1. あんごうって、どんな しくみ?
1. 暗号ってなに? ── 文字をずらす・入れかえる
1. 暗号の基本 ── 換字式と転置式
「あ」を「か」に かえて 書く。もじの じゅんばんを ぐちゃぐちゃに する。 あんごうの やりかたは、大きく わけると この 2つです。
むかしむかし、ローマで 大きな ちからを もって いた 将軍の カエサルは、へいたいに おくる てがみで、 もじを 3つ うしろに ずらして 書いて いました。 これは「シーザーあんごう」と よばれて います。 「あ」なら 3つ うしろの もじに かえる、という やくそくです。 やくそくを しらない 人が てがみを ひろっても、なにが 書いて あるのか わかりません。
もっと むかしの ギリシャでは、さらに かわった やりかたも ありました。 細長い ぼうに 紙テープを まきつけて、よこに 文字を 書いて いきます。 テープを ほどくと、もじが ばらばらに ならんで いて よめません。 おなじ 太さの ぼうに もう一度 まきつけた 人だけが、正しく よめる しくみでした。
「あ→か、い→き」のように、五十音を 2つ うしろに ずらす ひょうを 作って、 ともだちと ひみつの てがみを こうかんして みましょう。 ただし ほんとうの あんごうは、もっと むずかしくして あります。かんたんに 見やぶられます。
文字を別の文字に置きかえる方法を「換字式」、文字の順番を入れかえる方法を「転置式」と呼びます。 暗号のほとんどは、この2つの組み合わせでできています。
換字式:文字を置きかえる
換字式でいちばん有名なのが「シーザー暗号」です。ローマの政治家・将軍ユリウス・カエサルが 使ったとされる暗号で、歴史家スエトニウスの記録によると、カエサルはアルファベットを 3文字後ろにずらして手紙を書いていました。 Aなら3つ先のD、Bなら3つ先のEに置きかえる、という単純な約束です[1]。 約束(鍵)を知らない人が手紙を横取りしても、ただの意味不明な文字の並びにしか見えません。
転置式:順番を入れかえる
転置式の例としては、古代ギリシャの都市国家スパルタで使われた「スキュタレー」があります。 決まった太さの棒に細長い紙(当時は皮ひも)を巻きつけ、横に文字を書いていきます。 ほどくと文字はばらばらの順番で並んでいて読めません。同じ太さの棒に巻きなおした人だけが、 もとの文章を読めるという仕組みでした[2]。
どちらも「送る人と受け取る人だけが知っている約束」があって初めて成り立ちます。 この約束のことを、暗号の世界では「鍵」と呼びます。手紙の中身を隠す道具そのものより、 鍵をどう決め、どう安全に相手に渡すかのほうが、実はずっと大きな問題でした。 その問題が姿を変えながら戦争を動かしていく様子を、この先の章で見ていきます。
暗号の方式は大きく2種類に分けられます。文字を別の記号や文字に置きかえる「換字式(substitution)」と、 文字はそのままで並び順だけを変える「転置式(transposition)」です。
換字式の代表例が「シーザー暗号」です。ローマの政治家・将軍ユリウス・カエサルが軍事書簡に 使ったとされる暗号で、歴史家スエトニウスの記録によれば、カエサルはアルファベットを 一定数(3文字)だけずらして文章を書いていました[1]。 「ずらす数」が鍵にあたり、これを知らない人には解読できません。 ただしこの方式は、各言語の文字の出現頻度(英語ならEが最も多いなど)を統計的に分析されると突破されます。
転置式の代表例は、古代スパルタで使われたとされる「スキュタレー」です。決まった直径の棒に 細長い皮ひもを巻きつけて横書きし、ほどくと文字はばらばらの順に見えます。同じ直径の棒を持つ 受信者だけが、正しい順序に読み替えられます[2]。
