まちの カエルは どこから 来るの?

都会のヒキガエルは、どこから来るのか

都会のヒキガエルは、どこから来るのか ── 生活史と都市の分断

分野:生きもの

東京の まん中に、ビルと マンションばかりの 町が あります。 田んぼも 森も ありません。

その 町の 小学校の 前に、とても 小さな 池が あります。 たたみ 半分 くらいの 大きさで、水草が 植えて あり、金魚も およいで います。

毎年 2月の おわりごろに なると、その 池に アズマヒキガエルが やって きて、 ひもの ような たまごを うんで いきます。

まわりに 水べなんて ないのに、どこから 来るのでしょう。 そして、ふだんは どこに いるのでしょう。

東京都中央区。まわりはビルとマンションで、田んぼも森もありません。 その街の小学校の前に、たたみ半畳ほどの、ほんとうに小さな池があります。水草が植えられていて、金魚が何匹か泳いでいます。

毎年2月の終わりごろになると、その池に アズマヒキガエル が集まってきて、 ひも状の卵を産んでいきます。どこにも水辺なんてないのに、いったいどこから来るのでしょう。 そして、ふだんはどこにいるのでしょう。その2つを追いかけてみました。

東京都中央区。周囲はビルとマンションで、田も森もありません。 その一角にある小学校の前に、たたみ半畳ほどの、ほんとうに小さな池があります。 水草が植えられていて、金魚が何匹か泳いでいます。

毎年2月の終わりごろになると、この池に アズマヒキガエル が集まり、 ひも状の卵を産んでいきます。 歩ける範囲に、水辺と呼べる場所はほとんど見当たりません。

彼らはどこから来るのか。そして、繁殖期以外はどこで暮らしているのか。 都市に残った両生類の生活を追いかけてみました。

読み方を切り替えられます。 画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ小学校高学年むけ中学生むけの 3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。 選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. ビルの まちに カエルが 出た

1. ビルの街に、とつぜんカエルがあらわれる

1. 都心の小さな池に集まる

まわりが ビルだらけの まちに、小さな 小さな 池が あります。 学校の 前に ある、たたみ 半分くらいの 大きさの 池です。 お風ろの ゆぶねと、そんなに かわりません。 水草が はえて いて、金魚が すいすい およいで います。

ふだんは、水が あるだけの しずかな 池です。 ところが 2月の おわりごろに なると、とつぜん カエルが あつまって きます。

しかも、1ぴきや 2ひきでは ありません。 何びきも 何びきも 出て きて、池の 中で 「ぐぐっ ぐぐっ」と 小さな 声で 鳴きます。

ここで ふしぎです。まわりに 田んぼも 森も ありません。 この カエルたちは、どこから 来たのでしょう? そして、ほかの きせつは どこに いるのでしょう?

この 2つを しらべて みました。

東京都中央区。まわりはビルとマンションばかりで、田んぼも川原も森もありません。 そんな街の小学校の前に、たたみ半畳ほどの池があります。 「小さな池」と書きましたが、正確にはお風呂の浴槽くらい。それだけの水たまりです。 水草が入れてあり、金魚が泳いでいます。だれかが世話をしている池です。

ふだんは、ただ水があるだけの静かな池です。 ところが、2月の終わりから3月のはじめにかけて、ここに変化が起きます。 アズマヒキガエルが集まってきて、水の中で「クックックッ」と低い声で鳴き、 ひも状の長い卵を産んでいくのです。

しばらくすると、カエルたちは姿を消します。池にはひも状の卵だけが残り、 やがてオタマジャクシになります。

ここで、ふしぎなことが2つあります。

  • まわりに自然の水辺はないのに、どこから来たのか
  • ふだん池にいないなら、1年のほとんどをどこで過ごしているのか

カエルというと水の中の生きものだと思いがちですが、 じつはこの2つの疑問の答えは、そのイメージとまるでちがう場所にありました。

東京都中央区は、その多くが埋め立て地と市街地で、まとまった自然の水辺や森はほとんど残っていません。 そういう場所にある小学校前の池に、毎年2月の終わりごろ アズマヒキガエルが産卵に集まります。 池といっても、たたみ半畳ほど。面積にすればおよそ0.8平方メートルで、 家庭用の浴槽と大差ありません。水草が植えられ、金魚が数尾泳いでいる、 人が手を入れて維持している小さな水面です。

