アジが いいから アジ?

アジがいいからアジ? ── 魚の名前は誰が決める

魚の名前の秘密 ── 由来・改名・出世魚

分野:海・釣り

「アジ」と いう 魚は、「あじ(味)」が いいから アジと いう、と きいた ことは ありませんか。

魚の 名前は、いったい だれが、どうやって きめて いる のでしょうか。

この きじでは、魚の 名前に まつわる ひみつを 見て いきます。

「アジ」という魚は、「あじ(味)」がいいからアジという、 と聞いたことはありませんか。

魚の名前は、いったいだれが、どうやって決めているの でしょうか。

この記事では、魚の名前にまつわるひみつを見ていきます。

「アジは味がいいからアジ」「タイはめでたいからタイ」。 魚の名前の由来としてよく語られる話ですが、これらは本当 なのでしょうか。

この記事では、魚の名前の語源、学名という国際的なしくみ、 差別的な意味で改名された魚、そして成長すると名前が変わる 「出世魚」という日本独自の文化までをたどります。

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1. 魚の 名前は、だれが きめるの?

1. 魚の名前は、だれが決めるのか

1. 命名の主体 ── 標準和名と日本魚類学会

おなじ 魚でも、土地に よって よび名が ちがう ことが あります。それでは こまるので、日本には、みんなが つかう「きまった 名前」が あります。

クラスの 中で、あだ名は 人に よって ちがっても、 めいぼに のる 名前は 1つだけですよね。魚の「きまった 名前」も、それと にた やくわりです(ただし 本当は、 あだ名を つける 人が いる わけでは なく、学者たちが 名前を つけて、はっぴょうします)。この「きまった 名前」の つけかたは、魚を けんきゅうする 学者たちの あつまり、 日本ぎょるいがっかいが きめて います[1]

同じ魚でも、土地によって呼び名がちがう

同じ魚でも、地域によって呼び名がちがうことがあります。 それでは図鑑や研究のときに混乱するので、日本には、全国 共通の「標準和名」という名前があります。

魚の研究者たちが、話し合って決める

標準和名は、研究者が論文などで提唱し、専門家の間で広く 使われることで定着していきます。その付け方の指針は、 魚を研究する専門家の団体「日本魚類学会」が2020年にまとめた ガイドラインで示されています[1]

同じ魚でも、地方によって呼び名が異なることは珍しくあり ません。こうした混乱を避けるため、日本では専門家が定めた 全国共通の「標準和名」が使われています。

標準和名は、個々の研究者が論文などの出版物で提唱し、 学術界で広く受け入れられることで定着していく名称です。 その命名の枠組みは、魚類分類学の研究者で構成される 「日本魚類学会」が2020年に公表した「魚類の標準和名の 命名ガイドライン」で定められており、カタカナ表記を原則 とすることなどが明文化されています[1]

2. 世界きょうつうの 名前も ある

2. 世界共通の名前もある

2. 学名 ── リンネの二名法

日本語の 名前とは べつに、せかいじゅうの 学者が つかう 「がくめい」と いう 名前も あります。ラテン語と いう むかしの ことばで つけられて いて、どこの 国の 人でも おなじ 名前で よべるのです。

この しくみを 考えたのは、スウェーデンの 学者リンネです。 1758年に、「なかまの 名前」と「その 生きもの だけの 名前」の 2つを ならべて 生きものを よぶ ほうほうを はじめました[2]

ラテン語で書かれる、世界共通の名前

日本語の名前とは別に、世界中の学者が使う「学名」という 名前もあります。ラテン語という昔のことばで付けられて いて、どこの国の研究者でも同じ名前で呼べます。

リンネが考えた「二名法」

このしくみを考えたのは、スウェーデンの学者カール・リンネ です。1758年に出した本の中で、「仲間の名前(属名)」と 「その生きものだけの名前(種小名)」の2つを並べて生きもの を呼ぶ「二名法」という方法を確立しました[2]。 この1758年が、動物の学名のスタート地点として、いまも 国際的なルールの基準になっています。

日本語の標準和名とは別に、世界共通で使われる「学名」が あります。ラテン語で表記され、「属名+種小名」からなる 二名法(二語名法)にもとづいています。

この体系を確立したのは、スウェーデンの博物学者カール・ フォン・リンネです。1753年の著書『植物の種』で、二名法を 植物に大規模かつ体系的に用いた最初の植物学書を著し [8]、1758年の『自然の 体系』第10版で動物にも二名法を適用しました [2]。国際動物 命名規約は、1758年1月1日発行のこの書物に記載された学名を、 もっとも古い正式な学名として扱うと定めています [2]

3. アジは、ほんとうに「あじ」が いいから?

