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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

トンボは、めで なにを 見て いるの?

トンボは青空の中の小さな点を、どう見つけて追うのか

トンボは小さな虫をどう見つけ、追いかけるのか

分野:生きもの

トンボの め には、いろを かんじる しくみが、十五しゅるいいじょうも あります。ギンヤンマでは 三十三しゅるいです。たいていの どうぶつは、二から 五しゅるいだと いわれます[1]。

どうして、そんなに たくさん いるのでしょう。あおい そらの なかの ちいさな 点を、トンボは どう 見つけて、おいかけるのでしょう。この メモでは、トンボの め の はたらきが わかります。

トンボは、色を感じるしくみにかかわる遺伝子を15種類以上もっています。いちばん多いギンヤンマでは33種類。多くの動物は2〜5種類だとされています[1]。

青空を背にした小さな点を見つけ、飛び回る虫を追いかけ、仲間かどうかを見分ける。そのために、トンボの目はなぜそこまで細かく使い分けられているのでしょうか。この記事では、目の上と下の役割、小さな標的だけに反応する神経細胞、先回りして追う動き、仲間の見分けかたが分かります。

トンボは、色の感知にかかわるオプシン遺伝子を15種類以上もち、ギンヤンマでは33種類と最も多い。大半の動物は2〜5種類とされる[1]。ただし33種類は最多の種の値で、全トンボの値ではない。

なぜそれほどの多様性が要るのか。この記事では、複眼の背側と腹側の役割分担、視野で1〜3度ほどの小さな標的にだけ強く反応する神経細胞、2つの標的から1つを選ぶ仕組み、予測にもとづく追跡、雄が雌を見分けるときの視覚の使われ方が分かる。

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1. トンボの め は、なにが ふしぎなの?

1. 目の中に、色を感じるしくみが33種類

1. なぜオプシン遺伝子が15〜33種類も要るのか

トンボの あたまの 大きな 二つの め は、ちいさな レンズが たくさん あつまって できて います。ふくがんと いいます。レンズの かずは、大きいもので 三まんこ ほどに なると いわれます[2]。

この め の なかで、いろを かんじる しくみが、たくさん あります。ギンヤンマでは 三十三しゅるいです[1]。

そんなに たくさん、なにに つかうのでしょう。じつは、め の 上と 下で、見て いる ものが ちがうようです。

トンボの頭の大部分は、大きな2つの複眼でできています。複眼は、小さなレンズと感覚細胞のセットがたくさん集まったもので、その1つひとつを個眼といいます。トンボでは最大で約3万個ともいわれますが、これは種によって違います[2]。

この複眼の中で、色を感じるたんぱく質(オプシン)の遺伝子が、産業技術総合研究所などの研究でギンヤンマから33種類見つかりました。他のトンボでも15種類以上あり、多くの動物の2〜5種類とは大きく違います[1]。

これだけの種類を、トンボは何のために持っているのでしょうか。手がかりは、目のどこにあるかにありました。

トンボの頭部の大半は、1対の大きな複眼が占める。複眼は個眼の集まりで、最大で約3万個とされるが、種によって異なる[2]。

2015年の産業技術総合研究所らの研究(PNAS)は、複数種のトンボで色覚にかかわるオプシン遺伝子を調べ、15種類以上を確認し、ギンヤンマで最多の33種類を報告した。大半の動物は2〜5種類とされるので、突出した多さである[1]。

ここで問いが生じる。単に色を細かく見分けたいだけなら、これほどの数は要らないかもしれない。手がかりは、どの種類が複眼のどこで働くか、という分布にある。

2. め の 上と 下で、見て いる ものが ちがうの?

2. 上は青空を背にした相手、下は地面の近くを見る

2. 背側と腹側の役割分担:青空を背景にした検出

トンボが 空を とんで いるとき、上には 青い 空が 広がって います。その 空を せなかに、ほかの 虫や 鳥が とんで きます。

め の 上の ほうには、青い ひかりを かんじる しくみが 多くて、空を せなかに とぶ 虫や 鳥を 見つけるのに つかうと いわれます。下の ほうには、赤に ちかい ひかりを かんじる しくみが 多くて、じめんの ようすや、えもの、なかまを 見つけるのに つかうと いわれます[1]。

