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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ヒナは 手も ないのに、どうやって たまごの からを わるの?

ヒナは殻をどう割って出てくるのか ── くちばしの先の「歯」と首の筋肉

ニワトリの孵化と殻破り ── 卵歯・孵化筋・内側のピッピングから回転破殻まで

分野:生きもの

ヒナは、たまごの 中で 大きく なると、じぶんで からを わって 出て きます。手も ありませんし、ハンマーも もっていません。

いったい なにを つかって、どこから わるのでしょうか。ヒナが まず やる ことは、からを たたく ことでは ありません。じゅんばんに 見て いきましょう。

卵の殻は、ヒナにとって、生まれる前に越えなければならない壁です。ヒナには壊すための手もなく、あるのは小さなくちばしだけです。

ところがヒナは、その壁を内側から割って出てきます。使う道具は何か、力はどこから出るのか、そして最初に破るのは本当に殻なのか。順番に追います。

ニワトリの卵は、ふつう約21日で孵化する。殻を割る道具は上のくちばしの先の卵歯で、力を出すのは首の後ろの孵化筋(複合筋)とされる[2]。

ただし最初に破るのは殻ではなく、気室との間の膜だ。内側のピッピング→外側のピッピング→回転という手順を、複数の資料を突き合わせて整理する。発生の全体像は既存の記事に任せ、ここでは「割る仕組み」に絞る。

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1. ヒナに ある 道具は なに?

1. 手のないヒナが、殻にどう挑むのか

1. 問いの整理 ── 割る道具・力・手順

ヒナには 手が ありません。あしで けって わる ことも、むずかしそうです。ヒナは、たまごの 中で 体を まるめて います。

そこで 見つけたいのは、3つです。なにで わるのか。どこから 力が 出るのか。どんな じゅんばんで わるのか。

この 3つを、1つずつ 見て いきます。

ヒナは卵の中で体を丸めていて、腕のように使える部分がありません。それでも殻を割るのですから、何かの「専用の仕組み」がありそうです。

この記事では、道具(卵歯)、力(孵化筋)、手順(膜を破る→穴をあける→回りながら割る)の3つに分けて見ていきます。胚がどう育つかの全体は、すでにこのサイトの「卵の中のヒナは、21日で何をしているのか」の記事にあるので、ここでは割る場面だけを取り上げます[7]。

本記事は、ニワトリの孵化のうち、殻を割って出る過程を3点(道具・力・手順)で整理する。胚の発生全体は既存記事に概説がある[7]ため、ここでは扱わない。

資料は、日本の飼鳥の解説[1]、鳥類学の解説[2]、ブロイラーの孵化筋を測った2024年の論文[3]、孵化の解説2件[4][5]、卵歯の比較[6]。

2. くちばしの さきの、小さな 「は」

2. 道具は、くちばしの先の「卵歯」

2. 卵歯 ── 殻を割るときに使う突起

ヒナの 上の くちばしの さきには、かたくて とがった 小さな とっきが あります。「らんし」と 言います。「たまごの は」と 書きます。

この とっきは、ニワトリの ヒナが からを わる ときに つかいます。ものを かむ ためでは ありません。

たとえば、はさみで 紙を まるく 切る ときは、さきっぽで 切りこみを 入れて、紙を 少しずつ 回します。らんしも、さきっぽで からを つついて、からに きずを つけて いきます。ただし ヒナは はさみでは なく、くちばしの とっきを つかいます。

らんしは、ヒナが 生まれたあと、しばらくすると なくなると いわれます。しごとを おえた 道具なのです。

ヒナの上のくちばしの先には、硬くて鋭い小さな突起があります。これが卵歯(らんし)です。名前は「歯」ですが、食べ物をかむための歯ではなく、ニワトリのヒナが殻を割るときに使います[1]。

資料によると、卵歯はカルシウムを含んだ角質(ケラチン)でできています[2]。ヒナが生まれたあと、数日から1週間ほどでとれるか、成長するくちばしに取りこまれると説明されています。日数には幅があるので、「いつ落ちる」と決めつけないほうがよさそうです[2]。

殻を割ったら、あとは用済みになる。そんな期間限定の道具をヒナは持っています。

卵歯(らんし、破殻錘とも)は上のくちばしの先端にある硬く鋭い突起で、ニワトリでは殻を割るときに使われる。孵化後に自然に失われる[1]。

組成はカルシウムを含む角質(ケラチン)で、鳥では孵化後数日〜1週間ほどで脱落するか、成長するくちばしに取りこまれるとされる[2]。日数は資料により幅があり、本記事では日数を断定しない。

3. 力は どこから 出るの?