東京の平地・市街地での産卵期は、おおむね2月中旬から3月上旬です[1]。浅い水辺に多数の個体が集まり、ひも状の卵塊を産みつけます。ただし都内でも標高や地域によって時期はずれ、東京都の解説では、両生類全体としてもっと長い期間にわたって産卵が見られるとされています[4]。産卵が終われば、成体は水辺を離れます。

ここから2つの疑問が出ます。

  1. まとまった緑地も自然の水辺もない都心で、成体はどこで生活しているのか
  2. その場所から、どうやってこの池までたどりつくのか

結論を先に言うと、1つめには比較的はっきりした答えがあり、 2つめにはまだ完全には分かっていない部分があります。 そして両方の答えが、都市に生きものが残るとはどういうことか、という話につながっていきます。

2. どんな カエル?

2. アズマヒキガエルという生きもの

2. アズマヒキガエルという種

まず、この カエルの ことを 知って おきましょう。

アズマヒキガエルは、大きい もので 手の ひらくらいに なる、ずんぐりした カエルです。 かわには ぶつぶつが あって、色は 茶色や はい色。 「ガマガエル」と よばれる ことも あります。

アマガエルの ように ぴょんぴょん とばずに、 のっしのっしと 歩くのが とくちょうです。 そのすがたは、見て いると なんだか おかしくて、少し かわいい。

そして 大じな ちゅうい。 耳の 後ろあたりから、白い しるを 出す ことが あります。 これは 自分を まもる ための どくです。

  • さわった 手で、目や 口を さわらない。
  • さわったら、すぐに 手を あらう。
  • いぬや ねこに くわえさせない。

そっと 見るだけなら だいじょうぶです。

まず、相手を知っておきましょう。

アズマヒキガエルは、東日本に広く分布するヒキガエルのなかまです。 大きいものは体長15cmほどになり、体はずんぐり、皮ふはいぼだらけで、色は茶色や灰色。 いわゆる「ガマガエル」です。

アマガエルのように跳ねるのではなく、のっしのっしと歩くのが特徴です。 動きがゆっくりで、つかまえやすい。それなのに生き残ってこられたのには理由があります。

逃げないかわりに、毒を持っている

目の後ろあたりに、ふくらんだ部分があります。ここは 耳腺(じせん) といって、 敵におそわれると白い液を出します。これが毒です。 犬がくわえて泡をふいた、という話はよく聞きます。

人間が少し触ったくらいで大さわぎになることはありませんが、次のことは守ってください。

  • さわった手で目や口をこすらない
  • さわったら必ず手を洗う
  • ペットに近づけない(犬や猫がくわえた・なめた場合は口を水で洗い、様子がおかしければ動物病院へ)

昔から売られていた「ガマの油」は、このヒキガエルのなかまの分泌物にちなんだ名前です。 つまり、この毒は日本の文化にも顔を出しているわけです。

夜に活動する

ヒキガエルは夜行性で、昼間は石の下や落ち葉の下、土のくぼみなどにじっとしています。 だから、昼間の公園を歩いてもまず見かけません。 「いない」のではなく、「隠れている」のです。

アズマヒキガエル(学名 Bufo japonicus formosus)は、 ヒキガエル科ヒキガエル属で、ニホンヒキガエルの亜種として扱われます。 東日本に自然分布し、東京都では区部から西多摩の山間部まで広く記録されています[2]

体長は大きい個体で15cm前後。皮ふは多数のいぼ(顆粒)におおわれ、体色は褐色から灰褐色。 跳躍は苦手で、四足で歩行するように移動します。

移動をあきらめた生きものの戦略

動きが遅いのに生き延びてきた理由は、防御にあります。 眼の後方にある大きな耳腺と体表の顆粒から、 ブファジエノライド類などを含む白い分泌液を出します。 粘膜に触れれば刺激が強く、犬などが口に入れると中毒を起こすことがあります。

