1. コラーゲンは、体を ささえる いとの ような もの
1. コラーゲンは、体を支える糸のようなもの
1. コラーゲンは、体のタンパク質の3割を占める構造材
コラーゲンは、体の 中に ある「タンパクしつ」の 1つだ。皮ふや ほね、すじ(けん)などに たくさん ふくまれていて、体の かたちを ささえる いとの ような やくめを して いる(ただし ほんとうに いとでは なく、細い せんいの あつまりだ)[1]。
じつは、体の 中に ある タンパクしつの およそ 3ぶんの1が、この コラーゲンだと いわれて いる[1]。
2. コラーゲンは、3本の いとが よりあわさって できて いる
2. コラーゲンは、3本の糸がよりあわさってできている
2. 1950年代の研究が、三重らせん構造を明らかにした
コラーゲンを ズームインして 見ると、3本の 細長い ひもが、なわの ように よりあわさった かたちを して いる。これを「さんじゅう らせん こうぞう」と よぶ[2]。
この かたちが くわしく わかったのは、1950年代の ことだ。研究者たちが、目に 見えない くらい 小さな コラーゲンの かたちを、とくしゅな 光(X線)を つかって しらべた[2]。
コラーゲンをズームインして見ると、3本の細長いひもが、なわのようによりあわさった形をしている。これを「三重らせん構造」と呼ぶ[2]。
この形がくわしくわかったのは、1950年代のことだ。研究者たちが、目に見えないくらい小さなコラーゲンの形を、特殊な光(X線)を使って調べた[2]。
コラーゲンの分子は、アミノ酸が連なった鎖を3本、右巻きのらせん状によりあわせた「三重らせん構造」をしている。この構造をX線でくわしく調べる研究が進み、1954年にG・N・ラマチャンドランとG・カルタがモデルを提案、翌1955年には両者がこれを改訂した。同じ1955年には、A・リッチとF・クリックも別の三重らせんモデルを発表しており、その後も検討が重ねられながら、この構造の理解が深まっていった[2]。
このクリックとは、DNAの二重らせん構造を1953年に発表したことで知られるフランシス・クリックと同一人物である。生命を形づくる2つの有名な「らせん」の解明に、同じ研究者がかかわっていたことになる[2]。
3. たべた コラーゲンは、お はだの コラーゲンに なるの?
3. 食べたコラーゲンは、お肌のコラーゲンになるのか
3. 消化のしくみと、血液から見つかったコラーゲンペプチド
コラーゲンを たべても、体の 中で しょうかされて、バラバラの 小さな つぶ(アミノさん)に わけられて しまう。だから「たべた コラーゲンが、そのまま お はだに とどく」わけでは ない[3]。
ところが、さいきんの けんきゅうで、コラーゲンの 中には、バラバラに ならずに、少しだけ つながった まま 体に 入って いく ぶぶんが ある ことも わかって きた。ただし、これが 見つかった ことと、それが お はだの やくに たつと しょうめいされた ことは べつの 話だ。まだ すべて わかって いる わけでは ない[3]。
コラーゲンを食べても、体の中で消化されて、バラバラの小さな粒(アミノ酸)に分けられてしまう。だから「食べたコラーゲンが、そのままお肌にとどく」わけではない[3]。
ところが、最近の研究で、コラーゲンの中には、バラバラにならずに、少しだけつながったまま体に入っていく部分があることもわかってきた。ただし、これが見つかったことと、それがお肌の役に立つと証明されたことは別の話だ。まだすべてわかっているわけではない[3]。
コラーゲンも他のタンパク質と同じく、消化酵素によってアミノ酸や、アミノ酸が数個つながったペプチドにまで分解されるため、そのままの形で吸収されるわけではない。分解された後のアミノ酸が、再び皮膚や関節でコラーゲンの材料として使われるかどうかは、長らくはっきりしないとされてきた[3]。
一方で近年の研究では、摂取後の血液を調べたところ、コラーゲンの一部がアミノ酸まで完全に分解されず、短いアミノ酸のつながり(コラーゲンペプチド)のまま血液中に現れる例が確認されている。ただし、こうしたペプチドが血中で検出されたことと、それが皮膚や関節で実際に効果を発揮すると証明されたこととは別の問題である。臨床試験では、皮膚の弾力の改善が見られた研究がある一方、水分量やシワへの効果は認められなかった研究もあり、結果は指標や製品によって異なる。どの程度・どのように摂取すればよいかも含めて、まだ明確になっていない点が多い[3]。
4. 年を とると、コラーゲンは へって いく
4. 年をとると、コラーゲンは減っていく
4. 線維芽細胞のはたらきが、年齢とともに落ちる
お はだの 中には、コラーゲンを つくる こうじょうの ような さいぼうが ある。でも、年を とると、この さいぼうの はたらきが おちて いく。すると、コラーゲンが つくられる りょうよりも、こわれて いく りょうの ほうが 多く なって いく[4]。