3. アジは、本当に「あじ」がいいから?

3. アジの語源 ── 新井白石の説と、諸説

江戸えど時代の 学者、新井あらい白石は、1719年に 書いた 本の 中で、 「アジとは あじの ことで、あじの おいしい 魚だから アジと いう」と 書きのこして います[7]

ただし これは たくさん ある せつの 1つです。むれで およぐ ようすを あらわす ことばから きた、と いう せつも あります[3]。ほんとうの ところは、 いまでも はっきり わかって いません。

江戸時代の学者が書き残した説

江戸時代の学者、新井白石は、1719年に書いた本『東雅』の 中で、「アジとは味のことで、味のおいしい魚だからアジと いう」と書き残しています[7]

それだけが理由とは限らない

ただし、これはいくつもある説の1つです。群れて泳ぐようすを 表すことばから来たという説もあります[3]。 「味がいいから」という説は広く知られていますが、本当の 由来は、いまもはっきりとは分かっていません。

「アジは味がいいからアジ」という説は、江戸時代中期の 政治家・儒学者である新井白石が、1719年の著書『東雅』で 「或人の説く鰺とは味也、其の味の美をいふなりといへり」と 記したことに由来します[7]

しかし、この説だけが確定しているわけではありません。 群がり集まる習性を表す古語「あち」が転じたという説、 大衆に親しまれた魚への愛称と魚名を表す語尾が組み合わさった という説なども唱えられています[3]。 江戸時代の学者による記述であっても、それが確定した語源だと は限らない点に注意が必要です。

4. タイは、ほんとうに「めでたい」から?

4. タイは、本当に「めでたい」から?

4. タイの語源 ── 「平ら」説という意外な由来

タイと いう 魚は、おいわいの ときに よく 出て くる ので、「めでたいから タイ」と おもって いる 人が 多いかも しれません。

でも、927年に できた ふるい 本には、タイの ことを 「平魚(ひらうお)」とも 書いて あります[4]。 体の 形が「たいら」だから「タイ」に なった、と いう せつも あるのです。 「めでたい」は、あとから むすびつけられた かんがえ かも しれません。

「めでたいからタイ」と思われがちだけど

タイという魚は、お祝いのときによく登場するので、「めで たいからタイ」と思っている人が多いかもしれません。

本当は「平ら」が語源?

しかし、927年に完成した古い法令集『延喜式』には、タイの ことを「平魚(ひらうお)」とも記録されています [4]。体の形が「たいら」であること から「タイ」になった、とも考えられています。 「めでたい」との結びつきは、あとから縁起物として広まった ものと考えられます。

タイは祝いの席によく用いられることから、「めでたい」との 語呂合わせが名前の由来だと思われがちです。しかし、この 結びつきを直接裏づける古い記録は確認されていません。

そう考えられているのが、体の形にちなむ説です。平安時代の 法令集『延喜式』(927年完成)には、タイが「鯛」のほかに 「平魚(ひらうお)」とも記されており、「たいら(平ら)」 が転じて「タイ」になったと考えられています[4]。 「めでたい」との結びつきは、扁平な体を持つ縁起の良い魚 として後世に定着したものである可能性が高いといえます。

5. 名前が かわった 魚も いる

5. 名前が変わった魚もいる

5. 改名の事例 ── イザリウオからカエルアンコウへ

むかし「イザリウオ」と よばれて いた 魚が います。 ひれを 手足の ように つかって あるく、めずらしい 魚です。

でも「イザリ」と いう ことばには、からだの 自由な 人を さす、しつれいな いみが ふくまれて いました。 そのため 2007年、日本ぎょるいがっかいは、この 魚の 名前を「カエルアンコウ」に かえました[5]。 名前は、あとから 気づいて 直す ことも できるのです。

