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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

木の したは、どうして すずしいの?

木はどうやって街を冷やすのか ── 日陰と、葉から出る水蒸気

木はどうやって街を冷やすのか ── ヒートアイランドと、日陰・蒸散・気温の差

分野:自然

ひなたの みちと、木の かげの みち。どちらが すずしいかは、だれでも しって いる。でも、どれくらい ちがうのかを、はかった 人が いる。

2008年の 9月、東京の 表参道おもてさんどうで、ひるの 12時に しらべた。空気の おんどは 29ど。木の かげの じめんも、29どぐらい。ひなたの じめんは、44どぐらい だった。

木は、この 15どの ちがいを、どうやって つくって いるのだろう。このメモでは、木が まちを すずしく する しくみを しらべて みた。

2008年9月9日の正午、東京の表参道おもてさんどうで、環境省の調査が道路の表面の温度を測った。気温は29℃。街路樹の日陰の路面は約29℃で、気温とほぼ同じだった。日なたの路面は約44℃。気温より15℃ほど高かった[1]。

同じ通りの同じ時刻に、15℃の差ができている。木は何をして、この差を作っているのだろう。「木は水を出して街を冷やす」という説明はよく見かける。でも調べてみると、日陰と、葉から水が出ていくはたらきと、気温の下がり方は、それぞれ別の話だった。このメモは、その3つを分けて、どんな条件のときに木が働くのかをたどった。

2008年9月9日の正午、東京・表参道で、環境省の調査が路面の温度を測った。気温は29℃。街路樹の日陰の路面は約29℃で、気温とほぼ同じ。日なたの路面は約44℃で、気温より15℃ほど高かった[1]。

同じ通りの同じ時刻に、15℃の差ができている。この差を、木のどんなはたらきが作っているのだろう。「木は蒸散で街を冷やす」という説明はよく見かける。ところが調べてみると、日陰、蒸散、気温の下がり方は、それぞれ別の話だった。このメモは、環境省のガイドライン、気象庁のページ、実測や研究論文をもとに、木が街を冷やすしくみと、それが働く条件をたどる。

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1. まちの あつさは、なにが つくって いるの?

1. ヒートアイランド ── 東京の気温は100年で約3.5℃上がった

1. ヒートアイランド ── 東京は100年で3.5℃、ただし原因は緑の減少だけではない

まちの 空気が、まわりの ところより あつく なる ことを、ヒートアイランド(あつさの 島)と いう。

気象庁きしょうちょうの しらべでは、東京の 1年の 平均へいきん気温は、100年で 3.5ど あがった。まちから はなれた 15か所の 平均へいきんは、1.8どだった。この ちがいは、おおよそ、まちが できた えいきょうと 見られて いる。

あつく なる わけは、ひとつ では ない。たてものや くるまから 出る ねつ。草や 木が へって、アスファルトや コンクリートが ふえた こと。たてものが ぎっしり ならんで、風が とおりにくく なった こと。この 3つが あげられて いる。木は、2つめの わけに かかわって いる。

おどろくのは、ヒートアイランドが いちばん めだつのが、夏の ひるでは なくて、冬の よるから あさに かけて だと いう こと。じゃあ、夏の ひるに 木の かげが すずしいのは、なにが ちがうのだろう。

気象庁によると、東京の年平均気温は、1929年から2025年までの統計で、100年あたり3.5℃の割合で上がってきた。都市化の影響が比較的小さいとみられる全国15か所の平均は1.8℃だった[2]。気象庁は、この差をおおよその見積もりとして、都市化の影響とみることができるとしている。

環境省のガイドライン(平成24年度版)は、ヒートアイランド現象の原因を3つ挙げる。建物や自動車から出る熱(人工排熱)。緑地が減って、アスファルトやコンクリートの面が広がること。建物が密集して、風が通りにくくなること[3]。木は、2つ目にかかわる。だから木を植えれば街の暑さがすべて解決する、という話にはならない。

意外なことに、ヒートアイランドがいちばんはっきり出るのは、夏の昼ではなく、冬の夜から明け方だ[3]。夏の昼のピークの気温は大きくは上がっていないが、暑い時間が長くなり、夜も気温が下がりにくくなっている。では、夏の昼に「木陰は涼しい」と感じるとき、木は何を冷やしているのだろう。

