1. 「1.0」の 1は、なにが 1 なの?
1. 視力の「1」は、すき間の小ささのこと
1. 視力の数字の正体 ── 切れ目の視角の逆数
ものさしの めもりを 見て ください。いちばん 小さい めもりの はばが 1ミリ。その 半分を たした 1ミリ半の すき間を、5メートル はなれた ところから 見わける 目が、視力 1.0 です[1]。
視力の 数字は、「どのくらい 見えるか」の わり合では ありません。「どのくらい 小さい すき間まで 分かるか」を あらわす 数字です。すき間が 10ばい 大きくないと 分からない 目は、0.1。0.1の Cは、すき間が 1.5センチほど。指1本の はばぐらいの、大きな Cです[1]。
1.0は 100てんの ような ものでは ありません。1.5や 2.0の 人も います[2]。1.0は「よく 見える 目安の せん」と 考えて ください。
やってみよう。ものさしで、1ミリと 1ミリ半の はばを 見くらべて みましょう。これだけ 小さい すき間を、5メートル 先で 見わけるのが、1.0 です。
視力は、どれだけ細かいものを見分けられるかを表す数字です。日本で使われる小数視力は、Cの形の「ランドルト環」で見分けられる最小の切れ目の幅を、視角で表したときの逆数と決められています[1]。視角の単位は「分」で、1分は1度の60分の1という、とても小さな角度です。
切れ目が1分なら視力1.0、2分なら0.5、10分なら0.1です。2.0なら0.5分、つまり半分の細かさまで見分けます[1]。パーセントや割合ではないので、「1.0は目の100%」という読み方はできません。
大きさにすると、こうなります。検査は5メートル離れて行い、視角1分は約1.5ミリにあたります。ランドルト環は外径が切れ目の幅の5倍に作られていて、視力1.0の環は外径7.5ミリ、切れ目1.5ミリです[1][2]。国際規格の厳密な値は1.454ミリと7.272ミリで、日本では丸めて使っています(差は約3%)。
視力0.1の環は、切れ目が約1.5センチ、外径は約7.3センチ。1.0の環の10倍の大きさです。反対に視力2.0の環は、切れ目が約0.7ミリと、1.0の半分です。0.1の環が見えない人には、環を近づけて測ります。距離が半分になると見える角度は2倍になるので、2.5メートルで見えれば0.05とします[2]。
1.0は満点ではありません。日本人の健常視力は1.2〜1.5とされ、1.5や2.0の人もいます[2]。アメリカの「20/20」(日本の1.0にあたる)も、完璧という意味ではなく標準的な見え方のことだと、米国眼科学会は説明しています[3]。1.0は上限ではなく、目安の線です。
視力は、どれだけ細かいものを見分けられるかを表す数字である。日本の小数視力は、ランドルト環の認識できる最小の切れ目の幅を、視角(分)で表したときの逆数と定義されている[1]。1分は1度の60分の1である。
切れ目が1分なら視力1.0、2分なら0.5、10分なら0.1、0.5分なら2.0になる。式にすれば、視力=1÷切れ目の視角(分)だ[1]。割合ではなく角度の逆数なので、「1.0は目の100%」という読み方は成り立たない。
大きさに直す。日本の検査距離は5m。5000mm×tan(1/60°)は約1.454mmで、これが視角1分にあたる切れ目幅だ。ランドルト環は外径が切れ目幅の5倍に作られるので、国際規格の外径は約7.27mmになる。日本では丸めて、切れ目1.5mm・外径7.5mmとして使う(差は約3%)[1][2]。
逆数の関係から、ほかの視力の環も計算できる。視力0.1の環は切れ目が約14.5mm(1.5cm)、外径が約73mm。視力2.0の環は切れ目が約0.73mm、外径が約3.6mmだ。0.1の環が見える目が1.0の環を見分けるには、距離を5mの10分の1の0.5mまで縮めればよい。距離が半分になれば角度は2倍になるからだ。実際の検査でも、0.1の環が見えない場合は距離を縮めて見せ、2.5mで見えれば0.05とする[2]。
1.0は満点ではない。日本人の健常視力は1.2〜1.5とされ、実用上は1.0以上を健常視力とすることも多い[2]。米国の分数視力の20/20(日本の1.0にあたる)も、「完璧」ではなく標準的な見え方を指すと米国眼科学会は説明する[3]。1.0は上限ではなく、基準線である。
切れ目の視角がなぜ1分なのかについては、中心窩の視細胞(錐体)の並びの間隔が約0.5分で、分解できる限界が1分程度になることが背景にある、と説明される。理論上の限界は2.0前後だが、光学的な収差などで、現実の上限はそれより少し低いとする説明が多い[4]。
2. どうして「C」の かたちなの?
