1. 絵を かいた しゅんかんに、権利が うまれる
1. 作った瞬間に、権利が生まれる
1. 登録しなくても、権利は生まれる(無方式主義)
じぶんで 絵を かいたり、お話を 書いたり すると、かきおわった しゅんかんに、それは じぶんだけの もの に なる。やくしょに とどけでる ひつようは ない[1]。
これは、新しい きかいの アイデア(はつめい)を まもる「とっきょ」と くらべると、大きく ちがう。とっきょは、コンクールに 出して しょうじょうを もらう ような もの だ(ただし ほんとうは しょうじょうでは なく、国に しんさして みとめて もらう てつづきの ことだ)。とっきょちょうと いう やくしょに とどけて、みとめて もらわないと けんりに ならない。でも 著作権は、とどけでが いらない めずらしい けんりなのだ[1]。
2. せかいで さいしょの ルールは、1710年に できた
2. 世界初の著作権法は、1710年のイギリスで生まれた
2. アン法(1710年)が、はじめて「作った人」に権利をわたした
むかしの イギリスでは、本を 作る 人たちの くみあいが、本を 印刷する けんりを つよく にぎって いた。話を 書いた 本人には、そこまで つよい けんりは なかった[2]。
それを かえたのが、1710年に できた「アンほう」と いう ルールだ。話を 書いた 本人に、はじめて「いちばん さいしょに 本を 出す けんり」が わたされた。ただし、その けんりには おわりが あった。ずっと つづく もの では なかったのだ[2]。
昔のイギリスでは、本を作る人たちの組合が、本を印刷する権利を強く握っていた。物語を書いた本人には、そこまで強い権利はなかった[2]。
それを変えたのが、1710年にできた「アン法」というルールだ。物語を書いた本人に、はじめて「本を出す権利」がわたされた。ただし、その権利には終わりがあった。ずっと続くものではなかったのだ[2]。
1710年より前のイギリスでは、印刷出版業組合(Stationers' Company)が国王から得た特権により、書物の印刷・出版を強く管理していた。作品を書いた著作者本人が、印刷や出版のあり方を自ら決められる立場にはなかった[2]。
1710年4月10日に施行された「アン法」は、世界初の本格的な著作権法とされる。組合ではなく著作者に印刷再生産の独占権を与える構造に変わり、新刊作品は当初14年間、著作者が存命であれば更新してさらに14年間(合計最大28年)、すでに出版されていた作品は21年間という、期限つきの権利になった。「作った人が権利を持つ」だけでなく、「その権利にはいつか終わりが来る」という、今の著作権にも受けつがれている考え方が、ここで生まれた[2]。
3. 日本では、なくなってから 70年 まもられる
3. 日本の著作権は、著作者が亡くなってから70年つづく
3. 保護期間は死後70年(2018年に50年から延長された)
アンほうから 300年 いじょう たった 今の 日本では、著作権は、げんそくとして、その人が なくなって(死んで)から 70年の あいだ まもられる(会社などが 作った ものは、少し ルールが ちがう)[3]。
じつは この「70年」、2018年までは「50年」だった。ある年に、20年 のびたのだ。ただし、その 前に すでに きれて しまって いた けんりが、あとから ふっかつする ことは ない[3]。
4. ゆうめいな ネズミにも、おわりが 来た
4. ミッキーマウスの著作権にも、終わりが来た
4. 1928年の映画が、2024年にパブリックドメインになった理由
1928年、アメリカで「じょうきせん ウィリー」と いう アニメが 出て、しょだいの ミッキーマウスが うまれた[4]。
アメリカでも、著作権の 年数は 何回か のびたが、それでも 2024年の 1月1日、しょだいの ミッキーマウスの 著作権は、ついに きれた。だれでも つかえる ように なったのだ。でも、ミッキーマウスと いう 名前や マークは べつの けんり(しょうひょうけん)でも まもられて いるので、なんでも すきに つかえる わけでは ない、と いう ひねりが ある[4]。
1928年、アメリカで「蒸気船ウィリー」というアニメが公開され、初代のミッキーマウスが生まれた[4]。
アメリカでも著作権の年数は何回か延長されたが、それでも2024年1月1日、初代ミッキーマウスの著作権は、ついに切れた。誰でも自由に使えるようになったのだ。でも、ミッキーマウスという名前やマークは別の権利(商標権)でも守られているので、何でも好きに使えるわけではない、というひねりがある[4]。
1928年11月に公開された短編アニメ「蒸気船ウィリー」で、初代のミッキーマウスとミニーマウスが登場した。アメリカでは1998年に著作権保護期間を延長する法律が成立し、保護期間が公表後95年まで延ばされた[4]。
