1. 2しゅるいの ゆれは、どちらが はやい?
1. 震源から2種類の波が出て、速さがちがう
1. P波とS波 ── 秒速約7kmと約4km
地震が 起きると、ゆれは 2しゅるい、同じ 場所から 同時に 出発します。よわい ゆれを 運ぶ「P波(ピーは)」と、それより おそくて 強い ゆれを 運ぶ「S波(エスは)」です[1]。
気象庁の しりょうでは、1びょうに 進む きょりは、P波が およそ 7キロメートル、S波が およそ 4キロメートルです。しんかんせんは 1びょうに 80メートルですから、P波は その 90ばいほど。
ただし、この 数字は めやすです。場所や 深さで 速さは かわります。
「カタカタ」が P波、あとの 「ゆさゆさ」が S波と 思うと、しっくり きます。これは この 記事の たとえで、しりょうに そう 書いて ある わけでは ありません。
地震が起きると、震源から2種類の波が同時に広がります。弱い揺れを運ぶ速いP波(初期微動)と、遅くて強い揺れを運ぶS波(主要動)です[1]。
気象庁の教育資料は、1秒に進むおよその距離をP波7000m、S波4000mとしています。新幹線は1秒に80mですから、P波はその90倍ほど、オリンピック選手の走る速さ(約10m)の700倍です。気象庁の「緊急地震速報のしくみ」のページも、P波は秒速約7km、S波は秒速約4kmとしています[2]。
ただし、これは目安です。地震波の速さは場所や深さで変わり、地殻の上のほうでは、これより少し遅い値(P波約6km、S波約3.5km)が使われることもあります[5]。
体で感じる「カタカタ→ゆさゆさ」の順は、P波→S波の順に対応していると考えられます。ただし「カタカタ」「ゆさゆさ」という言い方は、この記事の表現です。
気象庁仙台管区気象台の教育資料は、震源を中心に広がる波として、弱い揺れのP波(初期微動)と、P波より遅く強い揺れのS波(主要動)を挙げ、1秒に進むおよその距離をP波7000m、S波4000mと示す[1]。気象庁の「緊急地震速報のしくみ」も、P波約7km/s、S波約4km/sとする[2]。
比較のため同資料が挙げる数値は、新幹線80m/s、オリンピック選手10m/sで、7000÷80≒88、7000÷10=700である(自分で計算した)。
ただしこれは教育向けの単純化した目安である。加藤・岡本は地殻の値としてP波6.0km/s、S波3.5km/sを用いており[5]、速度は深さで変わる。本記事では、7・4km/sを「気象庁の示す目安」、6・3.5km/sを「地殻の値の例」として使い分ける。
「カタカタ→ゆさゆさ」という体感表現は資料に出典があるものではなく、本記事の比喩である。
2. 「おす ゆれ」と 「ずらす ゆれ」
2. 押す波と、横にずらす波
2. 縦波と横波 ── 波の向きと振動の向き
日本地震学会は、P波を 「ゆれが 進む むきに ふるえる 波」、S波を 「進む むきと 直角に ふるえる 波」と せつめいして います[3]。
ばねを 手で おしたり、ひいたり する 動きが P波、ロープの はしを 上下に ふると、ロープの 上を 山が 走る 動きが S波に にて います。
P波の ほうが 先に とどく ことは、この しりょうにも 書いて あります[3]。P波が はやいわけは、「おす ゆれ」の ほうが、「ずらす ゆれ」より 岩の 中を つたわりやすい ためと せつめいされる ことが あります。
日本地震学会のFAQは、P波を「地震波の進行方向に振動する波(縦波)」、S波を「進行方向に垂直に振動する波(横波)」と説明しています。また、P波は地中を伝わる速度がいちばん大きく、最初に地表に届く波です[3]。
ばねの端を押して縮めるように伝わるのが縦波、ロープの端を上下に振ると山が横に走っていくように伝わるのが横波のイメージです(このたとえは、この記事のものです)。
P波が速い理由は、岩盤を「押し縮める」変形とS波の「ずらす」変形の伝わり方のちがいによる、と一般に説明されます。ここでは式には立ち入りません。
日本地震学会のFAQによれば、P波は進行方向に振動する縦波、S波は進行方向に垂直に振動する横波であり、P波が最も速く最初に地表へ届く[3]。
P波が速い理由として、岩盤の体積変化(押し縮め)に関わる弾性率がP波の速さにだけ加わり、S波の速さはずれの硬さ(剛性率)で決まる、という教科書的な説明がある。ここでは、押し縮める波のほうがずらす波より速い、という説明にとどめる。
本記事では、後の章でP波とS波が「液体を通れるか」のちがいも使う。
3. 「カタカタ」の 長さで、地震の きょりが わかる?
