1. 時計は「数えて」いるだけ
1. 時間をはかるとは、くりかえしを数えること
1. 計時の原理 ── 周期を数える
むかしの 人は、どうやって 時間を はかったと 思いますか。
いちばん さいしょは かげです。
ぼうを 立てて おくと、 太陽が うごくのに あわせて かげも うごきます。
かげの ばしょで、 「いま だいたい これくらい」が わかる。
でも、こまった ことが あります。
くもりの 日と 夜は、つかえません。
そこで、べつの ものを つかいます。
- 水……あなから 少しずつ 落とす
- すな……すな時計ですね
- 火……お香を もやして、へった 長さを 見る
ぜんぶ ちがう ものですが、 やって いる ことは 同じです。
いつも 同じ はやさで すすむ ものを 見つけて、 どれだけ すすんだかを 数える。
いまの 時計も、これと 同じです。
昔の人は、どうやって時間をはかったのでしょう。
まず、影
いちばん古いのは 日時計 です。 棒を立てて、影の向きと長さで時刻を知ります。
使っているのは 地球の自転。 いつも同じ速さで回っているので、時計になります。
ただし弱点があります。曇りの日と夜は使えません。
だから、別のくりかえしを探した
そこで人は、天気に左右されないものを探しました。
| 時計 | 使っているもの | 困ること |
|---|---|---|
| 日時計 | 太陽の動き(地球の自転) | 曇りと夜はだめ |
| 水時計 | 水が落ちる速さ | 凍る。水の量で速さが変わる |
| 砂時計 | 砂が落ちる速さ | ひっくり返す人が必要 |
| 香時計 | お香が燃える速さ | 風や湿気で変わる |
香時計は面白い工夫です。 決まった太さのお香を燃やし、減った長さで時間を知ります。 目盛りのところに糸で重りを吊るしておけば、 燃えて糸が切れたときに重りが落ちて音が鳴る。目覚まし時計になります。
共通しているもの
影も、水も、砂も、火も、まるで別のものに見えます。
けれど、やっていることは同じです。
いつも同じ速さで進むものを見つけて、どれだけ進んだかを数える。
この先に出てくる機械式時計も、クオーツも、原子時計も、 全部これをやっています。違うのは「何を数えるか」だけです。
計時の原理は、周期的な現象を数えることに尽きます。 時計とは、周期の供給源と計数機構の組み合わせです。
初期の方式と、その限界
| 方式 | 周期の源 | 限界 |
|---|---|---|
| 日時計 | 地球の自転 | 夜間・曇天で使用不能。季節で影の軌跡が変わる |
| 水時計 | 水の流出 | 水位で流量が変わる(残量が減ると遅くなる)。凍結する |
| 砂時計 | 砂の流出 | 連続動作しない。湿気で詰まる |
| 香時計 | 燃焼速度 | 気流・湿度・香の均質性に左右される |
水時計の弱点は示唆的です。 水位が下がると水圧が下がり、流出が遅くなる。 つまり「一定」に見える現象が、実は一定ではなかった。
この問題への対処として、水位を一定に保つ補給槽を設ける工夫が生まれます。 周期の安定を保つために、周辺の仕組みが要るという構図は、 このあとの時計にもそのまま引き継がれます。
評価軸を分けて考える
時計の良し悪しは、いくつかの軸に分解できます。
- 安定性:周期が揺らがないか
- 可搬性:持ち運べるか
- 連続性:人手を介さず動き続けるか
- 分解能:どこまで細かく刻めるか
日時計は安定性が高い(地球の自転は非常に安定している)一方、 連続性がありません。砂時計は可搬だが連続しない。
時計の歴史は、この4つを同時に満たす方法を探した歴史だと読めます。
2. ぜんまいを、わざと ゆっくり ほどく
2. 機械式時計 ── 一気にほどけないようにする工夫
2. 機械式時計 ── 脱進機という発明
つぎに、ぜんまいの 時計です。
ぜんまいを まくと、 もどろうと する 力が たまります。
その 力で はりを 回します。
でも、ここで もんだいが あります。
そのまま だと、ぜんまいは いっきに ほどけて しまうのです。
ぐるぐるっと 回って、はい おわり。 これでは 時計に なりません。
そこで、すごい くふうが されました。
「止める」「ちょっと すすめる」を くりかえす しかけを 入れたのです[1]。
止める、すすめる、止める、すすめる。