3. 力を出すのは、首の後ろの「孵化筋」

3. 孵化筋(複合筋)── 首の筋肉が卵歯を打ちつける

とがった とっきが あっても、力が なければ からは われません。ヒナの 力は、首の うしろの 筋肉きんにくから 出ます。「ふかきん」と 言います。

この 筋肉きんにくが 頭を ぐいっと もちあげます。すると、らんしが からの 内がわに ぐっと ぶつかります。

ふかきんは、生まれる 少し 前に 大きく なると いわれます。ブロイラーという ニワトリでは、生まれる までの あいだに およそ 4.8ばいの 重さに なったと 言われて います。

そして 生まれた あと、1日で およそ 3分の 2も へると いいます。やくめが おわった 筋肉きんにくも、すぐに ちいさく なるのですね。

卵歯に力をあたえるのが、首の後ろにある孵化筋(複合筋)です。頭を持ち上げる筋肉で、ヒナはこれで卵歯を殻の内側に打ちつけます[2]。

2024年に発表されたブロイラーの論文では、この筋肉の重さは胚の15日目から孵化までに、0.18gから0.87gへと約4.8倍に増えたと報告されています。ところが孵化後24時間で、約67%も減りました[3]。

この数字はブロイラーという品種での測定値です。ニワトリ全般の決まった値ではありません。また、頭を持ち上げる筋肉なので、孵化のあとは餌をつつく動きにもかかわるとされます[3]。

孵化筋は複合筋(M. complexus)とも呼ばれ、首の後ろにあって頭を持ち上げる。これにより卵歯が殻に十分な力で当たる[2]。原典とされるFisher(1958)の論文はPDFを取得できず、本記事では二次資料に依拠している。

ブロイラーの複合筋は、胚日齢15日から孵化までに0.18gから0.87gへ約4.8倍(0.87÷0.18≒4.8)に増加し、孵化後24時間で約67%減少したとされる[3]。品種による測定値であり、ニワトリ全般の値ではない。頭を持ち上げる筋として、採食のつつく動きにも関わると記されている[3]。

4. さいしょに やぶるのは、からでは ない

4. 最初に破るのは、殻ではなく内側の膜

4. 内側のピッピング ── 気室の膜を破り、肺呼吸へ切りかわる

ヒナが さいしょに やぶる ものは、じつは からでは ありません。からの すぐ 内がわに ある、うすい まくです。

たまごの まるい ほうには、くうきの たまった へやが あります。ヒナは、らんしで この へやとの あいだの まくを やぶります。

すると、ヒナは この くうきを はいで すいはじめます。ここから、じぶんの 肺はいで いきを する ほうへ、少しずつ かわって いくと いわれます。

からを わる まえに、まず いきを する。じゅんびが できてから、外に 出る たたかいが はじまります。

ヒナが最初に卵歯をぶつけるのは、殻ではありません。卵の丸い側にある気室と、ヒナとの間の膜です。ここを破るのが、内側のピッピング(日本の飼鳥資料では「嘴打ち」)です[4]。

膜が破れると、ヒナは気室の空気を吸えるようになり、肺呼吸への切りかえが進むと説明されています[4]。つまり、殻を割る大仕事の前に、息の切りかえが先に始まります。

孵化の少し前に、頭を翼の下にもぐらせるような姿勢になるという説明もあります。ただし何日前かは資料で幅があり、はっきり言い切るのは難しそうです。

孵化の最初の動作は、殻の破壊ではなく、卵の丸い側の気室との間の膜を卵歯で破ることである(内側のピッピング、日本の資料では「嘴打ち」)。ここで卵歯が膜を貫くと、気室の空気を吸い、肺呼吸への切りかえが進むと説明される[4]。

孵化直前の姿勢(頭を翼の下に入れる)についての記述もあるが、本文を確認できておらず、日数の幅も大きいので、ここでは詳しく扱わない。

5. あなを あけて、ぐるっと まわる

5. 殻に穴をあけ、少しずつ回って割る

5. 外側のピッピングと回転 ── 休みながら十数時間〜1日

いきが できるように なると、ヒナは からにも あなを あけます。ちいさな あなが 1つ できます。ここから 外の くうきが 入ります。

それから ヒナは、らんしで からを つつきながら、少しずつ 体を 回します。ヒナから 見て 左まわりに 回ると いう しりょうが あります。回る むきは、ヒナに よって ちがうかもしれません。

ぐるっと ひとまわりすると、からの まるい ほうの ぶぶんが ぼうしの ように はずれます。ヒナは そこから 出て きます。

ここまで、ふつうは 十数時間から 1日ほど。ヒナは 何度も 休みながら すすめます。

殻の外側まで穴があくのが、外側のピッピングです。ヒナは休みをはさみながら、卵歯で殻を突いて、少しずつ体を回していきます[1]。

飼育の資料には、ヒナから見て左回りに割れ目を作っていく、という記述があります。ただし、これは飼育者の観察にもとづく説明で、回る向きには個体差もありえます[1]。

割れ目がひとまわりすると、殻の丸い側が帽子のようにはずれ、ヒナが出てきます。殻を割り始めてから出るまでは、資料により12〜18時間、12〜36時間、12〜48時間と幅があります[4][5]。ふつう「十数時間から1日ほど」と考えるのがよさそうです。

殻の外側まで穴があくのが外側のピッピングである。以後、ヒナは卵歯で殻を突きながら少しずつ回り、気室の境目あたりに沿って割れ目を作り、殻の丸い側の帽子状の部分をはずして出る[1]。回転方向はヒナから見て左回りとする飼育資料があるが、学術一次資料での確認はできておらず、個体差もありうる。

殻を割り始めてから出るまでの時間は、資料ごとに12〜18時間[4]、12〜36時間、12〜48時間[5]と幅がある。休みを何度もはさむ点は共通する。

6. ほかの いきものにも、らんしは ある?