人の場合、皮ふに少し付いた程度で重大な事態になることは通常ありませんが、 目や口の粘膜に触れさせない触った後は手を洗うのは徹底してください。 漢方薬の「蟾酥(せんそ)」や、大道芸で知られる「ガマの油」は、 このなかまの分泌物に由来する名前です。

生活のリズム

  • 夜行性:昼間は石の下、落ち葉の下、土の隙間などに潜む
  • 食性:ミミズ、昆虫、ダンゴムシなどの小動物。動くものに反応して舌で捕らえる
  • 冬眠:晩秋から土中などで冬を越す
  • 乾燥への耐性:カエルとしては比較的乾燥に強く、水辺から離れて生活できる[2]

この最後の性質が、都心で生き残っている理由に直結します。次章で見ていきます。

3. 1年の ほとんどは 水に いない

3. 1年のほとんどは、水の中にいない

3. 陸で暮らす両生類 ── 乾燥への耐性

さて、さいしょの ぎもんの ひとつめ。 ふだんは どこに いるの?

答えは、土の 上や 土の 中です。 水の 中では ありません。

ヒキガエルは、カエルの なかまの 中では かわいた ところに つよい ほうです。 だから 池が なくても、くらして いけます。

くらして いる ばしょは、たとえば こんな ところ。

  • おてらや じんじゃの 木の 下
  • マンションや 学校の うえこみ(土と 木が ある ところ)
  • 人の 家の にわ
  • 公園の しげみ

そういう ばしょで、虫や ミミズを 食べて くらして います。 そして 秋の おわりに なると、土の 中に もぐって、 そのまま 春まで ねむります。これを とうみんと いいます。

つまり ヒキガエルは、1年の ほとんどを 水の ない ところで すごして いるのです。

1つめの疑問「ふだんはどこにいるのか」から答えます。 結論は意外なもので、水の中ではなく、土の上や土の中です。

ヒキガエルは、カエルのなかまとしては乾燥に強いほうです。 そのため、繁殖期以外はほとんど水辺に近寄らず、 都心の人家や寺社の敷地にある小さな緑地でも生活できます[2]

都会でいうと、こんな場所です。

  • 寺や神社の木の下、落ち葉が積もったところ
  • マンションや学校の植え込み
  • 民家の庭、ビルの裏の土がある場所
  • 公園のしげみ

そこでミミズや昆虫を食べ、昼間は土や落ち葉の下でじっとしています。 秋の終わりには土にもぐって冬眠します。

だから「見えない」だけだった

ここが大事なところです。ヒキガエルが街から消えたように見えるのは、 もともと目に見えにくい暮らし方をしているからです。 夜に活動し、昼は土の下。しかも水辺に来るのは1年のうち数日から数週間だけ。

つまり、あの池に集まる数日間が、1年でいちばん目立つ時期なのです。 ふだんは、あなたが歩いている道のすぐわきの植え込みの土の中に、 静かに座っているのかもしれません。

1つめの疑問に答えます。アズマヒキガエルは、 繁殖期以外はほとんど水辺に近寄りません。 生活の場は陸上、具体的には土壌と落葉層です。

東京都のレッドデータブックの記述でも、繁殖期以外はほとんど水辺に近寄らず、 乾燥にも比較的強いため、都心の人家や寺社などの敷地にある小さな緑地に生息している と説明されています[2]

アズマヒキガエルの1年
時期いる場所していること
2月中旬〜3月上旬浅い止水(池など)繁殖・産卵。1年でもっとも目立つ時期
春〜秋緑地の土壌・落葉層夜間に採餌。昼は物陰に潜む
晩秋〜冬土中など冬眠

両生類は一般に皮ふ呼吸に依存し、乾燥に弱いものが多いのですが、 ヒキガエル類は皮ふが厚く、比較的乾燥に耐えます。 この耐性のおかげで、連続した水辺のネットワークがなくても生存できる。 都市に残った両生類がヒキガエルであることが多いのは、偶然ではありません。

裏を返せば、ふだんは人目につかない場所で、地表の数センチ下に静かにいるということです。 「都心に両生類はいない」という思いこみは、 見えないものを、いないと数えていただけかもしれません。