時計の 音を 聞いた ことが ありますか。
カチ、カチ、カチ。
あの 音は、 止めて いる 音なのです。
次はぜんまいの時計、機械式時計 です。
力はあるが、速すぎる
ぜんまいを巻くと、戻ろうとする力がたまります。 その力で歯車を回し、針を動かします[1]。
ところが、そのままでは一気にほどけてしまいます。 数秒で終わり。これでは時計になりません。
力はある。足りないのは「ゆっくりさ」のほうでした。
止めては進める
そこで入れたのが 脱進機 というしかけです。
ガンギ車というギザギザの歯車を、 アンクルという部品が交互に押さえます[1]。
- アンクルがガンギ車を止める
- 少しだけ離して、1歯ぶん進ませる
- また止める
これをずっとくりかえします。
時計の「カチ、カチ」という音は、この止める音です。 あれは、進んでいる音ではなく、止めている音なのです。
速さを決めているのは、別の部品
では、どれくらいの間隔で止めるかは、何が決めているのでしょう。
テンプという輪と、ひげぜんまいという細いバネです。 この2つが左右に往復し、そのリズムがアンクルを動かします。
日本時計協会は、 テンプが回転する速さは、てん輪とひげぜんまいの組み合わせで決まり、 この調整で時計の精度がおおよそ決まるとしています[1]。
つまり機械式時計は、こう分かれています。
- ぜんまい……力を出す
- 脱進機……力を小分けにする
- テンプ……速さを決める
力を出す係と、速さを決める係を分けた。 これが機械式時計の発明の中身です。
機械式時計の本質は、動力と時間基準を分離したことにあります。
構成
| 部分 | 役割[1] |
|---|---|
| ぜんまい | 動力源。巻き上げた弾性エネルギーを供給する |
| 輪列 | トルクを伝達し、針の回転比を作る |
| 脱進機(ガンギ車+アンクル) | エネルギーの放出を断続的に制御する |
| 調速機(テンプ+ひげぜんまい) | 振動周期を決める。ここで精度がおおよそ決まる |
脱進機がしていること
脱進機は、2つの役目を同時に果たす部品です。
- 拘束:輪列を止め、ぜんまいが一気にほどけるのを防ぐ
- 供給:解放の瞬間にテンプへ力を渡し、振動を持続させる
後者が重要です。テンプは摩擦で減衰するため、 放っておけば止まります。 脱進機は、止めるついでに、振動を維持する力も渡しているのです。
「止める装置」であると同時に「振動を絶やさない装置」でもある。 この二重性が、機械式時計の中核です。
なぜ分離が効くのか
動力と時間基準を分けたことで、次が成り立ちます。
- ぜんまいの残量が変わっても、周期は大きく変わらない (水時計の水位問題を、構造で解決している)
- 精度を上げたければ、調速機だけを改良すればよい
- 動力源は、ぜんまいでも重錘でもよくなる
水道の記事で、 高所の配水池が需要変動を吸収していた話を書きました。 あいだに緩衝を置いて、上流の変動を下流に伝えないという構図は共通です。
そして次の章では、この「調速機」の部分だけが まったく別の原理に置き換わります。
3. 水しょうは、ふるえる
3. クオーツ ── 1969年、日本から出た1本
3. クオーツ ── 調速機を電子回路に置き換える
いまの ふつうの 時計は、 ぜんまいでは ありません。
クオーツと いいます。
中に、小さな 水しょうの かけらが 入って います。
水しょうには、ふしぎな せいしつが あります。
電気を ながすと、ふるえるのです。
しかも、いつも 同じ 数だけ ふるえます。
だから、その ふるえを 数えれば 時間が わかります。
テンプは 1びょうに 数回。 水しょうは 1びょうに 何千回も ふるえます。
こまかく 数えられる ぶん、 ずっと 正しく なりました。
この 時計を さいしょに 売ったのは、 日本の 会社です。
1969年 12月25日。 クリスマスの 日でした[2]。
いま身につけている時計の多くは、ぜんまいではありません。 クオーツ時計です。
水晶がふるえる
クオーツとは 水晶 のことです。
水晶には面白い性質があります。 電気をかけると、決まった速さでふるえるのです。
このふるえを数えれば、時間が分かります。 機械式のテンプと役割は同じですが、けた違いに速い。
| 1秒あたりのくりかえし | |
|---|---|
| 機械式のテンプ | 数回〜10回程度 |
