1. どれくらい 待てば、見えて くるの?
1. どれくらい待てば見えてくるのか
1. 暗順応の時間経過 ── 5〜10分で第一段階、20〜30分ほどでほぼ完成
見えて くるまでの 時間は、いっぺんに 決まる わけでは ありません。はじめの 5分から 10分ほどで、ぼんやり 見えて きます。そのあと 20分から 30分ほど かけて、もっと 見えるように なって いきます[1]。
ただし、これは 目やすです。1時間ぐらい かかると 書いて ある 資料も あります[2]。どれくらい 明るい 所に いたかでも、かわると 考えられます。
この あいだ、目の 中では なにが おきて いるのでしょう。まず、目の まんなかの 黒い ところから 見て みます。
2. 目の まんなかが 大きく なるから?
2. 瞳孔が広がるだけでは足りない
2. 瞳孔の寄与 ── 面積比16倍と、暗順応の感度変化の大きさ
くらい ところでは、目の まんなかの 黒い ところが 大きく なります。この 黒い あなが 瞳孔です。光を たくさん 取りこむ ために、ひろがります[3]。
直径は、明るい 昼間で 2mmほど、くらい ところで 8mmほど、とされます[4]。4倍の 大きさです。でも 光の 入る 広さで くらべると、16倍です。2×2で 4、4×4で 16、と 計算 できます。
16倍でも、大きな ちがいです。けれども、「暗い ところで 見える つよさ」の かわりかたは、それよりも ずっと 大きい、と 説明 されて います[4]。瞳孔だけでは、ぜんぶは 説明 できません。ほかに なにかが、かわって いるのです。
その なにかは、網膜の 中に あります。
3. 目の 中には、どんな センサーが あるの?
3. 網膜にある2種類の細胞 ── 明るい所の錐体、暗い所の桿体
3. 錐体と桿体 ── 数の違い、感度の違い、暗所で色が乏しくなる理由
目の おくの 網膜には、光を かんじる 細胞が 2しゅるい あります。錐体と 桿体です[5]。
錐体は、明るい ところで はたらきます。色や 細かい ものの 形を 見るのが とくいです。桿体は、うす暗い ところで はたらきます。光の ひとつぶにも はんのう できるほど、かんじる 力が 強い、と いわれます[5]。数は、錐体が 1つの 目に およそ 600まん こ、桿体が およそ 1おく 2000まん こです[2]。桿体の ほうが、20ばい ぐらい 多い ことに なります。
ただ、桿体で 見ると、色は わかりにくく、白黒に 近く 見える、と 説明 されて います[2]。くらい ところで 色が うすく 見えるのは、この ためと 考えられます。
くらい ところに 入ってから、まわりが 暗く なるにつれて、桿体の はたらきが 大きく なって いきます。
網膜には、光を感じる細胞(視細胞)が2種類あります。錐体と桿体です[5]。錐体は明るい場所で働き、色や細かい形を見分けるのが得意です。桿体は薄暗い場所で働き、光の粒(光子)1個にも応答できるほど感度が高い、と日本生物物理学会の解説にあります[5]。
数は、1つの目におよそ、錐体が600万個、桿体が1億2000万個で、桿体のほうが20倍ほど多いとされます[2]。ただし、桿体だけで見ると色の区別がつきにくく、モノクロに近い、ぼんやりした見え方になります[2]。暗い場所で色がうすく感じられるのは、桿体が働いているためと考えられます。
暗い場所に入ったあと、明るさが下がるにつれて、桿体の働きが大きくなっていきます。
4. 2つの センサーは、どんな じゅんばんで はたらくの?
4. 暗順応は2段階 ── 錐体から桿体へ
4. 2段階の暗順応曲線 ── 錐体の約10倍、桿体の数千〜数万倍、ロッド・コーン・ブレーク
くらい ところに 入ると、まず 錐体が はたらきます。眼科の 解説では、明るい ところの 10ばい ぐらいまで、かんじる 力が 上がって、ぼんやり 見えて きます[2]。
7分から 10分ごろ、はたらく 中心が 桿体に うつります[2]。桿体は、そこから ゆっくり、ゆっくり、かんじる 力を 上げて いきます。上がり方は、資料に よって はばが ありますが、数千ばいから 数万ばいほどと いわれます[2]。
はじめの 10ばいで 見えるように なって、そのあと 数千ばいも 上がる、と 考えると、ふしぎです。どうして 桿体は、そんなに 時間が かかるのでしょう。
5. 光の センサーは、どうやって 元に もどるの?