その95年が満了した2024年1月1日、「蒸気船ウィリー」という作品そのものと、そこに描かれた初期版のミッキーマウス・ミニーマウスの姿の著作権が、パブリックドメイン(誰でも自由に使える状態)入りした。ただし、これはあくまで「その作品・その版の描写」についての話である。ミッキーマウスはその後も長年描き直され、後年の絵柄には別途新しい著作権が生じている場合がある。しかも、ミッキーマウスという名称やキャラクターは、ディズニー社によって商標登録もされている。著作権が切れても、商品やロゴの目印として使うような使い方をすれば、商標権の侵害になりうる。「著作権」と「商標権」は別々の法律で守られる別の権利であり、片方が切れても、もう片方が生き続けることがあるのだ[4]。
5. 権利には、2つの しゅるいが ある
5. 著作権には、2つの種類がある
5. 著作者人格権と著作権(財産権)は、ゆずれるかどうかが違う
著作権と ひとことで いっても、じつは 2つの グループに 分かれる。1つは、その 人の きもちを まもる 権利(だれが 作ったかを 名のる けんり など)。もう 1つは、コピーを 作ったり 売ったり できる 権利だ[5]。
きもちを まもる ほうの 権利は、ほかの 人に ゆずる ことが できない。でも、コピーを 作ったり 売ったり できる ほうの 権利は、ほかの 人に ゆずったり、うりわたしたり する ことが できる[5]。
著作権とひとことでいっても、実は2つのグループに分かれる。1つは、作った人の名誉や気持ちを守る権利(誰が作ったかを名のる権利など)。もう1つは、コピーを作ったり売ったりできる権利だ[5]。
名誉や気持ちを守るほうの権利は、ほかの人にゆずることができない。でも、コピーを作ったり売ったりできるほうの権利は、ほかの人にゆずったり、売りわたしたりすることができる[5]。
著作権法が著作者に与える権利は、大きく2種類に分けられる。1つは「著作者人格権」で、公表権(公表するかどうかを決める権利)、氏名表示権(自分の名前を表示するかどうかを決める権利)、同一性保持権(意に反して改変されない権利)の3つからなる。もう1つは、複製権をはじめとする経済的な権利で、こちらを指して「著作権(財産権)」と呼ぶことが多い[5]。
両者の決定的なちがいは、譲渡・相続の可否にある。著作者人格権は、著作者本人の名誉や感情を守るための権利であるため、譲渡したり相続したりすることができない。一方、著作権(財産権)は経済的な権利であるため、他人に譲渡したり、著作者の死後に相続されたりする[5]。
6. 人の 文章を つかう ときの やくそく
6. 人の文章を引用するときの、4つの約束
6. 著作権法32条が定める、引用が認められるための目安
しゅくだいで 見つけた ぶんしょうを、そのまま うつして しまうのは、ほんとうは よくない。でも、人の ぶんしょうの 一部を つかう こと じたいが、ぜんぶ だめな わけでは ない。「いんよう」と よばれる やくそくを まもれば、つかって よい[6]。
その やくそくとは、だいたい こんな かんじだ。まず、すでに 世の中に 出て いる ぶんしょうを つかう こと。そして、じぶんの 考えが 主役で、うつす ぶぶんは ほんの 少しの おまけに する こと。しらべものなど、ちゃんと した もくてきの ために つかう こと。そして、どこから うつしたか、本の 名前などを かならず 書く こと[6]。
宿題で見つけた文章を、そのまま丸写ししてしまうのは、本当はよくない。でも、人の文章の一部を使うこと自体が、すべてだめなわけではない。「引用」と呼ばれる約束を守れば、使ってよい[6]。
その約束は、だいたい次の4つにまとめられる。①すでに世の中に出ている文章であること、②自分の文章がメインで、引用した部分はあくまでおまけにとどまること、③調べものなど、きちんとした目的のために使うこと、④どこから引用したかを必ず書くこと[6]。
著作権法32条1項は「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」と定めている。この条文を実際にどう満たすかについて、一般によく挙げられる目安が、①すでに公表された著作物であること(未公表の手紙や個人的なメールなどは対象外)、②引用部分と自分自身の文章の区分が明瞭であり、自分の文章が「主」、引用部分が「従」という関係にあること、③引用の目的上正当な範囲内であること、④出所を明示すること、の4点である[6]。
これらは条文そのものの文言というより、条文をどう満たすかの解釈上の整理であり、実際に適法な引用にあたるかどうかは、個々の事情に即して判断される。とはいえ、この目安からかけ離れたまま他人の文章を大量に転載すれば、「引用」ではなく著作権侵害にあたる可能性が高くなる。逆にいえば、この考え方に沿って出典を明記して引用すること自体は、著作者の許可を取らなくても認められている、権利の制限規定なのである[6]。
7. 家で コピーして 楽しむ 分には いいけれど
7. 家でコピーして楽しむ分にはよいけれど
7. 私的使用は自由、でも侵害には重い罰則がある
すきな まんがを コピーして、じぶんや かぞくの なかなど、かぎられた はんいで つかう ぶんには、とくべつに ゆるされて いる[7]。
でも、それを たくさん コピーして 友だちに くばったり、うって お金に したり するのは、ぜんぜん べつの 話だ。もし ほんとうに 著作権を おかす(しんがいする)と、ほうりつで きびしく ばっせられる ことが ある[7]。
