1. おさらは どうして われるの?
1. 強いのに、ぐにゃりと曲がれない
1. 脆性の由来 ── 原子が位置ずれできない
おさらの 中では、とても ちいさな つぶが、ぎゅっと つよく つながって います。だから おさらは かたくて、ゆびで おしても へこみません。
でも、つよく つながって いる ぶん、つぶは となりへ ずれることが できません。ずれられない ものに、大きな 力が かかると、しなる ところまでは しなって、そのあと ぽきっと われます。
てつのような きんぞくは、つぶが すこしずつ ずれるので、ぐにゃりと まがれます。おさらは まがれない ぶん、われて しまうのです。
陶磁器のようなセラミックスは、原子どうしが強い結合で結びついています。これが、硬くて熱にも強い性質のもとになっています[1]。
ところが、強く結びついているために、大きな力を受けても原子が隣の位置へずれることができません。しなるところまではしなりますが、それ以上は変形できず、割れてしまいます。金属は原子がずれて曲がるので、ここが大きなちがいです[1]。
もうひとつ、割れ方には小さな傷が関わります。表面や内部にある微小な傷が割れ目のはじまりになり、そこから割れが進みます。傷は不良品という意味ではなく、どんな製品にもある小さなものを指します。傷のある一番弱い場所で強さが決まるので、同じ形のお皿でも、割れる強さにはばらつきが出ます[2]。
セラミックスは脆性材料である。イオン結合や共有結合による強い結びつきのため、大きな力がかかっても原子が隣の位置へずれられず、弾性的にしなった後は塑性変形せずに破壊に至る。金属は原子がずれて変形できる点で対照的である[1]。
破壊の起点になるのは、表面や内部にある微小な欠陥(不良という意味ではなく、微小な傷)で、そこからき裂が進む。塑性変形がないため、強度は最も弱い部分に支配され、ばらつきが大きい[2]。
一般向けの資料には、理論上の強度は結合の様式から見て金属より優れるが、実際には衝撃や応力集中に敏感で、欠陥を減らして強度を上げても、脆さの原因である破壊靱性の低さは改善されない、という整理もある。
2. あつい スープは、どうして へいきなの?
2. 熱いスープくらいでは、びくともしない
2. 焼成温度と融点 ── 料理の熱さは限界に遠い
おさらは、たいへん 高い 火で やいて できて います。やく 火は 1200度ほどと いわれます。スープの あつさは、その 火に くらべると ずっと ひくいのです。
たとえば アルミニウムは、660度ほどで とけて しまいます。ところが、アルミナという とくべつな セラミックスは、2000度より 上に ならないと とけません。
ただし アルミナは、おさらとは べつの、ざいりょうの はなしです。ふつうの おさらが 2000度に たえるわけでは ありません。
陶磁器は約1200度の高温で焼いて作られます[3]。ただし、使える温度や調理法は製品ごとに異なります。料理の熱さそのものは、焼いたときの温度から見ればずっと低く、お皿にとって大きな負担ではありません。
原子の結びつきが強いセラミックスは、溶ける温度(融点)も高い傾向があります。たとえば、アルミニウムは約660℃で溶けますが、ファインセラミックスの一種であるアルミナは、2000℃以上にならないと溶けたり分解したりしないと説明されています[4]。
これはファインセラミックスの数値で、ふつうの陶器のお皿の耐熱温度ではありません。お皿が耐えられる温度は、次の章で見るように「どのくらい高いか」だけでは決まらないのです。
3. ほんとうに こわいのは、きゅうな 温度の ちがい
3. 危ないのは高さより、急な変化
3. 熱衝撃 ── 熱膨張係数と温度差
おさらが われやすいのは、あつい ときよりも、きゅうに あつく なったり、きゅうに ひえたり した ときです。
あついところは のびようと して、つめたい ところは のびません。おさらの 中で、のびる ところと のびない ところが、ひっぱりあって しまいます。
ふたりで 手を つないで いる ときに、ひとりが きゅうに 走りだすと、もうひとりは ぐいっと ひっぱられます。それに にて います。ただし 本当の おさらでは、走る 人では なく、たくさんの つぶが ひっぱりあって います。
