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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

カメレオンの 色は、どうして かわるの?

カメレオンの色が変わる仕組み ── 塗りかえではなく、結晶の間隔が変わる

カメレオンの色変化 ── 虹色素胞のグアニンのナノ結晶と構造色(2015)、合図・体温調節・背景合わせ

分野:生きもの

カメレオンは、まわりの 色に あわせて 体の 色を かえる、と よく いわれます。でも、けんかを する ときは、めだたない みどり色から、あかるい 黄色や だいだい色に かわる ことが あります。

だれに 見せる ための 色なのか。どうやって 色を かえるのか。しらべた 人たちの 話を たどります。

カメレオンは、まわりの色に溶け込むために体の色を変える。そう思われがちですが、縄張り争いのときには、ふだん目立たない緑のオスが、あえて明るい黄色やだいだい色に変わる例が報告されています。

色はどうやって変えているのか、何のために変えているのか。2015年の仕組みの研究と、それ以前・以後の研究をつき合わせて見ていきます。

カメレオンの体色変化は、周囲への擬態(保護色)のためと説明されることが多い。しかし、2015年の研究は、体色が皮膚の虹色素胞にあるグアニンのナノ結晶の格子間隔の変化で変わると報告し[1]、2008年の研究は、色変化の進化に社会的な合図が関わると結論した[4]。

このメモでは、仕組み・目的・2025年の背景合わせの実験を、論文と解説を突き合わせて整理する。ただし研究対象の種は限られており、全種に一般化はしない。

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1. けんかの ときに、めだつ 色に?

1. 目立たない緑が、争いの場で黄色になる

1. パンサーカメレオンの縄張り争い ── 目立つ色への変化

パンサーカメレオンの オスは、ふだんは みどり色で、あまり めだちません。ところが、なわばりを あらそう ときには、黄色や だいだい色に かわります。あかい ところは あかるく、青い ところは 白っぽく なります[3]。

この かわり かたは、数分の うちに おきて、また もとに もどります[3]。

かくれる ための 色なら、めだつ 色には ならないはずです。では、なんの ための 色なのでしょう。

ふだんは緑、争いでは黄色

パンサーカメレオンのオスは、ふだんは緑色で目立ちません。ところが、縄張りをめぐって争うときには、黄色やだいだい色に変わります。体の赤い部分は明るくなり、青い部分は白っぽくなると説明されています[3]。

この変化は数分以内に起こり、もとに戻ります[3]。隠れるための色変化なら、わざわざ目立つ色になるのは不思議です。この疑問が、この記事の出発点です。

パンサーカメレオン(Furcifer pardalis)のオスは、通常は緑色で目立たないが、縄張り争いの場面では黄色や橙色に変わる。赤い斑は明るくなり、青は白っぽい色調に退色すると解説されている[3]。変化は数分以内に起こり、可逆的である。

隠蔽が目的なら、目立つ方向への変化は説明しにくい。以下では、色変化の仕組みと目的を分けて見る。

2. ぬりかえて いる わけでは ない?

2. 「色素が広がったり縮んだり」説の限界

2. 従来の色素説と、それでは説明しにくい点

色を かえる と 聞くと、えのぐを ぬりかえる ところを 思いうかべませんか。むかしは、はだの 中の 色の つぶが 広がったり ちぢんだり して かわる、と 考えられて いました[2]。

ところが 2015年の ろんぶんは、それだけでは せつめいしにくい、と のべました[1]。ただし、色の つぶが まったく かんけい ない、という 意味では ありません。

色素が動くという考え方

従来は、黒色素胞という細胞の中で、メラニンなどの色素が広がったり集まったりして色が変わると考えられていました[2]。絵の具の濃さを変えるようなイメージです。

それだけでは足りない

2015年の論文は、色素が細胞の中で広がったり縮んだりするだけでは、観察された色の変化を説明しにくいと述べ、別の仕組みが関わると論じました[1]。色素がまったく関わらないと言っているわけではありません。

従来は、色素胞の一種である黒色素胞の中でメラニンが分散・凝集することで体色が変わると考えられてきた[2]。

2015年のTeyssierらの論文は、色素の分散・凝集だけでは観察された色変化を説明しにくいとし、構造色の調整が関わると論じた[1]。ただし、これは色素の関与を否定するものではなく、暗色の色素細胞も存在する点には注意が要る。

3. 小さな けっしょうの、すきまが かわる

3. 皮膚の中の結晶の間隔が変わる

3. グアニンのナノ結晶の格子間隔と反射光(2015)

2015年、スイスの ジュネーブ大学の 研究チームが、パンサーカメレオンの 色の かわり かたを 発表しました[1]。はだの おもての ちかくに、とても 小さな けっしょうが ならんで いる 細ぼうが あります。

この けっしょうの あいだの きょりが かわると、はね返る 光の 色が かわる、と いう 話です。シャボン玉や CDが にじ色に 見えるのと、にた しくみです。ただし、しくみは 同じでは ありません。

