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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

れいとう しょくひんは、なんで 長く もつの?

冷凍食品はなぜ長く保存できるのか ── 温度・水・微生物の関係

冷凍食品はなぜ長く保存できるのか ── 温度・水分活性・氷結晶の科学

分野:技術

れいとうこに 入れた たべものは、なんで 何か月も いたまないのでしょうか。

じつは、つめたく する だけでなく、水を こおらせる ことじたいに、だいじな いみが あります。 しかも、こおらせる はやさで、たべものの しょっかんが かわるのです。

この きじでは、その しくみを 見て いきます。

冷凍庫に入れた食べ物は、なぜ何か月も傷まないのでしょうか。

実は、冷たくするだけでなく、水を凍らせること自体に、大事な意味があります。

この記事では、その仕組みと、急速冷凍を発明した人の物語を見ていきます。

冷凍食品が長期間傷まないのは、単に温度が低いからというだけではありません。そこには、微生物の代謝と、食品中の水の状態が深く関わっています。

この記事では、温度が微生物に与える影響、水が凍ることの意味、氷結晶の大きさが食品の品質を左右する理由、そして急速冷凍を発明したクラレンス・バーズアイの物語までをたどります。

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1. つめたいと、なんで くさりにくいの?

1. 冷たいと、なぜ傷みにくいのか

1. 低温と微生物 ── 代謝が止まる

たべものが くさるのは、目に 見えない 小さな 生きもの (びせいぶつ)が、たべものの 中で どんどん ふえるからです。

この 小さな 生きものたちは、あたたかい ところで よく ふえます。おんどが ひくく なると、からだの 中の はたらきが ゆっくりに なります。すると、小さな 生きものが ふえる スピードも おそく なります。じゅうぶんに つめたく すると、ほとんど うごけなく なるのです。

食べ物が腐る原因

食べ物が腐るのは、目に見えない小さな生き物(微生物)が、食べ物の中でどんどん増えるからです。

温度が下がると動きが鈍る

この小さな生き物たちは、あたたかい場所が好きです。温度が下がると、体の中の化学反応がゆっくりになり、増えるスピードも遅くなります。マイナス18℃以下まで冷やすと、ほとんどの微生物は活動を止めますが、死んでしまうとは限りません。

食品の腐敗は、微生物が食品中の栄養を利用して増殖することで進行します。微生物は、体の中の化学反応(酵素のはたらき)を使って増殖します。温度が低いと、その反応の多くがゆっくりになり、増える速さも遅くなります。

マイナス18℃以下という冷凍食品の標準的な保存温度では、ほとんどの微生物は代謝活動をほぼ停止し、休眠状態に入るか、時間の経過とともに徐々に死滅していきます。ただし、これは微生物を完全に死滅させているわけではなく、活動を止めているだけだという点には注意が必要です。

2. 水が こおると、生きものが つかえなくなる

2. 水が凍ると、微生物が使えなくなる

2. 水分活性 ── 凍った水は使えない

小さな 生きものが ふえる ためには、水が ひつようです。 でも、たべものの 中の 水が こおって 氷に なって しまうと、生きものは その 水を つかう ことが できなく なります。

つめたく する ことと、水を こおらせる こと。この 2つが いっしょに おきる ことで、たべものは くさりにくく なるのです。

微生物にも水が必要

小さな生き物が増えるためには、水が必要です。でも、食べ物の中の水が凍って氷になってしまうと、微生物はその水を使うことができなくなります。

温度低下と凍結、2つの効果

冷やすことと、水を凍らせること。この2つの効果が同時に起きることで、食べ物はいっそう腐りにくくなるのです。

食品中の水分には、微生物が利用しやすい水と、利用しにくい水があります。微生物が利用できる水の程度を示す指標を「水分活性(Aw)」と呼びます。一般にAwが0.70以下になると、多くの微生物は増殖できなくなります[1]。

食品を凍結させると、内部の自由水が氷という固体に変わり、微生物が代謝に利用できる状態ではなくなります。低温による代謝抑制と、水分活性の低下という2つの効果が同時に働くことで、冷凍は常温保存よりはるかに強力な保存手段になっています。