5. 光で壊れた色素を、暗闇で作り直す
5. ロドプシンの漂白と再生 ── 11-シス・レチナールの再生にかかる時間
桿体の 中には、ロドプシンと いう 色素が あります[7]。ロドプシンは、光を うけとる はたらきを する 色素です。光が あたると、かたちが かわって、もとの ままでは いられなく なります[7]。
かたちの かわった 部分は、網膜の となりの 場所へ はこばれて、もとの かたちに 直されます。そして、ふたたび ロドプシンに なります[7]。この 作り直しが すすむと、光を うけとる 力が 元に もどって、暗い ところでも 見えるように なります。あんじゅんのうには、ロドプシンの 作り直しも かかわります[6]。
カメラの フラッシュに にて います。ピカッと 光ったあとは、また 光るまで じゅうでんの 時間が いりますね。ただ 本当は、電気では なく、色素が もとの かたちに もどるのです。
この 作り直しは、こわれるより ゆっくり すすみます[3]。そのため、明るい ところに もどる ときの ほうが、ずっと 早いのです。
桿体の中には、ロドプシンという色素があります。ロドプシンは、オプシンというたんぱく質と、11-シス・レチナールという小さな分子が組み合わさったものです[7]。光を吸収すると、レチナールの形が変わって全トランス型になり、オプシンから離れます[7]。こうなると、その色素は光をとらえられません。
離れたレチナールは、網膜の隣にある色素上皮という層へ運ばれて、もとの11-シス型に戻されます。それが視細胞でオプシンと再び結びつき、ロドプシンが作り直されます[7]。暗順応に要する時間は、この11-シス・レチナールの量、つまり作り直しの速さに大きく左右される、と英語版Wikipediaにあります[6]。
カメラのフラッシュに似ています。光ったあとは、次に光るまで充電の時間が要ります。ただし本当は、電気をためているのではなく、色素の形が戻っているのです。
色素は、作り直すほうが、壊れるより時間がかかります。暗順応が、暗い所から明るい所へ戻る明順応より遅いのは、このためと説明されています[3]。
ここで、ビタミンAの話をひとつ。レチナールは、ビタミンAから作られます。ビタミンAが足りなくなると、暗い所で見えにくくなる夜盲症になる、と眼科の解説にあります[2]。ただし、不足しているときの話で、たくさん食べれば夜に強くなる、という意味ではありません。
桿体の視物質ロドプシンは、オプシンと発色団11-シス・レチナールから成る[7]。光を吸収すると、11-シス・レチナールが全トランス・レチナールへと光異性化し、オプシンから遊離する。これが漂白であり、漂白された視物質は光を受けとれない[7]。
遊離したレチナールは網膜色素上皮で11-シス型に再異性化され、視細胞に戻ってオプシンと再結合する[7]。暗順応と色素の再生に要する時間は、局所の11-シス・レチナールの濃度に大きく左右される、と英語版Wikipediaは述べる[6]。ここでは、分解した色素がふたたび働ける形に戻ることを「作り直し」と呼ぶ。
ロドプシンの作り直しは分解より時間がかかるため、暗順応は明順応より遅いと説明される[3]。
レチナールの材料はビタミンAで、不足すると暗所で見えにくくなる夜盲症を起こす[2]。これは不足時の話で、摂取を増やせば暗所視が向上するという意味ではない。
「作り直し」の説明は、辞典と眼科サイトを突き合わせたものである。
6. 星を 見る 人は、どうして 赤い ライトを つかうの?
6. 星を見る人が赤いライトを使う理由
6. 赤色光と暗順応の保持 ── 桿体の感度ピークは約500nm
桿体は、青みの ある 緑の 光に いちばん はんのう します。赤い 光には、あまり はんのう しません[6]。
だから、夜に 星を 見る 人は、赤い ライトを つかう ことが ある、と いわれます[3]。弱い 赤い 光は、白い 光より 桿体を しげきしにくい ため、せっかく なれた 目を、もどして しまいにくい、と 説明 されて います[3]。
ただし、赤い 光が 「見えない」のでは ありません。桿体が はんのう しにくい、と いう ことです。
これで、目が なれる しくみの 大すじは たどれました。でも、まだ わかって いない ことも あります。
7. まだ わからない ことは あるの?