4. 2月、いっせいに 池へ 行く

4. 2月、いっせいに池をめざす

4. 爆発的繁殖とカエル合戦

冬の おわり、まだ さむい 日が つづく ころ。 あたたかい 雨が ふった 夜に、それは おきます。

土の 中で ねむって いた ヒキガエルたちが、 同じ ころに 目を さまして、池を めざして 歩きだすのです。

池に つくと、オスが 先に 来て まって います。 そこへ メスが 来ると、オスたちが 先に 行こうとして あつまって、 1ぴきの メスを とりあう ことも あります。 この さわぎを、むかしの 人は 「カエルがっせん」と よびました。

そして メスは、たまごを うみます。 ヒキガエルの たまごは、まんまるでは なくて、 長い ひもの ような かたちを して います。 1回に 何千こも うみます。大きな メスだと、1万こを こえる ことも あります。

たまごを うみおわると、おとなの カエルたちは また 土の ほうへ 帰って いきます。 池に のこるのは、ひもの ような たまごだけ。 やがて オタマジャクシが 出て きます。

ところで、たまごを うむ 池に 金魚が いても、 へいきなのでしょうか。ふつう、魚は たまごを 食べて しまいます。

じつは ヒキガエルの たまごや オタマジャクシにも、 おとなと 同じ どくが あります。 だから 魚は、食べても にがくて はきだして しまう ことが 多いのです。 あの 池で うまく そだって いるのは、その おかげかも しれません。

そして、水草も 大じです。 ヒキガエルは、長い ひもの ような たまごを 水草に からませる ように して うみます。

見に いくなら

2月の おわりごろ、あたたかい 雨の つぎの 日が ねらい目です。 水の 中を そっと のぞくと、黒い つぶが ならんだ ひもが 見つかるかも しれません。 さわらずに、見るだけに して あげて ください。

冬の終わり、まだ寒い日が続くころ。あたたかい雨が降った夜に、それは起きます。

土の中で冬眠していたヒキガエルたちが目を覚まし、 いっせいに池を目指して歩きだすのです。 東京の平地では、2月中旬から3月上旬ごろがその時期にあたります[1]。同じ都内でも、山のほうでは少し遅くなります。

カエル合戦

先に池へ来て待っているのはオスです。あとからメスが来ると、 オスたちが我先にと群がり、1匹のメスをめぐって団子のようになることがあります。 この光景を、昔の人は 「カエル合戦」と呼びました[3]

数日間、池はにぎやかになります。オスは「クックックッ」という低い声で鳴きます。 カエルの鳴き声というとうるさいイメージがありますが、 ヒキガエルの声は意外に小さく、聞き逃すほどです。

ひも状の卵

メスが産む卵は、丸いかたまりではなく 細長いひも状です。 透明なひもの中に黒い粒が並んでいて、一度に数千個産みます[4]。大きなメスでは1万個を超えることもあります。 水草や枝にからませるように産みつけられます。

産卵が終わると、大人のカエルは池を去り、また陸の生活に戻ります。 池に残るのは卵だけ。やがてオタマジャクシがかえり、 初夏に小さなカエルになって、いっせいに陸へ上がっていきます。

金魚がいる池で、なぜ卵が残るのか

ここでひとつ疑問がわきます。あの池には金魚がいます。 ふつう、魚は卵やオタマジャクシを食べてしまうはずです。

じつは、ヒキガエルの卵とオタマジャクシにも毒があると考えられています。 大人が耳のうしろから出すのと同じ系統の成分です。 そのため、多くの魚は口に入れても嫌がって吐き出すとされています。 金魚のいる池で毎年卵が育っているのは、この性質のおかげかもしれません。

水草にも役割があります。ヒキガエルはひも状の卵を、 水草や枝にからめるようにして産みつけます。 何もない池より、草がある池のほうが産卵しやすいのです。

数千個も産むのはなぜ?