2. Cの形を決めた、ナポリの会議
2. 視標がCになるまで ── スネレンからランドルトへ
この Cの 形は「ランドルトかん」と いいます。すき間が どちらを むいて いるか 答えるだけなので、もじを 知らない 子でも できます[5]。
考えた 人は、スイスで 生まれて、パリで はたらいた 目の 医者、ランドルトさんです。1909年に、せかいの 目の 医者が あつまる 会で、この Cを つかう ことが 決まりました[5]。
けんさでは、すき間の むきが ばらばらに 出ます。まぐれで あたらないように、なんども 出して、ほとんど あたった ときに「見えた」と します[1]。
視力表は、はじめからCだったわけではありません。1862年、オランダの眼科医スネレンは、文字全体を視角5分、線の太さを1分にした視力表を作りました。この「5分と1分」の考え方が、ランドルト環にも引き継がれました[5]。
文字の視標は、文字を知らない子どもや、言語の違う国では使いにくくなります。切れ目の向きだけを答えるCなら、文字に頼らずにすみます。1909年、イタリアのナポリで開かれた国際眼科学会で、ランドルト環が国際的な標準視標に決まりました。考案者のエドマンド・ランドルトは、スイス生まれで、パリで開業した眼科医です。考案した年は、資料によって1888年とも1899年ともあります[5]。
ランドルトのもとには、シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルも訪ねています。1891年、ドイルはウィーンで眼科を学ぼうとしましたが、ドイツ語の専門用語に苦労して途中でやめ、パリに寄ってランドルトのもとで数日を過ごした、と回想録に書いています[6]。
検査の決まりも細かく、国際規格では、切れ目の向きを8方向でばらばらに出します(現場の視力表は4方向が多い)。まぐれ当たりと区別するため、5個出して3個以上当てるなど、偶然を超える割合で正解したときに「見えた」と判定します[1]。
視力表の視標は、はじめから環ではなかった。1862年、オランダの眼科医スネレンは、文字全体を視角5分、線の太さを1分にした視力表を導入した。この「5分・1分」の考えは、ランドルト環にも引き継がれている[5]。
文字視標は、文字を知らない子どもや、言語圏の違う人には使いにくい。切れ目の向きだけを答えるCは、文字に頼らずに済む利点がある。ランドルト環が国際的な標準視標に決まったのは、1909年にイタリアのナポリで開かれた国際眼科学会(第11回)だ。考案者エドマンド・ランドルトはスイス生まれでパリで開業した眼科医で、考案した年は資料により1888年とも1899年ともあって割れている[5]。
ランドルトの名は、意外な場所にも出てくる。シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルは、1891年にウィーンで眼科を学ぼうとしたが、ドイツ語の専門用語に苦労して途中でやめ、パリに寄ってランドルトのもとで数日を過ごしたと回想録に書く[6]。
検査の手順も規格で決まっている。国際規格(ISO)では、検査距離は5±0.05m、切れ目の向きを8方向でランダムに出し、4秒間隔・3秒提示とする。臨床の視力表は4方向が多い。答えは偶然の正答と区別できる割合で判定し、たとえば5個出して3個以上の正答を「見えた」とする[1]。
3. どうして かためずつ 見るの?