休んで いる ときの けっしょうの あいだは、こうふん した ときより、へいきんで 三わりほど せまく なって います[1]。

もとに もどるのも 数分ほどで、色は かんぜんに もとへ もどります[1]。

虹色素胞の中の結晶

皮膚の表面近くには、虹色素胞という細胞があり、その中にはグアニンという物質のナノ結晶が規則正しく並んでいます。ナノは10億分の1のことで、ナノ結晶は目に見えないほど小さな結晶です。2015年、ジュネーブ大学の研究チームは、パンサーカメレオンの色の変化は、この結晶の並びの間隔を変えることで起こる、と報告しました[1]。

間隔が広がると長い波長へ

光は波の性質をもち、色によって波の長さが違います。結晶の間隔が変わると、強く反射される光の波長がずれます。間隔が広がると、黄色から赤のほうの長い波長がよく反射されます。休んでいるときの皮膚では、興奮したときの皮膚より、結晶どうしの距離が平均で約30%短いと報告されています[1]。

結晶の間隔の広がり方と縮み方だけで、生きているカメレオンで見られる色の行き来は説明できる、と論文は結論しています。変化は数分ほどで、完全に元に戻ります[1]。シャボン玉やCDの虹色と同じ「構造色」の仲間ですが、しくみの細部は同じではありません。

Teyssierらは2015年、パンサーカメレオンの体色変化が、皮膚表層の厚い層にある虹色素胞(iridophore)内の、グアニンのナノ結晶が作る格子の間隔を能動的に調整することで起こると報告した[1]。

休息状態(緑・青系)の皮膚では、結晶間の距離が、興奮状態(黄・橙・白っぽい色)の皮膚に比べ平均で約30%小さい[1]。格子間隔が広がると、反射光は長波長側(黄〜赤)へずれる。論文は、この格子の拡大・縮小だけで、生体で観察される可逆的な色の変化を説明できると結論した[1]。色変化は数分ほどで、完全に元に戻る。

これは色素の移動だけではなく、微細構造による光の反射も関わる構造色である。ただし、間隔をどう変えるかの機構は本稿では扱わず、また、この結果はパンサーカメレオンでの研究であり、全種に同じ仕組みが当てはまるかは未確認である。

4. あつさに よわい からだを まもる?

4. 色を変える層と、熱をためにくい層

4. 表層と深層の虹色素胞 ── 熱との関わり

けっしょうが ならぶ ところは、一つでは ありません。おもての 近くで 色を かえる ところの 下に、もう 一つ、ふかい ところが あると 考えられて います[3]。

この ふかい ところの けっしょうは、もっと 大きくて、目には 見えない 光の 一つを はね返します。あつく なりにくく する はたらきが ある、と 考えられて います[3]。

2008年の 研究では、ドワーフカメレオンは、体温を ととのえる ときなどに、明るさを 大きく かえられる、と いわれます[4]。

二階建ての結晶

色を変えるのは、皮膚の表面近くの虹色素胞です。その下の深い層にある虹色素胞は、より大きな結晶をもち、近赤外線を多く反射して、熱をためにくくする働きがあると考えられています[3]。光の色を変える層と、熱を防ぐ層が、別々に働いているというわけです。

明るさも変える

2008年の研究は、ドワーフカメレオンが、体温調節などのさまざまな場面で、体の明るさを大きく変える能力をもつと述べています[4]。色の変化の目的は、合図だけではありません。

表層の虹色素胞が色を変える一方、その下の深層の虹色素胞(D-iridophore)は、より大きな結晶をもち、近赤外域の光を広く反射して、熱をためにくくする働きがあると考えられている[3]。

Stuart-FoxとMoussalliは、ドワーフカメレオンが、体温調節を含むさまざまな文脈で、明るさを大きく変える能力をもつと述べた[4]。体色変化の目的は複数あり、種・場面で異なる。

5. だれかに、つたえる ための 色

5. 2008年の研究 ── 「合図」のために進化した?

5. ドワーフカメレオン21系統の比較と合図仮説(2008)

2008年、南アフリカに すむ ドワーフカメレオン 21の なかまを しらべた 研究が ありました[4]。すると、まわりの 色が ちがう ほど 色を かえる、と いう わけでは ありませんでした[5]。

むしろ、おどす、けっこん あいてに さそいの 合図を する、といった 目立つ 合図を する なかまほど、色を かえる ちからが 大きかった、と 研究者たちは 考えました[4]。

これは ドワーフカメレオンの 話です。ほかの カメレオンにも すべて あてはまる とは、いえません。

21の系統を比べる

2008年、Stuart-FoxとMoussalliは、南アフリカのドワーフカメレオン21系統を比べました。色の変化の大きさは、生息地の色の多様さからは予測できず[5]、威嚇や求愛のような目立つ社会的合図がある系統ほど、色変化の能力が高いという関係が見られました[4]。

結論と、その範囲

研究チームは、この色変化は捕食者から隠れるためというより、主に仲間への合図のために進化したと結論しました[4][5]。ただし調べたのはドワーフカメレオンです。ほかの種にそのまま当てはめることはできません。