ほとんどが大人になれないからです。卵やオタマジャクシは、魚や水生昆虫、鳥に食べられます。 数千個のうち、次の春に卵を産めるまで育つのはごくわずか。 数で勝負するのが、この生きものの生き残り方です。

繁殖は、気温が上がりはじめる時期の降雨の夜に集中して始まります。 東京の平地での産卵期は、おおむね2月中旬から3月上旬。冬眠から覚めた個体が、 一斉に繁殖池へ移動します[1]。 このような、短期間に集中して繁殖する様式を爆発的繁殖といいます。

カエル合戦(蛙合戦)

先に到着したオスが池で待ち、遅れて来たメスに複数のオスが殺到します。 1匹のメスに何匹ものオスが抱きつき、団子状になることもあります。 この争奪をさして「カエル合戦」と呼びます[3]

オスの鳴き声は「クックックッ」という低く小さな声です。 アマガエルのように大きな鳴のう(音を響かせる袋)を持たないため、 声は小さく、繁殖の合図としての役割は限定的だと考えられています。

卵とその後

  • 卵塊の形:細長いひも状。透明な寒天質の中に黒い卵が並ぶ
  • 卵数:一度に数千個。大きな個体では1万個を超えることもある[4]
  • 産卵場所:流れのない浅い止水。人工の池でもよい
  • その後:孵化してオタマジャクシになり、初夏に変態して上陸する

捕食者のいる池で成立する理由

小さな人工池には金魚などの魚が入っていることがあります。 一般に魚類は卵や幼生の強力な捕食者ですが、ヒキガエル類の場合、 卵と幼生にもブファジエノライド系の毒が含まれると考えられており、 多くの魚にとって忌避される(口に入れても吐き出す)とされています。 金魚のいる池で毎年繁殖が成立している背景には、この化学的な防御があると見られます。

また、水草などの構造物は卵塊をからめる基質になり、 孵化後の幼生にとっては隠れ場所にもなります。 管理された小さな池が繁殖地として機能するのは、 水面の面積よりもこうした要素がそろっているかによります。

数千個という数は、裏返せば生存率の低さを意味します。 卵と幼生の段階で、魚類、ヤゴなどの水生昆虫、鳥類に大量に捕食されます。 成体まで到達するのはごく一部で、多産多死型の生活史です。

ここまでで1つめの疑問は解けました。残るのは、より難しい2つめです。 陸のどこかにいた個体が、どうやってこの池にたどりつくのか。

6. まちの カエルが こまって いる こと

6. 都会のカエルが直面していること

6. 減少要因 ── 分断、交通事故、遺伝子汚染

いま、まちの ヒキガエルは、へって きて います。 東京都は、この カエルを 「気を つけて 見まもる 生きもの」に 入れて います。

へって いる わけは、いくつか あります。

  • ビルを たてる ときに、みどりや 土が へる。
  • 池が うめられて、たまごを うむ ばしょが なくなる。
  • 池まで 歩く とちゅうで、車に ひかれて しまう。

学校の 前の あの 小さな 池は、 その まちに のこった、たいせつな 場しょ なのです。

小さくても、水が あって、まわりに 土が あれば、 生きものは くらして いけます。

残念な話もしておきます。都会のアズマヒキガエルは、少しずつ減っています。 東京都のレッドデータブックにも取り上げられている生きものです[2]

理由として挙げられているのは、次のようなことです。

  • 郊外の宅地開発
  • 23区内の再開発による緑地の改変・減少
  • 繁殖期に移動する個体の交通事故
  • 水辺そのものの減少

もうひとつの、見えにくい問題

さらに、目に見えにくい問題があります。 区部などでは、人の手で持ちこまれた別の地域のヒキガエル(ニホンヒキガエル)と 交ざってしまうことが起きており、遺伝子のかく乱が心配されています[2]

見た目がそっくりでも、地域ごとにちがう特徴を長い時間かけて持ってきました。 よその個体を放すと、その積み重ねが消えてしまいます。 「かわいそうだから逃がしてあげる」が、逆に問題を作ることがあるのです。

だからこそ、学校の前のあの小さな池には意味があります。 コンクリートの街に残った、卵を産める数少ない場所。 小さくても、水があって、まわりに土と落ち葉があれば、生きものは暮らしていけます。

アズマヒキガエルは、東京都のレッドデータブックで取り上げられている種です。 カテゴリーは地域ごとに評価が異なるため、最新の区分は都の資料で確認してください[2]