ひれを手足のように使って歩く魚

むかし「イザリウオ」と呼ばれていた魚がいます。胸びれと 腹びれを手足のように使って、歩くように移動するめずらしい 魚です。

差別的な意味に気づいて、改名した

しかし「イザリ」ということばには、体の不自由な人を指す 失礼な意味が含まれていました。そのため2007年、日本魚類 学会はこの魚の標準和名を「カエルアンコウ」に変更しました [5]。名前は一度決まっても、 あとから見直して変えられることがあるのです。

胸びれと腹びれを手足のように使って歩行するように移動する 魚は、かつて「イザリウオ」という標準和名で呼ばれていま した。「イザリ」は漢字で「躄」と書き、「足が不自由なため 膝をついて進むこと、またはその人」を指すことばです。

この名称に差別的な意味が含まれていることが問題視され、 2007年、日本魚類学会は標準和名を「イザリウオ」から 「カエルアンコウ」へと変更したと発表しました [5]。標準和名は専門家によって 管理されており、社会的な配慮から見直されることもある、 流動的なしくみだといえます。

6. 大きく なると、名前が かわる 魚

6. 大きくなると、名前が変わる魚

6. 出世魚 ── ブリと、元服の風習

ブリと いう 魚は、小さい ころと 大きく なった あとで、 よび名が かわります。東京の あたりでは、「ワカシ」 →「イナダ」→「ワラサ」→「ブリ」の じゅんに、大きく なると よび名が かわって いくのです [6]

むかし、さむらいが おとなに なる とき、名前を かえる ぎしきが ありました。それに にせて、大きく なると 名前が かわる 魚を「しゅっせうお」と よぶ ように なった そうです[6]

成長すると、呼び名が変わっていく

ブリという魚は、小さいころと大きくなったあとで、呼び名が 変わります。東京あたりでは「ワカシ」→「イナダ」→「ワラサ」 →「ブリ」の順に、大きさによって名前が変わっていきます [6]。大阪あたりでは「ツバス」 →「ハマチ」→「メジロ」→「ブリ」と、呼び方が異なります。

武士の元服にちなんだ、縁起の良い名前

昔、武士や学者が大人になるとき、名前を改める「元服」という 儀式がありました。これになぞらえて、成長すると名前が変わる 魚は「出世魚」と呼ばれ、縁起の良いものとしてお祝いの贈り物 にも使われるようになったといわれています[6]

ブリは成長段階によって呼び名が変わる代表的な「出世魚」 です。関東では「ワカシ」→「イナダ」→「ワラサ」→「ブリ」、 関西では「ツバス」→「ハマチ」→「メジロ」→「ブリ」と、 地域によっても名前の体系が異なります[6]

「出世魚」という呼び方は、武士や学者が元服(成人)を迎える 際に幼名から大人の名前へと改名した風習に由来するとされて います。成長にともなって名前が変わる魚を、立身出世になぞ らえて縁起物として扱った文化的背景があります [6]。成長段階ごとに全く別の単語を あてる命名方式は、欧米の言語にはあまり見られない、日本 特有の特徴です。

7. 外国では、名前の つけ方が ちがう

7. 外国では、名前のつけ方がちがう

7. 命名文化の違い ── 地方名と国際共通性

日本の 魚の 名前は、見た目や あじ、うごき方など、 くらしの 中で 気づいた ことから 名前が つけられる ことが 多いです。おなじ 魚でも、大きさで 名前が かわったり、土地に よって よび名が ちがったり します。

いっぽう、多くの 国では、1つの 魚に 1つの 名前しか つかわない ことが ふつうです。せかいじゅうで 研究の けっかを つたえあう ためには、ラテン語の 学名が つかわれます。

くらしの中で付けられる、日本の名前

日本の魚の名前は、見た目・味・動き方など、くらしの中で 気づいたことから付けられることが多く、同じ魚でも大きさで 名前が変わったり(出世魚)、地方によって呼び名が違ったり します。

