1. 小さい 頭の 中に、ぎっしり つまった のう
1. 小さい頭に、ぎっしりつまった脳
1. 賢さの正体 ── 脳のニューロン密度
カラスの 頭は、人間の 頭より ずっと 小さいです。でも、 頭の 中の のうさいぼうの 数は、頭の 大きさの わりに とても 多い ことが わかって います。
小さい ふでばこでも、じょうずに つめれば、大きくて すかすかな ふでばこより たくさん 入る ことが ありますよね。 カラスの のうも、それと にた かんじです。小さくても、 ぎゅっと つまって いて、のうの 中に たくさんの のうさいぼうが あるのです。
小さいのに、詰まっている脳
カラスの脳は、人間の脳よりずっと小さいです。でも、脳の中の神経細胞(ニューロン)の数は、脳の大きさのわりにとても多いことが研究で分かっています。
小さいふでばこの方が、たくさん入ることもある
小さいふでばこでも、じょうずに詰めれば、大きくてすかすかなふでばこより多く入ることがありますよね。カラスの脳もこれと似ています。オウムの仲間の脳はクルミくらいの大きさですが、レモンくらいの大きさがあるサルの脳より、考える部分の神経細胞の数が多いという研究もあります[1]。
カラスを含むカラス科の鳥は、体の大きさに対して脳が大きいだけでなく、脳の中のニューロン(神経細胞)が非常に高密度に詰まっていることが分かっています。鳥類の脳のニューロンは哺乳類のものより小さく、より密に配置できるためです[1]。
これはオウムの仲間で調べられた例ですが、たとえばオウムの脳はクルミほどの大きさしかありませんが、レモンほどの大きさがあるマカクザル(サルの仲間)より考える働きに関わる前脳に、多くのニューロン(神経細胞)を持つという研究結果があります[1]。同じ研究では、カラス科を含む鳥でも同様に前脳ニューロンが多いことが示されており、カラスの高い認知能力も、この高密度な神経細胞の配置が土台になっていると考えられています。
2. えだを けずって、道ぐを 作る カラス
2. 枝をけずって、道具を作るカラス
2. 道具の製作 ── ニューカレドニアガラスの技術
ニューカレドニアと いう 島に すむ カラスは、木の えだを くちばしで けずって、かぎ の かたちの 道ぐを 作る ことが できます。この 道ぐを つかって、木の あなに いる 虫を つりだして 食べるのです[2]。
おどろく ことに、この カラスは、その 道ぐが どう 作られたかを 見ただけで、おなじ ものを じぶんで 作りなおす ことも できると されて います [8]。
3. イソップ ものがたりの カラスと にた ことを、ほんものの カラスも した
3. イソップ物語のカラスに似たことを、本物のカラスもやってみせた
3. 因果理解 ── 「カラスと水差し」の実験
むかしの ものがたりに、水差しの 中の 水が すくなくて のめない カラスが、石を 中に 入れて 水の たかさを あげ、水を のむ という はなしが あります。
研究者が、ほんものの カラスで ためして みたところ、 カラスは じっさいに 水が 入った つつに 石を おとして、 水の たかさを 上げ、うかんだ えさを 食べる ことが できました[3]。ものがたりと まったく おなじでは ありませんが、ほんものの カラスも、 石で 水の たかさを 上げて えさを とれる ことが わかりました。
石を入れて、水位を上げる物語
むかしのイソップ物語に、水差しの水が少なくて飲めなかったカラスが、石を中に入れて水位を上げ、水を飲んだという話があります。
本物のカラスでためした研究者
研究者がニューカレドニアガラスでこの状況を再現したところ、カラスは実際に、水が入った筒に石を落として水位を上げ、浮かんでいたエサを取ることができました[3]。砂が入った筒には石を入れず、水が入った筒を選ぶなど、何が効果的かを理解している様子も見られました。
4. 人の かおを、わすれない カラス
4. 人の顔を、忘れないカラス
4. 記憶力 ── マーズラフの仮面実験
アメリカの 大学で、研究者たちが へんな お面を かぶって カラスを つかまえ、すぐに にがす じっけんを しました。
すると、その あと 2年 たって その お面を かぶった ちがう 人が あるいて いても、カラスたちは その 人を さけたり、こわがったり しました[4]。 カラスは、じぶんが 見た 人の かおを、長い あいだ おぼえて いる ことが わかったのです。
お面をかぶって、カラスをつかまえた研究者
アメリカのワシントン大学で、研究者たちは変わった仮面をかぶってカラスを一時的につかまえ、すぐに逃がす実験をしました。
2年たっても、忘れられていない
すると、それから2年たって、その仮面をかぶった別の人が歩いていても、カラスたちはその人をさけたり、鳴いて警戒したりしました[4]。しかも、直接つかまえられていない若いカラスまで、親や仲間から伝わって、同じように警戒するようになっていました。
5. 日本に いる 2しゅるいの カラス
5. 日本にいる2種類のカラス
5. 種の違い ── ハシブトガラスとハシボソガラス