好きな漫画をコピーして、自分や家族のなかなど、限られた範囲で使う分には、特別に許されている[7]。
でも、それをたくさんコピーして友だちに配ったり、売ってお金にしたりするのは、まったく別の話だ。もし本当に著作権を侵害すると、法律で重い罰則が用意されている[7]。
著作権法30条は、個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用する目的であれば、著作物を複製してよいと定めている(私的使用のための複製)。友だちや家族と一緒に楽しむための範囲を、大きく超えなければ、いちいち著作者の許可を取る必要はない。ただし、この規定には複製の手段や自動複製機器の利用などをめぐる例外もあり、「個人や家庭内なら何でも自由」という単純な話ではない[7]。
一方、著作権を侵害した場合の罰則は重い。著作権法119条1項は、著作権・出版権・著作隣接権を侵害した者に対し、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方を科すと定める。「懲役」という刑名は、2025年6月1日施行の刑法改正で「拘禁刑」に一本化された。ただし、30条の私的使用目的での複製そのものは、この罰則の対象外とされている。また、2018年のTPP11関連の法改正では、著作権侵害の一部について、被害者からの告訴がなくても捜査・処罰できる「非親告罪化」も導入された[7]。
本の さいごの ページに、ヒントが ある
本の最後のページに、著作権のヒントがある
手もとの本で、著作権があと何年で切れるか計算してみる
本の いちばん さいごの ページには、作った 人の 名前や、出た 年、出した かいしゃの 名前が 書いて ある ところが ある。それが「おくづけ」だ。すきな 本が あったら、さがして みると いい。
本のいちばん最後のページには、作った人の名前や、出た年、出版した会社の名前が書いてあるところがある。それが「奥付」だ。好きな本があったら、さがしてみるといい。
好きな作品の作者の生まれた年・亡くなった年(あるいは作品の発表年)を調べ、日本の現行ルール(実名の著作物は死後70年、団体名義や映画は公表後70年)にあてはめると、あと何年で著作権が切れる計算になるかが出せる。ミッキーマウスのように、途中で保護期間そのものが延長されることもあるので、あくまで「今のルールでの計算」であることは忘れずに。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
- 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協CPRA)用語辞典「無方式主義」、フリー百科事典『ウィキペディア』「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」。 https://www.cpra.jp/glossary/ma/post_48.html https://ja.wikipedia.org/wiki/文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約 (著作権が著作物の創作という事実により登録等の手続なしに自動的に発生する「無方式主義」を採用していること、これが特許権・商標権の「方式主義」と対照的であること、無方式主義が1908年改正のベルヌ条約で国際的に採用されたことは芸団協CPRAおよびウィキペディアによる)
- フリー百科事典『ウィキペディア』「アン法」、インターマーク株式会社「世界最初の著作権法」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/アン法 https://www.intermark.co.jp/special-column/dohi/entry01 (アン法が1710年4月10日に施行された世界初の本格的な著作権法とされること、それ以前は印刷出版業組合〈Stationers' Company〉が印刷・出版を独占していたこと、新刊作品の保護期間が当初14年・著者存命時の更新で最大28年、既刊作品が21年だったことはウィキペディア「アン法」による。世界最初の著作権法という位置づけはインターマーク株式会社の解説記事による)
- 文化庁「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」、Impress Watch「著作権保護期間が50年から70年に延長。一部非親告罪化も」。 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_chosakuken/1411890.html https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1152314.html (平成30年〈2018年〉12月30日施行の改正で著作権の保護期間が著作者の死後50年から70年に延長されたこと、無名・変名や団体名義、映画の著作物は公表後70年となること、施行日前日に既に消滅していた著作権は復活しない不遡及の原則、原則として昭和43年〈1968年〉以降に亡くなった著作者の作品が対象になることは文化庁の公式Q&Aによる。TPP11の発効にあわせた改正であることはImpress Watchの報道による)