お肌の中には、コラーゲンを作る工場のような細胞がある。でも、年をとると、この細胞のはたらきが落ちていく。すると、コラーゲンが作られる量よりも、こわれていく量のほうが多くなっていく[4]。
皮膚の真皮にある「線維芽細胞」という細胞が、コラーゲンなどを作り出している。研究では、加齢した皮膚では線維芽細胞のはたらきやコラーゲン線維との接触のしかたが変化し、コラーゲンの合成量が低下する例が報告されている。こうした変化は主に皮膚について調べられたものであり、体のすべての部位で同じしくみが当てはまると確認されているわけではない[4]。
5. コラーゲンは、ゼリーや しゃしんにも つかわれて いる
5. コラーゲンは、ゼリーや写真にも使われている
5. ゼラチンや写真フィルムなど、コラーゲンは体の外でも使われている
体の 中で はたらく コラーゲンは、じつは くらしの 中にも かたちを かえて 入りこんで いる。コラーゲンを おゆで にると、「ゼラチン」と いう べつの ものに かわる。この ゼラチンは、ゼリーや グミを かためる ために つかわれて いる[5]。
じつは むかしの しゃしんフィルムにも、この ゼラチンが つかわれて いた。フィルムの 上に、光に はんのうする つぶを うめこんで おく「のり」の ような やくめと、げんぞうえきを しみこませる やくめの、2つを はたして いたのだ(ただし ほんとうの のりでは なく、つぶを ならべて とどめて おく やくめの ゼラチンだ)[5]。
体の中ではたらくコラーゲンは、実は暮らしの中にも形を変えて入りこんでいる。コラーゲンをお湯で煮ると、「ゼラチン」という別のものに変わる。このゼラチンは、ゼリーやグミを固めるために使われている[5]。
実は昔の写真フィルムにも、このゼラチンが使われていた。フィルムの上に、光に反応する粒をうめこんでおく「のり」のような役目と、現像液をしみこませる役目の、2つを果たしていたのだ[5]。
体内ではたらくコラーゲンは、実は暮らしの中にも姿を変えて入りこんでいる。コラーゲンを加熱すると三重らせん構造がほどけて変性し、さらに製造の過程で部分的に分解されることで、水溶性のゼラチンになる。ゼラチンの起源は古代エジプトのニカワ(膠)にさかのぼり、1700年ごろのヨーロッパで工業的な生産が始まった後、19世紀には食用としても広まった[5]。
19世紀末以降は、写真フィルムや印画紙の感光乳剤にもゼラチンが使われるようになった。感光物質であるハロゲン化銀の微粒子をゼラチンの層の中に均一に保持する役目と、現像・洗浄の際に薬液が層の中にしみこみやすくする役目を、あわせて果たしていた。このほか、皮を加工した皮革の主成分もコラーゲンであり、医療の分野でも止血材や美容医療の注入剤としてコラーゲンが利用されている[5]。
6. きょうりゅうの 化石から、コラーゲンが 見つかった
6. 恐竜の化石から、コラーゲンが見つかった
6. 2007年、ティラノサウルスの化石にコラーゲンが保存されていたと報告された
コラーゲンは、こわれにくい じょうぶな タンパクしつだ。2007年、6800万年 前の ティラノサウルスの 化石の ほねから、コラーゲンが 見つかったと はっぴょうされた[6]。
その コラーゲンの ぶぶんの ならびかたを しらべると、ニワトリの コラーゲンと にて いる ところが あった。きょうりゅうと 鳥が、なかまだと いう しょうこの 1つに なって いる[6]。
コラーゲンは、こわれにくいじょうぶなタンパク質だ。2007年、6800万年前のティラノサウルスの化石の骨から、コラーゲンが見つかったと発表された[6]。
そのコラーゲンの部分の並びかたを調べると、ニワトリのコラーゲンと似ているところがあった。恐竜と鳥が、仲間だという証拠の1つになっている[6]。
2005年、ノースカロライナ州立大学のメアリー・シュワイツァー氏らの研究チームは、6800万年前のティラノサウルスの化石の大腿骨に、しなやかな血管のような構造が保存されていることを報告した。2007年には、ハーバード大学医学部のジョン・アサラ氏らを含む研究チームが、この骨組織の中にコラーゲンのタンパク質がわずかに保存されていたとする分析結果を発表した[6]。
化学分析では、10〜20個ほどのアミノ酸が連なった複数の配列が得られ、研究チームはこの配列が現生の動物の中ではニワトリのコラーゲンにもっとも近く、カエルやサンショウウオのコラーゲンの一部とも近い配列があると報告した。この解釈については、化石の保存状態や試料が汚染されていた可能性をめぐって、他の研究者から検証や議論も続けられている。それでも、恐竜と鳥類・両生類との類縁関係を考えるうえで注目された発見であることに変わりはない[6]。
じぶんの 耳たぶを さわって、コラーゲンを かんじて みよう