どちらの方式にも共通するのは、暗号文そのものより「鍵」(送信者と受信者だけが共有する秘密の情報) こそが安全性の核心だという点です。19世紀の暗号学者オーギュスト・ケルクホフスは、 「暗号方式は敵に知られてもよい。安全性は鍵の秘密だけに依存すべきだ」という原則を唱えました。 鍵をどう決め、どう安全に届けるか。この問いが姿を変えながら、この先の歴史を動かしていきます。
2. せんそうを うごかした、1つうの てがみ
2. 戦争を動かした一通の電報
2. ツィンメルマン電報 ── 一通の解読が参戦を後押しした
1917年、遠くの 国どうしが たたかう 大きな 戦争の さいちゅう、ドイツという 国が、 アメリカの となりの メキシコという 国に ひみつの でんぽうを おくりました。 「もし アメリカが てきに まわったら、いっしょに たたかって ほしい」という ないようでした。
ところが、この でんぽうは とちゅうで イギリスの チームに ぬすみ よまれて いました。 イギリスは、この ひみつを アメリカに おしえました。 じぶんの 国が こっそり ねらわれて いたと しった アメリカの 人たちは おこり、 それまで せんそうに くわわって いなかった アメリカも、とうとう いっしょに たたかう ことを きめたのです。
この でんぽうを よめた ことは、アメリカが せんそうに くわわる 大きな きっかけの 1つに なりました。 ほかにも りゆうは いろいろ ありましたが、 たった 1つうの でんぽうが、国の うごきを おおきく おした のです。
電報の中身
1917年1月、第一次世界大戦のさなか、ドイツの外務大臣ツィンメルマンは、メキシコにいる ドイツの大使にあてて、暗号化した電報を送りました。内容は「アメリカが参戦してきたら、 メキシコにはドイツの味方についてほしい。見返りに、以前アメリカに渡した領土を取り戻す手助けをする」 というものでした[3]。
解読とその影響
ところがこの電報は、イギリス海軍の暗号解読チーム「ルーム40」に途中で傍受され、解読されていました。 このチームは第一次世界大戦中に約1万5000通ものドイツの通信を解読しており、 この電報もその1つでした[4]。
イギリスはこの内容をアメリカに伝え、1917年3月1日、電報は新聞に掲載されます。 自国が標的にされていたと知ったアメリカの世論は一気にかたむきました。 当時すでにドイツの無制限潜水艦作戦でアメリカの船も被害を受けており、 それらが重なるかたちで、この電報の公表から1か月あまりでアメリカはドイツに宣戦を布告しました。 1通の電報の解読は、参戦をためらっていたアメリカの世論と議会を大きく動かした、 いくつもの要因のひとつです。
1917年1月16日、ドイツの外務大臣アルトゥール・ツィンメルマンは、メキシコ駐在のドイツ大使にあてて 暗号電報を送りました。当時ドイツは、イギリスへの物資輸送を断つため無制限潜水艦作戦の再開を決めており、 これがアメリカを参戦させる引き金になりかねないと見ていました。電報の内容は、 「アメリカが参戦した場合、メキシコにドイツとの同盟を持ちかけ、見返りとして米墨戦争(1846〜1848年)で 失ったテキサス・ニューメキシコ・アリゾナの回復を支援する」というものでした[3]。
この電報は、イギリス海軍情報部の暗号解読機関「ルーム40」の暗号解読者ナイジェル・デ・グレイらによって 解読されます[3]。ルーム40は第一次世界大戦中に約1万5000通の ドイツの通信を解読しており、近東で入手したドイツの外交暗号書と、ロシア海軍から提供された ドイツ海軍の暗号書が、その土台になっていました[4]。
ただしイギリスには、電報を公表すれば「ルーム40がドイツの暗号を読めること」自体が ドイツに知られてしまうという問題がありました。そこでイギリスは、メキシコの通信経路で 別のルートから同じ電報の写しを入手し、あたかもメキシコ国内で情報が漏れたかのように見せかけて アメリカに提供しました[3]。