上を 見る めは、とくに くわしく 見える ぶぶんが あると いう 研究も あります[3]。

では、その 上の め は、どんな ものを 見つけるのが とくいなのでしょう。

トンボが飛ぶとき、上を見上げる目には、青空が背景として広がります。空に浮かぶ小さな黒い点は、飛んでくる虫や鳥です。

研究によると、複眼の背側(上側)には、波長の短い光を感じるオプシンが多く、青空を背景に飛ぶ虫や鳥を主に見つける役割があるようです。腹側(下側)には、波長の長い光を感じるオプシンが多く、地面の様子、繁殖の相手、餌などを見る役割があるとされています[1]。

背側には、「ドーサル・アキュート・ゾーン」と呼ばれる、特に細かく見える領域があります。専用の光学系と、より高次の視覚神経細胞がセットになって、標的を見つけるために使われると報告されています[3]。

青空の中で見つけるのは、遠くにある小さな点です。その点を、トンボの神経はどうやってほかから区別するのでしょうか。

色覚だけでなく、その分布にも意味がある。複眼の背側では短波長オプシンが青空を背景に飛ぶ他の昆虫や鳥を主に感知し、腹側では長波長オプシンが地表の環境や繁殖相手、餌などの認識を担うと報告されている[1]。背側にはこうした役割があると報告されている。

背側には、ドーサル・アキュート・ゾーンと呼ばれる高解像度の領域がある。専用の光学系と、視葉の奥にある高次の視覚神経細胞(lobula複合体)が組み合わさって、標的の検出に使われる[3]。解像度の具体的な数値は示さない。

では、ここで集めた光の情報のうち、何が「標的」として取り出されるのか。次は、神経細胞のレベルの話になる。

3. どのくらい ちいさい ものを 追うの?

3. 指の幅ほどの点に反応する神経細胞

3. 視野で1〜3度の標的:STMDと獲物の大きさの選択

トンボの あたまの なかには、ちいさく うごく 点に つよく はんのうする しんけいが あると いわれます[4]。まわりが ごちゃごちゃして いても、はんのうします。

その 点の 大きさは、うでを のばした ときの、ゆびの はばくらいです。

ハエを おいかける トンボを 調べた じっけんでは、トンボは ゆびの はばの はんぶんから おなじくらいの 小さな 点を、よく おいかけました。大きすぎる えものは、ほとんど おいかけませんでした[7]。

では、そんな 点が いくつも 見えたら、どうするのでしょう。

トンボの視覚神経細胞の中には、小さく動く標的に強く反応するものがあり、STMD(小さな標的の動きを見つける細胞)と呼ばれます。反応するのは、視野の中で1〜3度ほどの小さな標的で、背景がごちゃごちゃしていても反応するとされています[4]。腕をいっぱいに伸ばしたとき、指の幅がおよそ1〜2度です。

実際の追跡でも、似た傾向が見られました。4種のトンボがハエを追う実験では、視角で約1度に見える獲物を追うことが多く、3度より大きい獲物はほとんど追いませんでした。獲物が大きいほど、捕まえる成功率と効率は下がったといいます[7]。

大きい獲物のほうが、目立って見つけやすいような気もします。けれど、近くて大きすぎるものは、標的として見えにくいのかもしれないと、論文は仮説として述べています。

ところで、空にはたくさんの虫が飛んでいることがあります。標的が2つ同時に見えたとき、神経細胞はどう働くのでしょうか。

視覚神経細胞のうち、STMDは、視野で約1〜3度の小さな動く標的に強く反応し、背景に混み合った模様があっても反応する[4]。なお1〜3度は典型値であり、腕を伸ばしたときの指の幅がおよそ1〜2度に当たる。

行動の側から見ても、この範囲は妥当に見える。Combesらが4種のトンボにハエを追わせた実験では、視角約1度の獲物を追う場合が多く、3度を超える獲物はほとんど追われなかった。獲物が大きいほど、捕獲成功率と効率は下がった[7]。大きい獲物が追われにくい理由は、近距離で大きすぎると標的として認識されにくいためではないか、と論文が仮説として述べている段階で、確定していない。

ところが、屋外では小さな標的は1つとは限らない。群れの中の複数の点が同時に視野に入ったとき、どの神経細胞が、どう「選ぶ」のか。

4. たくさん いたら、どれを おいかけるの?