- Forbes JAPAN「ミッキーマウスがついに『著作権切れ』、2024年1月1日から オリジナル版が対象」、CNN.co.jp「初代版ミッキーマウスの著作権が失効、パブリックドメインに」、米国議会図書館(Library of Congress)ブログ「The lifecycle of copyright: 1928 works enter the public domain」。 https://forbesjapan.com/articles/detail/68282 https://www.cnn.co.jp/business/35213395.html https://blogs.loc.gov/copyright/2024/01/lifecycle-of-copyright-1928-works-in-the-public-domain/ (1928年公開の短編アニメ『蒸気船ウィリー』で初代ミッキーマウスとミニーマウスが登場したこと、1998年の著作権法改正で米国の保護期間が公表後95年に延長されたこと、2024年1月1日にその期間が満了しパブリックドメインとなったこと、ミッキーマウスが商標登録もされておりブランドとしての使用には商標権が別途及びうることはForbes JAPANおよびCNN.co.jpの報道による。パブリックドメイン入りするのは『蒸気船ウィリー』という作品とそこに描かれた初期版の描写であり、後年描き直された絵柄には別途新しい著作権が生じうることは米国議会図書館ブログによる)
- 公益社団法人著作権情報センター(CRIC)「著作者にはどんな権利がある?」、咲くやこの花法律事務所「著作者人格権とは?わかりやすく解説」。 https://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime2.html https://kigyobengo.com/media/useful/837.html (著作者の権利が著作者人格権〈公表権・氏名表示権・同一性保持権〉と著作権〈財産権〉の2種類に分かれること、著作者人格権が譲渡・相続できない権利であるのに対し著作権〈財産権〉は譲渡・相続できることはCRICおよび咲くやこの花法律事務所による)
- e-Gov法令検索「著作権法」、東京大学社会科学研究所「引用の適法要件」、著作権弁護士 虎ノ門法律特許事務所「引用による利用(32条)」。 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048 https://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/01/papers/part8.pdf https://chosakukenhou.jp/inyou/ (著作権法32条1項の条文「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」はe-Gov法令検索による。この条文をどう満たすかについて、公表された著作物であること・引用部分と自己の著作物の区分が明瞭で自己の著作物が主・引用部分が従の関係にあること・目的上正当な範囲内であること・出所を明示することの4点が解釈上の目安として挙げられることは、東京大学社会科学研究所の解説資料および虎ノ門法律特許事務所の解説による)
- 文化庁文化審議会著作権分科会資料「私的使用目的の複製に係る権利制限について」、e-Gov法令検索「著作権法」、参議院法制局「懲役・禁錮の拘禁刑への一本化」。 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h30_06/pdf/r1411529_06.pdf https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048 https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column119.htm (著作権法30条が個人的・家庭内その他これに準ずる限られた範囲内での私的使用目的の複製を認めていること〈ただし複製の手段等をめぐる例外がある〉、著作権法119条1項が著作権等を侵害した者に10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科を定めていること、30条の私的使用目的の複製自体はこの罰則の対象外であることは文化庁の分科会資料およびe-Gov法令検索の条文による。2025年6月1日施行の刑法改正で懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されたことは参議院法制局の解説による。2018年のTPP11関連改正で一部非親告罪化が導入されたことは一般に報じられている経緯である)
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