自分の耳たぶをさわって、コラーゲンを感じてみよう
博物館の恐竜展示で、化石研究の最前線にふれる
じぶんの 耳たぶを つまんで みよう。少し かたいけど、まがる。あの かんしょくを つくって いるのが、なんこつの 中に ぎっしり つまった コラーゲンだ。
自分の耳たぶをつまんでみよう。少しかたいけど、曲がる。あの感触をつくっているのが、軟骨の中にぎっしりつまったコラーゲンだ。
恐竜展示のある博物館では、化石そのものだけでなく、化石からどんな分析が行われているかを紹介するコーナーがあることもある。機会があれば、骨の内部構造や、そこから読み取れる進化の手がかりについての解説を探してみてほしい。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
- フリー百科事典『ウィキペディア』「コラーゲン」、キューサイ「コラーゲンとは?タンパク質の約30%を占める成分の栄養や働きを解説」、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「コラーゲン」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/コラーゲン https://www.kyusai.co.jp/shop/information/column-healthcare-collagen https://hfnet.nibn.go.jp/column/detail2204/ (コラーゲンが脊椎動物の真皮・靭帯・腱・骨・軟骨などを構成し細胞外マトリックスの主成分であること、ヒトでは全タンパク質のおよそ3割を占めるとされること、ヒトで約30種類の型がありI型が皮膚・腱・骨に、II型が軟骨に多いという代表的な傾向があることは、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所およびウィキペディア・キューサイの解説記事による。同じ組織内に複数の型が分布し1つの部位に1つの型だけが対応するわけではないことは、これらの資料を突き合わせて確認した)
- 日本結晶学会誌掲載論文「コラーゲン様三重らせんペプチドを利用した生化学研究」、G. N. Ramachandranのウィキペディア(英語版)項目、Ramachandran「Structure of Collagen」(Nature, 1956)。 https://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/10/82-06-03.pdf https://en.wikipedia.org/wiki/G._N._Ramachandran https://www.nature.com/articles/177710b0 (コラーゲン分子がアミノ酸の鎖3本からなる三重らせん構造をしていることは日本結晶学会誌の解説論文による。1954年にG・N・ラマチャンドランとG・カルタがモデルを提案し翌1955年に改訂したこと、同じ1955年にA・リッチとF・クリックが別の三重らせんモデルを発表したことは、ラマチャンドラン自身による1956年のNature誌論文〈1954年の提案と1955年の改訂、リッチとクリックの1955年論文をそれぞれ記載〉による。フランシス・クリックが1953年にDNAの二重らせん構造の発表にもかかわった人物であることは広く知られている科学史の事実である)
- 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「コラーゲン」、日本経済新聞「コラーゲンサプリは本当に効くのか? 科学的根拠を検証」。 https://hfnet.nibn.go.jp/column/detail2204/ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC265ON0W3A520C2000000/ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30248982/ (コラーゲンが消化酵素によってアミノ酸やペプチドにまで分解されるため完全な形では吸収されないこと、吸収後のアミノ酸が再び皮膚や関節でコラーゲンの材料に使われるかは定かでないこと、臨床試験で皮膚の弾力改善が見られた例がある一方水分量やシワへの効果は認められなかった研究もあり指標や製品によって結果が異なること、摂取量や摂取方法が明確になっていないことは国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所による。血中に短いアミノ酸のつながり〈コラーゲンペプチド〉の形で吸収される例が確認されてきていることは日本経済新聞の報道および一次研究(PubMed掲載の抄録)による。ペプチドの血中検出そのものは臨床的な効果の証明ではないことは、これらの資料を突き合わせて確認した)
