1. 木の船から、プラスチックの船へ
1. 木の船から、FRPの船へ
1. FRPとは何か ── 木造船に取って代わった素材
むかし、船は 木で できて いました。木の船は、水に つかって いると くさったり、虫に くわれたり します。 だから、なんねんかに 1回、あたらしい 船に 作りかえる ひつようが ありました。
1960年代、日本で「エフアールピー」と いう あたらしい そざいが つかわれる ように なりました。ガラスの せんいと、プラスチックを まぜて 作る そざいです。 軽くて じょうぶで、水に つかっても くさりません [1]。1970年代には、日本中の 船が どんどん この そざいに かわって いきました。
昔、船は木でできていました。木の船は、水につかっているとくさったり、虫に食われたりします。だから、何年かに1回、新しい船に作りかえる必要がありました。
1964年、日本のメーカーがFRP(繊維強化プラスチック)を使った小型漁船を開発しました。ガラスの繊維とプラスチックを組み合わせて作る素材です。軽くて丈夫で、水につかっても腐りません[1]。1970年代に入ると、日本中の船がどんどんこの素材に置きかわっていきました。
かつて船は木で建造されていました。木造船は海水にさらされ続けると腐食し、フナクイムシなどによる食害も受けるため、数年おきに新造する必要がありました。
1964年、三菱樹脂が小型一本釣り漁船にFRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)を採用し、翌1965年には日本硝子繊維もFRP漁船の開発に着手しました。1966年には大日本インキ化学や、日本硝子繊維と中原造船所の連携による建造例が生まれ、その後、各地の造船所で開発が進みました[1]。ガラス繊維と樹脂を組み合わせたこの素材は、軽量かつ高強度で腐食せず、木造船に比べてメンテナンスの手間が大きく減ります。1970年代以降、FRP漁船は急速に普及し、木造漁船に取って代わっていきました[1]。
2. なぜ すてるのが むずかしいの?
2. なぜ処分がむずかしいのか
2. なぜFRPはリサイクルしにくいのか
たまごを ゆでると、もう 生たまごには もどせませんよね。 エフアールピーも それと にた せいしつです(ただし 本当は、たまごの タンパクしつとは ちがう、プラスチックの へんかです)。いちど かたまると、もう 一度 とかして べつの 形に する ことが できません。そのうえ、ガラスの せんいと プラスチックが しっかり くっついて いるので、 あとから 2つに 分ける ことも むずかしいです [2]。
そのため、ながい あいだ、いらなく なった エフアールピー 船は、うめたてたり もやしたり する ほかに ほうほうが ありませんでした。
船に使われるFRPの多くは、いちど固まると、もう一度とかして別の形にすることができない性質の樹脂でできています。そのうえ、ガラスの繊維とプラスチックがしっかりくっついているので、あとから2つに分けることも難しいです[2]。
そのため、長いあいだ、いらなくなったFRP船は、埋め立てたり燃やしたりするほかに方法がありませんでした。
3. すてられた 船が、うみへんの こまりごとに
3. 放置艇という問題
3. 放置艇 ── 丈夫さが生んだ社会問題
エフアールピーの 船は、とても じょうぶなので、つかわなく なっても、しぜんに くちて なくなる ことが ありません。 すてる おかねや てまが かかる ため、もちぬしが いなく なった 船が、川や 海べに その まま のこされる ことが おこりました。
のこされた 船は、ほかの 船の じゃまに なったり、 こうずいの ときに ながされて あぶなかったり します [3]。
丈夫さが、すてにくさに変わった