電報は1917年3月1日にアメリカの新聞各紙に掲載され、世論を大きく動かしました。 ただし参戦の理由は電報だけではありません。同じ時期、ドイツが無制限潜水艦作戦を再開して アメリカの船にも被害が出ており、これも世論を刺激していました[3]。 電報の暴露と潜水艦作戦への反発が重なり、アメリカは同年4月6日にドイツへ宣戦を布告します。 それまで秘密にされてきた暗号解読という技術が、国家の意思決定を動かす要因として 広く知られることになった出来事です。
3. なぞの きかいと、といた 人たち
3. エニグマ ── 謎の機械を解いた人たち
3. エニグマ ── ポーランドからブレッチリー・パークへ
第二次世界大戦の とき、 ドイツぐんは「エニグマ」という ふくざつな 機械を つかって、てがみを あんごうに して いました。 エニグマは、うつ たびに ちがう もじに へんかんする しかけが ついた、タイプライターのような きかいです。
この エニグマの あんごうを、さいしょに といたのは ポーランドの すう学者たちでした。 そのあと イギリスの チームが ひきつぎ、アラン・チューリングという 人が、 エニグマの あんごうを 自動で さがす きかい「ボンブ」を つくりました。
エニグマの あんごうが とけた おかげで、たくさんの 人の いのちが すくわれたと いわれて います。 せんそうが おわるのが、はやく なったとも いわれて います。
エニグマの仕組み
第二次世界大戦で、ドイツ軍は「エニグマ」という機械を使って通信を暗号化していました。 見た目はタイプライターに似ていますが、中に回転する歯車(ローター)が複数組みこまれていて、 1文字打つたびに変換のルールが変わっていきます。組み合わせは天文学的な数になり、 解読はほぼ不可能と考えられていました[5]。
誰が解いたか
最初にエニグマの弱点を見つけたのは、ポーランドの暗号局の数学者たちでした。1930年代、 マリアン・レイェフスキらが数学的な手法でエニグマの仕組みを解き明かします。 その研究成果は、開戦直前にフランス・イギリスへ引き継がれました[5]。
イギリスでは、暗号解読の拠点「ブレッチリー・パーク」に集められた数学者アラン・チューリングらが、 この研究をさらに発展させます。チューリングは同僚ゴードン・ウェルチマンとともに、 エニグマの設定を自動で探索する電気機械式の装置「ボンブ」を考案しました[6]。 最盛期のブレッチリー・パークには約1万人が働き、専門家の推計では、 この解読によって戦争が最大で2年ほど短縮されたと言われています[7]。
第二次世界大戦中、ドイツ軍は「エニグマ」と呼ばれる暗号機を通信に使っていました。 複数の回転式ローターと配線盤(プラグボード)を組み合わせた構造で、1文字打鍵するたびに 変換規則がローターの回転によって変わります。設定の組み合わせ数は膨大で、 日替わりの設定表を持つ者どうしでなければ復号できませんでした[5]。
エニグマに最初に挑んだのは、ドイツ軍拡張の脅威を強く意識していたポーランド暗号局でした。 数学者マリアン・レイェフスキを中心とするチームが、1930年代前半に数学的手法でエニグマの内部配線を 再現することに成功します。1939年、開戦直前にポーランドはこの成果をイギリス・フランスの 情報機関に引き継ぎました[5]。
引き継いだイギリスの暗号解読拠点ブレッチリー・パークでは、数学者アラン・チューリングが 1939年に着任し、ポーランドの手法をさらに発展させます。チューリングはゴードン・ウェルチマンと 共同で、エニグマの設定を電気機械的に探索する装置「ボンブ」を考案しました[6]。 1941年以降はドイツ海軍用のより複雑なエニグマも解読し、大西洋の戦いでUボートの動きを 事前につかむことに貢献しています[6]。
ブレッチリー・パークで働いた人数は最盛期で約1万人にのぼり、専門家の推計では、 この解読活動によって戦争が最大で2年ほど短縮されたとされています[7]。 この活動は戦後長く国家機密として伏せられ、一般に知られるようになったのは1970年代以降のことです。
5. かぎを、どう わたす?