気象庁は、東京の年平均気温が、1929年から2025年の統計で、100年あたり3.5℃の割合で上昇してきたと示している。都市化の影響が比較的小さいとみられる全国15地点(網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、多度津、宮崎、名瀬、石垣島)の平均は1.8℃だった[2]。気象庁は、都市と15地点平均の差を、おおよその見積もりとして都市化の影響とみることができる、と説明している。

環境省のガイドライン(平成24年度版)は、ヒートアイランド現象の主な原因を3つ挙げる。建物や工場、自動車の排熱(人工排熱の増加)、緑地の減少とアスファルトやコンクリートの拡大(地表面被覆の人工化)、密集した建物による風通しの悪化(都市形態の高密度化)だ[3]。木は、このうち2つ目にかかわる。だから、木を植えれば街の暑さがすべて解決する、という話にはならない。

もうひとつ、意外な点がある。同じガイドライン(平成24年度版)によると、ヒートアイランドがいちばん顕著になるのは、夏の昼ではなく、冬の夜間から明け方だ。1月の札幌や東京の日最低気温は100年あたり6℃を超えて上がっているのに、8月の日最高気温の上昇は、東日本では1℃未満で、統計的に有意な傾向は見られない[3]。夏は、ピークの気温よりも、30℃以上の時間が長くなり、なかなか気温が下がらないことが特徴だという。

では、夏の昼に「木陰は涼しい」と感じるとき、木は何を冷やしているのか。冒頭の15℃の差を、もう少し細かく見る。

2. 「すずしい」には、なん しゅるいも あるの?

2. 「涼しい」は3つある ── 空気、地面、日ざし

2. 気温・路面・日射 ── 表参道と杉並で測られた日なたと日陰

はじめに 出した 44どと 29どは、「じめんの おんど」だった。でも、「あつい」と かんじるのは、じめんの おんどだけでは ない。

空気の おんど。じめんの おんど。そして、日ざしや、じめんからの てりかえしを うけた 体が かんじる あつさ。この 3つは、べつべつの もの。

べつの 日に、東京の 杉並すぎなみでも しらべた。日ざしと てりかえしを うける くろい ボールの おんどを はかる。空気は 30.7どだった。ひなたの ボールは 44ど、木の かげの ボールは 32どだった。かげでは、空気の おんどに ちかく、ひなたでは 13どぐらい たかかった。

冒頭の44℃と29℃は、地面(路面)そのものの温度だった。人が感じる暑さは、別のものさしで測られる。

東京・杉並区の青梅街道では、2008年9月12日の11時に、黒球温度が測られた。黒球温度は、日ざしや地面からの照り返しを受けたときの熱さの目安で、熱中症の危険度を見るWBGTの計算にも使われる。環境省によると、完全な日陰なら気温と同じくらいで、日ざしや照り返しがあると、気温より15〜20℃近く高くなることもある[1]。この日の気温は30.7℃。日なたの歩道の黒球温度は44℃、街路樹の日陰は32℃だった。WBGTは27.9℃と24.8℃で、3.1℃の差になった[1]。

「涼しい」には、少なくとも3つある。空気の温度(気温)、地面の温度、日ざしや照り返しを受けた人の暑さだ。日なたと日陰の差は、地面で約15℃、人の暑さの目安(黒球温度)で12℃だった。ただし、この2つは別の日、別の場所の測定で、同じ木の下で測ったものではない。

冒頭の44℃と29℃は、地面(路面)そのものの温度だった。人が受ける暑さは、別の量で測られる。

東京・杉並区の青梅街道では、2008年9月12日11時に、黒球温度が測られた。黒球温度は、日射や路面からの照り返しを受けた熱さの目安で、熱中症の指標WBGT(黒球温度、湿球温度、乾球温度から計算する)の材料になる。環境省は、完全な日陰では黒球温度が気温と同程度になり、日射や照り返しがあると気温より15〜20℃近く高くなることがある、と説明している。この日の気温は30.7℃。日なたの歩道の黒球温度は44℃、街路樹の日陰は32℃で、その差は12℃。WBGTは27.9℃と24.8℃で、3.1℃の差だった[1]。

つまり「涼しい」には、少なくとも3つの量がある。空気の温度(気温)、地面の温度、日射や照り返しを受けた人の暑さだ。日なたと日陰の差は、地面で約15℃、黒球温度で12℃。ただし、この2つは別の日、別の場所の測定で、同じ木の下で測ったものではない。

では、この差を作っているのは、木のどんなはたらきなのか。

3. 木の かげは、なにを して いるの?

