を配置するという構想だった[2]

隣接する基地局を等距離に配置でき、すきまなく区画を敷き詰められる六角形のセル配置というアイデアが示された[3]。地図上に描かれたこの六角形の並びが、ハチの巣(ハニカム)に似ていたことから、「セル方式」という呼び名がついたとされる。

離れたセルどうしであれば、同じ周波数を繰り返し使っても電波が混信しない。この「周波数の再利用」という発想により、限られた周波数資源で、同時に通話できる人数を飛躍的に増やせる見通しが立った。

4. うごきながらでも、でんわが きれない わけ

4. 動きながらでも、電話が切れないわけ

4. ハンドオーバー ── 移動しながらでも通話が切れない理由

まちを セルに くぎると、あたらしい もんだいが 出て きます。くるまで うごきながら はなして いる 人が、 となりの セルに うつった ときです。

この とき、でんわを きらずに、うけもつ きちきょくを じどうで きりかえる しくみが つくられました。この しくみのおかげで、うごきながら はなして いても、 でんわは きれません[4]

街をセルに区切ると、新しい問題が出てきます。車で動きながら話している人が、となりのセルに移ったときです。

このとき、電話を切らずに、受けもつ基地局を自動で切りかえるしくみ(ハンドオーバー)が作られました。このしくみのおかげで、動きながら話していても、電話は切れません[4]

街をセルに分割すると、新たな課題が生じる。移動中の利用者が、通話しながらあるセルから別のセルへと移動した場合、そのままでは接続がとぎれてしまう。

この課題を解決するために考案されたのが「ハンドオーバー(ハンドオフ)」というしくみだ。利用者が移動して電波が弱くなってきたことを検知すると、通話を切ることなく、自動的に別の基地局・別の周波数チャンネルへと接続を切りかえる[4]

5. 1979年、日本が せかいで さいしょに つくった

5. 1979年、日本が世界で最初に始めた

5. 1979年 ── 世界初の商用セルラー網、日本で誕生

1979年12月、日本の でんでんこうしゃ(いまの NTT)が、 とうきょうで「じどうしゃでんわ」の サービスを はじめました。これが、せかいで はじめての、ほんかくてきな セルほうしきの けいたい電話サービスでした [4]

とうきょうの まちに いくつも の きちきょくを おき、 うごきながらでも でんわが きれない しくみを つかった、 せかいで さいしょの サービスでした [4]

1979年12月、日本の電電公社(いまのNTT)が、東京で「自動車電話」のサービスを始めました。これが、世界で初めての、本格的なセル方式の携帯電話サービスでした[4]

東京の街にいくつもの基地局を置き、動きながらでも電話が切れないしくみ(ハンドオーバー)を使った、世界で最初のサービスでした[4]

1979年12月3日、日本電信電話公社(電電公社、現NTT)は、東京23区内で「自動車電話」サービスを開始した。800MHz帯の電波を使い、各基地局が半径数kmほどの範囲を受けもつ「小ゾーン方式」を採用した、世界初の本格的な民間向けセルラー電話サービスだった[4]

このサービスはハンドオーバーに対応しており、移動しながらでも通話が途切れない、実用的なセルラーシステムとして運用された[4]。サービスエリアは、翌1980年には大阪、1982年には名古屋へと広がり、その後全国へ展開していった。

6. いまの きちきょく

6. いまの基地局

6. 現在の基地局事情 ── 増え続ける小さなセル

いまの スマホの つうしんは、より はやい 電波を つかう ように なって います。でも、はやい 電波は とおくまで とどきにくいと いう せいしつが あります。

そのため、いまの 電話会社は、むかしより たくさんの きちきょくを、まちの あちこちに ちいさく おく ように なって います。

いまのスマホの通信は、より速い電波(5G)を使うようになっています。でも、速い電波は遠くまで届きにくいという性質があります。

そのため、いまの電話会社は、昔よりたくさんの基地局を、街のあちこちに小さく置くようになっています。2025年3月時点で、KDDIは約11万か所、ソフトバンクは約10万か所の5G基地局を持っています[5]

現在の移動通信(5Gなど)は、より広い帯域を確保できる高い周波数帯の電波を使うようになっている。しかし、周波数が高い電波ほど、障害物を回りこみにくく、遠くまで届きにくいという物理的な性質がある。

そのため通信各社は、以前よりもセルを小さくし、基地局を密に配置する「スモールセル」化を進めている。2025年3月時点で、KDDIは11万37局、ソフトバンクは10万4441局の5G基地局を持ち、NTTドコモは約5万2532局と、各社で基地局数に差が生じている[5]

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

まちを あるく ときに、きちきょくの アンテナを さがして みましょう。

あんぜんな ばしょで できる こと

  • まちの中で、アンテナや きちきょくを さがして みる。 ビルの上や でんちゅうに ついて いる ことが あります。
  • スマホの でんぱの つよさ(アンテナの マーク)を 見て みる。 ばしょに よって、つよさが かわるか かんさつして みましょう。
メモの すすめ

きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「セルって なに?」だけで じゅうぶんです。

街を歩くときに、基地局のアンテナをさがしてみましょう。

今日できること

  • 街の中で、アンテナや基地局をさがしてみる。ビルの上や電柱についていることがあります。
  • スマホの電波の強さ(アンテナのマーク)を見てみる。場所によって、強さが変わるか観察してみましょう。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「ハンドオーバーって、切りかえに何秒かかるの?」だけでも十分です。

スマホの電波状況の表示(アンテナ本数)を見ながら移動し、場所によって電波の強さがどう変わるか確認すると、この記事で扱ったしくみが身近に感じられます。

手を動かして確かめる

  • 電車や車で移動しながら、電波の強さの変化を記録する。基地局に近づいたり離れたりする様子が分かることがあります。
  • 総務省の電波利用ホームページで、身近な周波数の割り当てを調べてみる。どの周波数帯が何に使われているか公開されています。

一次情報にあたる

総務省や通信各社の公式サイトには、基地局の数や電波の利用状況についての統計が公開されています。

メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「日本で最初の自動車電話は1979年12月3日」という一文でもかまいません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

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出典について:企業・報道機関の公開情報と、基礎的な経緯の解説にWikipediaを使っています。

  1. 日本電業工作株式会社「無線方式博士の電波講座 第3回 無線通信に必要な変調技術」。 https://www.den-gyo.com/innovation/kouza/radio/detail03.php (電波に音声やデータをのせる「変調」というしくみについての解説)
  2. Douglas H. Ring - Wikipedia(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Douglas_H._Ring (1947年12月11日のベル研究所内メモと、セル方式提案についての解説)
  3. W. Rae Young - Wikipedia(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/W._Rae_Young (六角形のセル配置のアイデアと、周波数の再利用についての解説)
  4. 自動車電話 - Wikipedia(日本語版)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/自動車電話 (1979年12月3日の自動車電話サービス開始、800MHz帯、小ゾーン方式、ハンドオーバーについての解説)
  5. ケータイWatch「25年3月の5G基地局の数、ドコモはau・ソフトバンクの半分――総務省調査」。 https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/2077686.html (2025年3月時点の通信各社の5G基地局数についての報道)

なおした ところ

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