5. 鍵をどう渡すか、という大問題
5. 公開鍵暗号 ── 鍵配送問題を解いた発明
ここまでの あんごうは、どれも「おくる 人と うけとる 人が、まえもって おなじ かぎを もって いる」 という やりかたでした。でも、これには こまった ところが あります。 かぎ じたいを あいてに とどける とき、とちゅうで ぬすまれたら、あんごうは いみが なくなって しまうのです。
1970年代、この こまりごとを かいけつする、 すごい アイデアが 生まれました。「かぎを あけて つかう かぎ」と 「じぶんだけが もつ ひみつの かぎ」の 2しゅるいを つくる、という やりかたです。 みんなに くばる かぎで じょうまえを しめる ことは できても、 その じょうまえを あける ことが できるのは、ひみつの かぎを もつ 人だけ。 この しくみの おかげで、かぎを あんぜんに わたす しんぱいが なくなりました。
共通鍵暗号の弱点
ここまでの暗号は、すべて「送る人と受け取る人が、あらかじめ同じ鍵を持っている」方式でした。 これを共通鍵暗号と呼びます。ところが、この方式には大きな弱点があります。 その鍵をどうやって安全に相手に届けるか、という問題です。鍵を送るための通信そのものが 盗み見られたら、あんごう全体が意味をなさなくなってしまいます。
公開鍵暗号という発明
1976年、この「鍵配送問題」を解決する考え方が発表されました。数学者ホイットフィールド・ディフィーと マーティン・ヘルマンは、「誰に見られてもよい鍵」と「自分だけがこっそり持つ鍵」を組み合わせる 「公開鍵暗号」という考え方と、それを使って安全でない通信路の上でも鍵を共有できる具体的な方法を 発表しました[9]。ただしこの時点では、公開鍵でロックし秘密鍵で開けるという 実用的な仕組みそのものは、まだ完成していませんでした。
1977年、マサチューセッツ工科大学のロナルド・リベスト、アディ・シャミア、レナード・エーデルマンの 3人が、この考え方を実際に使える形にした「RSA暗号」を考案します(論文としての発表は翌1978年 [10])。公開した鍵でロックはできても、そのロックを外せるのは対になる 秘密の鍵を持つ本人だけ、という仕組みがここで実現しました。名前は3人の頭文字から取られています。 とても大きな数を素因数分解するのが難しいという数学の性質を利用したもので、 いまも広く使われつづけています。
ここまで見てきた暗号は、すべて送信者と受信者が事前に同じ鍵を共有する「共通鍵暗号」です。 この方式には本質的な弱点があります。鍵そのものを安全な経路で相手に届ける必要があるという、 「鍵配送問題」です。とくに、見ず知らずの相手と初めて通信する場合、 安全な経路をどう用意するかという問題は解決が困難でした。
1976年、ホイットフィールド・ディフィーとマーティン・ヘルマンは論文 「New Directions in Cryptography(暗号学の新しい方向)」で、この問題を解く考え方を発表しました [9]。公開してよい「公開鍵」と、本人だけが保持する「秘密鍵」を組み合わせる という発想と、安全でない通信路の上でも鍵を共有できる具体的な方法(鍵交換)を示し、 鍵配送問題を原理的に解決しました。ただし、公開鍵で任意の情報を暗号化し秘密鍵でしか 復号できないという実用的な公開鍵暗号システムそのものは、この論文の時点ではまだ実現していません でした(論文自身、その一般的な実現は未解決の課題だとしています)。
1977年、MITのロナルド・リベスト、アディ・シャミア、レナード・エーデルマンの3人は、 この考え方を実装可能な形にした「RSA暗号」を考案します(論文としての発表は翌1978年 [10])。2つの大きな素数の積を素因数分解することが、現実的な時間では 極めて困難だという数学的性質を安全性の根拠にしています。RSAという名称は3人の姓の頭文字に由来します。
公開鍵暗号は計算量が多く低速なため、実際の通信では、公開鍵暗号の考え方を使って 共通鍵のもとになる秘密を安全に作り出し(鍵交換)、以降の本文のやり取りは 高速な共通鍵暗号で行う、という組み合わせが一般的です。 この設計は、次の章で見る「いまのインターネット」の安全性の土台になっています。
6. いま、スマホの なかで うごいて いる
6. いま、あなたのスマホの中で
6. 現代の暗号 ── TLSと、量子コンピュータという新しい相手
インターネットで お店の サイトを ひらいて、なにかを かうとき、 カードの ばんごうを にゅうりょくする ことが あります。 あのとき、あなたの スマホと お店の コンピュータの あいだで、 さっき 出てきた「かぎを 2つ つかう」あんごうが しずかに うごいて います。
ブラウザの アドレスの よこに、ちいさな 錠前の マークが 出て いる ことが あります。あれは「この あんごうが ちゃんと はたらいて いますよ」という しるしです。
これからは、うんと けいさんが はやい「りょうし 計算機」が できると、 いまの あんごうが とかれて しまうかもと しんぱいされて います。 だから せかいの けんきゅうしゃたちは、もっと つよい あたらしい あんごうを、いま 作って います。
TLSの中身
