冬みんの ふしぎ

冬眠のふしぎ

冬眠のふしぎ ── 生きものはどうやって冬を越すのか

分野:生きもの

クマも リスも、冬に なると 冬みんを します。でも、この 2しゅるいの 冬みんは、じつは ぜんぜん ちがう ものだと されて います。

どう ちがうのでしょうか。

この きじでは、冬みんの ひみつを 見て いきます。

クマもリスも、冬になると冬眠をします。でも、この2種類の冬眠は、じつはまったく別のものだとされています。

どうちがうのでしょうか。

この記事では、冬眠のひみつを見ていきます。

「冬眠」とひとことで言っても、その中身は動物によって大きく異なります。体を凍らせて冬を越すカエルさえいます。

この記事では、クマとリスの冬眠の違い、凍って生き延びるカエル、そして冬眠しないはずのマウスを冬眠に似た状態にすることに成功した日本の研究までをたどります。

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1. 冬みんって、ただ ねて いるだけ?

1. 冬眠って、ただ寝ているだけ?

1. 冬眠とは ── 能動的に代謝を落とすこと

冬みんは、ただ ぐっすり ねむって いるのとは ちがいます。 からだの 中の はたらき(たいしゃ)を、じぶんから ゆっくりに して、エネルギーを つかわない ように して いるのです。テレビや ゲームきを つかわない ときに 「せつでんモード」に する のと にた かんじです (ただし 本当は、きかいと ちがって、からだの 中の しくみが じぶんで きりかわります)[1]

でも、おなじ「冬みん」と よばれて いても、クマと リスの やりかたは、じつは ぜんぜん ちがいます。

体のはたらきを、自分からゆっくりにする

冬眠は、ただぐっすり眠っているのとはちがいます。体の中のはたらき(代謝)を、自分からゆっくりにして、エネルギーを使わないようにしているのです[1]

クマとリスは、やり方がちがう

でも、同じ「冬眠」と呼ばれていても、クマとリスのやり方は、じつはまったくちがいます。

冬眠は、動物が能動的に代謝を低下させ、体温を調節する生理現象です。継続時間によって、数週間単位で続く「冬眠」と、数時間から1日以内にとどまる「日内休眠(トーパー)」に分類されます[1]

リスやコウモリのように体温を大きく下げる動物もいれば、クマのようにそれほど体温を下げずに代謝だけを大きく落とす動物もいます。「冬眠」という同じ言葉の中に、まったく異なる戦略が含まれているのです。

2. 体おんが 0どに 近くなる、リスの 冬みん

2. 体温が0℃近くになる、リスの冬眠

2. 深い冬眠 ── 体温が0〜5℃まで下がる動物たち

シマリスや コウモリの なかまは、冬みんの あいだ、体おんが 0どから 5どくらいまで さがると されて います [1]。人間なら たいへんな ことに なる 体おんですが、これらの どうぶつは、へいきな 顔で じっと して います。

シマリスは、クマとはちがい、とちゅうで 目を さまして エサを 食べる ことも あります。「食べては ねる」を くりかえす どうぶつも いるのです[2]

体温が0〜5℃まで下がる

シマリスやコウモリの仲間は、冬眠のあいだ、体温が0℃から5℃くらいまで下がるとされています[1]。人間ならとても危険な体温ですが、これらの動物は平気な顔でじっとしています。

「食べては寝る」を繰り返す動物も

シマリスは、クマとはちがい、途中で目を覚ましてエサを食べることもあります。脂肪をため込むだけでなく、「食べては寝る」をくり返す動物もいるのです[2]

リスやコウモリの仲間は、深い冬眠に入ると体温が0〜5℃前後まで低下します[1]。これほど体温を下げても組織が損傷しないよう、細胞レベルでの適応がはたらいていると考えられています。

シマリスのように、冬眠中でも数日おきに覚醒し、蓄えた食料を摂取してから再び深い冬眠に入る周期を繰り返す種もいます[2]。クマのように脂肪だけを頼りに冬を越すタイプとは、エネルギー戦略が異なります。

3. じつは「あさい ねむり」だった、クマの 冬みん

3. じつは「浅い眠り」だった、クマの冬眠

3. クマの冬眠 ── 2011年の発見

クマの 冬みんは、体おんが あまり さがりません。ふだん やく38どの 体おんが、冬みん中は やく33どに なる だけです[3]

でも、心ぞうの うごきは 大きく かわります。ふだんは 1ぷんかんに 55かいくらい うつ 心ぞうが、冬みん中は 1ぷんかんに 9かいくらいまで おそく なります [3]。体おんは あまり さがらないのに、 からだの エネルギーの つかいかたは、しっかり おさえられて いるのです。