都の資料が挙げる、生存を脅かす主な要因には次のようなものがあります[2]

アズマヒキガエルの生存を脅かす要因
要因何が起きるか
郊外の宅地開発生息地である林床や草地が失われる
23区内の再開発緑地の改変・減少により、生活の場が細切れになる
繁殖期の交通事故移動個体が轢死する。繁殖に参加できる個体が減る
水辺の減少圃場整備や休耕田化などで、産卵できる止水がなくなる
人為移入個体との交雑持ちこまれた亜種ニホンヒキガエルとの交雑が起きており、遺伝子汚染が懸念される
外来の捕食者アライグマなどによる捕食の被害が指摘されている

遺伝子のかく乱という問題

最後の項目は、見た目では気づけない問題です。 区部や北多摩などでは、人為的に持ちこまれた亜種ニホンヒキガエルとの交雑が起きており、 遺伝子汚染が懸念されています[2]

同じ「ヒキガエル」でも、地域集団は長い時間をかけて、その土地に合った遺伝的な構成を持ってきました。 別の地域の個体を放すと、その構成が混ざり、元に戻せません。 善意の放流が、取り返しのつかない改変になることがあるのです。 この構造は、前に書いた釣りエサのアオイソメの話とまったく同じです。

小さな池の意味

都市に残された小さな人工池は、生きもの側から見れば貴重な繁殖地です。 面積は小さくても、

  • 流れがなく浅い水があること
  • 周囲に土と落葉のある場所が接していること
  • そこまで道路を渡らずに来られること
  • 卵塊をからめられる水草などがあること

これらがそろえば、繁殖地として機能します。 面積は決め手になりません。実際、たたみ半畳ほどの池でも産卵は成立しています。 学校の前の池が毎年使われているということは、 この3条件が、いまのところ成立しているという観察結果でもあります。

7. 見つけたら どう する?

7. 見つけたときに、してよいこと・いけないこと

7. 観察のしかたと、してはいけないこと

カエルや たまごを 見つけたら、どうしたら いいでしょう。

して いい こと

  • そっと 見る。
  • 絵を かく。写真を とる。
  • 日づけと 見た ばしょを メモする。

して は いけない こと

  • もって 帰る。
  • ほかの 池に はなす。
  • たまごを ひっぱる。
  • さわった 手で 目を こする。

とくに 大じなのが、「ほかの 池に はなさない」です。 いい ことを した つもりでも、 その 池の カエルと まざって しまって、あとで こまる ことに なります。

さわったら、かならず 手を あらいましょう。

池でカエルや卵を見つけたとき、どうすればいいか。整理しておきます。

見つけたときの行動
していいことしてはいけないこと
そっと観察する持ち帰る
写真やスケッチを残す別の池や川に放す
日付・場所・数を記録する卵のひもを引っぱる、動かす
さわったら手を洗うさわった手で目や口をこする

いちばん大事なのは 「別の場所に放さない」 です。 助けたつもりでも、その池のカエルの遺伝的な特徴を混ぜてしまったり、 病気を持ちこんだりする可能性があります。

オタマジャクシを教室で育てる場合も、元の池に返すのが原則です。 別の場所に逃がすのはやめてください。

道でカエルを見つけたら

繁殖期に、道路を渡ろうとしているカエルを見かけることがあります。 安全な場所で、車が来ていなければ、 そのカエルが向かっていた方向へそっと動かしてあげてください。 向きを逆にすると、また同じ道路を渡ろうとします。 もちろん、自分の安全がいちばんです。

観察するときの基本方針は、状態を変えずに記録することです。

  • 採集しない:卵塊や個体を持ち帰らない。教室で飼育する場合は、元の池に戻す
  • 移動させない:他の水域に放すと、遺伝的かく乱や、両生類の病原体(ツボカビなど)の 持ちこみにつながる恐れがある
  • 接触後は手を洗う:分泌物の粘膜への付着を避ける。逆に、人の手の薬品や日焼け止めが カエルの皮ふに悪影響を与えることもあるため、不要な接触は避ける
  • 記録する:日付、場所、時刻、天気、個体数、卵塊の数。継続すると意味のあるデータになる
路上の個体を見つけたら