| クオーツの水晶 | 数千〜数万回 |
細かく数えられるほど、ずれが小さくなります。 ものさしの目盛りが細かいほど、正確にはかれるのと同じです。
1969年12月25日
世界で初めて量産されたクオーツ腕時計は、日本から出ました。
セイコー クオーツアストロン 35SQ。 発売は 1969年12月25日 です[2]。
45万円です。1969年の45万円ですから、相当な高級品でした。
それが世界を変えた
この1本が、時計の世界をひっくり返します。
クオーツは、精密な手仕事がなくても正確でした。 しかも、作れば作るほど安くなります。
「高い時計ほど正確」とは限らなくなったのです。
長く高級時計を作ってきたスイスの産業は、大きな打撃を受けたと言われます。 この時期の変化を クオーツショック と呼びます。
そして今日、機械式時計は精度で選ばれる道具というより、 作りや歴史を味わうものとして扱われています。
評価される軸そのものが移った、という見方ができます。
クオーツ時計は、調速機を機械振動から電子的な振動に置き換えたものです。 動力と時間基準を分離するという2章の構造は、そのまま引き継がれています。
原理 ── 圧電効果
水晶には 圧電効果 があります。 力を加えると電圧が生じ、逆に電圧をかけると変形する性質です。
これを利用して、水晶片を決まった周波数で振動させます。 振動数は形状と切り出し方で決まるため、非常に安定します。
あとは、その振動を電子回路で分周し、 1秒ごとのパルスにして針やモーターを動かします。
なぜ精度が上がるのか
精度が上がる理由は、周波数の高さにあります。
周期が短いほど、1回あたりの誤差が全体に占める割合が小さくなる。 テンプが毎秒数回なのに対し、水晶は毎秒数千回以上振動します。
加えて、機械振動と違い摩擦や姿勢の影響を受けにくい点も効きます。
1969年12月25日、35SQ
世界初の量産型クオーツ腕時計は、セイコー クオーツアストロン 35SQ(1969年12月25日発売)です[2]。
| 項目 | 値[2] |
|---|---|
| 発売 | 1969年12月25日 |
| 精度 | 月差±5秒以内(機械式の約100倍) |
| 振動数 | 8192Hz |
| 消費電流 | 18μA |
| 価格 | 45万円 |
なお、現在のクオーツ時計で広く使われる 32768Hz は、 35SQ の 8192Hz とは異なる値です。 最初から32768Hzだったわけではありません。
32768 は 215 です。 2で15回割れば、ちょうど1Hz(1秒)になる。 分周回路で作りやすい数値が選ばれた、ということです。
クオーツショックという構造変化
クオーツの登場は、時計産業の競争軸を作り変えました。
| 機械式の時代 | クオーツ以後 | |
|---|---|---|
| 精度の源 | 職人の調整技術 | 部品の設計と量産精度 |
| 価格と精度 | 高いほど正確 | 安くても正確 |
| 優位の源泉 | 熟練の蓄積 | 電子技術と生産規模 |
それまで優位だった資産(熟練)が、そのままでは優位でなくなったのです。 この時期に既存の時計産業が受けた打撃を クオーツショック と呼びます。
そして現在、機械式時計は精度で選ばれる道具ではなくなりました。 仕上げ、機構の複雑さ、歴史といった、 精度とは別の軸で評価されています。
競争の軸が移ると、それまでの強みの意味も変わる。 技術的な優劣が、そのまま産業の帰結にならない場合がある、という例です。
(クオーツショック後の産業の動きについては、 この記事で挙げた出典の範囲を超える部分があります。 経緯の詳細は、時計産業史の資料をあたってください。)
4. いちばん 正しい 時計
4. 原子時計と、日本の時刻
4. 原子時計 ── 秒の定義そのもの
もっと 正しい 時計も あります。
原子時計と いいます。
水しょうより、ずっと ずっと 正しい。
じつは、1びょうの 長さは この 時計で きめられて います[3]。
「セシウム」と いう ものが、 きまった 回数だけ ふるえる 時間。 それが 1びょうです[3]。
その 回数は、なんと 9192631770回[3]。
91おく 9263まん 1770回 です。
日本の 時こくは、 ある けんきゅうじょが 作って います[3]。