3. なぜ片目ずつ測るのか
3. 片眼ずつ測る理由 ── 弱視と3歳児健診
眼科では、目を 1つずつ 見ます。りょう目で 見ると、よく 見える ほうの 目の ちからが 数字に 出て、見えにくい ほうの 目は 数字に 出にくいからです[2]。
子どもの 目に、かたほうだけ 見えにくい ことが あります。もう かたほうが ふつうに 見えるので、まわりの 人は もちろん、本人も 気づきにくいのです[7]。だから、3さいの けんしんなどで けんさを します[8]。
小さい ころは、見え方が まだ 育っている とちゅうです。育つ 時期の うちに 見つけると、なおしやすい とされて います[8]。
眼科では、片目ずつ視力を測ります。両目で測ると、左右のよいほうと同じか、それより少しよい数字になり、見えにくいほうの目の状態が数字に出にくいからです[2]。隠すほうの目を押さえつけないことも、日本眼科学会の規定に含まれています[1]。
とくに大切なのが、子どもの弱視です。弱視は、眼鏡をかけても視力が十分に出ない状態で、近視や遠視とは違います。片目だけの弱視は、もう片方の目が普通に見えるため生活に不自由がなく、周りからは分かりません。3歳児健診や就学時健診まで見つからないことがほとんどとされます[7]。
弱視の子は約50人に1人といわれます。幼児は視力が0.3ほどあれば生活に困らず、生まれてからずっとぼやけて見えている子は、ぼやけを不自由と感じにくいのです[8]。本人や家族が気づけないことがあり、様子を見ているだけでは分かりにくいことがあります。検査が必要な理由は、ここにあります。
視覚の感受性が高い時期は、生後3か月から1歳半ごろで、6〜8歳以降はあまり反応しなくなります。そのため、治療は小学校に入るまでに終えることが大切とされます[8]。子どもの視力は3歳で0.6〜0.9、5歳で1.0以上、6〜8歳ごろほぼ完成という目安が日本眼科医会から示されていますが、資料によって数字に差があります。
臨床では、片眼ずつ遠方視力を測る(日本では視距離5m)。両眼で測った視力は、左右のよいほうの視力と同じか、それより少しよい程度になる[2]。両眼で測ると、悪いほうの目の状態が数字に出にくい。日本眼科学会の規定には、隠すほうの目を押さえつけないことも含まれる[1]。
この意味が大きいのが弱視である。弱視は「眼鏡をかけても視力が十分に出ない」状態で、単なる近視や遠視とは違う。片眼だけの弱視(不同視弱視・斜視弱視)は、もう片方の目が普通に見えるので生活に不自由がなく、周囲からはまったく分からない。3歳児健診や就学時健診まで見つからないことがほとんどとされる[7]。
弱視の子は約50人に1人といわれる。幼児は視力0.3程度あれば生活に不自由せず、生まれてからずっとぼやけて見えている子は、ぼやけを不自由と感じない。大人が「見えた」と言う様子だけで判断すると見逃しが出るため、本人や家族が気づけないことがあるという前提で、健診に屈折検査を入れる動きがある[8]。
視覚の感受性が高いのは生後3か月〜1歳半ごろで、その後徐々に低下し、6〜8歳以降はあまり反応しなくなる。この時期を過ぎると弱視の治療は効果が出にくいため、小学校入学までに治療を完了することが大切とされる[8]。視力の発達の目安は、日本眼科医会が3歳で0.6〜0.9、5歳で1.0以上、6〜8歳ごろほぼ完成、鵜飼(1991)が3年で0.5、7年で1.0とするなど、資料で差がある[8][2]。測り方で数字が変わるためだ。
4. 気球の えは、なにを して いるの?