FRPの船はとても丈夫なので、使わなくなっても、自然に朽ちてなくなることがありません。すてるお金や手間がかかるため、持ち主がいなくなった船が、川や海辺にそのまま残されることが起こりました。「放置艇」と呼ばれるこの問題は、船の通行のじゃまになったり、こう水や高潮のときに流されて危険だったりします[3]。
今も残る、大きな数
水産庁の調査によると、2022年度の時点で、全国のプレジャーボート約14万5千隻のうち、約5万6千隻(およそ39%)が放置艇でした。前の調査より約1万4千隻減っていますが、今もかなりの数が残っています[3]。
FRP漁船を対象にした研究では、耐用年数を約24年と見積もる一方、船体そのものの寿命は62年以上にもなると推定されています[6]。1970年代以降に増えたFRP船の一部は、1990年代ごろから順次、更新や処分の時期を迎えるようになりました。ところがFRPは自然に分解されず、処分にも費用がかかるため、所有者が管理を放棄した船が河川・海岸・漁港などにそのまま残される「放置艇」という現象が各地で顕在化しました。放置艇は船舶の航行障害、景観の悪化、洪水・高潮・津波時の流出による二次被害などを引き起こすとされています[3]。
水産庁が公表した令和4年度(2022年度)プレジャーボート全国実態調査によれば、全国の確認隻数は約14.5万隻、そのうち放置艇は約5.6万隻(全体の約39%)でした。これは前回調査(平成30年度)より約1.4万隻の減少であり、係留施設の整備やリサイクル制度の普及が一定の効果を上げています[3]。
4. セメントこうじょうで、うまれかわる
4. セメント工場で、生まれ変わる
4. FRP船リサイクルシステム ── セメントの原料と燃料に
2005年、船を 作って いる 会社たちが、力を あわせて、 いらなく なった エフアールピー船を きちんと しょりする しくみを 作りました[4]。
きめられた ばしょに 船を もって いくと、まず 大きく 切り分けられます。それを さらに くだいて、こなのように した あと、セメントを 作る こうじょうへ はこびます。 セメントこうじょうでは、こなに した ガラスの せんいを セメントの ざいりょうに、プラスチックの ぶぶんを もやす ねんりょうに つかいます。すてる ものが、 むだなく つかいきられる わけです[4]。
2005年、業界で作られたしくみ
2005年、船を作っている会社たちが力を合わせて、いらなくなったFRP船をきちんと処理するしくみを作りました[4]。「FRP船リサイクルシステム」と呼ばれ、2007年度からは全国で使えるようになりました。
セメントの材料と燃料になる
決められた場所に船を持っていくと、まず大きく切り分けられます。それをさらに細かくくだいて、粉のようにしたあと、セメントを作る工場へ運びます。セメント工場では、粉にしたガラスの繊維をセメントの材料に、プラスチックの部分を燃やす燃料に使います。すてるものが、むだなく使いきられるわけです[4]。
2005年11月、一般社団法人日本マリン事業協会が中心となり、環境大臣から廃棄物処理法にもとづく広域認定を受けて「FRP船リサイクルシステム」が始まりました。2007年度からは全国展開され、モーターボート・ヨット・水上オートバイ・漁船など、FRPを材料とする小型船舶が広く対象になっています[4]。
処理の流れはこうです。指定引取場所に集められた廃FRP船は、まず粗解体されます。その破材は中間処理場に運ばれて破砕・選別され、最終的にセメント工場でセメント焼成の過程に投入されます。ガラス繊維はセメントの原料として、樹脂は焼成の燃料として、それぞれ活用されます。素材を無駄なく使い切る、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルを組み合わせた方式です[4]。
5. 手ばなす とき、いくら かかる?