3. 日陰 ── 芝生は地面を冷やし、木は人の暑さを下げる

3. 日陰 ── 芝生は地面を、木陰は人の暑さを下げる(マンチェスターの測定)

木の かげが すずしいのは、木が 日ざしを さえぎって いるから。日がさと おなじ はたらきだ。ただし 本当は、日がさは 水を つかわない。木は、この あと 出て くる ように、水も つかって いる。

イギリスの マンチェスターで、コンクリートの 上と しばふの 上を、木の かげが ある とき と ない ときで くらべた 人たちが いる。じめんの あつさは、しばふでも、木の かげでも、ずいぶん さがった。さがった はばは、いちばん 大きい ときで、しばふが 24ど、木の かげが 19ど。ところが、日ざしを うける くろい ボールの おんどは、じめんが しばふか コンクリートかは あまり かんけい なくて、木の かげで 5〜7どぐらい さがった。

じめんを ひやす ことと、人の あつさを さげる ことは、べつの こと。日ざしを さえぎる 木の かげは、人の あつさに おおきく かかわって いた。

木の日陰が涼しいのは、木が日ざしをさえぎるからだ。日傘と同じはたらきだ。ただし本当は、日傘は水を使わない。木はこのあと出てくるように、水も使っている。

イギリスのマンチェスターで、研究者たちが2009年と2010年の6〜7月に、コンクリートと芝生の小さな区画を、木の日陰があるときとないときで比べた[4]。地面の表面温度は、地面の種類と日陰の両方に大きく左右された。最大の低下幅は、芝生で24℃、木の日陰で19℃だった。ところが、日ざしや照り返しを受ける黒球温度は、地面が芝生かコンクリートかにはあまり左右されず、日陰で最大5〜7℃下がった。

研究者たちは、芝生は地面を冷やすが、人の感じる暑さにはほとんど影響しない。木の日陰は、その場所で人を涼しくできる、とまとめている。地面を冷やすことと、人の暑さを下げることは、別の仕事だ。

木の日陰と芝生を分けて比べた研究がある。イギリス・マンチェスターで、Armson、Stringer、Ennosは、2009年と2010年の6〜7月に、コンクリートと芝生の小さな区画を、木の日陰があるときとないときで比べ、地面の表面温度と、その上の黒球温度を測った[4]。

結果は、測ったものによって分かれた。表面温度は、地面の種類と日陰の両方に大きく左右され、最大値の低下幅は、芝生で最大24℃、木の日陰で最大19℃だった。一方、黒球温度は、地面の種類にはほとんど左右されず、日陰があると最大5〜7℃下がった。著者らは、芝生は地面を冷やして地域の冷却に役立つが、人の感じる暑さにはほとんど影響しない。木の日陰は、その場所で人を涼しくできる、とまとめている[4]。

日陰は、日射そのものをさえぎるので、人の暑さに直接かかわる。道に木を並べるとき、夏の日陰は昔から役目の一つに数えられてきた。その歴史は「街路樹はなぜ植えられたのか」で調べた。では、日陰のほかに、木は何をしているのか。

4. 木は、水で あつさを おいだして いるの?

4. 蒸散 ── 水が水蒸気になるとき、熱をもっていく

4. 蒸散 ── 日射のエネルギーを水蒸気に変える。ただし日中の気温は下がらなかった例もある

木は、根から 水を すいあげて、はっぱの 小さな あなから、水を 水蒸気すいじょうきに して 空気に 出して いる。これを 蒸散じょうさんと いう。水が 水蒸気すいじょうきに なる とき、まわりの ねつを もって いく。手に ついた 水が かわく とき、ひんやり するのと おなじ しくみだ。

蒸散じょうさんが さかんな とき、大きな 木は、水を たくさん 出す。木 1ぽんで、バケツ なんばいぶんにも なる と、けんきゅうした 人は 答えて いる。

ただし、木が 水を 出したから といって、まわりの 空気の おんどが さがるとは かぎらない。スウェーデンの まちで、木の はっぱを はかった しらべでは、昼は、蒸散じょうさんで 空気が ひえた しょうこは 見つからなかった。夕方から 夜の はじめは、ひえかたが はやく なった。