日本の 町で よく 見る カラスには、おもに 2しゅるいが います。「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」です。
ハシブトガラスは、くちばしが 太くて、おでこが まるく、 町の 中に 多く います。ハシボソガラスは、くちばしが ほそくて、おでこが 平らで、田んぼや 畑の ちかくに 多く います[5]。
くちばしと、おでこの形がちがう
日本の町でよく見るカラスには、おもに2種類がいます。「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」です。
都会のハシブトガラス、田畑のハシボソガラス
ハシブトガラスは、くちばしが太く、おでこが丸みを帯びていて、「カァー」と澄んだ声で鳴きます。都市部に多く見られます。ハシボソガラスは、くちばしが細く、おでこが平らで、「ガァー」とにごった声で鳴き、田畑の近くに多く見られます[5]。
日本の市街地で見られるカラスは、主に2種類に分けられます。「ハシブトガラス」は太いくちばしと丸みのある額が特徴で、澄んだ「カァー」という鳴き声を持ち、都市部のゴミ集積所周辺などでよく見られます。
一方「ハシボソガラス」は細いくちばしと平らな額が特徴で、にごった「ガァー」という鳴き声を持ち、農地や河川敷などの開けた環境を好みます[5]。都市に生ゴミという安定した食料源があることが、ハシブトガラスが都市部に多く定着した一因と考えられています。
6. 子そだての じきは、カラスに 気をつけて
6. 子育てのシーズンは、カラスに注意
6. 繁殖期のトラブル ── 縄張りを守る行動
カラスは 3月から 7月ごろ、木の えだで 巣を 作って、 たまごを うみ、ヒナを そだてます。
この あいだ、おやどりは 巣や ヒナを まもろうと して、 近くを 通る 人を おどしたり、うしろから 近づいて きたり する ことが あります[6]。 もし 巣の 近くを 通る ときは、ぼうしを かぶったり、 かさを さしたり すると、あんぜんです。
3月から7月は、子育てのシーズン
カラスは3月から7月ごろ、木の枝で巣を作り、卵を産んでヒナを育てます。
巣やヒナを守ろうとして、人を威嚇する
この期間、とくに4月下旬から6月ごろにかけては、親鳥が巣やヒナを守ろうとして、なわばり意識が強くなり、近くを通る人を威嚇したり、後ろから接近してきたりすることがあります[6]。巣の近くを通るときは、帽子をかぶる、傘をさすなどすると安全です。落ちているヒナには近づかないことも大切です。
カラスは3月ごろから巣作りを始め、4月から5月に産卵・抱卵、5月から6月にヒナの世話をし、6月から7月にかけて巣立ちを迎えます。この繁殖期、とくに卵からヒナが巣立つまでの期間は、親鳥のなわばり意識が強まり、営巣木の近くを通る人への威嚇や、後方からの急接近といった行動が増えます[6]。
自治体は、巣立ち前後で地面に降りているヒナに近づかないこと、営巣が確認された道は迂回すること、帽子や傘で頭部を守ることなどを呼びかけています[6]。巣が危ない場所にあって動かしたいときは、自分で取らず、自治体に相談する。巣そのものの撤去には鳥獣保護管理法にもとづく許可が必要で、危険性が高い場合に自治体が対応する仕組みになっています。
7. 東京の カラスが へった わけ
7. 東京のカラスが減ったわけ
7. 個体数管理 ── ごみ対策という解決策
じつは、東京の カラスの 数は、むかしより ずっと へって います。
東京都に よると、カラスの 数は、2001年ごろに くらべて、 いまは やく 8わり へって いる そうです [7]。おもな りゆうは、生ゴミの 出し方を くふうして、カラスが 食べものを 見つけにくく した ことです。食べものが へると、カラスが ふえにくく なったと かんがえられて います。
2001年ごろから、8割も減った
じつは、東京都内のカラスの数は、昔よりずっと減っています。
ごみ対策で、エサが減った
東京都によると、カラスの数(観測地点での確認数)は、2001年度と比べていまは約8割減っています[7]。生ゴミをネットで覆う、収集時間を早めるといったごみ対策が徹底されたことで、カラスが街なかでエサを見つけにくくなり、栄養状態や繁殖率が下がったことが、大きな理由と考えられています。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
まちで 見かける カラスを、すこし かんさつして みましょう。
あんぜんな ばしょで できる こと
- くちばしの 太さを 見て みる。 ハシブトガラスか ハシボソガラスか、大人と いっしょに くらべて みましょう。
- ごみしゅうしゅうじょを 見て みる。 ネットが かけられて いるか、かんさつして みましょう。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「ニューカレドニアって どこ?」だけで じゅうぶんです。
街で見かけるカラスを、少し観察してみましょう。