体温は5℃しか下がらない

クマの冬眠は、体温があまり下がりません。ふだん約38℃の体温が、冬眠中は約33℃になるだけです[3]

体温は変わらなくても、心臓はゆっくりに

しかし、心臓の動きは大きく変わります。ふだんは1分間に55回ほど打つ心臓が、冬眠中は1分間に9回ほどまで遅くなります。2011年に発表された研究では、代謝そのものが活動時の約25%まで抑えられていることも分かりました[3]。体温をあまり下げなくても、エネルギーの使い方はしっかり抑えられているのです。

長らく「体温を下げるのが冬眠」と考えられてきましたが、2011年に学術誌『サイエンス』に発表されたアメリカクロクマの研究が、この常識を見直すきっかけになりました[3]

この研究によると、クマの冬眠中の体温は約33℃で、平常時の約38℃から5℃程度しか下がりません。一方で心拍数は、平常時の1分間55〜80回から、冬眠中は最低で1分間9回にまで低下し、代謝率は活動時の約25%まで抑えられていました[3]。体温の低下に依存しない代謝抑制のしくみがあることを示した、重要な発見でした。

4. こおって 冬を こす カエルが いる

4. 凍って冬を越すカエルがいる

4. 凍結耐性 ── アメリカアカガエルの驚異

アメリカアカガエルと いう カエルは、なんと からだの 中が こおって しまう ことで 冬を こします。心ぞうも 止まり、 のうも こおって しまいます[4]

はるに なると、こおった からだが とけて、また 元気に うごきだします[4]。からだの 中で さとうの なかまを たくさん 作って、こおりで さいぼうが こわれない ように している ためだと されて います。

心臓も脳も、いったん凍ってしまう

アメリカアカガエルというカエルは、なんと体の中が凍ってしまうことで冬を越します。冬眠中は心臓も完全に止まり、心臓・肺・脳までが凍った状態になります[4]

体の中の「糖」が、細胞を守る

春になると、凍った体がとけて、また元気に動きだします[4]。凍っても細胞が壊れないのは、体の中で大量のグルコース(糖)を作り出し、細胞が凍って傷つくのを防いでいるためだと考えられています。

アメリカアカガエルは、体水分の65〜70%が凍結した状態でも生存できる、きわめて高い凍結耐性を持つことで知られています。冬眠中は心臓が完全に停止し、心臓・肺・脳が凍結しますが、春になるとこれらが解凍され、再び活動を始めます[4]

この耐性を支えているのが、氷の成長を調節する氷核形成物質(タンパク質の可能性が指摘されている)や、細胞内外に大量に蓄積されるグルコースです。グルコースは細胞の脱水をやわらげ、細胞膜やタンパク質を保護する役割を果たしていると考えられています[4]

5. 冬みんしない はずの ねずみを、冬みんに にた じょうたいに する

5. 冬眠しないはずのねずみを、冬眠に似た状態にする

5. 人工冬眠 ── 2020年、理研の発見

マウス(じっけん用の ねずみ)は、本来 冬みんしない どうぶつです。でも 2020年、日本の けんきゅうしゃたちが、 のうの 中の とくべつな さいぼうを しげきする ことで、 マウスを 冬みんに にた じょうたいに する ことに せいこうしました[5]

この さいぼうは「Qニューロン」と なづけられました [5]

本来、冬眠しないマウスで実験

マウス(実験用のねずみ)は、本来冬眠しない動物です。でも2020年、理化学研究所などの研究チームが、脳の中の特別な神経細胞を刺激することで、マウスを冬眠に似た状態にすることに成功しました[5]

「Qニューロン」と名づけられた細胞

この神経細胞は「Qニューロン」と名づけられ、刺激によって引き起こされる低代謝の状態は「QIH」と呼ばれています[5]。冬眠しない動物でも、脳へのはたらきかけで人工的に低代謝状態を作れることを示した、画期的な研究でした。

2020年、筑波大学と理化学研究所の共同研究チームは、冬眠しない動物であるマウスの脳内に、刺激すると低代謝の「冬眠様状態」を誘導する神経細胞群があることを発見しました。この細胞群は「Qニューロン」(Quiescence-inducing neurons)と名づけられ、これによって誘導される状態は「QIH(Q neurons-induced hypometabolism)」と呼ばれています[5]