4. 気球の絵をのぞく機械は、何をしているのか
4. オートレフラクトメーター ── 器械近視と他覚的検査
顔を のせて、気球の えを のぞく きかいを 見た ことは ありますか。目に 見えない 光を 目の おくに あてて、はね返って きた 光から、ピントの あい かたを しらべます。数十秒で 終わります[9]。
気球の えは、目を じっと させる めじるしです。えは わざと ぼやけて 見えるように なっていて、目の ピント合わせの ちからを ゆるめて います[9]。近くを 見ると ピントが ぐっと うごき、とおくを 見ると ゆるむ からです。
この きかいの 数字が、そのまま めがねの 数字に なる わけでは ありません。めがねは、レンズを とりかえながら「どっちが 見やすい?」と 答えて きめます[1]。
視力検査のあと、顔をのせて気球の絵をのぞく機械を使うことがあります。オートレフラクトメーターといい、目に見えない赤外光を網膜に当て、反射して戻った光から、近視・遠視・乱視の度数や角膜のカーブを数十秒で測ります[9]。
気球の絵は、視線を止める目印です。絵はわざとぼやけて見えるようになっていて、目のピント合わせ(調節)をゆるめた状態を作っています[9]。近くを見るときは目がピントをぐっと合わせにいくので、この力をゆるめておく必要があるのです。視力検査を5メートルで行うのも、調節が起きにくい遠さだからだと、眼鏡店の解説は説明しています[10]。
それでも、機械をのぞくだけでピントが近くに寄る「器械近視」が起きることがあり、結果を読むときには考慮されます[1]。機械の数字は、そのまま眼鏡の度数ではありません。眼鏡の度数は、レンズを取りかえながら「どちらが見やすいか」に答える検査で決め、機械はその前の予備検査にあたります。
視力検査そのものも入口です。眼科の診察は、屈折と視力の測定から始まります。ただし5メートルの視力だけでは、遠視は調節でカバーされて見つけにくいとされます[1]。目の奥を見る検査が必要になる理由が、ここにもあります。
視力検査のあとに使う、気球の絵が見える機械がオートレフラクトメーターである。目に見えない赤外光を網膜に当て、反射光から近視・遠視・乱視の度数や角膜のカーブを数十秒で測る。気球は視線を止める目印で、ピントをわざとぼかし、調節をゆるめた状態を作る[9]。
調節は、近くを見るときに働く。視力検査を5mで行う理由は、近見反応が起きない距離を確保するためだと、眼鏡店の解説では説明されている。5mは1÷5=0.2D(ディオプター)で、眼鏡レンズの最小度数0.25D(焦点距離4m)より遠い、という考え方だ[10]。学会の規格などの一次資料で確かめたわけではなく、あくまで一つの説明である。
それでも、器械をのぞくこと自体でピントが近くに寄る「器械近視」が起きうるため、結果は考慮して読む。役割は、眼鏡の度数を決める自覚的検査(レンズ交換で答える)の前の、他覚的屈折検査(予備検査)である。結果にばらつきがあれば、白内障や角膜疾患などの可能性も考える[1]。機械の数字は、そのまま眼鏡の度数ではない。
視力検査も含めて、これらは入口にすぎない。眼科診療は屈折と視力の測定から始まり、視力の結果には眼疾患の発見につながる情報が多く含まれる。ただし遠方(5m)の視力検査だけでは、遠視は調節でカバーされて見つけにくい[1]。だから、目の奥を見る検査へ進む。
5. 目の おくを 見るには どうするの?
5. 瞳の奥をのぞく光と、瞳を開く目薬
5. 検眼鏡と散瞳検査 ── 目の奥を見るための光と目薬
「ひとみの なかは、どうして 黒いの?」。1851年、29さいの 先生ヘルムホルツは、この ことを 学生に 見せる ために、目の おくを のぞく どうぐを つくりました。ロウソクの 光と、かさねた ガラスを つかった そうです[11]。
ひとみ(瞳孔)は、あかるい ところでは 小さく なって います。せまい まどから のぞいても、へやの おくは ぜんぶ 見えません。それと おなじで、ひとみが 小さいままだと、目の おくは ほんの すこししか 見えません[12]。
