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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

おもい コンドルは、なぜ はばたかずに 5時間も とべるの?

15kgの鳥が5時間、一度も羽ばたかなかった ── コンドルと上昇気流の乗り継ぎ

アンデスコンドルのサーマル・ソアリング ── 羽ばたき約1%の飛行を支える上昇気流の乗り継ぎ(Williams et al., 2020ほか)

分野:生きもの

コンドルという 大きな 鳥が、5時間、1回も はばたかずに、172キロ とんだ ことが ありました。

体が おもいのに、どうして おちないのでしょう。空の 見えない 道を、たどって みます。

体重が最大で約15kgになる、アンデスコンドル。研究者が取りつけた記録装置には、この鳥が5時間、一度も羽ばたかずに約172km飛んだ様子が残っていました[1][2]。

これだけ重い体を、羽ばたかずに空へ浮かべ続けるには、何かに乗っているはずです。それは何で、どう乗り継いでいくのか。研究の報告をもとに追います。

アンデスコンドルは、飛ぶ鳥のうち最も重い部類で、最大約15kgに達する[1]。記録装置をつけた個体の追跡で、飛行時間のうち羽ばたいていたのは約1%(日本語の紹介では平均1.3%)にとどまり、1羽は5時間連続で羽ばたかずに約172kmを飛んだと報告されている[2][3]。

この飛び方を支えるサーマル(熱上昇気流)の性質、上昇と滑空の組み合わせ、乗り継ぎの難しさ、経験による差を、出典を突き合わせて整理する。

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1. どのくらい はばたかなかったの?

1. 5時間、羽ばたかなかった鳥

1. 記録装置が残した「羽ばたき約1%」という数字

アンデスコンドルは、体が とても おもい 鳥です。大きい ものでは、15キロ ちかくに なります。お米の 5キロの ふくろ、3つぶんです[1]。

この 鳥に 記ろく そうちを つけて しらべた けんきゅうが ありました。1わは、5時間 まったく はばたかず、172キロを とびました[2]。

コンドル 8わで、あわせて 216時間いじょうを しらべると、羽を うごかしていた 時間は、とんでいた 時間の 1パーセントほどでした[2]。

アンデスコンドルは、最大で約15kgに達し、ソアリング(羽ばたかずに浮かぶ飛び方)をする鳥としては最も重いとされます[1]。お米の5kg袋なら3つ分です。

研究者は、成長途中のコンドル8羽に記録装置をつけました。合わせて216時間以上の飛行を調べると、羽ばたいていた時間は全体の約1%でした[2][3]。ある1羽は、5時間続けて一度も羽ばたかずに、約172km進んでいます[2]。

216時間の1%は、およそ2時間です。ほとんど羽ばたかない、というより、羽ばたく時間のほうが例外に近い飛び方でした。

アンデスコンドルは、最大約15kgに達し、ソアリング鳥(帆翔する鳥)のなかで最も重いとされる[1]。「飛ぶ鳥で最重量」ではなく、帆翔をする鳥での比較である点には注意がいる。

Williamsらの2020年の研究では、成長途中の個体を含む8羽に記録装置をつけ、合計216時間以上の飛行を調べた[3]。羽ばたいていた時間は約1%と報告されている[2]。日本語の紹介記事では平均1.3%としており[3]、報告されている数字は異なるため、1つの数字には固定しない。

1羽は5時間連続で羽ばたかず、約172kmを飛んだ[2]。「172kmを一度に」ではなく「5時間連続の飛行で172km」という記録である。

2. はばたくのは、いつ?

