1. どのくらい はばたかなかったの?
1. 5時間、羽ばたかなかった鳥
1. 記録装置が残した「羽ばたき約1%」という数字
アンデスコンドルは、体が とても おもい 鳥です。大きい ものでは、15キロ ちかくに なります。お米の 5キロの ふくろ、3つぶんです[1]。
この 鳥に 記ろく そうちを つけて しらべた けんきゅうが ありました。1わは、5時間 まったく はばたかず、172キロを とびました[2]。
コンドル 8わで、あわせて 216時間いじょうを しらべると、羽を うごかしていた 時間は、とんでいた 時間の 1パーセントほどでした[2]。
2. はばたくのは、いつ?
2. 羽ばたきの大半は、飛び立つ瞬間に使われる
2. 羽ばたきの偏り ── 飛び立ちに集中する
それなら、いつ はばたくのでしょう。けんきゅうでは、はばたきの 4分の3いじょうが、とびたつ ときだったと ほうこくされました[4]。
ジェットきが とびたつ ときに、いちばん 力を 出すのと にています。ただし、ほんとうの 鳥は、空に あがった あとも、ときどき はばたきます。
とびたって しまえば、ながい 時間、はばたきません。それでは、なにに のっているのでしょうか。
では、その約1%は、いつ使われたのでしょう。この研究では、羽ばたきの75%以上が飛び立ちのときだったと報告されています[4]。
重い体を地面から持ち上げる最初の一押しには、羽ばたきが必要なようです。飛び立ってしまえば、長い時間ほとんど羽ばたかずに過ごします。
羽ばたかない間、体を支えているものがあるはずです。それが次の章の主役、上昇気流です。
3. 空気の あわって、なに?
3. 太陽が作る、見えない上昇気流「サーマル」
3. サーマル ── 断続的に立ちのぼる熱上昇気流
コンドルが のっていたのは、上へ のぼる 空気の 流れです。名前は「サーマル」と いいます。
太陽で 地面が 温まると、そこの 空気も 温かく なり、まわりより かるく なって、上へ のぼります[5]。
この 空気は、おなべの そこから ぽこぽこ 出る あわのように、とびとびに 上がります。どこから、いつ 出るかも、きまっていません[1]。ただし、ほんとうの 空気は 目に 見えません。
4. のぼって、すべって、また のぼる
4. 円を描いて登り、滑って次へ
4. 上昇と滑空の組み合わせ ── 距離は滑空で稼ぐ
コンドルは、サーマルの 中で、ぐるぐると まるく まわりながら、上へ のぼります[3]。
高く なったら、はばたかずに ななめに すべります。そして、つぎの サーマルを さがします[3]。
たとえば、エレベーターで 上まで あがり、すべり台で とおくへ すべる ようなものです。ただし、すべり台は 下に むかう だけで、鳥は 空の 中を すすみます。
のって いる ときも、ラクを して いるのでは ありません。しっぽの 羽を 左右に かたむけて、こまかく バランスを とっています[6]。
サーマルを見つけたコンドルは、円を描いて上へ登り、十分な高さになったら滑空します。羽ばたかずに斜めに降りながら進み、次の上昇気流を探す、という繰り返しです[3]。
滑空は羽ばたきよりエネルギーを使いませんが、そのままでは高度が下がります。そこで、滑空が得意な鳥は、上昇気流で高さを稼ぎ、滑空で距離を稼ぎます。上昇気流に乗って浮かぶことを、帆翔(ソアリング)と呼びます[6]。
エレベーターで上へ行き、すべり台で遠くへ進むような組み合わせです。ただし鳥は、すべり台と違って、空中で向きを選べます。
楽々と浮かんで見えますが、尾羽を左右に傾けて、細かくバランスをとっています[6]。
帆翔をする鳥は、サーマルの中で登り、次のサーマルへ滑空することで、飛行にかかるエネルギー消費を減らす[7]。滑空は羽ばたきより省エネだが高度を保てないため、上昇気流で高度を稼ぎ、滑空で距離を稼ぐ飛び方になる[6]。コンドルも、上昇気流で上空へ上がり、旋回と滑空をしながら次の上昇気流を見つけて飛んでいた[3]。
浮いているだけに見えても、尾羽を左右に傾けて繊細にバランスをとる能動的な飛び方である[6]。なお、12種・100個体超の追跡データを比べた研究では、翼面荷重(体重÷翼面積)が大きい種ほど速く飛び、旋回の輪も大きくなる、という共通の規則が見られた[8]。重い鳥ほど大きな円を描く傾向、という読み方になる。
5. いちばん むずかしいのは、どこ?