この発見が注目される理由は、冬眠を行わない哺乳類でも、特定の神経回路を操作することで、人工的に低代謝状態を作り出せる可能性を示した点にあります。研究チームは現在、この状態がさまざまな病気に対してどのような影響を与えるかを調べています[5]

6. 冬みんは、いりょうを かえるか

6. 冬眠は、医療を変えるか

6. 応用 ── 人工冬眠と医療への期待

もし 人を 冬みんの ような じょうたいに できたら、いろいろな ことに やくだつと かんがえられて います。

きゅうきゅうの げんばで、けがを した 人の からだの エネルギーの つかいかたを おさえて、びょういんに つく までの 時間を かせいだり する けんきゅうが すすめられて います[3]

救急の現場や、治療での応用

もし人を冬眠のような状態にできたら、いろいろなことに役立つと考えられています。救急の現場で、大きなけがをした人の体のエネルギーの使い方を抑えて、病院につくまでの時間をかせいだり、脳卒中や心筋梗塞のときの治療のために体を低い温度に保ったりする研究が進められています[3]

臓器の保護や、宇宙飛行への応用も

ほかにも、心臓の手術で臓器を保護する目的や、火星への長期飛行に向けた宇宙機関の研究など、応用の可能性が探られています[3]

冬眠・人工冬眠の研究が注目される理由の1つが、医療への応用可能性です。脳卒中や心筋梗塞の急性期治療における「治療的低体温療法」、心臓外科手術での臓器保護、集中治療室での長期昏睡管理における筋萎縮の防止など、体の代謝を意図的に抑える技術は、すでに医療の一部で応用が模索されています[3]

NASAや欧州宇宙機関(ESA)は、火星への長期宇宙飛行における人工冬眠技術の活用を研究テーマとして掲げています[3]

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

冬みんする どうぶつを、としょかんや どうぶつえんで しらべて みましょう。

あんぜんな ばしょで できる こと

  • 冬みんする どうぶつを、リストに して みる。 クマ、リス、コウモリ、カエルなど、どんな どうぶつが 冬みんするか しらべて みましょう。
  • どうぶつえんの 人に、冬みんの ようすを きいて みる (ようそうだん)。 大人と いっしょに、しいくいんさんに たずねて みましょう。
メモの すすめ

きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「たいしゃって なに?」だけで じゅうぶんです。

冬眠する動物を、図書館や動物園で調べてみましょう。

今日できること

  • 冬眠する動物を、リストにしてみる。クマ、リス、コウモリ、カエルなど、どんな動物が冬眠するか調べてみましょう。
  • 動物園の人に、冬眠の様子を聞いてみる(要相談)。大人と一緒に、飼育員さんにたずねてみましょう。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「トーパーって、冬眠と何がちがうの?」だけでも十分です。

身近な動物園や自然史博物館で冬眠中の動物を観察すると、この記事で扱った内容が身近に感じられます。

手を動かして確かめる

  • 体温・心拍数・代謝率の変化を表にまとめる。クマ・リス・カエルで、冬眠中にどの数値がどれだけ変化するか、比較表を作ってみましょう。
  • 理化学研究所のQニューロン研究について調べる。その後の研究の進展を、公式サイトなどで調べてみましょう。

一次情報にあたる

理化学研究所のプレスリリースには、Qニューロンの発見についての詳しい解説が公開されています。

メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「クマの冬眠中は心拍数が1分間9回」という一文でもかまいません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

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出典について:百科事典・研究機関・専門メディアの公開情報を使っています。

  1. Wikipedia「冬眠」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/冬眠 (冬眠の定義、能動的な代謝低下、動物ごとの体温変化についての解説)
  2. ACORN「冬ごもりする生きものたちの不思議」。 https://acorn.okamura.co.jp/topics/column/2019/02/19/toumin/ (シマリスが冬眠中に目を覚まして食事をとる習性についての解説)
  3. クマ研究ダイジェスト「クマの冬眠は人類医学のヒントになる? Tøien 2011 Science」。 https://kuma-watch.jp/articles/research-digest-008 (2011年のクマの冬眠研究(体温・心拍数・代謝率)と、医療・宇宙開発への応用可能性についての解説)
  4. ナショナルジオグラフィック日本版「凍結して冬を越すカエル、解凍後に元気に生きていられる理由」。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/112200542/ (アメリカアカガエルの凍結耐性についての解説)
  5. 理化学研究所「冬眠様状態を誘導する新規神経回路の発見」(2020年)。 https://www.riken.jp/press/2020/20200612_1/index.html (Qニューロンの発見と、マウスでの人工冬眠様状態の誘導についての公式プレスリリース)

なおした ところ

更新履歴

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