木は、日ざしの ねつを、水蒸気すいじょうきに うつして いる。でも、それで まわりの 空気が どれだけ ひえるかは、べつの はなしだ。

木は、根から吸い上げた水を、葉にある小さな穴(気孔)から水蒸気にして出している。これが蒸散じょうさんだ。植物の研究者は、蒸散には、強い日ざしで上がった葉の温度を下げるはたらきもある、と書いている[5]。

水が水蒸気になるには、熱が要る。25℃の水では、1kgあたり2442kJ。1gなら約2.4kJだ[6]。水1gの温度を1℃上げるのに約4.2Jとして計算すると、1gの水が蒸発するときに持ち去る熱は、水100gの温度をおよそ6℃上げる熱に近い。蒸散の量も大きい。植物生理学の研究者は、蒸散が盛んなとき、木の大きさにもよるが、木1本で数十から数百kgの水を蒸散すると答えている[7]。1kgをおよそ1Lとみて10Lのバケツにすると、数杯から数十杯ぶんだ。

環境省のガイドラインは、これを「潜熱」で説明する。日ざしを受けたアスファルトやコンクリートは、夏の昼に表面が50〜60℃ほどになって、空気を熱する。植物は、日ざしから受けたエネルギーを、蒸散で潜熱(水の状態を変えるための熱)にして出すので、空気を暖める原因にはならない、という[3]。

ただし、注意がある。スウェーデンのヨーテボリで、街や公園の木7種の葉を測った研究は、昼に水の蒸発で使われる熱をかなり大きく見積もった。それでも、昼に、木の蒸散が周りの気温を下げた証拠は観察されなかった。夕方から夜の初めは、冷え方が早くなった[8]。蒸散が使う熱の話と、気温が下がる話は、そのまま結べないようだ。

建物も日陰は作る。木は、日陰とは別に、蒸散をしている。根から吸い上げた水が、葉の気孔から水蒸気になって出ていく。木下は、蒸散には、強い日差しで上がった葉の温度を下げるはたらきもある、と書いている[5]。

水が蒸発するには熱が要る。25℃の水の蒸発熱は1kgあたり2442kJで、1gなら約2.4kJだ[6]。水1gの温度を1℃上げるのに約4.2Jとして計算すると、1gの水が蒸発するときに持ち去る熱は、水100gの温度をおよそ6℃上げる熱に近い。量も大きい。日本植物生理学会のQ&Aで寺島一郎は、蒸散が盛んなとき、木のサイズにもよるが、木1本で数十から数百kgの水を蒸散すると答えている[7]。1kgをおよそ1Lとみて10Lのバケツにすると、数杯から数十杯ぶんにあたる。

環境省のガイドラインは、この水の使われ方を「潜熱」で説明する。日射を受けたアスファルトやコンクリートは、夏の日中に表面が50〜60℃ほどまで上がり、その熱が顕熱として大気を加熱する。植物は、日射から受けたエネルギーの多くを蒸散で潜熱として放出するので、大気を暖める要因にならない。潜熱は、水が水蒸気に変わることに使われる熱で、空気の温度は上げず、湿度を上げる[3]。

ただし、ここに注意がある。スウェーデンのヨーテボリで、街路樹や公園の成木7種の葉の蒸散を測ったKonarskaらは、水の蒸発に使われる熱の流れ(潜熱フラックス)を、日中206W/m²、夜間24W/m²と見積もった。それでも、日中に、木の蒸散が周りの気温を下げた証拠は観察されなかった。一方、夜間の蒸散は、日没前後の冷え方を強めたが、夜の後半までは続かなかった[8]。蒸散が使う熱の量と、気温が下がるかどうかは、そのまま結べないと読める。

5. 空気の おんどは、どれくらい ひくく なるの?

5. 気温はどれくらい下がるのか

5. 公園の気温は昼に平均で約0.94℃低い ── 地面・人の暑さ・気温を並べる

では、空気の おんどは、どれくらい ひくく なるのか。いろいろな けんきゅうを あつめて まとめた 人たちが いる。それに よると、公園は、ひるの 空気の おんどが、まわりより 平均へいきんで 1どぐらい(0.94ど)ひくかった。大きな 公園や、木の おおい 公園ほど、すずしい かのうせいも しめされた。

ならべて みよう。ひなたと かげの ちがいは、じめんで 15ど。日ざしを うける ボールで 12ど。空気の おんどは、1どぐらい。

ただし、ちがう ばしょ、ちがう 日に はかった ものを ならべただけ。それでも、木の かげで おおきく かわるのは、空気よりも、じめんと、日ざしを うける 体の あつさ だと 見えて くる。