3. こおりの つぶの 大きさが だいじ

3. 氷の粒の大きさが、味を左右する

3. 氷結晶のサイズ ── 急速凍結と緩慢凍結

水は こおると、大きさが やく1わり ふえます。 ゆっくり こおらせると、大きな こおりの つぶが でき、 たべものの さいぼう(体を つくる 小さな へや)を きずつけて しまいます。

はやく こおらせると、こおりの つぶが 小さいまま すむので、さいぼうが きずつきにくく、とけた ときの あじや しょっかんも たもたれます。

やって みよう

れいとうこで こおらせた やさいと、生の やさいを くらべて みましょう。こおらせた ほうは、とけた あとに 水が 出て、すこし しょっかんが かわって いる ことが あります。

凍るとふくらむ水

水は凍ると、体積(大きさ)が約1割ふくらみます。ゆっくり凍らせると、大きな氷の粒ができて、食べ物の細胞(体を作る小さな部屋)を物理的に傷つけてしまいます。

急速冷凍なら、粒が小さい

いっぽう、短い時間で急いで凍らせると、氷の粒は小さいままで済むので、細胞が傷つきにくく、とけたときの味や食感もよく保たれます[2]。冷凍食品をとかしたときに出てくる水(ドリップ)は、この細胞の傷からもれ出たものです。

水は氷に相転移する際、体積がおよそ10%増加します。冷却速度が遅い緩慢凍結では、氷結晶の成長速度が速く、個々の結晶が大きく成長するため、組織や細胞の微細構造を物理的に破壊します[2]。

一方、急速凍結では、食品の温度が氷結晶生成温度帯を短時間で通過するため、氷結晶は小さいまま多数生成され、細胞構造への物理的なダメージが少なくて済みます[2]。解凍時に食品からしみ出る「ドリップ」と呼ばれる液体は、この細胞損傷によって水分保持能力が失われた結果生じるものです。

4. 急速れいとうを 見つけた 人の はなし

4. 急速冷凍を発見した人の物語

4. クラレンス・バーズアイ ── イヌイットの知恵から

1912年、アメリカ人の クラレンス・バーズアイさんは、 カナダの きたの ほうで、けがわの しごとを して いました。

1914年、バーズアイさんは、その 土地に すむ 人たちから、さかなを こおらせて、なんか月も あとに たべても、とりたての ような あじが する ことを ききました。とても さむい ところで、 さかなが あっと いう まに こおって いたのです [3]。バーズアイさんは、この 「はやく こおらせる」やりかたを きかいで さいげんし、 れいとうしょくひんを 生み出しました。

カナダ北部での発見

1912年、アメリカ人のクラレンス・バーズアイは、カナダ北部のラブラドル地方で毛皮交易の仕事をしていました。

「とれたての味」のひみつ

彼は1914年、その土地に住む人たちが、氷点下約40℃の外気の中で釣った魚を凍らせ、何か月もあとに解凍して食べても、とれたてのような味と食感を保っていることに気づきました[3]。非常に寒い環境で、魚があっという間に凍っていたことが理由でした。

機械で急速冷凍を再現する

バーズアイは、この「急速に凍らせる」仕組みを機械で再現しようと考え、1925年に会社を設立して急速冷凍機を開発しました。1930年には、彼の技術を使った冷凍食品が初めて一般向けに販売されました[3]。

クラレンス・バーズアイ(1886〜1956年)は、1912年からカナダ・ラブラドル地方で毛皮交易に従事していました。1914年、彼は現地のイヌイットが、氷点下40℃前後の外気の中で氷穴釣りをした魚を凍らせ、数か月後に解凍して食べても、ニューヨークで売られている冷凍魚よりもはるかに新鮮な味と食感を保っていることに気づきました[3]。

彼はこの経験から、緩慢凍結が細胞にダメージを与える一方、低温下での急速凍結は細胞損傷を抑えられることを見抜きました。1925年にマサチューセッツ州グロスターでゼネラル・シーフード社を設立し、ステンレス製ベルトで食品を急速凍結する「ダブルベルト冷凍機」を開発、米国特許第1,773,079号を取得しました[3]。1929年に会社を売却したのち、1930年3月6日、マサチューセッツ州スプリングフィールドの店舗で、この技術による冷凍食品が初めて一般向けに販売され、現代の冷凍食品産業の出発点となりました[4]。

5. マイナス18ど、って なんで?