そこで 目薬で ひとみを 大きく ひらく ことが あります。ひらく 目薬は 20分ほどで いちばん よく きき、しばらくの あいだ、かすんだり まぶしく 感じたり します[13][14]。どのくらい つづくかは 人や くすりで ちがうので、けんさの ときは 眼科の 人の 話を 聞きます。
ひらく 目薬が 使えない 目も あります。だから 使う 前に、眼科で 目の つくりを たしかめます[13]。目薬を 使わない カメラも あって、くらい へやで ひとみが しぜんに 大きく なる のを つかいます[15]。
「なぜ瞳の中は黒く見えるのか」。この疑問から、目の奥を見る道具が生まれました。1851年(発表は1850年末)、当時29歳の生理学の教授ヘルマン・フォン・ヘルムホルツは、瞳が黒く見えるときと明るく見えるときがあるのはなぜかを学生に示すために、「眼の鏡」を作りました。ロウソクの光と重ねたガラス板を使ったといいます[11]。これが最初の実用的な検眼鏡です。
瞳孔は、明るい所では縮んでいます。縮んだままだと、眼底(網膜など目の奥)のごく一部しか見えません。周辺部の網膜まで調べるときは、目薬で瞳孔を人工的に広げます。これが散瞳検査です[12]。
ミドリンPという目薬は、瞳孔を閉じる筋肉をゆるめる薬と、開く筋肉を働かせる薬を合わせたものです。点眼後およそ20分で効果が最大になり、ピント合わせの力は5〜6時間で正常に戻ります[13]。検査後は、かすんでふだんよりまぶしく感じる時間が4〜5時間ほど続くと案内されています[14]。時間は人や薬によって違うので、受けるときは眼科の説明に従います。
この薬は、緑内障や、隅角が狭くて前房が浅い人には使えないと添付文書に書かれています[13]。そのため、薬を使う前に眼科で目の構造を確かめます。使えない人を先に見分けるための手順です。
薬を使わない撮影もあります。近赤外光(人の目に見えない光)を使う眼底カメラはフラッシュが要らず、健診では薄暗い部屋で瞳孔が自然に広がるのを利用する方法が解説されています[15]。フラッシュを使うカメラは、1回目の撮影で瞳孔が縮んでしまい、続けて撮りにくいのです。
眼底を見る検眼鏡は、1851年(発表は1850年末)にヘルマン・フォン・ヘルムホルツが発表した「眼の鏡」が最初の実用品とされる。当時29歳の生理学の教授で、「なぜ瞳孔は黒く見えるときと明るく見えるときがあるのか」を学生に示すために作った。ロウソクの光と重ねたガラス板を使った。「ophthalmoscope」の名が一般化したのは1854年からである[11]。
瞳孔は明るい所では縮んでおり、そのままでは眼底のごく一部しか見えない。周辺部の網膜まで調べるときは、目薬で瞳孔を人工的に広げる(散瞳検査)[12]。
散瞳・調節麻痺の目薬ミドリンP(トロピカミド+フェニレフリン)は、瞳孔を閉じる筋肉(瞳孔括約筋)をゆるめる薬と、開く筋肉(散大筋)を収縮させる薬を合わせたものだ。点眼後およそ20分で効果が最大になり、調節力は5〜6時間で正常に戻る[13]。かすみとまぶしさは4〜5時間ほど続くと案内される[14]が、資料によって記載に差があり、個人差もある。受けるときは眼科の説明に従う。
散瞳薬は、緑内障や、隅角が狭く前房が浅い人(急性閉塞隅角緑内障の発作のおそれ)には使えないと添付文書に書かれている[13]。緑内障診療ガイドラインも、隅角が狭い虹彩の形では散瞳時に隅角閉塞が起きうると述べる[16]。薬を使う前に目の構造を確かめるのは、こうした人を先に見分けるためだ。
薬を使わない方法もある。近赤外光を使う無散瞳眼底カメラは、可視光のフラッシュを使う従来のカメラと違い、撮影時のまぶしさがない。従来型は1回目の撮影で瞳孔が縮み、続けて撮りにくく、子どもの撮影も難しい[15]。健診では、薄暗い部屋で瞳孔が自然に広がるのを利用する方式が解説されている。
6. 目に 空気を あてるのは どうして?