Stuart-FoxとMoussalli(2008)は、南アフリカのドワーフカメレオン(Bradypodion属)21系統を比較し、色変化の能力が背景色の多様性とは関係せず、威嚇・求愛など目立つ社会的合図の有無と結びつくことを示した。隠蔽仮説を支持する証拠は得られず、目立つ社会的合図への選択が色変化の進化を促したと結論している[4]。

変化の大きさは生息地の色のばらつきでは予測できなかったと、解説記事も伝えている[5]。ただし、対象はドワーフカメレオンに限られる。

6. まわりに あわせる 色も、あった

6. 2025年 ── 背景に合わせる力も確かめられた

6. 2025年のフラップネックカメレオン実験 ── 背景合わせの部分的な確認

では、まわりに あわせる 力は、ぜんぜん ないのでしょうか。2025年の 研究は、フラップネックカメレオンを、色や もようの ちがう はいけい(うしろの けしき)に おいて しらべました[6]。

くろい はいけいでは 明るさを 合わせ、黄色など 一部の 色にも 合わせる ことが できました。でも、はいけいの もようまでは まねしませんでした[6]。

色を かえる はたらきは、合図、体温、まわりに 合わせる、と いくつも あるようです。どれが おもなのかは、しゅるいや ばめんで ちがう、と 考えられて います。

条件をそろえた実験

2025年、Biology Lettersに報告された研究は、フラップネックカメレオンを、色や模様の違う背景に置いて調べました。カメレオンは背景に合わせて色を変えるという印象は広く知られていますが、実は、条件を整えた実験で確かめた例はまだ少なかった、と論文は書いています[6]。

合わせるものと、合わせないもの

黒い背景では明るさを調整し、黄色などの一部の色にも合わせられました。ただし、背景の模様は再現しませんでした[6]。この研究では、背景に合わせる能力も、社会的合図や体温の調節と並ぶ働きの一つとして位置づけられています。

「隠れるための色ではない」と言い切ることはできません。種によって差があると考えられています。

2025年のBiology Lettersの研究は、フラップネックカメレオンを、色や模様の異なる背景に置く制御実験にかけた。カメレオンが背景に合わせて体色を変えるという通念は広いが、統制条件下で実証された例は少なかったという問題意識である[6]。

結果として、黒背景では明度を調整し、黄色など一部の色相に一致させたが、背景の模様は再現しなかった[6]。背景合わせは、社会的合図・体温調節と並ぶ機能の一つとして位置づけられた。

2008年のドワーフカメレオンでは合図の面が強く、2025年の別種では背景合わせも確認された。主目的は種と場面で異なると見るのが、現時点で無理の少ない読みである。

7. じぶんでも しらべて みよう

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

きょう できる こと

CDを、まどの 近くで かたむけて、見る 角度で 色が かわるのを 見て みましょう。にじ色の もようが うごくのを 見る だけで だいじょうぶです。CDが なければ、ここは とばして かまいません。

家に 図かんが あれば、カメレオンの ページを ひらき、色が かわる 場面の 写真が あれば、なにを して いるところか、まわりの ようすも 見て みましょう。

今日できること

CDの表面を、窓の近くで傾けながら、見る角度によって色が変わるようすを観察してみましょう。結晶の間隔で色が変わるカメレオンとは仕組みが同じではありませんが、光の反射で色が見えることの入口になります。

日本語の図鑑や、手元にある映像資料で、カメレオンが色を変える場面を探し、その直前に何があったか(相手が近づいた、日が当たったなど)を見てみるのも面白い調べ方です。

もっと知りたいとき

図書室や家にある日本語の図鑑で、カメレオンの色の説明を読み比べると、どこまで分かっているかが見えてきます。

今日できること

カメレオンの体色変化の映像や図鑑の写真から、変化の直前に何が起きていたか(他個体の接近、日射など)を観察し、合図・体温・背景合わせのどれに近いか、自分で仮説を立てる。

資料を読むなら

Teyssierらの論文(Nature Communications, 2015)は本文が公開されている。結晶の間隔の測定方法と、結論の範囲を確認できる。Stuart-FoxとMoussalliの論文(PLOS Biology, 2008)と、2025年のBiology Lettersの研究は、結論の違いを見比べるとよい。いずれも英語の資料である。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

論文は要旨や解説をもとに内容を確認した。数値は論文の記述にそろえている。

  1. Teyssier et al. 2015, Nature Communications (パンサーカメレオンの構造色の調整) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4366488/ (結晶格子の間隔と色変化)
  2. AFPBB News(2015年3月)「カメレオンの体色変化の仕組み」 https://www.afpbb.com/articles/-/3042151 (従来の色素説の説明)
  3. The Scientist (2015) How Chameleons Change Colors https://www.the-scientist.com/how-chameleons-change-colors-35803 (縄張り争いの色変化と深い層)
  4. Stuart-Fox & Moussalli 2008, PLOS Biology https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371%2Fjournal.pbio.0060025 (ドワーフカメレオン21系統と社会的合図)
  5. ScienceDaily (2008年1月) https://www.sciencedaily.com/releases/2008/01/080129125524.htm (2008年研究の解説)
  6. Flap-necked chameleons change colour to match their background, Biology Letters 2025 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40765271/ (背景合わせの実験)

なおした ところ

更新履歴

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