2. 羽ばたきの大半は、飛び立つ瞬間に使われる

2. 羽ばたきの偏り ── 飛び立ちに集中する

それなら、いつ はばたくのでしょう。けんきゅうでは、はばたきの 4分の3いじょうが、とびたつ ときだったと ほうこくされました[4]。

ジェットきが とびたつ ときに、いちばん 力を 出すのと にています。ただし、ほんとうの 鳥は、空に あがった あとも、ときどき はばたきます。

とびたって しまえば、ながい 時間、はばたきません。それでは、なにに のっているのでしょうか。

では、その約1%は、いつ使われたのでしょう。この研究では、羽ばたきの75%以上が飛び立ちのときだったと報告されています[4]。

重い体を地面から持ち上げる最初の一押しには、羽ばたきが必要なようです。飛び立ってしまえば、長い時間ほとんど羽ばたかずに過ごします。

羽ばたかない間、体を支えているものがあるはずです。それが次の章の主役、上昇気流です。

羽ばたきの偏りも報告されている。羽ばたきの75%以上が飛び立ちに関連したもので、飛び立った後は長時間ほぼ羽ばたかない[4]。

羽ばたき飛行はエネルギーを多く使う。滑空は少なくて済むが、そのままでは高度を失う[6]。羽ばたきを飛び立ちと後述の乗り継ぎに集中させ、空中では滑空で距離を稼ぐという分業が、数字の偏りに表れている。

3. 空気の あわって、なに?

3. 太陽が作る、見えない上昇気流「サーマル」

3. サーマル ── 断続的に立ちのぼる熱上昇気流

コンドルが のっていたのは、上へ のぼる 空気の 流れです。名前は「サーマル」と いいます。

太陽で 地面が 温まると、そこの 空気も 温かく なり、まわりより かるく なって、上へ のぼります[5]。

この 空気は、おなべの そこから ぽこぽこ 出る あわのように、とびとびに 上がります。どこから、いつ 出るかも、きまっていません[1]。ただし、ほんとうの 空気は 目に 見えません。

コンドルが乗っていたのは、サーマルと呼ばれる上昇気流です。太陽の光で温められた地面の上では、空気が周りより軽くなって、上へ昇っていきます[5]。

この空気は、切れ目なく立ちのぼる柱というより、泡のように途切れ途切れに上がります。位置も時間も一定でなく、研究者は「ラバランプ」の中で泡が上がっていく様子にたとえました[1]。

サーマルは、日射で温められて周囲より軽くなった空気が上昇するものである[5]。地面から泡のように断続的に上がり、位置も時間も一定でない。研究者はこれを「ラバランプ」にたとえている[1]。大型猛禽の帆翔を扱った別の研究も、サーマルが時間と場所で変わりやすいと述べる[9]。

4. のぼって、すべって、また のぼる

4. 円を描いて登り、滑って次へ

4. 上昇と滑空の組み合わせ ── 距離は滑空で稼ぐ

コンドルは、サーマルの 中で、ぐるぐると まるく まわりながら、上へ のぼります[3]。

高く なったら、はばたかずに ななめに すべります。そして、つぎの サーマルを さがします[3]。

たとえば、エレベーターで 上まで あがり、すべり台で とおくへ すべる ようなものです。ただし、すべり台は 下に むかう だけで、鳥は 空の 中を すすみます。

のって いる ときも、ラクを して いるのでは ありません。しっぽの 羽を 左右に かたむけて、こまかく バランスを とっています[6]。

サーマルを見つけたコンドルは、円を描いて上へ登り、十分な高さになったら滑空します。羽ばたかずに斜めに降りながら進み、次の上昇気流を探す、という繰り返しです[3]。

滑空は羽ばたきよりエネルギーを使いませんが、そのままでは高度が下がります。そこで、滑空が得意な鳥は、上昇気流で高さを稼ぎ、滑空で距離を稼ぎます。上昇気流に乗って浮かぶことを、帆翔(ソアリング)と呼びます[6]。

エレベーターで上へ行き、すべり台で遠くへ進むような組み合わせです。ただし鳥は、すべり台と違って、空中で向きを選べます。

楽々と浮かんで見えますが、尾羽を左右に傾けて、細かくバランスをとっています[6]。

帆翔をする鳥は、サーマルの中で登り、次のサーマルへ滑空することで、飛行にかかるエネルギー消費を減らす[7]。滑空は羽ばたきより省エネだが高度を保てないため、上昇気流で高度を稼ぎ、滑空で距離を稼ぐ飛び方になる[6]。コンドルも、上昇気流で上空へ上がり、旋回と滑空をしながら次の上昇気流を見つけて飛んでいた[3]。