気温はどれくらい下がるのか。イギリスの研究者たちが、街の緑が気温に与える影響を調べた研究を集めて、統計でまとめた。それによると、公園は日中、そうでない場所より、平均で約0.94℃気温が低かった。大きな公園や、木のある公園のほうが、日中は涼しい可能性も示された[9]。

並べてみる。日なたと日陰の差は、地面で約15℃、日ざしを受ける黒球温度で12℃。空気の温度は、公園全体の平均で約1℃だ。ただしこれは、場所も日もちがう測定を並べただけで、同じ場所での比べっこではない。それでも、木の日陰で大きく変わるのは、気温よりも、地面と、日ざしを受ける人の暑さのほうに見える。

気温はどれくらい下がるのか。Bowlerらは、街の緑(公園、木、緑化された屋根など)が気温に与える影響を調べた研究を、系統的にまとめて統計にかけた。研究の多くは公園の中や木の下の気温を測っていて、緑のある場所が緑のない場所より涼しくなりうる、という点で、大筋そろっていた。平均すると、公園は日中、そうでない場所より約0.94℃低かった。複数の公園を調べた研究からは、大きな公園や木のある公園のほうが、日中は涼しい可能性も示された[9]。

これまでの数字を、対象別に並べる。

日なたと日陰の路面温度と黒球温度の差、および公園と周りの気温の差
冷やされるもの差条件と出どころ
路面の温度日なた約44℃、日陰約29℃(約15℃差)東京・表参道、2008年9月9日12時、気温29℃[1]
日射を受けた熱さ(黒球温度)日なた44℃、日陰32℃(12℃差)東京・杉並、2008年9月12日11時、気温30.7℃[1]
気温公園は日中、平均で約0.94℃低い複数の研究をまとめた統計[9]

3つは、場所も日も測り方もちがう別々の測定で、同じ場所での比較ではない。ただ、日なたと日陰で大きな差が出ているのは、気温よりも、路面と、日射を受けた人の暑さのほうだ。「木が街を冷やす」と言うとき、冷やされているのは、この3つのうちのどれなのだろう。

6. 木は、いつでも すずしく して くれるの?

6. 水がないと、木は冷やせない ── 舗装に囲まれた街路樹

6. 舗装に囲まれた街路樹 ── 水が届かないと、蒸散も冷却も弱まる

木が 水を 出して ひやす はたらきは、水が なければ できない。かわいた ときには、木は はっぱの あなを とじて、水が にげるのを ふせぐ。

スウェーデンの まちで、まちの 木を しらべた 人たちが いる。まわりが アスファルトなどの ほそうで おおわれた 木は、そだち方も、まちを ひやす ちからも、水が しみこむ 地面に かこまれた 木より、弱かった。20〜30さいぐらいの 木で、くさに かこまれた 木は、ほそうが みきの ちかくまである 木より、へいきんで 2.6メートル 高かった。

ただし、これは スウェーデンの 1つの まちの けんきゅう。日本の まちでも おなじとは かぎらない。でも、日本の 環境省かんきょうしょうの しりょうも、地面を ひやす ほうほうに、水を つかう ことを あげて いる。

木が冷やす仕事を続けるには、水がいる。植物は、かわいて乾燥ストレスを受けると、気孔を閉じて、水が出ていくのを防ぐと説明されている[5]。気孔を閉じれば、蒸散も減る。

スウェーデンのヨーテボリで、街の木7種の成木を調べた研究では、昼の気孔の開き具合は、木の根元の真上にある地面のうち、水が通る面の割合が大きい木ほど、大きかった。雨の量と、水が通る面の割合という簡単な見積もりだけで、昼の気孔の開き具合のばらつきの68%を説明できた[8]。

2023年の研究は、ヨーテボリ周辺の3種の街路樹で、舗装が多い場所の木は、成長、体の調子、冷やす効果のどれもが、舗装の少ない場所より低かったと報告した。舗装の影響は、木の種類の差より大きかった[10]。研究者は、20〜30年たった木で、草地に囲まれた木は、幹のすぐそばまで舗装がある木より、平均で2.6m高く、樹冠は1.3m広かったと話している[11]。