インターネットの通販サイトでカード番号を入力するとき、ブラウザのアドレス欄には 小さな錠前のマークが出ています。あのとき裏側では、前の章で見た「公開鍵暗号」を使った 仕組み(TLSと呼ばれます)が動いていて、あなたとお店のコンピュータのあいだの通信を 第三者が読めないようにしています。
この仕組みのおかげで、オンラインショッピングやネットバンキング、 スマートフォンのメッセージアプリのやり取りが、盗み見されずにすんでいます。 暗号は、もう戦争のときだけの特別な道具ではなく、毎日当たり前に使う技術になっています。
量子コンピュータという新しい心配
一方で、新しい心配もあります。「量子コンピュータ」という、これまでとまったく違う原理で 計算する機械が実用化に近づくと、RSAなど現在の公開鍵暗号を短時間で解いてしまう可能性が 指摘されています。これに備えて、アメリカの標準化機関NISTは2024年8月、量子コンピュータでも 解読されにくい新しい暗号方式を正式な標準として発表しました[11]。 鍵をめぐる攻防は、いまも続いています。
インターネットで買い物をするとき、ブラウザとサーバーのあいだの通信は TLS(Transport Layer Security)というプロトコルで保護されています。 接続の最初に公開鍵暗号の考え方を使って共通鍵のもとになる秘密を安全に作り出し(鍵交換)、 以降の本文のやり取りはその共通鍵で高速に暗号化する、という前章で説明した組み合わせが そのまま使われています。 アドレスバーの錠前アイコンは、この手続きが成立していることを示すものです。
スマートフォンのメッセージアプリの多くも、送信者の端末で暗号化し、受信者の端末でしか 復号できない「エンドツーエンド暗号化」を採用しています。通信の途中経路にいる事業者自身も、 メッセージの中身を読めない設計です。
一方、現在の公開鍵暗号(RSAなど)の安全性は「大きな数の素因数分解は現実的な時間で解けない」 という前提の上に成り立っています。ところが、量子コンピュータ上で動く「ショアのアルゴリズム」 (1994年発表)を使うと、この前提が理論上崩れることが知られています。実用規模の量子コンピュータは まだ存在しませんが、将来の実現に備え、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)は 2016年から8年がかりで、量子コンピュータでも解読が困難とされる新方式の標準化を進めてきました。 2024年8月、格子暗号や、ハッシュ関数を土台にした3つの方式が、正式な連邦情報処理標準 (FIPS 203・204・205)として発表されています[11]。
カエサルの3文字シフトから、量子コンピュータに備える暗号まで。手段は入れかわっても、 「読まれたくない側」と「読もうとする側」のせめぎあいという構図そのものは変わっていません。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
あんごうは、どうぐが なくても すぐに ためせます。
きょう できる こと
- ずらし あんごうを 作る。 五十音を いくつ うしろに ずらすか きめて、みじかい ことばを あんごうに して みましょう。 なんの あんごうか わからないように、すうじだけを かぞくに つたえて、ときあかして もらうのも たのしいです。
- ブラウザの 錠前マークを さがす。 おうちの 人と いっしょに、よく 見る サイトの アドレスの よこを 見て みましょう。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ、ノートに 書いて おきましょう。 「エニグマって なに?」だけで じゅうぶんです。あとで しらべる とき、入口に なります。
暗号は、道具がなくてもすぐに試せる分野です。
今日できること
- シーザー暗号を自分で作る。 ずらす文字数(鍵)を決めて、短い文章を暗号化してみましょう。 鍵を教えずに友だちに解読させると、頻度分析(よく出る文字から推理する方法)の 難しさを体感できます。
- ブラウザの錠前マークを確認する。 よく使うサイトのアドレス欄で、鍵マークをクリックすると、そのサイトがどんな 仕組みで守られているかの情報を見られます。
くわしい人が書いたページ
- Imperial War Museums(英語):チューリングとエニグマ解読の解説
- アメリカ海軍歴史遺産司令部(英語):ナバホ・コードトーカーの公式資料
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。 「量子コンピュータって結局なに?」だけでも十分です。
暗号は、特別な機材がなくても手を動かして理解できる分野です。
手を動かして確かめる
- シーザー暗号と頻度分析。 自分でずらし暗号を作り、鍵を教えずに友だちに解読を頼んでみてください。 英語ならE、日本語なら「の」「い」など、頻出する文字から鍵を推理する 「頻度分析」という手法を体感できます。
- TLSの証明書を見る。 ブラウザのアドレスバーの鍵マークから、閲覧中のサイトがどの証明機関の証明書を使い、 いつまで有効かを確認できます。
出典にあたる
この記事の出典には、公的機関・博物館の資料に加えて、研究者による解説や原論文も選んでいます。 英語のページでも、固有名詞と年号を手がかりに読むと、日本語の解説だけでは 出てこない細部(傍受した経路、実際の電文の文面など)に触れられます。