4. 群れの中から、1匹だけを選ぶ神経細胞

4. 2つの標的から1つを選ぶ:CSTMD1の勝者総取り

ちいさな 点が ふたつ、いっしょに 見えたと します。トンボの しんけいの ひとつ(CSTMD1)は、どちらか ひとつだけを えらんで はんのうします。もう ひとつは、まるで ないかのように あつかうと いわれます[5]。

ひとつに しぼれば、めうつりを しないで、ねらいを さだめられそうです。

えらんだ あと、トンボは どうやって おいかけるのでしょうか。

2013年、フリンダース大学のウィーダーマンとオキャロルは、CSTMD1という神経細胞を調べました。標的が2つ同時に出ても、この細胞は片方だけを選んで反応し、もう片方は最初からないかのように扱ったと報告されています[5]。「勝者総取り」と呼ばれる働き方です。

群れの中で獲物が次々に目に入っても、迷わず1匹に絞れる仕組みは、トンボが速い動きの中で標的を見失わない助けになっていそうです。ただし、これは1本の神経細胞の性質についての報告で、追跡のすべてを説明するものではありません。

1匹を選んだあと、トンボはどう追うのでしょうか。見えたものに、その場で反応しているだけなのでしょうか。

CSTMD1は、標的が2つ同時に提示されても、一方にだけ反応し、他方を存在しないかのように扱う(勝者総取り)。Wiederman & O’Carroll(Current Biology, 2013)の報告である[5]。選択的注意に近い働きで、複数の標的が視野にあっても、神経細胞の反応は1つに絞られることになる。

この報告が示すのは細胞1つの性質である。追跡行動の全体を、この細胞だけで説明できるわけではない。1つに絞った標的に対し、身体がどう動くのか、次に見る。

5. おいかけて いるとき、あたまは どう うごくの?

5. 見てから動くのではなく、先回りして追う

5. 追跡は反射か予測か:内部モデルと頭部の回転

トンボは、えものを 見てから ようすを かえる だけでは ありません。あたまを、えものの いる 先の ほうへ、さきに まわして いると いう けんきゅうが あります[6]。

あたまの むきに あわせて、からだの むきも かわります。えものの うごきが おもったのと ちがった ときに、め の はたらきで なおして いるようです。

これは、北アメリカの トンボ(Plathemis lydia)で 調べた けんきゅうです。日本の トンボでも おなじかは、まだ わかりません。

2015年の『Nature』に、トンボの追跡を調べた研究が載りました。獲物を追うとき、トンボの頭は獲物のいる角度をあらかじめ予測しながら回転し続けます。頭と体の角度の差が、体の回転を導いているといいます[6]。

体の動きの大部分は、トンボの内部にある「これから獲物がどう動くか」の予測にもとづいて決まります。目で見た情報は、獲物が予想外の動きをしたときの修正に使われているとされています。

ただし、実験に使われたのは北アメリカのトンボ(Plathemis lydia)です。日本のトンボにそのまま当てはまるとは、この資料からは言えません。

さて、ここまでは獲物の話でした。トンボは、仲間のことも同じ目で見分けているのでしょうか。

追跡は、視覚入力に対する反射だけでは説明されない。Plathemis lydiaを使った研究では、頭が獲物の角度位置を予測的に回転して追い、頭と体の角度が体の回転を導いていた。体の操縦の大部分は内部モデルにもとづき、視覚は予想外の獲物の動きへの反応に使われる[6]。

前章のSTMDやCSTMD1が「何を追うか」を絞る段階だとすれば、この研究は「どう追うか」の段階に当たる。ただし、細胞の反応と行動の予測が具体的にどう結びつくのかは、ここで用いた資料からは分からない。対象は北米の種である。

では、獲物ではなく、同じ種の相手を見つけるときはどうか。

6. なかまは、どう 見わけて いるの?

6. 仲間かどうかは、まず見た目で決まる

6. 配偶者の識別:視覚の手がかりと、その不正確さ

めすを 見つけた ときは、おおきさ、とびかた、いろ、もようなどを 見て はんだんして いると いわれます。でも、さいしょの はんだんは、まちがえる こともあります。ちがう しゅるいの めすに、そばに よって いくことも あります[8]。

ここで しらべたのは、イトトンボの なかまです。すべての トンボが、おなじとは かぎりません。

トンボの雄は、雌をどう見分けているのでしょうか。イトトンボの研究では、雄が雌に近づく最初の段階で、主に視覚、つまり大きさ・飛び方・色・模様に頼るとされています。視覚の手がかりがないと、雄は同じ種の雌にも反応を示さなかったといいます[8]。

