カエルツボカビしょうって なに?

カエルツボカビ症って何?

カエルツボカビ症 ── 世界のカエルを減らした病気

分野:生きもの

せかいの あちこちで、カエルが きゅうに いなく なった ばしょが あります。

なにが おきたのでしょうか。

この きじでは、その げんいんを 見て いきます。

世界のあちこちで、カエルが急にいなくなった場所があります。

何が起きたのでしょうか。

この記事では、その原因を見ていきます。

1990年代以降、世界各地でカエルなどの両生類が原因不明の大量死を起こす現象が報告されてきました。その正体が、あるカビの仲間であることが分かったのは1998年のことです。

この記事では、カエルツボカビ症の発見、感染のしくみ、世界への被害の大きさ、そして日本のカエルが大きな被害をまぬがれてきた理由までをたどります。

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1. 1998年、なぞの 大りょうしが 見つかった

1. 1998年、謎の大量死が見つかった

1. 発見 ── 1998年、正体不明の病原体

1990年代、オーストラリアや 中央アメリカで、カエルが たくさん しんで しまう できごとが つづいて いました。

1998年、けんきゅうしゃたちが、その げんいんを 見つけました。 カビの なかまが、カエルの 皮ふに つく ことで おきる びょうきだったのです[1]。この びょうきは「カエルツボカビしょう」と よばれる ように なりました。

オーストラリアと中央アメリカでの異変

1990年代、オーストラリアや中央アメリカで、カエルが原因不明のまま大量に死んでしまう出来事が続いていました。

正体は、皮膚につくカビの仲間

1998年、研究者たちがその原因をつきとめました。カビの仲間である「ツボカビ」が、カエルの皮膚に感染することで起きる病気だったのです[1]。この病気は「カエルツボカビ症」と呼ばれるようになりました。

1990年代、オーストラリアと中央アメリカで、両生類の原因不明の大量死が相次いで報告されていました。1998年、研究者たちはこの現象の原因が、ツボカビの仲間である新種の病原体であることを特定しました[1]

この病原体は「Batrachochytrium dendrobatidis(Bd)」と命名され、これが引き起こす病気は「カエルツボカビ症(chytridiomycosis)」と呼ばれています。カエルの皮膚に寄生する、それまで知られていなかったタイプの病原体でした[1]

2. なぜ、皮ふの びょうきで しんで しまうの?

2. なぜ、皮膚の病気で死んでしまうのか

2. 感染の仕組み ── 皮膚呼吸を止める菌

カエルは、口や 鼻だけでなく、皮ふでも こきゅうしたり、 水分を とりいれたり して います。

カエルツボカビは、この だいじな 皮ふを こわして しまいます。プールで ながく およいで いると、手や 足の 皮が ふやけますよね。それに にた ことが、カエルの からだじゅうで おきる イメージです(ただし 本当は、 ふやけるのでは なく、カビが 皮ふを 食べて こわして しまいます)。すると、からだの バランスが くずれて、 しんで しまう ことが 多いのです[1]

カエルにとって、皮膚は特別な器官

カエルは、口や鼻だけでなく、皮膚でも呼吸をしたり、水分やミネラルを取りこんだりしています。

皮膚が壊されて、体のバランスが崩れる

カエルツボカビは、皮膚の成分(ケラチン)を食べながら広がり、この大事な皮膚のはたらきを壊してしまいます。その結果、体内の電解質(ナトリウムやカリウムなど)のバランスが崩れ、心臓が止まってしまうことが多いのです[2]

両生類の皮膚は、呼吸や水分・電解質の調節を担う重要な器官です。カエルツボカビの遊走子(水中を泳ぐ胞子)は皮膚に達すると増殖し、皮膚のケラチン(角質)を分解しながら広がっていきます[2]

感染が進むと、皮膚を通じたナトリウムやカリウムなどの電解質輸送が阻害され、血中の電解質濃度が低下します。この異常な浸透圧の変化が心臓に負担をかけ、最終的に心停止にいたることが、致死率の高さの主な原因とされています[2]。感染したカエルには、食欲不振や異常な脱皮、後肢のまひなどの症状も見られます。

3. 世界で 500いじょうの しゅるいが へった

3. 世界で500種以上が減った

3. 被害の規模 ── 501種の減少、90種の絶滅

2019年に 出た けんきゅうに よると、カエルツボカビしょうの えいきょうで、世界で 501しゅるい いじょうの りょうせいるいが へった ことが わかりました。その 中の 90しゅるいは、 もう ぜつめつして しまったか、その うたがいが 強いと されて います[3]