今日できること
- くちばしの太さを見てみる。ハシブトガラスかハシボソガラスか、大人と一緒に比べてみましょう。
- ごみ集積所を見てみる。ネットがかけられているか、観察してみましょう。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「ニューカレドニアって、どこにあるの?」だけでも十分です。
街のカラスの鳴き声や体つきを観察すると、この記事で扱った種の違いや、繁殖期の行動が身近に感じられます。
手を動かして確かめる
- 鳴き声を録音して聞き比べる。ハシブトガラスの澄んだ声とハシボソガラスのにごった声の違いを聞き分けてみましょう。
- 自治体のカラス対策ページを調べる。自分の住む自治体が、繁殖期にどんな注意喚起をしているか調べてみましょう。
一次情報にあたる
東京都環境局のサイトには、カラスの個体数の推移データが公開されています。
気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「東京都、2001年度比で約8割減」という一文でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。
出典について:大学・研究機関・行政機関の公開情報を使っています。
- Vanderbilt University「Study gives new meaning to the term 'bird brain'」(2016年)。 https://news.vanderbilt.edu/2016/06/13/study-gives-new-meaning-to-the-term-bird-brain/ (鳥類の脳のニューロン密度が哺乳類より高いという研究についての公式解説)
- Nature Communications「ニューカレドニアカラスが道具をうまく使えるわけ」(Nature Asia日本語版)。 https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/1917 (ニューカレドニアガラスの道具製作についての解説)
- PLOS ONE「Using the Aesop's Fable Paradigm to Investigate Causal Understanding of Water Displacement by New Caledonian Crows」(2014年)。 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0092895 (イソップ寓話にちなんだ水位実験についての論文)
- University of Washington「Campus news notes」(ジョン・マーズラフの仮面実験についての大学公式解説、2010年)。 https://www.washington.edu/news/2010/10/21/etc-campus-news-notes-131 (ワシントン大学の仮面実験と、カラスの人物記憶・世代間伝達についての公式解説)
- キヤノン バードブランチプロジェクト「ハシボソガラス:ハシブトガラスとの違い」。 https://global.canon/ja/environment/bird-branch/photo-gallery/hashibosogarasu/ (ハシブトガラスとハシボソガラスの見分け方についての解説)
- 東京都北区「カラスによる被害を防ぐために」。 https://www.city.kita.lg.jp/living/animal/1018222/1010052.html (カラスの繁殖期の行動と注意点についての行政解説)
- 東京都環境局「生息数等の推移(取組状況)|カラス対策」。 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/crow/jyokyo/ (東京都内のカラスの個体数推移と対策についての公式データ)
- AFPBB News「道具作るカラス、『リバースエンジニアリング』で作製 研究」(2018年)。 https://www.afpbb.com/articles/-/3180511 (ニューカレドニアガラスが道具の見た目だけから作り方を分析して再現する「心的テンプレート照合」についての解説)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
- 章の見出し・題名を、何の話か分かりやすく、本文に合う言い方に直した(本文の事実・数字・出典は変えていない)。
- 低学年むけで、物語と実験の違い、カラスが減った理由、脳の説明の言い切りをやわらげました。高学年・中学生むけで、「再現」「前脳ニューロン」「心的テンプレート照合」など分かりにくい言葉を説明に直し、巣を見つけたときは自治体に相談することを足しました(先生の目での読み直しによる)。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。