5. 手放すときにかかる費用
5. 処分にかかる費用と、これから
この しくみを つかって エフアールピー船を てばなすには、 おかねが かかります。たとえば、長さ10メートルくらいの 船だと、しょりに やく25まんえん かかる れいも あります [5]。
おかねが かかるからこそ、船を きちんと てばなす ことは、 じつは かんたんな ことでは ありません。それでも、この しくみが できた おかげで、すてられた 船を そのまま のこすより、ずっと よい ほうほうが えらべるように なりました。
このしくみを使ってFRP船を手放すには、お金がかかります。たとえば、長さ10メートルくらいの船だと、処理におよそ25万円かかる例もあります[5]。
お金がかかるからこそ、船をきちんと手放すことは、実は簡単なことではありません。それでも、このしくみができたおかげで、放置艇のまま残すより、ずっとよい方法が選べるようになりました。
処理費用は船の大きさによって変わりますが、10メートル前後のFRP廃船で、処理費用がおよそ25万円になる例が報告されています[5]。運搬費なども含めると、所有者の負担はさらに大きくなります。
この費用負担の重さが、放置艇が完全にはなくならない理由の1つでもあります。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
みの まわりの プラスチックせいひんが、どうやって すてられて いるか しらべて みましょう。
あんぜんな ばしょで できる こと
- おうちの プラスチックせいひんを 見て みる。 ペットボトルと、プラスチックの おもちゃでは、すてかたが ちがう ことが あります。マークを さがして みましょう。
- 近くの みなとや 川べりを、おうちの人と 見て みる。 とめられて いる 船が どんな そざいで できて いるか、 見くらべて みましょう。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「エフアールピーって なに?」だけで じゅうぶんです。
身の回りのプラスチック製品が、どうやってすてられているか調べてみましょう。
今日できること
- おうちのプラスチック製品を見てみる。ペットボトルと、プラスチックのおもちゃでは、すて方がちがうことがあります。マークをさがしてみましょう。
- 近くの港や川べりを、おうちの人と見てみる。とめられている船がどんな素材でできているか、見くらべてみましょう。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「FRPって、ほかに何に使われているの?」だけでも十分です。
身近な素材が、使い終わったあとどう処理されるのかを調べると、この記事で扱った内容が身近に感じられます。
手を動かして確かめる
- 身の回りのFRP製品をさがしてみる。お風呂の浴槽、給水タンク、ヘルメットなど、船以外にもFRPが使われている製品があります。
- 近くの港や川べりを見てみる。係留されている船の様子や、管理の状態を観察してみましょう。
一次情報にあたる
日本マリン事業協会のサイトには、FRP船リサイクルシステムの詳しい解説と、指定引取場所の一覧が公開されています。
気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「FRP船の処理費用、10mでおよそ25万円」という一文でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:業界団体・公的機関・公益法人の公開情報のほか、基礎的な用語の解説にWikipediaを使っています。
- 公益財団法人東京水産振興会「中・小型漁船市場をめぐる産業構造の変遷」。 https://lib.suisan-shinkou.or.jp/ssw617/ssw617-08.html (1964〜1966年のFRP漁船の商品化と、1970年代以降の木造漁船からの置き換わりについての解説)
- Wikipedia「繊維強化プラスチック」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/繊維強化プラスチック (素材の分離が困難でリサイクル・廃棄が難しいという性質についての解説)
- 水産庁「令和4年度プレジャーボート全国実態調査の結果を公表します」。 https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/keikaku/230828.html (2022年度の放置艇の隻数・割合と、放置艇が引き起こす問題についての公式発表)
- 一般社団法人日本マリン事業協会「FRP船リサイクル 事業概要」。 https://www.marine-jbia.or.jp/recycle/ (FRP船リサイクルシステムの開始年・対象船舶・処理の流れについての公式解説)
- 笹川平和財団「海洋政策研究所 Ocean Newsletter」第83号「FRP廃船処理船の提案性」。 https://www.spf.org/opri/newsletter/83_2.html (10mクラスのFRP廃船1隻の処理費用の実例についての解説)
- 日本沿岸域学会「FRP漁船の寿命と耐用年数 ~漁船統計と漁船保険統計に基づく一考察~」(沿岸域学会誌 第22巻第2号、2009年)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaczs/22/2/22_77/_article/-char/ja/ (FRP漁船の耐用年数(約24年)と寿命(62年以上)の推定についての学術論文)
なおした ところ
更新履歴
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