ディフィーとヘルマンは、「鍵をどう安全に届けるか」という素朴な疑問を手放さずに 考えつづけ、公開鍵暗号という考え方にたどり着きました。この問いが、 公開鍵暗号の出発点でした。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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英語の出典について:Imperial War Museums は英国の国立戦争博物館、National WWII Museum はアメリカの国立第二次世界大戦博物館、U.S. Naval History and Heritage Command はアメリカ海軍の歴史遺産を管理する公的機関、NIST(National Institute of Standards and Technology)はアメリカの国立標準技術研究所です。
- Suetonius, The Lives of the Caesars(ユリウス・カエサル伝)の記述にもとづく、 シーザー暗号(3文字シフト)の解説。 Crypto Corner: Caesar Shift Cipher(英語。数学教育サイトによる解説) (カエサルが軍事書簡に使ったとされるシフト数の出典)
- Antigone Journal, “Ancient Cybersecurity II: Cracking the Caesar Cipher”. https://antigonejournal.com/2021/09/cracking-caesar-cipher/(英語。古典学の研究者による解説) (スキュタレーを含む古代の暗号の解説)
- National WWI Museum and Memorial, “Zimmermann Telegram”. https://www.theworldwar.org/learn/about-wwi/zimmermann-telegram (アメリカの国立第一次世界大戦博物館。電報の内容と経緯)
- UK Government, “The Zimmermann Telegram and Room 40”. https://history.blog.gov.uk/2017/01/16/the-zimmermann-telegram-and-room-40 (英国政府の公式ブログ。ルーム40の活動規模)
- Britannica, “Enigma | Definition, Machine, History, Alan Turing, & Facts”. https://www.britannica.com/topic/Enigma-German-code-device (エニグマの仕組みと、ポーランドによる最初の解読)
- Imperial War Museums, “How Alan Turing Cracked The Enigma Code”. https://www.iwm.org.uk/history/second-world-war/intelligence/how-alan-turing-cracked-the-enigma-code (英国の国立戦争博物館。チューリングとボンブの解説)
- The National WWII Museum, “Alan Turing and the Hidden Heroes of Bletchley Park”. https://www.nationalww2museum.org/war/articles/alan-turing-betchley-park (アメリカの国立第二次世界大戦博物館。ブレッチリー・パークの規模と戦争短縮の推計)
- W. Diffie and M. E. Hellman, “New Directions in Cryptography”, IEEE Transactions on Information Theory, Vol. 22, No. 6 (1976). https://www-ee.stanford.edu/~hellman/publications/24.pdf (公開鍵暗号の考え方を最初に発表した論文。スタンフォード大学が公開しているPDF)
- R. L. Rivest, A. Shamir, and L. Adleman, “A Method for Obtaining Digital Signatures and Public-Key Cryptosystems”, Communications of the ACM, Vol. 21, No. 2 (1978). doi:10.1145/359340.359342 (RSA暗号の原論文)
- NIST, “NIST Releases First 3 Finalized Post-Quantum Encryption Standards”. https://www.nist.gov/news-events/news/2024/08/nist-releases-first-3-finalized-post-quantum-encryption-standards (アメリカの国立標準技術研究所。耐量子暗号標準(FIPS 203・204・205)の発表)
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