- 資生堂コラーゲンラボ「コラーゲンのメカニズム」、キューサイ「コラーゲンとは?タンパク質の約30%を占める成分の栄養や働きを解説」、皮膚老化に関する学術論文(PMC)2件。 https://www.shiseido.co.jp/collagenlabo/know/mechanism/ https://www.kyusai.co.jp/shop/information/column-healthcare-collagen https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1606623/ https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2631323/ (皮膚の真皮にある線維芽細胞がコラーゲンを作り出していること、この線維芽細胞のはたらきが弱ると肌の構造が弱くなることは資生堂コラーゲンラボによる。加齢した皮膚で線維芽細胞の機能変化やI型プロコラーゲン合成量の低下、線維芽細胞とコラーゲン線維との接触の低下が報告されていることは学術論文(Varani et al.、Fisher et al.)による。これらの知見は主に皮膚についてのものであり全身のコラーゲン変化を一つのしくみで説明するものではないことは、これらの資料を突き合わせて確認した)
- 日本ゼラチン・コラーゲン工業組合「ゼラチンって何?」、フリー百科事典『ウィキペディア』「写真フィルム」「コラーゲン」、コラーゲン素材の加工に関する学術レビュー(PMC)、Gelatine Manufacturers of Europe「Photography and Art」。 https://www.gmj.or.jp/gelatin/introduction.html https://ja.wikipedia.org/wiki/写真フィルム https://ja.wikipedia.org/wiki/コラーゲン https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6423854/ https://www.gelatine.org/en/applications/photography-and-art.html (ゼラチンの起源が古代エジプトのニカワにさかのぼり1700年ごろのヨーロッパで工業生産が始まり19世紀に食用ゼラチンが広まったことは日本ゼラチン・コラーゲン工業組合の解説による。コラーゲンの加熱変性と製造過程での部分的な分解を経てゼラチンになることは学術レビュー(PMC)による。写真フィルム・印画紙の感光乳剤にゼラチンが用いられハロゲン化銀の微粒子を保持する役目と現像・洗浄液の浸透を助ける役目を果たしたことはウィキペディア「写真フィルム」およびGelatine Manufacturers of Europeの解説による。皮革の主成分がコラーゲンであること、医療分野での止血材・注入剤としての利用はウィキペディア「コラーゲン」による)
- 日経サイエンス「恐竜のコラーゲン」、ナショナル ジオグラフィック日本版「最古の恐竜のタンパク質を発見」、Schweitzer et al.(2005, 2007)原論文抄録、配列解釈への検証論文(Buckley et al.)。 https://www.nikkei-science.com/?p=17631 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/1167/ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15790853/ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17431179/ (2005年にノースカロライナ州立大学のメアリー・シュワイツァー氏らが6800万年前のティラノサウルスの化石の大腿骨にしなやかな血管様構造が保存されていると報告したこと、2007年にハーバード大学医学部のジョン・アサラ氏らを含む研究チームがこの骨組織中にコラーゲンIが低濃度で保存されていたとする分析結果を発表したことは原論文の抄録による。このアサラ氏らの2007年の報告において、化学分析で得られたアミノ酸配列が現生動物の中でニワトリのコラーゲンにもっとも近く、カエルやサンショウウオの配列とも近いとされたことは日経サイエンスおよびナショナル ジオグラフィック日本版の記事による。この2007年の配列解釈について、化石の保存状態や試料汚染の可能性を理由に異論を示す論文が別の研究者〈Buckley氏ら〉から発表され、検証・議論が続けられていることは、その検証論文自体による)
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