浮いているだけに見えても、尾羽を左右に傾けて繊細にバランスをとる能動的な飛び方である[6]。なお、12種・100個体超の追跡データを比べた研究では、翼面荷重(体重÷翼面積)が大きい種ほど速く飛び、旋回の輪も大きくなる、という共通の規則が見られた[8]。重い鳥ほど大きな円を描く傾向、という読み方になる。

5. いちばん むずかしいのは、どこ?

5. 難所は、サーマルとサーマルの間

5. 乗り継ぎ ── 羽ばたきが増える場面

いちばん むずかしいのは、サーマルと サーマルの あいだだと かんがえられて います。

つぎの サーマルが みつからないと、おりたく ないのに、下まで おりて しまう おそれが あるからです[2]。

けんきゅうでは、サーマルを のりかえる ときや、地面に ちかづいた ときに、はばたきが ふえました[2]。ふえた わけは、けんきゅうした 人たちの かんがえです。

ほとんど羽ばたかない飛び方で、いちばん危ういのは、サーマルの乗り継ぎです。次の上昇気流が見つからなければ、意図せず地面に降りてしまうからです。

実際、この研究では、サーマルを乗り換えるときと、地面に近づいたときに羽ばたきが増えていました[2]。ただし、なぜ増えたのかは研究者の解釈です。

コンドルほど大きくなると、理論上、移動をソアリングに頼るしかなくなる、と研究者は述べています[1]。だから、乗り継ぎがうまくいくかどうかが、そのまま飛べるかどうかに直結します。

羽ばたきの増加は、サーマル間の移動時と地面に近づいたときに集中した[2]。次の上昇気流が見つからず意図せず降下する危険への対応と解釈されているが、これは研究者の解釈であり、断定は避けたい。

研究者は、コンドルほどの大きさになると、理論上、移動をソアリングに依存せざるをえなくなると述べる[1]。サーマルが断続的で不安定な以上[1]、乗り継ぎは飛行全体の安定性を左右する場面といえる。

6. じょうずに なるのに、けいけんは いるの?

6. 経験と、もう一つの上昇風

6. 経験による差と、地形性上昇風

コンドルとは ちがう ハゲワシの けんきゅうで、大人と 子どもの とび方を くらべました。かぜの ちがいが ちゅうくらいの ときに、大人の ほうが、うまく 上に のぼれていました[7]。

ソアリングの うでまえは、けいけんで あがるのかも しれません。ただし、ひとつの けんきゅうの 話です。

また、上へ のぼる 風は、太陽で できる ものだけでは ありません。風が 山の しゃめんに ぶつかって、上むきに まがる ことも あります[9]。

ソアリングの腕前は、経験で上がるのでしょうか。コンドルではなく、シロエリハゲワシの追跡で、成鳥と幼鳥を比べた研究があります[7]。風の向きや強さが高さで変わる度合い(風のシア)が中くらいの条件、とくにサーマルの風下側で、成鳥のほうが上昇率が高くなりました。幼鳥は効率が悪く、エネルギーを多く使っていました。

サーマルの選び方に差は見られず、差が出たのは、そうした条件での上がり方でした。技術は経験で上がるのかもしれない、という報告です。

上昇気流はサーマルだけではありません。アフリカのクロワシの研究では、風が山の斜面や尾根にぶつかって上向きに曲がる「地形性上昇風」も使われると整理されています[9]。この鳥の研究を、すべてのワシに広げることはできません。

シロエリハゲワシのGPS追跡では、風のシアが中程度の条件、とくにサーマルの風下側で、成鳥の上昇率が幼鳥より高く、幼鳥は飛行効率が低くエネルギーを多く使った[7]。サーマルの選択そのものに差は見られなかった。飛行技術は経験で向上する可能性がある、と論文は述べる。