3. 待ち時間から、震源までの距離を見積もる
3. 初期微動継続時間と大森公式
2つの 足は、遠い ほど、ついた 時間の ずれが 大きく なります[5]。
たとえば、P波が 7キロメートルを 1びょうで、S波が 4キロメートルを 1びょうで 進むと します。10びょうで P波は 70キロメートル、S波は 40キロメートル。走る きょりが 長いほど、おくれも 大きく なります。
百年より もっと 前、おおもり ふさきちという 人が、「カタカタの 長さ」と 「きょり」を、かんたんな 式で むすびました。1899ねんの ことだと、地震学の ろんぶんに あります[5]。
カタカタが 10びょう つづいたなら、地震の 場所は、80から 90キロメートルほど 先だと 見つもれます。ただし、これも 正しい 数では なく、めやすです。
P波が届いてからS波が届くまでの時間を、初期微動継続時間と呼びます。震源から遠いほど、この時間は長くなります[5]。理由は、同じ道のりを走るあいだに、速さの差がどんどん積み重なるからです。
大森房吉は1899年に、震源距離と初期微動継続時間を結ぶ一次式を初めて示しました(大森公式)。すでにミルンらが「初期微動が長いほど震源は遠い」ことを指摘しており、それを式にして定量化したのが大森の貢献だとされています[5]。
式は距離=k×時間の形で、k(大森係数)は、P波の速さ×S波の速さ÷(P波の速さ-S波の速さ)で導けます。地殻の値6.0・3.5km/sなら8.4です。教科書には6〜8程度とある一方、この論文の著者らは、現在の知見では8〜9程度が妥当だとしています[5]。
初期微動が10秒続いたなら、震源までの距離は80〜90kmほどと見積もれます。kは一定の値ではなく、目安です。
初期微動継続時間(P波到達からS波到達まで)は、震源から遠いほど長い[5]。加藤・岡本(2016)によれば、大森房吉は1899年に、震源距離Dと初期微動継続時間Tを結ぶ一次式(D=kT)を最初に提案した。初期微動の長短と震源の遠近の対応はすでにミルンらが指摘しており、それを定量化したのが大森の貢献という位置づけである[5]。
大森係数kは、P波・S波の速さをVp・Vsとして、k=VpVs/(Vp-Vs)と導ける[5]。地殻の値Vp6.0・Vs3.5km/sではk=8.4となる。教科書に6〜8程度、8程度とある値について、同論文は現在の知見で8〜9程度を目安とする。気象庁の目安(7・4km/s)で自分で計算すると約9.3(7×4÷3)になり、これも同じ範囲に近い。
したがってT=10秒なら、震源までの距離は80〜90kmほどと見積もれる(k=8〜9を使った自分の計算)。速度は深さで変わるため、kは定数でなく目安であり、この式は震源までの距離のおおよその見当を与えるものである。
4. ゆれから、地球の 中が 分かる
4. S波が通れない場所から、地球の内側が分かる
4. S波が伝わらない領域 ── 外核は液体と考えられている
P波は、かたい 岩も、水の ような ものも、空気も 通れます。でも、S波は かたい ものの 中しか 通れません[4]。
地球の 中の、深さ 2900キロメートルより 下では、S波が まったく つたわりません。そこで、その 場所(がいかく)は、水のように 流れる ものが つまって いると 考えられて います[4]。
ゆれの 通り方を しらべる ことで、地球の おくの ようすが 分かる のです。人が あなを ほって 行ける ところより、ずっと 深い 場所です。
P波は固体・液体・気体のどれでも伝わりますが、S波は固体の中しか伝わりません。気象庁の解説によれば、深さ約2900kmより深い外核ではS波がまったく伝わらず、外核は液体でできていると考えられています[4]。
人が穴を掘ることはできない深さです。それでも、地震の波がどこを通れて、どこで消えるかを世界中の地震計で調べれば、地球の中の状態が推測できます。
横波が液体を通れないのは、液体はずらす力を受けても形を保てず、ずれが伝わっていかないためと説明されます。
気象庁「地震・津波・火山を知る」は、S波が液体・気体中を伝わらず固体中しか伝わらないこと、深さ約2900kmより深い外核ではS波がまったく伝わらず、外核は液体で構成されていると考えられることを述べる[4]。P波は固体・液体・気体のいずれも伝わる。
この推論は、P波・S波の到達データから、S波が伝わらない領域の位置を読み取る、という手順に基づく。外核が液体という結論は、この観測(S波が通らない)を「S波は液体を伝わらない」という性質と突き合わせた解釈であり、現在の地球内部モデルの一部である。
この記事の資料では、外核の存在を最初に指摘した研究者は確認できなかったため、扱わない。
5. 「ゆれる まえに」しらせる ことは できる?