ただ、この最初の識別はしばしば不正確で、他の種の雌に交尾を試みることもあります。だからこそ、その後に別の手がかりで確かめる段階があるのかもしれません。ただし、この研究の対象はイトトンボ1種で、シオカラトンボなどの様子までは分かりません。

トンボ類の配偶者認識は、雄が雌に近づく最初の段階では主に視覚(大きさ・飛び方・色・模様)に頼る。この初期の識別はしばしば不正確で、他種の雌に交尾を試みる例もある。視覚の手がかりを取り除いた実験では、雄は同種の雌に対しても肯定的な反応を示さなかった(Winfrey & Fincke, 2017)[8]。

ただし、この結果はイトトンボ(Enallagma civile)のものである。トンボ全般に広げてはならないし、シオカラトンボなどの種そのもののデータも、ここでは用いていない。

複眼は、獲物の点を選び、先回りして追い、相手を見た目で判断する。その一方で、完全に見分けられるとは限らない。では、実際の水辺では、それをどう確かめられるだろうか。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること:うでを まっすぐ のばして、ゆびを 見て みましょう。そのはばが、トンボが おいかける 点の 大きさの めやすです。そらに ちいさな 虫が とんで いたら、その 点は ゆびの はばと くらべて どうでしょう。

出かけて できること:みずべで、トンボが なにに むかって とぶのか、少しはなれて 見て みましょう。みずには ちかづきすぎないで、おとなと いっしょに いきましょう。

今日できること:腕をまっすぐ伸ばして、指の幅を見てみましょう。1〜2度が、トンボが追う獲物の大きさの目安です。空を飛ぶ小さな虫が、指の幅と比べてどのくらいに見えるかを想像してみてください。

出かけてできること:水辺で、トンボが何に向かって飛ぶのかを、少し離れて観察してみましょう。他の虫でしょうか、別のトンボでしょうか。水に近づきすぎず、大人と一緒に行ってください。

もっと知りたいとき:出典欄の論文は、多くが英語です。日本語では、JSTサイエンスポータルの記事が入り口になります。

今日できること:腕を伸ばして指の幅を見て、視角1〜2度の大きさを実感する。これは典型値であり、トンボの種や状況で変わる。

出かけてできること:水辺で、トンボが何を追うのか、他の個体にどう反応するのかを、離れた場所から観察する。水辺の安全に気をつけ、大人と行く。

資料を読む:JSTサイエンスポータルの記事(日本語)が入り口になる。Wiederman & O’Carroll(2013)、Mischiati ら(Nature, 2015)、Combes ら(2013)は原典にあたれる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。一部は検索抜粋の段階で、原文全文は確かめていません。

  1. JSTサイエンスポータル「トンボはなぜ15種類以上のオプシン遺伝子を持つのか(産総研らのPNAS 2015の紹介)」 https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20150224_01/ (オプシン遺伝子の種類数、背側と腹側の役割)
  2. Dragonfly eyes(rcannon992、Futahashi 2015などを引用する解説) https://rcannon992.com/2019/03/17/dragonfly-eyes/ (個眼の数の目安)
  3. Neural mechanisms underlying target detection in a dragonfly centrifugal neuron(J Exp Biol 2007) https://doi.org/10.1242/jeb.008425 (高解像度の領域と高次の視覚神経細胞)
  4. Wiederman & O’Carrollらの総説・論文(PMC6619721) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6619721/ (小さな標的に反応する神経細胞)
  5. A Target-Detecting Visual Neuron in the Dragonfly Locks on to Selectively Attended Targets(Current Biology 2013) https://researchnow.flinders.edu.au/ (CSTMD1の勝者総取り)
  6. Internal models direct dragonfly interception steering(Nature 2015) https://www.nature.com/articles/nature14045 (予測にもとづく追跡)
  7. Capture Success and Efficiency of Dragonflies Pursuing Different Types of Prey(Combes ら、Integrative and Comparative Biology 2013) https://academic.oup.com/icb/article/53/5/787/733390 (獲物の大きさと追跡)
  8. Role of visual and non-visual cues in damselfly mate recognition(Winfrey & Fincke 2017、International Journal of Odonatology) https://worlddragonfly.org/article/13887890-2017-1297259/ (イトトンボの配偶者認識)

なおした ところ

更新履歴

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