6. 卵歯は鳥だけのものではない

6. 卵歯の比較 ── 歯・皮膚・くちばしの突起

らんしは、鳥だけの ものでは ありません。ヘビや トカゲ、ワニなどの 卵たまごから 生まれる いきものにも、からを わる ための とっきが あると いわれます。

ただし、つくりは いきものに よって ちがいます。ヘビや トカゲでは、ほんものの 歯が 生えて います。ワニでは、ひふが かたく なった ものだそうです。

いきものに よって つくりは ちがいますが、どれも、たまごから 出る ときに からを わる やくめが あります。

卵歯は、卵から生まれる動物のあいだで、何度も見つかっています。ヘビやトカゲの多くでは、あごの骨(前上顎骨)から生える本物の歯です。ワニでは、皮膚が硬くなった突起だと説明されています[6]。

つまり「殻を割るための突起」という役目は同じでも、材料もでき方も生きものによって違います。鳥の卵歯はケラチンの突起でした。役目が同じで、つくりが違う。こうした例は、体の進化を考える手がかりになりそうです。

卵歯は鳥以外にも見られ、有鱗類(ヘビ・トカゲ)の多くでは前上顎骨から生じる本物の歯、ワニ類では硬化した皮膚とされる[6]。鳥ではケラチンの突起だった[2]。

殻を破るという役目は同じでも、つくりは生きものによって違う。

7. たまごの まるい ほうを 見て みよう

7. ゆで卵で、気室のあとを探す

7. 出口 ── ゆで卵で気室を見る/資料を読む

おうちの おとなと いっしょに、ゆで卵たまごを 作って、よく さましてから、からを むいて みましょう。とがって いない、まるい ほうから むきます。

まるい ほうの すみに、小さな へこみが ありませんか。ここに、生まれる ヒナが 息を する くうきの へやが できます。

つぎは、ヒナの 生まれる 日を 書いた 本や 図かんを 見て みましょう。なんども 休む ところも、さがして みてください。

おうちの人と、ゆで卵を作ってみてください。よく冷ましてから、丸い側の殻を少しむくと、白身の端に小さなへこみが見つかることがあります。有精卵ではないので、ヒナは育ちませんが、気室があった場所の目安になります。

どこにへこみがあるのか、卵の丸い側ととがった側でくらべてみましょう。ヒナがなぜ「丸い側」から割り始めるのか、想像してみてください。

さらに調べるなら、この記事の出典にある孵化の解説[4]や、「卵の中のヒナは、21日で何をしているのか」の記事[7]がつながります。

確かめてみるなら、ゆで卵の丸い側の殻をむいて、気室のへこみを観察する方法がある。家庭でできるが、加熱・やけどに注意する。

資料は、日本語では飼鳥の解説[1]が読みやすい。孵化筋の測定は論文[3]、孵化筋の役割は鳥類学の解説[2]から入れる。Fisher(1958)の原論文は、本記事では確認できていない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:日本の飼鳥解説、鳥類学の解説、BMC Genomicsの論文、孵化の解説2件、ウィキペディア、当サイトの既存記事を使い、飼育資料を中心に整理した。

  1. OPiときめく愛鳥図鑑「孵化|嘴打ち、卵歯」 https://opi.toumoto.net/health/hatch/ (卵歯の役目、嘴打ち、回転、時間の幅)
  2. Ornithology.com「The Hatching Muscle」 https://ornithology.com/the-hatching-muscle/ (孵化筋の役割、卵歯の組成と脱落)
  3. BMC Genomics(2024)ブロイラーの複合筋の研究 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11619642/ (孵化筋の重さの変化)
  4. Raising Happy Chickens「Chick Hatching」 https://www.raising-happy-chickens.com/chick-hatching.html (内側のピッピングと呼吸、孵化の時間)
  5. Buffalo Bill Center of the West「How Do Eggs Hatch?」 https://centerofthewest.org/2016/05/24/how-do-eggs-hatch/ (孵化にかかる時間)
  6. Wikipedia「Egg tooth」 https://en.wikipedia.org/wiki/Egg_tooth (ヘビ・トカゲ・ワニの卵歯)
  7. 当サイト「卵の中のヒナは、21日で何をしているのか」 chick-embryo-development.html (発生の全体像)

なおした ところ

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