これは、スウェーデンの街の研究だ。日本の街路樹にそのまま当てはまるとは限らない。ただ、環境省のガイドラインも、地面の温度上昇を抑える方法として、緑化のほかに、地面に水を保つことや、打ち水のような「水の活用」を挙げている[3]。冷やす仕事の材料が水だ、という点は、日本の資料にも出てくる。

木が冷やす仕事を続けるには、水がいる。木下は、乾燥ストレスを受けた植物は、植物ホルモンのアブシシン酸に応答して気孔を閉じ、水分の損失を防ぐと書いている[5]。気孔を閉じれば、蒸散も減る。

Konarskaらのヨーテボリの調査では、街路樹と公園の成木7種について、昼の気孔コンダクタンス(気孔の開き具合の目安)は、樹冠の真下の面のうち、水が通る面の割合が大きい木ほど高かった。降水量と、その割合という簡単な見積もりだけで、正午の気孔コンダクタンスのばらつきの68%を説明できた[8]。

2023年の研究は、ヨーテボリ周辺の、乾燥への強さがちがう3種の街路樹を調べ、舗装が多い場所の木は、成長、生理的な働き、冷却効果のすべてで、舗装の少ない場所の木より有意に低かったと報告した。舗装の影響は、樹種の差より大きかった[10]。研究者は、20〜30年たった木で、草地に囲まれた木は、幹のすぐそばまで舗装がある木より、平均で2.6m高く、樹冠は1.3m広かったと話している[11]。

これは、高緯度の1つの街の研究だ。日本の街路樹にそのまま当てはまるとは限らない。ただ、環境省のガイドラインも、地表面の温度上昇を抑える方法として、緑化のほかに、地表面の保水化や打ち水などの「水の活用」を挙げている[3]。木が涼しさを作る仕事の材料は水で、その水が根に届くかどうかは、足もとの舗装にも左右される。

7. てを ぬらして、ためして みよう

7. 手の甲と、資料で確かめてみる

7. 手の甲と、資料で確かめてみる

木の しごとの ひとつは、うちの 中で ためせる。手の こうに、水を 2、3てき つけて、かわく まで まつ。なにも つけて いない ほうの 手の こうと くらべて みる。ぬれた ほうが ひんやり する はず。水が かわく とき、手から ねつを もって いく から。木の 蒸散じょうさんも おなじ しくみだ。

ただし 本当は、手の 水は、かわいたら おしまい。木は、根から 水を すいあげ つづけて いる。

こんど 木の かげに 入って すずしいと 思ったら、思いだして みよう。その すずしさは、日ざしが なくなった ぶんかな。じめんの おんどかな。空気の おんどかな。

安全のために

あつい 日の ひなたの じめんは、さわれないほど あつく なる ことが ある。手で さわって たしかめない。あつい 日の ひなたで、ながい 時間 しらべない。

木の仕事の一つは、家の中で確かめられる。手の甲に水を2、3滴つけて、乾くまで待つ。何もつけていないもう一方の手の甲と比べる。濡れたほうがひんやりするはずだ。水が蒸発するとき、皮膚から熱を持っていくからだ。木の蒸散も、同じしくみだ。ただし本当は、手の水は乾けば終わる。木は、根から水を吸い上げ続けている。

木陰に入って涼しいと感じたとき、その涼しさは、日ざしが消えたぶんなのか、地面の温度なのか、空気の温度なのか。このメモで見た数字では、日なたと日陰の差が大きく出たのは、地面と、日ざしを受ける人の暑さのほうだった。自分の町でも同じとは限らない。

資料を読むなら、環境省のガイドライン第3章の街路樹の項に、表参道と杉並の測定の図がある[1]。気象庁のページには、東京と15地点の気温の上がり方が並んでいる[2]。論文は英語だが、要旨だけでも読める。

安全のために

夏の日なたの路面は、50〜60℃ほどになることがある。手で触って確かめない。暑い日の日なたで、長い時間、観察や測定をしない。

木の仕事の一つは、家の中で確かめられる。手の甲に水を2、3滴つけて、乾くまで待ち、何もつけていないもう一方の手の甲と比べる。濡れたほうがひんやりするはずだ。水が蒸発するとき、皮膚から熱を持っていくからで、木の蒸散も、水が蒸発するときに熱を奪うという点では同じしくみだ。ただし本当は、手の水は乾けば終わりだが、木は根から水を吸い上げ続けている。