テレビも、電車も、けいたい電話も、 そこの 時こくに あわせて うごいて います。
クオーツより、さらに正確な時計があります。原子時計 です。
1秒の長さは、ここで決まっている
ここが面白いところです。
そもそも「1秒」とは何秒なのか。
昔は「1日を24で割って、60で割って、また60で割ったもの」でした。 つまり地球の自転が基準だったのです。
いまは違います。1秒はこう決められています[3]。
セシウム133という原子が出す、決まった種類の電磁波が 9192631770回くりかえす時間[3]。
約91億9263万回です。半端な数に見えますが、理由があります。
それまでの1秒と、できるだけ同じ長さになるように決めたからです。 基準を取りかえるとき、いきなり長さが変わったら困りますね。
地球より正確なもの
なぜ地球の自転をやめたのでしょう。
地球の回り方が、少しずつ変わっていると分かったからです。 潮の満ち引きなどの影響で、ほんのわずかに揺らぎます。
原子のほうが安定していました。 いちばん正確な「くりかえし」を探した結果、地球より原子だったのです。
日本の時刻は誰が作っているのか
日本の標準時は、情報通信研究機構(NICT)という研究所が作っています[3]。
テレビの時報も、電車の運行も、携帯電話も、 もとをたどればここの時刻に合わせています。
「いま何時か」を、誰かが決めて配っている。 ふだん意識しませんが、そういう仕事があるのです。
原子時計は、原子のエネルギー準位間の遷移に対応する電磁波の周波数を 基準とする時計です。
秒の定義
1967年、秒の定義が天文由来から原子由来へ移されました。 現在の定義はこうです[3]。
セシウム133の基底状態の超微細遷移に対応する放射の 9192631770周期の継続時間[3]。
この数値が半端なのは、従来の秒(天文由来)にできるだけ一致させたためです。 定義を差し替えるとき、量そのものが飛ばないようにした結果です。
なぜ地球を基準にできなくなったか
地球の自転は、潮汐摩擦などの影響で厳密には一定ではありません。 測定精度が上がった結果、基準そのもののゆらぎが見えてしまったのです。
より安定な現象が見つかったら、基準を乗り換える。 1章から一貫している、この分野の基本的な動き方です。
2つの時系
ここから、時刻に2つの系統が生まれます[3]。
日本標準時(JST)は UTC に9時間を加えたもので、 情報通信研究機構(NICT)が生成・供給しています[3]。
NICT は、現在の秒の定義を実現するセシウム原子泉時計に加え、 将来の秒の定義を担うと期待される光格子時計の研究も進めています。 秒の定義そのものが、また乗り換わる可能性があるということです。
5. 「うるう」の 話
5. うるう年と、うるう秒
5. うるう秒 ── 廃止に向かっている調整
4年に 1どだけ、 2月が 29日まで ある 年が ありますね。
うるう年です。
なぜ あるのでしょう。
地きゅうが 太陽の まわりを 1しゅうするのに、 ちょうど 365日 かかる わけでは ないからです。
すこし はんぱが のこります。
そのままだと、だんだん ずれて 夏に 雪が ふる こよみに なって しまいます。
だから、ときどき 1日 足して なおすのです。
じつは、びょうにも 同じ ものが ありました。
うるう秒です。
地きゅうが じぶんで 回る はやさが すこし ずれるので、 ときどき 1びょう 足して いました[3]。
でも、これは これから やめる ほうこうで 話が すすんで います[4]。
きかいが こまるからです。
「うるう」がつくものが2つあります。年と、秒です。
うるう年
地球が太陽を1周するのに、ちょうど365日かかるわけではありません。 少し余ります。
そのままにすると、暦と季節がずれていきます。 何百年もたてば、夏に雪が降る暦になってしまう。
だから原則として4年に1度、2月に1日足して調整します。 ずれる前提で、あとから直すという考え方です。 (例外もあります。中学生むけの5章に書きました。)
うるう秒
同じことが、秒の世界にもありました。
原子時計はきっちり一定に進みます。 けれど地球の自転は、わずかに揺らぎます。
放っておくと、時計の時刻と、太陽の位置がずれていく。
そこで、ずれが大きくなりすぎないように、 ときどき1秒を足して調整してきました。これが うるう秒 です。