6. 空気を当てる眼圧検査は、何を測っているのか
6. 非接触眼圧計 ── 圧平の原理と、数字のゆれ
目には、中から ふくらむ ちからが あります。「眼圧」と いいます。目の 中の 水の りょうで きまり、水は つくられては 出て いって、ちょうど よい かたさに なって います[18]。
空気を ふきつける けんさは、くろ目の ところを ほんの すこしだけ 平らに して、そのとき いる 空気の ちからから、目の 中の かたさを 見つけます[16]。ボールを ゆびで おして、どのくらい おしかえして くるかで かたさを たしかめるのに にて います。ただし 本当は、空気の つよさが そのまま 眼圧なのでは ありません。
目は あけたままに します。とじようと すると、よけいな ちからが かかって、数字が 高く 出て しまうからです[17]。なんども はかるのは、心ぞうの どきどきで 数字が ゆれやすい からです[16]。
眼圧は、目の中の圧力です。眼球の中の水分(房水)の量で決まり、房水は毛様体でつくられて、隅角から外へ出ていきます。つくる量と出る量のつり合いで、目はちょうどよい硬さに保たれています[18]。単位は血圧と同じmmHgです。
目に空気を当てる非接触眼圧計は、空気で角膜を圧平(平らに)して、眼圧を測ります[16]。空気の強さそのものが眼圧なのではなく、角膜を平らにするのに必要な力から、中の圧力を推定します。ボールを指で押して、どれだけ押し返してくるかを見るのに似ています。ただし本当は、目は空気を入れてふくらませるものではなく、房水の出入りで硬さが保たれています。
簡単に測れますが、心拍の影響を受けやすいため、3回以上くり返して測ります[16]。目を閉じようとすると余計な力が入って眼圧が高く出るので、目は開けたままにします[17]。最も精度が高いとされるのは、目に麻酔をして器械を当てるゴールドマン圧平眼圧計です[16]。
眼圧の「正常」は、日本人では平均約14.5mmHg、上限は約20mmHgです[16]。ただし眼圧には1日のうちの変化があり、朝方に高いことが多く(個人差あり)、冬に高く夏に低い季節の変化もあります。診察で1回測った数字は、その時刻の写真のようなもので、いつも正常かどうかを知るのは難しい、とガイドラインは述べています[16]。
眼圧は、眼球内の圧力である。房水が毛様体でつくられ、隅角から排出され、その産生と排出のバランスで目は適度な硬さに保たれる。単位は血圧と同じmmHgだ[18][16]。
非接触眼圧計(空気を当てる検査)は、噴射した空気で角膜を圧平して眼圧を測る[16]。空気の強さが眼圧そのものなのではない。角膜を平らにするのに要る力が、眼圧に対応するという原理だ。目に麻酔をして器械を当てるゴールドマン圧平眼圧計が、臨床で最も精度が高い標準とされる。
手技が簡単な反面、脈波の影響を受けやすく、3回以上繰り返して測る[16]。目を閉じようとすると余計な力がかかって高く出るため、目は開けたままにする[17]。
日本人の眼圧は平均約14.5mmHg、上限は約20mmHgとされる。欧米では上限が約21mmHgとされてきた。この上限は平均±標準偏差の2倍という統計で決めた線であって、病気との境目ではない[16]。しかも眼圧には日内変動と季節変動があり、朝方に高いことが多く(個人差あり)、冬に高く夏に低いとされる。診察時に1回測って低くても、別の時間帯には高い可能性があり、常に正常範囲かを把握するのは困難だとガイドラインは述べる[16]。1回の数字は、その時刻の写真に近い。
7. いろいろな けんさが ある わけは?
7. 眼圧が正常でも見つかる病気がある
7. 眼圧が正常範囲の緑内障 ── 検査を組み合わせる理由
目の けんさは、それぞれ ちがう ことを 見て います。視力の 数字は「見つめた ところの 細かさ」です[2]。
やってみよう。本の 中の 字を 1つ、じっと 見つめて ください。目を うごかさずに、ページの はしの 字は 読めますか。いちばん はっきり 見えるのは、見つめた ところだけです。
目の 病気には、はじめの うちは 見えない ところが あっても 気づきにくい ものが あります[18]。その 1つが 緑内障です。日本の 調べでは、この 病気の 人の 10人のうち 7人ほどが、眼圧が ふつうの はんいでした[19]。だから 眼科では、視力、眼圧、目の おくの しゃしん、見える はんいの けんさなどを、組み合わせて 見ます。
眼圧が高い状態が続くと、視神経がいたんで、緑内障の危険が高まります。視野の欠けは初期にはほとんど自覚がなく、治療が遅れることがあります[18]。では、眼圧だけ測れば見つかるのでしょうか。
岐阜県多治見市で2000年から2001年に行われた調査に、40歳以上の3021人が協力しました。緑内障の人は約5.0%(20人に1人)で、そのうち眼圧が正常範囲(21mmHg以下)の緑内障が、全体の3.6%にあたりました[19]。つまりこの調査では、緑内障の人の約72%、およそ7割が、眼圧は正常範囲でした。
だから診断には、視力・眼圧・隅角・眼底・OCT・視野の検査を組み合わせます[18]。視力は「見つめた一点の細かさ」で、視野(見える範囲)は別の検査です。視力がいちばんよいのは視線が当たる中心だけで、2度ずれると約0.4、5度ずれると約0.1に下がります[2]。