これは、1つの びょうきが げんいんの ぜつめつとしては、 きろくに のこって いる中で もっとも 大きな ものだと いわれて います[3]

2019年の研究で分かった、被害の大きさ

2019年に発表された研究によると、カエルツボカビ症の影響で、世界で501種以上の両生類が数を減らしたことが分かりました。そのうち90種は、すでに絶滅したか、絶滅した可能性が高いとされています[3]

1つの病気による、記録的な被害

これは、1つの病気が原因の生物多様性の損失としては、記録に残る中でもっとも大きいものだといわれています。被害はオーストラリア・中央アメリカ・南アメリカでとくに深刻です[3]

2019年に学術誌『サイエンス』に発表された研究では、カエルツボカビ症の影響で少なくとも501種の両生類が減少し、うち90種が絶滅した、または絶滅した可能性が高いと結論づけられました[3]

この病気は現在60以上の国で確認されており、とくにオーストラリア・中央アメリカ・南アメリカでの被害が深刻です。単一の病原体による生物多様性の損失としては、記録上もっとも大きい規模だとされ、外来種としての被害という観点でも、ネズミやネコに匹敵する脅威だと位置づけられています[3]

4. どこから 来たのか、しらべて みると

4. どこから来たのか、調べてみると

4. 起源をさぐる ── 2018年、朝鮮半島説

この カビは、いったい どこから 来たのでしょうか。

2018年、研究者たちが、たくさんの カビの いでんしを くらべる けんきゅうを しました。その けっか、この カビは 20世紀せいき前半に 朝鮮ちょうせん半島 あたりで 生まれ、人間の かつどうに よって 世界に 広まった かのうせいが 高いと わかりました[4]

234個の遺伝子を比べた研究

このカビは、いったいどこから来たのでしょうか。

20世紀前半、朝鮮半島周辺から世界へ

2018年、研究者たちが、世界各地のカエルツボカビの遺伝子234個を比較する研究を行いました。その結果、このカビは20世紀前半に朝鮮半島周辺で生まれ、両生類の商業取引が世界に広がるとともに拡散した可能性が高いと分かりました[4]。人の行き来をともなう大きな出来事も、拡散を後押しした一因として指摘されています[4]

カエルツボカビの起源については、長らくアフリカツメガエル起源説が有力とされてきましたが、2018年、インペリアル・カレッジ・ロンドンのサイモン・オハンロンらのチームが、世界各地から採取された234個体のゲノムを比較する研究を学術誌『サイエンス』に発表しました[4]

この研究は、カエルツボカビの起源が20世紀前半の朝鮮半島周辺にあり、両生類の商業取引が世界的に拡大した時期と重なるかたちで各地に拡散した可能性が高いと結論づけました。研究者は、大規模な人的移動をともなう出来事も、拡散を後押しした一因である可能性を指摘しています[4]

5. 日本では、なぜ カエルツボカビしょうが 大じけんに ならなかったの?

5. 日本では、なぜカエルツボカビ症が大事件にならなかったのか

5. 日本の場合 ── アジア起源説と在来種の抵抗性

じつは、カエルツボカビは 日本の カエルにも 見つかって います。でも、オーストラリアの ときのような、カエルが たくさん しんで しまう ことは、いまの ところ ほうこくされて いません[5]

これは、このカビが もともと 朝鮮ちょうせん半島の あたりで 生まれた かのうせいが 高い ため、近くの 日本の カエルたちは、 長い 年月を かけて この カビに なれて、たいせいを つけて きた のでは ないかと かんがえられて います [5]

日本でも見つかっているが、大量死は報告されていない

じつは、カエルツボカビは日本のカエルにも見つかっています。しかしオーストラリアのときのような、カエルが大量に死んでしまう事態は、いまのところ報告されていません[5]

長いつきあいで身についた、抵抗力(という仮説)

これは、このカビがもともと朝鮮半島周辺で生まれた可能性が高いことと関係があるのではないかと考えられています。近い地域にすむ日本のカエルたちは、長い年月をかけてこのカビと共存し、抵抗力を身につけてきたのではないか、という仮説です[5]

カエルツボカビは日本国内の野生カエルからも検出されていますが、海外で見られたような壊滅的な大量死は報告されていません[5]。日本国内の菌株には高い遺伝的多様性と固有性が見られることから、「カエルツボカビ・アジア起源説」も唱えられています[5]