1972年から始まり、これまで27回実施されています[3]。
それをやめることになった
ところが、このうるう秒をやめる方向で話が進んでいます[4]。 ただし、まだ完全に決まりきったわけではありません。
理由は、機械が困るからです。
いまの世の中は、コンピュータどうしが時刻を合わせて動いています。 そこに突然「今日は1分が61秒あります」と言われると、 対応できない機器が出てきます。実際に障害が起きたこともありました。
人のための調整が、機械にとっては事故のもとになった。
そこで、しばらく足すのをやめて、 ずれがもっと大きくなってから考えることになりました。
ずれを許すことにしたわけです。 どちらを優先するかという、価値の選択でもあります。
暦と時刻には、いずれも基準のずれを事後に補正する仕組みがあります。
うるう年 ── 暦の補正
地球の公転周期は365日ちょうどではないため、 暦と季節が徐々にずれます。 これを4年に1度の1日挿入で補正するのが、うるう年です。
さらに細かい補正として、 100で割り切れる年は平年、400で割り切れる年は閏年、 という規則が加わっています(グレゴリオ暦)。 補正の補正が入っているわけです。
うるう秒 ── 時刻の補正
協定世界時(UTC)は原子時計に基づきますが、 地球の自転(UT1)とのずれが 0.9秒以上にならないよう管理されてきました[3]。
その手段が うるう秒 です。 1972年以降、これまで27回実施されています[3]。
廃止へ
このうるう秒は、廃止の方向で国際的な合意が進んでいます。
国立天文台の解説によれば、 2023年11月の世界無線通信会議(WRC-23)で 2035年までにUTCを標準として運用することが決定されました。 さらに2026年10月の第28回国際度量衡総会(CGPM)で、 |UT1−UTC| の誤差限界を3600秒に設定し、 2027年5月20日から実施することが予定されています[4]。
3600秒への変更と2027年5月20日という日付は、 出典が「予定」として記している段階のものです。 この記事を書いた時点で、確定した制度として扱うことはできません。
「うるう秒は廃止が決まった」と単純化せず、 現在進行中の議論として読んでください。 最新の状況は国立天文台やNICTの発表で確認できます。
この案が実施されれば、許容するずれは0.9秒から3600秒(1時間)に広がります。 1時間ずれるまでは補正しないことになり、当面はうるう秒が入りません。
なぜやめようとしているのか
理由は、情報システムとの相性です。
- コンピュータは、時刻が単調に増えることを前提に作られている
- 1分が61秒になる事態を、多くのソフトウェアは想定していない
- 実際に、うるう秒の挿入時に障害が発生した例がある
- 金融取引やログの突き合わせでは、時刻の一貫性が決定的に重要
天文現象への忠実さと、システムの安定性が対立したのです。
何を選んだのか
この決定は、単なる技術的な調整ではありません。
「時刻は太陽の位置に合っているべきか」という前提を、部分的に手放した ということだからです。
1章で見たとおり、時計はもともと地球の自転を数えるものでした。 そこから原子へ基準を移し、いまや 地球とのずれを1時間まで許容するところまで来ています。
もっとも、1時間ずれるには非常に長い年月がかかるため、 日常生活で気づくことはありません。 問題を先送りしたともいえるし、優先順位を正直に反映したともいえます。
6. じぶんでも たしかめて みる
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分で確かめる ── 数えてみる
時計は、まわりに たくさん あります。
- 音を 聞く。 カチカチ いう 時計を さがして、 1びょうに 何回 なるか 数えて みましょう。
- 時計を くらべる。 家じゅうの 時計を 見て、 ぜんぶ 同じ 時こくか たしかめて ください。
- かげで 時計を 作る。 庭に ぼうを 立てて、 1時間ごとに かげの さきに 石を おく。 日時計の できあがりです。
- 2月を 見る。 ことしの 2月は 何日まで ありましたか。
時計は身近なので、確かめやすい題材です。
- 秒針の動き方を見る。1秒ごとにカチッと動くもの(クオーツ)と、 なめらかに流れるもの(機械式)があります。動き方で見分けられます。