眼科の検査は、それぞれ別のものさしで、目の別の面を測っています。1つの検査の数字だけで、目の全部が分かるわけではありません。
眼圧が高い状態が続くと視神経がいたみ、緑内障の危険が高まる。視野の欠けは初期にはほとんど自覚がなく、治療が遅れることがある。診断には、視力・眼圧・隅角・眼底・OCT・視野の検査が使われる[18]。では、眼圧だけで足りるのか。
岐阜県多治見市の多治見スタディ(2000〜2001年、40歳以上の無作為抽出で3021人が参加、参加率78.1%)は、緑内障の有病率を約5.0%(20人に1人)と報告した。原発開放隅角緑内障は3.9%で、そのうち眼圧21mmHg以下(正常眼圧)が3.6%だった[19]。
割合を計算する。3.6÷3.9≒0.92で、原発開放隅角緑内障の約92%が眼圧は正常範囲だった。3.6÷5.0=0.72で、緑内障全体の約72%でもある。分母が違う2つの数字を混ぜてはいけない。「眼圧が正常なら安心」とも、「眼圧が高いはずだ」とも言えない。だから眼底や視野などの検査を組み合わせる[19]。
視力と視野の違いもここで出る。視力が最もよいのは視線が当たる中心だけで、2度ずれると約0.4、5度ずれると約0.1に下がる[2]。視力の数字は見ている一点の細かさで、見える範囲(視野)は別の検査で調べる。視力1.0でも、それだけで目の全体が分かるわけではない。
視角の逆数、屈折の度数、瞳孔を広げて見る眼底、圧平の力。眼科の検査は、それぞれ別のものさしで目の別の面を測っている。
8. じぶんでも たしかめて みたく なったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
つぎに 学校の ほけんしつや 眼科で、Cの 視力ひょうを 見かけたら、すき間の 小ささを 思い出して みて ください。5メートル 先の 1ミリ半です。
目が 見えにくい、いたいなど 気に なる ことが あるときは、おうちの 人に 話して、眼科で 相談して ください。このメモは けんさの せつ明で、病気の なおし方を 書いた ものでは ありません。
次のような問いから、資料を読んでみると面白いかもしれません。
- 視力1.0の環の切れ目は1.5ミリです。検査距離の5メートルと1.5ミリから、視角が本当に約1分になるか、電卓で計算できるでしょうか(1分は1度の60分の1)。日本眼科学会の手引き[1]に、環の大きさの決まりが載っています。
- 弱視の子は約50人に1人です。3歳児健診で、視力検査に加えて屈折検査を入れる意味は何でしょうか。日本眼科医会の資料[8]が手がかりになります。
- 眼圧が正常なのに緑内障の人が多いのは、なぜでしょうか。多治見スタディ[19]と診療ガイドライン[16]をあわせて読むと、検査を組み合わせる意味が見えてきます。
このメモは検査の説明であり、診断や治療の助言ではありません。見えにくさや目の痛みなど気になる症状があるときは、眼科で相談してください。
手元でできる確かめが1つある。切れ目1.5mmを5000mmで割り、逆正接(tan⁻¹)で角度にしてから、1度の60分の1と比べる。約1.03分になり、視力1.0の定義とほぼ一致する。国際規格の1.454mmとの差が約3%であることも、同じ計算で出せる。
資料は原典にあたって読みたい。日本眼科学会の手引き[1]には、検査距離と視標の規定が、日本眼科医会の資料[8]には、3歳児のランドルト環による検査の実施可能率(3歳1か月で約78%、3歳5〜6か月で約95%)が載っている。緑内障診療ガイドライン[16]と多治見スタディ[19]を読み比べると、眼圧の「正常」がどう決められたのかが見える。
考えてみたい問いもある。空気式と、目に麻酔をして当てるゴールドマン式は、どちらも角膜を平らにする力から眼圧を測る。数字はどのくらい一致するのか。これは資料で調べる価値がある。
このメモは検査の説明であり、診断や治療の助言ではない。気になる症状があるときは、眼科で相談してほしい。
しらべた ところ
参考にした情報源
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出典について:日本眼科学会の視力検査の手引き、視力の解説論文、日本眼科医会と日本弱視斜視学会の弱視の資料、添付文書や製薬会社の解説、緑内障診療ガイドラインと多治見スタディ、視標の歴史を扱った英語の総説などを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 日本眼科学会「成人の視力検査および眼鏡処方に関する手引き」日本眼科学会雑誌129巻2号(2025)。 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/PrescribingGlassesAdultsClinical.pdf (視力の定義、検査の規格、オートレフの役割と器械近視について)
- 鵜飼一彦「視力と調節・屈折」VISION 3巻3号(1991)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/vision/3/3/3_149/_pdf/-char/ja (ランドルト環の寸法、片眼と両眼の視力、視野と中心視力について)