木陰に入って涼しいと感じたとき、その涼しさは、日射が消えたぶんなのか、地面の温度なのか、空気の温度なのか。このメモで見た数字では、日なたと日陰の差が大きく出たのは、路面と、日射を受けた人の暑さ(黒球温度)のほうで、気温の差は、公園の平均で約1℃だった。ただし測定した場所も日もちがう。自分の町でも同じとは限らない。

資料を読み比べるなら、環境省ガイドラインの第3章「街路樹の活用」のページに、冒頭の表参道と杉並の測定が載っている[1]。気象庁のページでは、東京と15地点の気温の上がり方を見比べられる[2]。Armsonら[4]とKonarskaら[8][10]の論文は英語だが、要旨だけでも読むと、「何を測ったのか」が分かる。

安全のために

夏の日なたの路面は、50〜60℃ほどになることがある。手で触って確かめない。暑い日の日なたで、長い時間、観察や測定をしない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

このメモは、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

  1. 環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン 平成24年度版」第3章 対策技術等データシート(街路樹の活用)。 https://www.env.go.jp/air/life/heat_island/guideline/h24/chpt3.pdf (表参道と青梅街道の実測、黒球温度とWBGTの説明)
  2. 気象庁「ヒートアイランド現象」(ヒートアイランド監視報告)。 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr/himr_1-1-1.html (東京・大阪・名古屋と15地点平均の年平均気温の上昇率、15地点の選び方)
  3. 環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン 平成24年度版」第1章 ヒートアイランド現象とは。 https://www.env.go.jp/air/life/heat_island/guideline/h24/chpt1.pdf (原因の3つ、冬の夜間に最も顕著なこと、植物の蒸散と潜熱、アスファルトの表面温度、水の活用)
  4. Armson, D., Stringer, P., Ennos, A. R. (2012) “The effect of tree shade and grass on surface and globe temperatures in an urban area”. Urban Forestry & Urban Greening 11(3): 245-255. https://doi.org/10.1016/j.ufug.2012.05.002 (マンチェスターでの、芝生と木の日陰による表面温度・黒球温度の測定。要旨)
  5. 木下俊則「環境変動に対する気孔開閉制御」『化学と生物』53(9): 608-613 (2015)。 https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=441 (蒸散が葉の温度を下げること、乾燥ストレスで気孔が閉じること)
  6. Wikipedia「蒸発熱」(水の値はNISTのデータを引用)と、八光電機「各種物質の性質:蒸発熱」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/蒸発熱 https://www.hakko.co.jp/library/qa/qakit/html/h01060.htm (水の蒸発熱:25℃で2442kJ/kg、100℃で2257kJ/kg)
  7. 日本植物生理学会 みんなのひろば 植物Q&A「植物が1日に吸収する水分量について」(寺島一郎回答、2016年6月27日)。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3507 (蒸散が盛んなとき、木1本で数十から数百kgの水を蒸散すること)
  8. Konarska, J. et al. (2016) “Transpiration of urban trees and its cooling effect in a high latitude city”. International Journal of Biometeorology 60(1): 159-172. https://doi.org/10.1007/s00484-015-1014-x (ヨーテボリでの街路樹・公園樹の蒸散の測定。昼と夜の潜熱、透水面の割合と気孔コンダクタンス。要旨)
  9. Bowler, D. E., Buyung-Ali, L., Knight, T. M., Pullin, A. S. (2010) “Urban greening to cool towns and cities: A systematic review of the empirical evidence”. Landscape and Urban Planning 97(3): 147-155. https://doi.org/10.1016/j.landurbplan.2010.05.006 (公園は日中、平均で約0.94℃低いという、複数の研究のまとめ。要旨)
  10. Konarska, J., Tarvainen, L., Bäcklin, O., Ränfors, M., Uddling, J. (2023) “Surface paving more important than species in determining the physiology, growth and cooling effects of urban trees”. Landscape and Urban Planning 240: 104872. https://doi.org/10.1016/j.landurbplan.2023.104872 (ヨーテボリ周辺の街路樹で、舗装が多い場所の木は成長・生理・冷却効果が低かったこと)
  11. Phys.org「Less asphalt gives way to stronger trees in urban areas, finds study」(2023年12月)。 https://phys.org/news/2023-12-asphalt-stronger-trees-urban-areas.html (研究者の話:20〜30年たった木で、草地に囲まれた木は平均2.6m高く、樹冠は1.3m広かった)

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