- 家中の時計を比べる。何秒ずれていますか。 電波時計やスマホは、自動で合わせています。
- 日時計を作る。棒を立てて、1時間ごとに影の先へ印をつける。 1章の話が体験できます。
- 暦を確かめる。1900年と2000年、どちらがうるう年だったでしょう。 5章の「補正の補正」で答えが出ます。
関連する記事
- 世界中でバラバラに作ったものが、なぜ動くのか(時刻をそろえる話にもつながります)
原理が単純なので、手を動かして確かめやすい分野です。
やってみる
- テンプの振動数を数える:機械式時計の音を録音し、 一定時間の打数を数える。毎秒何回振動しているかが分かる
- 時計の日差を測る:正確な時刻と比べ、1日でどれだけずれるかを記録する。 数日続けると、進むのか遅れるのかの傾向が見える
- 32768 を確かめる:215 を計算し、 2で割り続けると1になることを確認する。分周の考え方が分かる
- うるう年の規則を検証する:1900年、2000年、2100年が それぞれ閏年かどうかを規則から判定する
調べる入口
- NICT 日本標準時プロジェクト(日本の時刻がどう作られているか)
- 国立天文台 暦計算室(暦とうるう秒の解説)
- 日本時計協会「時計の技術」
考えてみると面白いこと
- 基準を乗り換えるとき、なぜ「前と同じ長さ」にそろえる必要があるのか
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- 技術で負けた産業が、別の価値で生き残るには何が要るのか
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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- 一般社団法人 日本時計協会(JCWA)「機械式時計」 https://www.jcwa.or.jp/time/tech/tech08.html (ぜんまいを動力源として伝達輪列で針を動かすこと、脱進機がガンギ車とアンクルで構成されエネルギー放出を調整すること、てんぷの速さがてん輪とひげぜんまいの組み合わせで決まり、その調整で精度がおおよそ決まること)
- セイコーウオッチ「今に生きるセイコー クオーツアストロンの偉業」 https://www.seikowatches.com/jp-ja/products/astron/special/story_qa50th_1 (1969年12月25日発売、世界初の量産型クオーツ搭載腕時計、月差±5秒以内、機械式の約100倍の精度、Cal.35SQ が 8192Hz、消費電流18μA、定価45万円)
- 情報通信研究機構(NICT)「国際原子時・協定世界時とうるう秒」 https://jjy.nict.go.jp/mission/page1.html (秒の定義がセシウム133の超微細遷移に対応する放射の9192631770周期であること、国際原子時が1958年1月1日0時に開始したこと、UT1とUTCの差が0.9秒以上にならないよう管理されること、うるう秒が1972年以降27回実施されていること、日本標準時をNICTが生成・供給していること)
- 国立天文台 暦計算室「暦Wiki/時刻/うるう秒がなくなる?」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/ (2023年11月のWRC-23で2035年までにUTCを標準として運用することが決定されたこと、2026年10月の第28回CGPMで |UT1−UTC| の誤差限界を3600秒に設定し2027年5月20日から実施する予定であること。ページの最終更新は2026年6月7日)
日時計・水時計・砂時計・香時計の説明、圧電効果、 32768Hz が 215 であることと分周の関係、 グレゴリオ暦のうるう年の規則、クオーツショックという呼び名については、 広く知られている内容として書いています。
うるう秒の廃止は、現在進行中の話です。 日程や数値は今後変わる可能性があります。 最新の状況は、国立天文台やNICTの発表でご確認ください。
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