- 米国眼科学会「What Does 20/20 Vision Mean?」。 https://www.aao.org/eye-health/tips-prevention/what-does-20-20-vision-mean (20/20の意味について)
- EyeWiki(米国眼科学会)"Visual Acuity Testing in Adults". https://eyewiki.aao.org/Visual_Acuity_Testing_in_Adults (視細胞の並びと分解能の限界について)
- "A history of visual acuity testing and optotypes" Eye, 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10764321/ (スネレンの視力表、ランドルト環の標準化について)
- The Arthur Conan Doyle Encyclopedia "France". https://www.arthur-conan-doyle.com/index.php/France (ドイルがランドルトを訪ねた回想録の記述について)
- 日本弱視斜視学会「弱視」(一般向け)。 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/amblyopia (弱視の定義と、片眼の弱視が気づかれにくいことについて)
- 日本眼科医会「STOP!弱視見逃し 3歳児眼科健診における屈折検査の導入と精度管理に向けて」。 https://www.gankaikai.or.jp/school-health/stop_amblyopia.pdf (弱視の頻度、視覚の感受性の時期、視力の発達の目安について)
- メニコン「視力検査の気球の絵は何を見ているの?」。 https://www.menicon-shop.jp/nagoya/gatetower/2021/09/post-532.html (オートレフラクトメーターと気球の絵について)
- マイベストプロ「検眼するため、5m先の視標を使う理由」。 https://mbp-japan.com/fukuoka/meganenotoraya/column/5121544/ (検査距離5mの理由についての眼鏡店の解説)
- College of Optometrists "A brief history of the ophthalmoscope". https://www.college-optometrists.org/professional-development/college-journals/optometry-in-practice/volume-4-issue-2/a-brief-history-of-the-ophthalmoscope (ヘルムホルツと検眼鏡の歴史について)
- 鳥取県医師会「散瞳検査とは?」。 https://www.tottori.med.or.jp/nandemo/「散瞳検査」とは?-瞳孔を人工的に拡大- (瞳孔が縮んでいると眼底が見えにくいことについて)
- ミドリンP点眼液 添付文書(JAPIC)。 https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051460 (散瞳薬のしくみ、効果の時間、使えない人について)
- 参天製薬 Medical Channel「ミドリンP/ミドリンM FAQ」。 https://www.santen.co.jp/medical-channel/di/faq/DK014_faq.html (検査後のかすみとまぶしさについて)
- 奈良先端科学技術大学院大学 プレスリリース「近赤外光眼底カメラ」(2020年12月)。 https://www.naist.jp/pressrelease/2020/12/007539.html (フラッシュを使う眼底カメラの難しさと、近赤外光カメラについて)
- 日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」日本眼科学会雑誌126巻2号(2022)。 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/glaucoma5th.pdf (眼圧の正常範囲と変動、非接触眼圧計、散瞳と隅角について)
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「眼圧検査」。 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000338.html (空気を当てる検査で目を開けたままにする理由について)
- 日本眼科学会「緑内障」(一般向け)。 https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=35 (眼圧と房水、緑内障の診断に使う検査について)
- 日本緑内障学会「多治見スタディ」(一般向け)。 https://www.ryokunaisho.jp/general/ekigaku/tajimi.php (日本人の緑内障の有病率と、眼圧が正常範囲の緑内障の割合について)
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