ガラスの コップに あつい おゆを そそぐと われる ことが あるのも、おなじ わけです。
急に温度が変わると、熱くなった側は熱で膨らんで伸び、まだ温度の低い側は強く引っ張られて壊れてしまいます。引っ張る力は、熱膨張係数(温度が1度上がったときの伸びやすさ)と温度差に比例します。そのため、熱膨張係数が小さいと、温度差による引っ張る力を小さくできます。実際の耐熱衝撃性には、材料の強度なども関わります[5]。
NGKの解説には、熱膨張係数が鉄12、銅17、アルミニウム23(100万分の1/℃)、コージェライトというセラミックスは約1と紹介されています。コージェライトは温度が変わってもほとんど長さが変わらず、伸び縮みの差から生まれる力が小さくてすみます。逆に膨張率の高いガラスのコップに熱湯を注ぐと、割れることがあります[5]。
陶磁器のお皿が割れる主な原因も、温度の高さより温度差です。低温から急に高温になったり、一部だけが熱くなったりすると割れやすくなります。すべての陶磁器が直火に使えるわけでもありません[3]。
急冷や急熱では、加熱された側が熱膨張で伸び、温度の低い側に強い引張応力が生じて破損する。応力は熱膨張係数と温度差に比例するため、熱膨張係数が小さいほど熱衝撃に強い[5]。
NGKは熱膨張係数を、鉄12、銅17、アルミ23(ppm/℃、ppmは100万分の1)、コージェライト約1と示している。ガラスのコップに熱湯で割れる例も同じ資料にある[5]。ただし、セラミックス全般が低膨張なのではなく、この例はコージェライトの特性である。
ファインセラミックスの耐熱衝撃性は、急冷で破壊したときの加熱材と冷却媒体の温度差で表す。内部と表面の温度差で生じる内部応力が強度を超えると破壊する。窒化ケイ素は水冷で550℃の温度差に耐える例が挙がっている[7]。陶器のお皿は、オーブンや直火で低温から急に高温になる、あるいは部分的に高温になると割れる[3]。
4. どなべは どうして 火に かけられるの?
4. 土鍋の秘密は、伸びにくい鉱物
4. ペタライト質耐熱陶器 ── 素地の熱膨張を抑える
どなべは、火に かけても われにくい つくりに なって います。ひみつは、つちに まぜる、ペタライトという いしです。
この いしを まぜると、あつくなっても あまり のびない つちに なると いわれます。のびが すくないので、ひっぱりあう 力も ちいさく なります。
この ような どなべは、いまから 60ねん いじょう 前の 昭和34ねんごろに、つくれる ように なったと つたえられて います。
直火にかけられる土鍋のような耐熱陶器には、ペタライトという鉱物が使われることがあります。ペタライトは熱膨張の小さい結晶をつくり、土の熱膨張を抑えるために混ぜます[6]。
ペタライト質の耐熱陶器は、昭和34年ごろに開発と量産に成功したとされます。その後、土の改良や、割れにくい釉薬の開発が進みました[6]。
三重県の研究所の報告には、600℃で測った熱膨張係数が、半磁器の土で7.93、タイル用の土で8.92、市販の土鍋の土で2.58と2.16、低膨張をねらった試作の土で0.87と載っています(いずれも100万分の1/℃)。土鍋の土は半磁器の土の3分の1以下の値です[6]。
耐熱陶器は、昭和34年ごろにペタライト質耐熱陶器の開発・量産化に成功し、その後に素地の改良や釉薬の開発が進んだと、三重県工業研究所の報告(2013)は整理する[6]。ペタライトはリチウムを含む鉱物で、熱膨張の小さい結晶を素地につくる目的で使う。土に約50%配合するという説明もあるが、出典は中川政七商店の記事のみで、一次資料では確認していない[3]。
同報告では、600℃での熱膨張係数(×10⁻⁶/℃)は、半磁器素地7.93、タイル用素地8.92、市販土鍋素地A 2.58・B 2.16、低膨張の試作素地0.87。ペタライトを含む素地は小さい。ただし値は600℃時点の測定で、室温の値ではない[6]。
熱衝撃試験では、ペタライトを含む土鍋素地は温度差600℃以内で曲げ強度が低下せず、600℃差を5回繰り返しても変化がなかった。試験した通常の陶器素地(半磁器・タイル)は、温度差の増加に伴い強度が低下した。ただし棒状の試験体での結果で、実際の土鍋で600℃差が安全という意味ではない[6]。
5. 「たいねつ」って、どんな いみ?