このカビがアジア(朝鮮半島周辺)で生まれたとすれば、その近隣にすむ日本の在来カエルは、長い進化の歴史の中でこのカビにさらされ続け、結果として抵抗性を獲得してきた可能性があります。一方、このカビと接した歴史が浅いオーストラリアや中南米の両生類には、その抵抗性が備わっていなかったために、深刻な被害を受けたと考えられています[5]

6. 世界に 広まった、もう1つの りゆう

6. 世界に広まった、もう1つの理由

6. 拡散の要因 ── 国際的な取引

カエルツボカビが 世界に 広まった りゆうの 1つに、 カエルの 取り引きが あります。

アフリカツメガエルや ウシガエルの なかまは、カエルツボカビに かんせんしても、じぶんは 元気な ままで いられる ことが 多い カエルです。こうした カエルが ペットや 食用として 国から 国へ はこばれる うちに、 カビも いっしょに 広まって しまった と かんがえられて います[5]

カエルの国際的な取引

カエルツボカビが世界に広まった理由の1つに、カエルの国際的な取引があります。

感染しても元気なカエルが、運び手に

アフリカツメガエルやウシガエルの仲間は、カエルツボカビに感染しても自分は症状が出にくく、元気なまま菌を保持できることが多いカエルです。こうしたカエルが、ペットや食用として国境を越えて運ばれるうちに、カビも一緒に世界へ広まってしまったと考えられています[5]

カエルツボカビが世界的に拡散した背景には、両生類の国際取引が大きく関わっていると考えられています。とくにアフリカツメガエル(かつて妊娠検査に利用されていた)やウシガエル(食用として養殖される)は、カエルツボカビに感染しても発症しにくい保菌者となりやすく、これらの種の商業的な取引が、病原体の伝播経路になってきたとされています[5]

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

ちかくで カエルを 見つけたら、そっと かんさつして みましょう。

あんぜんな ばしょで できる こと

  • カエルは、むやみに さわらず、目で 見て かんさつする。 カエルの 皮ふは デリケートです。もし さわる ときは、 かならず 大人と いっしょに、その まえと あとで 石けんで 手を あらいましょう。
  • おうちの人と いっしょに、日本の カエルの しゅるいを しらべて みる。 近くに どんな カエルが いるか さがして みましょう。
メモの すすめ

きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「カエルツボカビって なに?」だけで じゅうぶんです。

近くでカエルを見つけたら、そっと観察してみましょう。

今日できること

  • カエルは、むやみに触らず、観察にとどめる。カエルの皮膚はデリケートです。もし触るときは、その前後に必ず石けんで手を洗いましょう。
  • おうちの人と一緒に、日本のカエルの種類を調べてみる。近くにどんなカエルがいるか、さがしてみましょう。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「サンショウウオにも似た病気があるの?」だけでも十分です。

身近なカエルの種類や生息状況を調べると、この記事で扱った病気が身近に感じられます。

手を動かして確かめる

  • 環境省や自治体のカエルツボカビ関連情報を調べる。日本国内での発生状況や、飼育者向けの注意点を調べてみましょう。
  • ペットの両生類を飼っている場合、正しい消毒方法を確認する(要相談)。異なる場所の水槽の水を混ぜないなど、基本的な対策を大人と一緒に調べてみましょう。

一次情報にあたる

環境省のサイトには、カエルツボカビ実態把握調査の報告書が公開されています。

メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「世界で501種が減少、90種が絶滅」という一文でもかまいません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

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出典について:百科事典・学術誌・専門メディアの公開情報を使っています。

  1. Wikipedia「Batrachochytrium dendrobatidis」(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Batrachochytrium_dendrobatidis (1998年の発見と、カエルツボカビ症についての解説)
  2. バイオーム「カエルツボカビ症はどうして日本で大問題にならなかったのか。」。 https://biome.co.jp/biome_blog_133/ (感染のしくみ(ケラチンの分解、電解質バランスの崩壊)についての解説)
  3. ScienceDaily「Mass amphibian extinctions globally caused by fungal disease」(2019年、Scheeleらの研究の紹介記事)。 https://www.sciencedaily.com/releases/2019/03/190328150806.htm (世界で500種以上の減少・90種の絶滅を報告した2019年の研究の紹介)
  4. ナショナルジオグラフィック日本版「両生類を襲うカエルツボカビ、朝鮮半島原産と判明」(2018年)。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/051400211/ (2018年の朝鮮半島起源説についての解説)
  5. バイオーム「カエルツボカビ症はどうして日本で大問題にならなかったのか。」。 https://biome.co.jp/biome_blog_133/ (日本での被害の実態、アジア起源説、在来種の抵抗性、国際取引による拡散についての解説)

なおした ところ

更新履歴

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