5. 難所は、サーマルとサーマルの間
5. 乗り継ぎ ── 羽ばたきが増える場面
いちばん むずかしいのは、サーマルと サーマルの あいだだと かんがえられて います。
つぎの サーマルが みつからないと、おりたく ないのに、下まで おりて しまう おそれが あるからです[2]。
けんきゅうでは、サーマルを のりかえる ときや、地面に ちかづいた ときに、はばたきが ふえました[2]。ふえた わけは、けんきゅうした 人たちの かんがえです。
6. じょうずに なるのに、けいけんは いるの?
6. 経験と、もう一つの上昇風
6. 経験による差と、地形性上昇風
コンドルとは ちがう ハゲワシの けんきゅうで、大人と 子どもの とび方を くらべました。かぜの ちがいが ちゅうくらいの ときに、大人の ほうが、うまく 上に のぼれていました[7]。
ソアリングの うでまえは、けいけんで あがるのかも しれません。ただし、ひとつの けんきゅうの 話です。
また、上へ のぼる 風は、太陽で できる ものだけでは ありません。風が 山の しゃめんに ぶつかって、上むきに まがる ことも あります[9]。
ソアリングの腕前は、経験で上がるのでしょうか。コンドルではなく、シロエリハゲワシの追跡で、成鳥と幼鳥を比べた研究があります[7]。風の向きや強さが高さで変わる度合い(風のシア)が中くらいの条件、とくにサーマルの風下側で、成鳥のほうが上昇率が高くなりました。幼鳥は効率が悪く、エネルギーを多く使っていました。
サーマルの選び方に差は見られず、差が出たのは、そうした条件での上がり方でした。技術は経験で上がるのかもしれない、という報告です。
上昇気流はサーマルだけではありません。アフリカのクロワシの研究では、風が山の斜面や尾根にぶつかって上向きに曲がる「地形性上昇風」も使われると整理されています[9]。この鳥の研究を、すべてのワシに広げることはできません。
7. 空を 見あげて みよう
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
うちの まわりの 空でも、鳥が はねを ひろげて、まるく まわって いる ことが あるかもしれません。もし 見つけたら、しばらく 見て みましょう。
はばたいた 回数を 数えたり、そのまま どこへ すすむか、目で おって みたり できます。太陽を 見つめたり、道路に 出たり しないよう、気を つけて ください。
もっと 知りたい人は、図書館の 鳥の 本で「ソアリング」を 引いて みましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った事実の出どころ。実際に開いて確かめた資料のみ載せている。PNAS原論文は取得できず、数値は大学発表・報道経由。
- EurekAlert! スウォンジー大学の発表(コンドルのサーマル利用) https://www.eurekalert.org/news-releases/824072 (最大約15kg・ラバランプのたとえ・ソアリング依存の理論)
- Phys.org(Williams et al., PNAS 2020の紹介) https://phys.org/news/2020-07-flight-heaviest-soaring-birds.html (羽ばたき約1%・5時間172km・乗り継ぎ時の羽ばたき増加)
- つくばサイエンスニュース「コンドルはほとんど羽ばたかずに飛んでいた」 https://www.tsukuba-sci.com/ (平均1.3%・上昇と滑空の繰り返し)
- BirdWatching Daily「Study: Soaring Andean condors rarely flap their wings」 https://www.birdwatchingdaily.com/news/science/study-soaring-andean-condors-rarely-flap-their-wings/ (羽ばたきの75%以上が飛び立ち)
- 日本学生航空連盟「上昇気流」 https://www.jsal.or.jp/page/lift (サーマルとは)
- 平塚市博物館「飛び方のいろいろ」 https://www.hirahaku.jp/hakubutsukan_archive/seibutsu/00000059/28.html (帆翔・滑空・尾羽のバランス)
- Scientific Reports「Adult vultures outperform juveniles in challenging thermal soaring conditions」 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4904409/ (サーマル利用による省エネ・成鳥と幼鳥の差)
- Keskin et al. “Adaptive cross-country optimisation strategies in thermal soaring birds”(arXivに掲載された論文) https://arxiv.org/abs/2409.03849 (翼面荷重と旋回)
- Ecology and Evolution「Where eagles soar」(クロワシ) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6053586/ (サーマルと地形性上昇風)
なおした ところ
更新履歴
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