ラテン語で統一される、世界共通の名前

いっぽう、多くの国の言語では、1つの魚には基本的に1つの 名前しか使いません。国や言語をこえて研究結果を伝え合う ためには、リンネが確立したラテン語の学名という共通の しくみが使われています。

日本の魚の命名文化は、地域ごとの生活や漁の実態に根ざした 地方名が豊富に存在し、成長段階で名前を変える出世魚のよう な体系も発達しているのが特徴です。標準和名は、こうした 多様な地方名を1つにまとめるための、比較的新しい共通言語 として機能しています。

一方、多くの言語では1種につき1つの一般名を用いるのが基本 で、成長段階ごとに全く別の単語をあてる文化はまれです。 国境を越えて研究成果を正確に共有するためには、地方名にも 標準和名にも依存しない、ラテン語による学名という共通基盤 が不可欠になっています。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

スーパーの さかなうりばで、魚の 名前を 見て みましょう。

あんぜんな ばしょで できる こと

  • すきな 魚の 名前の いみを しらべて みる。 大人と いっしょに、なぜ その 名前に なったのか さがして みましょう。
  • しゅっせうおを さがして みる。 ブリの ほかにも、大きさで 名前が かわる 魚が いないか しらべて みましょう。
メモの すすめ

きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「『がくめい』って なに?」だけで じゅうぶんです。

スーパーの魚売り場で、魚の名前を見てみましょう。

今日できること

  • 好きな魚の名前の意味を調べてみる。 大人と一緒に、なぜその名前になったのかさがしてみましょう。
  • 出世魚をさがしてみる。 ブリのほかにも、大きさで名前が変わる魚がいないか調べて みましょう。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口に なります。「標準和名って、誰でも提案できるの?」だけでも 十分です。

スーパーや図鑑で見かけた魚の名前の由来を調べると、この 記事で扱った命名のしくみが身近に感じられます。

手を動かして確かめる

  • 出世魚の呼び名を、関東と関西で比べてみる。 同じ魚でも地方によって呼び名の体系が異なることを、 一覧にしてみましょう。
  • 好きな魚の学名を調べてみる。 属名と種小名が何を意味しているか、由来を調べてみましょう。

一次情報にあたる

日本魚類学会のサイトには、標準和名の命名ガイドラインが 公開されています。

メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。 「1758年、リンネの学名のルール」という一文でもかまい ません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

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出典について:学会・辞典・専門メディアの公開情報を使っています。

  1. 日本魚類学会「魚類の標準和名の命名ガイドライン」(2020年)。 https://www.fish-isj.jp/wp-content/uploads/guidelines2020.pdf (標準和名を日本魚類学会が定めていること、命名の指針についての公式解説)
  2. コトバンク「二名法」。 https://kotobank.jp/word/二名法-110353 (リンネによる二名法の確立(1753年・1758年)についての解説)
  3. ことばの足あと「『鯵(あじ)』の語源は?」。 https://kotoba-ashiato.com/blog/aji/ (アジの語源について、群れる習性や愛称語に由来するという諸説についての解説)
  4. 雑学ネタ帳「『鯛』(たい)の名前の由来」。 https://zatsuneta.com/archives/001742.html (『延喜式』(927年)の「平魚」表記にもとづくタイの語源説についての解説)
  5. サカナト「イザリウオがカエルアンコウに名を変えた理由」。 https://sakanato.jp/5275/ (2007年、日本魚類学会によるイザリウオからカエルアンコウへの改名についての解説)
  6. 和樂web「出世魚とは?由来・種類・順番・名前が変わる理由を徹底解説!」。 https://intojapanwaraku.com/rock/gourmet-rock/80056/ (ブリの成長段階ごとの呼び名、出世魚と元服の風習についての解説)
  7. 越前宝や「魚の豆知識:味が良いから『アジ』?」。 https://www.takaraya-himono.com/blog/zukan/5722 (新井白石が1719年の著書『東雅』に記した、アジの語源についての原文引用と解説)
  8. Wikipedia「植物の種」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/植物の種 (リンネが1753年に出版した『植物の種』が、二名法を大規模かつ体系的に用いた最初の植物学書であることについての解説)

なおした ところ

更新履歴

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