5. 「耐熱」の言葉に注意
5. 耐熱の定義と試験方法
おさらの うらや はこに、「でんしレンジ」や 「じかび」の ひょうじが ある ことが あります。ある おさらは でんしレンジに つかえて、べつの おさらは つかえません。
「つよい」と いっても、おとして われにくい つよさと、あつさに たえる つよさは、べつの ものだったのです。おさらの ひょうじを 見て、その おさらが どちらに つよいのか、たしかめて みると いいですね。
「耐熱」と書かれた食器でも、何にでも使えるという意味ではありません。使える範囲は製品ごとに決まっていて、直火、オーブン、電子レンジなどの表示が食器や箱に書かれています。
耐熱食器の試験では、決めた温度差まで急に冷やしたあとで、釉薬のひびや剥がれ、土のひび・割れがないか、目で確かめる方法があります[6]。
耐熱陶器の試験(JIS S 2400)では、耐熱食器を所定の温度差から急冷し、釉層の貫入や剥離、素地の割れ・切れ・ひび・欠けが生じないかを目視で確かめる[6]。陶器の表面の細かいひび(貫入)は、素地と釉薬の膨張率の差などで生じるとされる。
結局、割れにくさ(衝撃への強さ)と熱に強いこと(温度への強さ)は、別々の性質であり、耐熱食器はそのうち熱衝撃への強さを高めたものだと整理できる。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
おうちの おさらを 1まい ひっくりかえして、うらを 見て みましょう。はこが あれば、はこも 見ます。「でんしレンジ」「オーブン」「じかび」の マークや もじが あるでしょうか。
ない おさらも あります。ある ものと ない ものを くらべて、どんな ちがいが あるか かんがえて みましょう。わざと おとしたり、あついものを かけたり しては いけません。
今日できること:家の食器を何枚か選び、裏や箱にある「電子レンジ」「オーブン」「直火」などの表示を探します。表示のある食器とない食器で、材質や厚さにちがいがあるか、見比べてみましょう。試しに割ったり、急に熱くしたりはしません。
公式情報:NGKセラミックアカデミーや京セラのファインセラミックスの解説は日本語で読めます。食器の扱いは、必ず購入した製品の表示や説明書に従ってください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。ここに書いたのは、本文の主張の根拠として実際に確かめたものだけです。
- NGKセラミックアカデミー「なぜセラミックスってかたいの?」 https://www.ngk.co.jp/academy/course01/01.html (原子結合と脆さ)
- 志波・岸「セラミックスの破壊靱性」まてりあ27巻8号(J-STAGE) https://www.jstage.jst.go.jp/article/materia1962/27/8/27_8_644/_pdf (微小な欠陥が破壊の起点になること)
- 中川政七商店の読みもの「陶磁器の耐熱温度はなぜ高い?」 https://story.nakagawa-masashichi.jp/74846 (焼成温度、急な温度変化での割れ、ペタライト配合の説明)
- NGKセラミックアカデミー「セラミックスは熱に強い?」 https://www.ngk.co.jp/academy/course01/02.html (融点、アルミとアルミナの比較)
- NGKセラミックアカデミー「セラミックスは急な温度変化に強い?」 https://www.ngk.co.jp/academy/course01/03.html (熱衝撃の仕組み、熱膨張係数の比較)
- 三重県工業研究所 研究報告No.37(2013)西川ほか https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000172121.pdf (ペタライト質耐熱陶器、熱膨張係数、熱衝撃試験、JIS試験)
- 京セラ ファインセラミックスワールド「耐熱性」 https://www.kyocera.co.jp/fcworld/charact/heat/heatresist.html (アルミナの耐熱、耐熱衝撃性の定義)
なおした ところ
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