5. 緊急地震速報 ── 波より速い電気信号と、間に合わない場所
5. 緊急地震速報の原理と限界
P波が 先に とどく ことを 使った しくみが、「きんきゅう じしん そくほう」です[1]。地震の 場所の ちかくの けいきが P波を 見つけると、コンピュータが 場所や 大きさ、ゆれの 強さを すぐに 計算して、S波が 来る まえに しらせます。
ゆれの 予言では ありません。地震が 起きた あとで、大きな ゆれが 来る ことを 知らせる しくみです[1]。
間に あうのは、電気の しんごうが、ほとんど 光の はやさで 走るからです。P波より、ずっと はやく 走ります。
ただし、地震の 真上や ちかくは、しらせが 間に あわない ことが あります。しらせから 強い ゆれまでは、数びょうから、ながくても 数十びょうと いわれます[6]。
緊急地震速報は、地震の予知ではありません。震源に近い地震計でP波を検知し、コンピュータが震源の位置・規模・各地の揺れの強さを自動で瞬時に計算して、S波が届く前に知らせる仕組みです[1]。
これが可能なのは、情報を運ぶ電気信号がほぼ光の速さで進み、P波は秒速約7kmと、それよりずっと遅いためです[1]。資料は、地震計の全国展開、計算の高速化、通信の高速化が実現のポイントだと述べています。
限界もあります。震源に近い場所や、内陸の浅い地震の真上では、解析と伝達に数秒かかるため、速報が強い揺れに間に合わないことがあります[2]。速報が出てから強い揺れが届くまでの時間は、数秒から、長くても数十秒程度とされています[6]。
気象庁仙台管区気象台の教育資料は、緊急地震速報を「地震の予知ではなく、地震が起こってからコンピュータが揺れの大きさを計算する」ものとし、震源近くの地震計でP波を検知して自動で震源・規模・揺れの強さを求め、S波が届く前に知らせる仕組みと説明する[1]。
実現できる理由は、電気信号が光速に近い速さで伝わる一方、P波は秒速約7kmであること。資料は、全国の地震計網、計算の高速化、通信の高速化を実現の要点に挙げる[1]。なお同資料は「P波はおよそ音の速さ」と書くが、音速は約0.34km/sなので、この「およそ」は比喩的な表現と読むべきだろう。
限界について、気象庁は、内陸の浅い地震では震源に近い地点で速報が強い揺れに間に合わないことがあると述べる[2]。速報発表から強い揺れまでは数秒〜長くても数十秒程度[6]。
6. 「カタカタ」の あいだに できる こと
6. 数えてみる、読んでみる
6. 出口 ── 自分で見積もる、資料へ
カタカタが 何びょう つづくかを 数える 練習は、いざ という ときには、むずかしいかも しれません。でも、しくみを 知って おくと、「しらせが 鳴った、あと 数びょうで 大きな ゆれが 来る かも」と 分かります。
やってみるなら、ゲームを して みましょう。「カタカタが 5びょう つづいた」と 決めて、5に、8から 9(ずれが 1びょうの ときの きょりの めやす、キロメートル)を かけて みて ください。40から 45キロメートル ぐらい 先だと 見つもれます。家に ある 地図の ものさしの 目もりを 使って、家から その きょりの 場所が どこ ぐらいか、家の 人と 見つけて みませんか。
もっと 知りたい ときは、気象庁や 日本地震学会の ページを、家の 人と 見て みましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の各数字が、どの資料に基づくかを示す。「90倍」「700倍」「9.3」などは資料の値から自分で計算した。
- 気象庁 仙台管区気象台 教育資料「緊急地震速報」 https://www.jma-net.go.jp/sendai/knowledge/kyouiku/eqvol/eq_nc.pdf (P波・S波の速さの目安、緊急地震速報の仕組み)
- 気象庁「緊急地震速報のしくみ」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/shikumi/shikumi.html (速さの目安・間に合わない場所)
- 日本地震学会 FAQ 1-10「P波とS波について」 https://www.zisin.jp/faq/faq01_10.html (縦波・横波の説明)
- 気象庁「地震・津波・火山を知る」第1章 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/svd/text/chapter_1.html (S波が液体を通らないこと・外核)
- 加藤愛太郎・岡本京祐(2016)「理科教育で用いられる距離に関する大森係数について」『地震 第2輯』69巻 https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin/69/0/69_35/_pdf (大森公式の歴史と大森係数の値)
- 気象庁「緊急地震速報とは」 https://www.data.jma.go.jp/eew/data/nc/shikumi/whats-eew.html (速報から強い揺れまでの時間・提供開始年)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。