5. マイナス18℃、という基準の理由

5. マイナス18℃という保存基準 ── 再結晶化を防ぐ

れいとうしょくひんの おんどは、マイナス18ど いかに たもつ ことが きまりに なって います[5]。

いちど 小さく こおらせても、おんどが 上がったり 下がったり すると、小さな こおりの つぶが とけたり、また こおったり して、大きく なって しまう ことが あります。マイナス18ど いかを ずっと たもつ ことで、この へんかを ふせいで いるのです。

基準はマイナス18℃以下

冷凍食品の温度は、マイナス18℃以下に保つことが国際的な基準になっています[5]。

温度変化で氷の粒が成長する

いったん小さく凍らせても、保存中に温度が上がったり下がったりをくり返すと、小さな氷の粒どうしがくっついて、少しずつ大きく成長してしまいます(再結晶化)。できるだけ低い温度で、温度変化を避けながら保存することで、この変化を防いでいます[2]。

冷凍食品の保存温度がマイナス18℃以下とされているのは[5]、単に微生物の活動を止めるためだけではありません。保存中の温度変動によって氷結晶が再結晶化し、成長してしまうことを防ぐという目的もあります[2]。

再結晶化を防ぐには、可能な限り低温で保存し、貯蔵中の温度変化を避ける必要があります[2]。スーパーの冷凍ケースや家庭用冷凍庫の開閉による温度変化は、この再結晶化を進める要因になるため、冷凍食品の品質を長く保つには、購入後もできるだけ温度を一定に保つことが大切です。

6. れいとうしても、かんぜんには とまらない

6. 冷凍しても、完全には止まらない

6. 冷凍保存の限界 ── 停止であって、死滅ではない

れいとうは、生きものの うごきを 止める ことは できますが、 すべての 生きものを 死なせる わけでは ありません。

とかした あとは、れいとうしょくひんの ふくろに 書いて ある たべかたを、おうちの人と たしかめましょう。とかした ものを また れいとうすると、 あじが おちやすいので、れいとうしょくひんの 会社は さけるように つたえて います [7]。

微生物は死んでいない

冷凍は、微生物の活動を止めることはできますが、すべての微生物を死なせるわけではありません。

再冷凍がおすすめされない理由

そのため、解凍したあとは早めに食べるようにします。解凍したものをもう一度冷凍すると、ゆっくり凍るため氷の粒が大きくなり、味や食感が落ちやすいので、冷凍食品の会社は避けるよう案内しています[7]。再冷凍できるかどうかは、食品の表示や解凍方法も確かめましょう。

冷凍による微生物の抑制は、あくまで代謝活動の停止であり、殺菌ではありません。冷凍中に休眠状態になった微生物の一部は、解凍後に温度が上がると再び活動を始めます[6]。

そのため、解凍後はできるだけ早く調理・喫食することが推奨されます。一度解凍した食品を家庭で再冷凍するとゆっくり凍るため、氷結晶が大きくなり、うま味を含む水分が流れ出るなど品質が損なわれることがあり、メーカーは避けるよう案内しています[7]。解凍中に微生物が増えていた場合、再冷凍しても死滅するとは限りません。再冷凍の可否は、食品の種類・表示・解凍方法で異なります。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの れいとうこの おんどを、おうちの人と いっしょに たしかめて みましょう。

きょう できる こと

  • れいとうこの おんどを しらべる。 れいとうこの せっていと、れいとうしょくひんの ふくろに 書いて ある ほぞんの しかたを、おうちの人と いっしょに たしかめて みましょう。
  • こおらせた やさいの しょっかんを くらべる。 れいとうした やさいと 生の やさいを くらべて、 しょっかんの ちがいを かんさつして みましょう。
メモの すすめ

きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「きゅうそくれいとうって なに?」だけで じゅうぶんです。