大型猛禽の帆翔には、太陽熱によるサーマル(円を描いて登る)のほかに、風が地形にぶつかって上向きに曲がる地形性上昇風(尾根沿いに飛ぶ)がある[9]。この整理はクロワシの研究に基づいており、他のワシ類へ一般化するには慎重を要する。コンドルの対象個体も未成熟の鳥で、成鳥全般に当てはまるかは分からない。

7. 空を 見あげて みよう

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

うちの まわりの 空でも、鳥が はねを ひろげて、まるく まわって いる ことが あるかもしれません。もし 見つけたら、しばらく 見て みましょう。

はばたいた 回数を 数えたり、そのまま どこへ すすむか、目で おって みたり できます。太陽を 見つめたり、道路に 出たり しないよう、気を つけて ください。

もっと 知りたい人は、図書館の 鳥の 本で「ソアリング」を 引いて みましょう。

身近な空でも、大きな鳥が羽を広げて、円を描いていることがあります。見つけたら、羽ばたきの回数を数え、そのあとどちらへ進むかを目で追ってみてください。太陽を直接見たり、道路に出たりしないよう気をつけてください。

調べるなら、平塚市博物館の「飛び方のいろいろ」[6]が、日本語で読みやすい入り口です。コンドルの研究は、スウォンジー大学の発表[1]や、つくばサイエンスニュース[3]から読めます。

手軽な確かめかたとして、身近な空で鳥が円を描いているところを見つけ、羽ばたきの回数や、その後の進路を記録することができる。この記事の数字は、コンドルなどの研究の話であり、日本の鳥に同じ割合が当てはまるかは、観察してみないと分からない。太陽を直接見たり、道路に出たりしないこと。

資料を読むなら、日本語では平塚市博物館の解説[6]と日本学生航空連盟の「上昇気流」[5]がまず読みやすい。原典はWilliams et al., PNAS(2020)で、Keskin et al.(arXiv)は複数種の比較として読める[8]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った事実の出どころ。実際に開いて確かめた資料のみ載せている。PNAS原論文は取得できず、数値は大学発表・報道経由。

  1. EurekAlert! スウォンジー大学の発表(コンドルのサーマル利用) https://www.eurekalert.org/news-releases/824072 (最大約15kg・ラバランプのたとえ・ソアリング依存の理論)
  2. Phys.org(Williams et al., PNAS 2020の紹介) https://phys.org/news/2020-07-flight-heaviest-soaring-birds.html (羽ばたき約1%・5時間172km・乗り継ぎ時の羽ばたき増加)
  3. つくばサイエンスニュース「コンドルはほとんど羽ばたかずに飛んでいた」 https://www.tsukuba-sci.com/ (平均1.3%・上昇と滑空の繰り返し)
  4. BirdWatching Daily「Study: Soaring Andean condors rarely flap their wings」 https://www.birdwatchingdaily.com/news/science/study-soaring-andean-condors-rarely-flap-their-wings/ (羽ばたきの75%以上が飛び立ち)
  5. 日本学生航空連盟「上昇気流」 https://www.jsal.or.jp/page/lift (サーマルとは)
  6. 平塚市博物館「飛び方のいろいろ」 https://www.hirahaku.jp/hakubutsukan_archive/seibutsu/00000059/28.html (帆翔・滑空・尾羽のバランス)
  7. Scientific Reports「Adult vultures outperform juveniles in challenging thermal soaring conditions」 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4904409/ (サーマル利用による省エネ・成鳥と幼鳥の差)
  8. Keskin et al. “Adaptive cross-country optimisation strategies in thermal soaring birds”(arXivに掲載された論文) https://arxiv.org/abs/2409.03849 (翼面荷重と旋回)
  9. Ecology and Evolution「Where eagles soar」(クロワシ) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6053586/ (サーマルと地形性上昇風)

なおした ところ

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