7. ロドプシンの作り直しだけでは説明しきれない
7. 視細胞の感度を調節する分子機構 ── 2019年の大阪大学の発表
2019ねんに、大阪大学の 研究が 発表 されました。目の 光を かんじる 細胞は、まわりの 明るさに あわせて、かんじる 強さを かえて います。その くわしい しくみの 一つが 分かった、と いう ものです[8]。
この 研究では、光を かんじた あとの、たんぱくしつの うごきが 調べられました。ロドプシンを 作り直す 話だけでは、暗い ところで 目が なれる ことの ぜんぶは 説明 できない、と いう ことです。
ロドプシンを 作り直す ほかにも、目には 感じる 強さを 変える しくみが あるのです。
2019年、大阪大学の研究が発表されました。視細胞が、周りの明るさに合わせて感度を調節する分子の仕組みの一つが示された、という内容です。光の入力から、あるたんぱく質が分解され、別のたんぱく質の位置が変わるまでの流れが分かった、と報告されています[8]。
ここから、暗順応は色素の作り直しだけで決まるのではなく、視細胞の中の別の仕組みも関わっている、と考えられます。ただ、この研究が示したのは、明るさに応じた調節の一つの流れです。暗順応の全体が説明されたわけではありません。
暗闇に慣れる目は、思っていたより多くの仕組みで支えられているようです。
大阪大学の2019年の発表は、視細胞が明るさに応じて感度を調節する分子機構の一つを明らかにしたと報じる。光の入力から、Klhl18によるUnc119の分解を経て、トランスデューシンの局在が変わる一連の過程が示された[8]。
ロドプシンの再生は暗順応の中心的な過程の一つだが、これだけが暗順応を決めるわけではない。視細胞には、明暗に合わせて感度を調節する別の分子機構も備わっている。ただし、この発表は1つの研究成果の紹介であり、暗順応の全体像を書き換えるものではない。読むなら、発表の要約だけでなく、元の論文を探して確かめるとよい。
8. じぶんでも たしかめて みたく なったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
夜に、家の 人と いっしょに、ものを かたづけた へやで、電気を 消して、いすに すわって 待って みましょう。くらい 中を 歩かないで、すわった ままで やります。はじめに、目に 見える ものを 3つ かぞえます。5分 たったら、また かぞえます。20分 たったら、もういちど。ふえて いるでしょうか。色は どうでしょう。
ちなみに、スマホを 見ると 目が また 明るさに もどって しまうかもしれません。待つ あいだは、見ないで おきましょう。
夜、家の人と一緒に、物を片づけた部屋で電気を消して、椅子に座ったまま待ってみましょう。暗い中を歩かないでください。最初に、見える物を3つ数えます。5分後、20分後に同じことをして、数がどう変わるか、色の見え方がどうか、確かめてみましょう。
途中で明るいスマートフォンの画面を見ると、目が明るさに戻るかもしれません。待つあいだは見ないでおきます。
まず、夜の部屋で試せる。物を片づけた部屋で、家の人と一緒に、座ったまま見える物の数を5分ごとに記録する。暗い中は歩かず、火や刃物は使わない。変化が緩やかなことは、上で見た曲線と比べられる。
暗順応の時間経過は、資料により20〜30分、30〜45分、約1時間と幅がある。記録のあとで、次の資料に当たって、数字の出どころを確かめるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:眼科の解説、辞典、学会・大学の解説、百科事典(Wikipedia)を突き合わせて使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。時間や倍率の数字は、眼科サイトなどの二次資料で確かめたものが多い。
- 自由が丘 清澤眼科「暗順応曲線」 https://jiyugaoka-kiyosawa-eyeclinic.com/shinkei/27363/ (暗順応の時間経過・2段階)
- 広辻眼科「暗順応について」 https://hirotsuji-eye.com/eye/e121 (錐体・桿体の数と感度、ビタミンA)
- 「暗順応」Wikipedia日本語版 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%97%E9%A0%86%E5%BF%9C (暗順応の定義、明順応との差、赤色照明)
- シーシーエス「人の眼と器械の眼」 https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol24.html (瞳孔の直径と面積の比)
- 日本生物物理学会「視覚」 https://www.biophys.jp/highschool/C-16.html (桿体と錐体の働きの違い)
- "Adaptation (eye)" Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Adaptation_(eye) (ロッド・コーン・ブレーク、再生の時間、桿体の波長感度)
- 脳科学辞典「ロドプシン」 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%AD%E3%83%89%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3 (ロドプシンの構造と再生)
- ResOU 大阪大学「明暗順応の分子メカニズム」(2019年) https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20191101_1 (視細胞の感度調節の分子の仕組み)
なおした ところ
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