おうちの冷凍庫の温度を、おうちの人といっしょに確かめてみましょう。

今日できること

  • 冷凍庫の温度を調べる。冷凍庫の設定と、冷凍食品の袋に書いてある保存の仕方を、おうちの人といっしょに確かめてみましょう。
  • 凍らせた野菜の食感を比べる。冷凍した野菜と生の野菜を比べて、食感の違いを観察してみましょう。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「水分活性って、他の食べ物にも関係あるの?」だけでも十分です。

家庭用冷凍庫の設定温度や、購入した冷凍食品のパッケージに書かれた保存方法を確認してみると、この記事の内容が実感として理解しやすくなります。

手を動かして確かめる

  • 家庭での急速冷凍を試してみる。食品を薄く小分けにして金属トレーにのせて冷凍すると、厚みのある塊のまま冷凍するより早く冷えやすく、氷結晶を小さく抑えやすくなります。
  • 水分活性の考え方を、他の保存方法と比べてみる。乾物や塩漬け、砂糖漬けなども、水分活性を下げることで食品を保存する方法です。冷凍との共通点を考えてみましょう。

一次情報にあたる

食品衛生に関する情報は、消費者庁や農林水産省の公式サイトでも公開されています。家庭での冷凍・解凍の注意点を、あわせて確認してみてください。

メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「冷凍は殺菌ではなく停止」という違いでもかまいません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:Wikipediaは百科事典、ニチレイは食品メーカーの研究情報サイト、foodmicrob.comは食品微生物学の専門家(木村凡氏)による解説サイト、FAOは国際連合食糧農業機関、Deutschlandfunkはドイツの公共ラジオ局です。

  1. foodmicrob.com「水分活性と微生物の増殖」(木村凡)。 https://foodmicrob.com/water-activity/ (水分活性(Aw)の定義と、微生物の増殖限界(Aw0.70以下)についての解説)
  2. ニチレイ「冷凍の基礎知識」。 https://www.nichirei.co.jp/research/antifreeze-protein/base.html (氷結晶の成長と食品品質への影響、保存中の再結晶化の仕組みについての解説)
  3. Wikipedia「クラレンス・バーズアイ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/クラレンス・バーズアイ (ラブラドル地方での発見、急速冷凍機の開発、特許取得についての解説)
  4. Deutschlandfunk, “90 Jahre Tiefkühlkost: Siegeszug des Schockgefrierens”(ドイツ語)。 https://www.deutschlandfunk.de/90-jahre-tiefkuehlkost-siegeszug-des-schockgefrierens-100.html (1930年3月6日、スプリングフィールドでの現代的な冷凍食品の一般販売開始についての解説)
  5. FAO, “Recommended International Code of Practice for Frozen Foods”(英語)。 https://www.fao.org/4/Y0681E/y0681e07.htm (急速冷凍食品をマイナス18℃以下に保つという国際規格についての解説)
  6. foodmicrob.com「冷凍と微生物の死滅」(木村凡)。 https://foodmicrob.com/freezing-microbial-survival/ (冷凍による微生物の休眠・死滅のメカニズム、急速凍結と緩慢凍結の違いについての解説)
  7. ニッスイ「冷凍食品 よくあるご質問」。 https://www.nissui.co.jp/qa/frozenfoods.html (解凍した商品を家庭で再び凍らせると、氷の結晶が大きくなり品質が損なわれるため避けるよう案内している)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  誤りを直しました。低学年むけでバーズアイさんが漁の方法に気づいた年が1912年と読める書き方を、1914年に直しました(ほかの2版と同じです)。再冷凍の説明は「安全性の面で」と言い切っていたのを、メーカーの案内にもとづく「味や食感が落ちやすい」という説明に直し、出典[7]を足しました。水分活性の説明と、高学年・中学生むけの一部の言い回しも分かりやすくしました(先生の目での読み直しによる)。あわせて、低学年むけの微生物のたとえ、バーズアイさんが話を聞いた場面、氷の粒が大きくなる説明、解凍後と冷凍庫の確認は袋の表示を見る案内に直し、高学年むけの「眠ったような状態」は「死ぬとは限らない」と書きました。

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