繁殖期の道路上には移動個体がいます。自分の安全が確保できる範囲であれば、 個体が向かっていた側へ移動させます。逆向きに置くと、再び横断を試みます。 ただし、車道に出るような行動は絶対に取らないでください。

カエルの数を毎年記録している市民グループや自治体もあります。 「今年は何匹来た」「卵塊がいくつあった」という記録は、 その池が繁殖地として機能し続けているかを判断する材料になります。 子どもでも取れるデータで、しかも他に取っている人が少ない。 こういう場所に、まだ調べる余地が残っています。

じぶんでも やって みる

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

この 話は、「あの 池の カエル、どこから 来たの?」と 思った ことから 始まりました。 みなさんにも、すぐ できる ことが あります。

  • 2月の おわりごろ、あたたかい 雨の つぎの 日に、 近くの 池を そっと 見に いく。
  • 見つけたら、日づけと 天気を ノートに 書いて おく。 らい年も 同じ ように 書くと、くらべられます。
  • まちの 中で「土と 木が ある ところ」を さがして みる。 そこが 生きものの すみかです。

カエルは 夜に 出て きます。 夜に 出かける ときは、かならず おうちの 人と いっしょに。

次の雨上がりに池をのぞくと、ただの小さな池が、 街の中に残った通り道に見えてくるかもしれません。

  • 2月の終わりごろ、あたたかい雨が降った次の日に、近くの池をのぞいてみる。 ひも状の卵が見つかれば、その池は繁殖地です。
  • 見つけた日付・天気・卵のかたまりの数を記録する。 来年も同じように記録すれば、増えているか減っているかが分かります。
  • 自分の住む街の地図に、土と木がある場所を塗ってみる。 公園、寺社、学校、大きな植え込み。それが生きもののすみかの地図になります。
  • 塗った場所のあいだに、大きな道路があるかを見る。 そこが、生きものにとっての「渡れない川」です。

カエルは夜に活動します。夜に外を歩くときは、必ず大人といっしょに行ってください。

両生類の観察は、市民が取ったデータが実際に役立つ数少ない分野です。 高価な機材もいりません。必要なのは、同じ場所を毎年見に行くことだけです。

やってみる

  1. 定点観察:同じ池を、毎年同じ時期に見る。日付・天気・気温・卵塊数・成体数を記録する
  2. 地図を作る:住んでいる区の地図に緑地と水辺を塗り、道路で分断されている場所を確かめる
  3. 比較する:別の区や郊外の池と、産卵の時期や規模を比べてみる

調べるときの入口

検索するときは「アズマヒキガエル 産卵」「両生類 都市 分断」「繁殖池 回帰」のように、 生きものの側からと、都市の側からの両方で当たると資料が見つかりやすくなります。

メモのすすめ

「2月28日、雨のあと、卵のひも3本」。この程度の1行でかまいません。 10年続けば、他にどこにもないデータになります。 この記事も、池をのぞいた1回の観察から始まっています。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。用語の定義など、短く引用した部分は、どこから引いたかを示しています。 もっと正確に知りたいときは、下の情報にあたってください。 リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

  1. 三鷹市「アズマヒキガエル(東蟇蛙)ヒキガエル科」 https://www.city.mitaka.lg.jp/c_service/018/018625.html (東京での産卵時期、産卵期以外の生活、夜行性)
  2. 東京都レッドデータブック「アズマヒキガエル」 https://tokyo-rdb.metro.tokyo.lg.jp/ (都内の分布、都心の小さな緑地での生息、減少要因、人為移入個体との交雑)
  3. 神奈川県大井町「アズマヒキガエルの繁殖行動(カエル合戦)を観察する」 大井町ホームページ (カエル合戦の様子)
  4. 東京いきもの調査団(東京都)「春の東京の両生類 5種の紹介」 https://www.ikimono.metro.tokyo.lg.jp/handbook/tokyo-spring-amphibia/ (分布、卵塊の形と卵数、産卵する水域)
  5. H. Ishii et al., “Orientation of the Toad, Bufo japonicus, toward the Breeding Pond”, Zoological Science 12(4), 475 (1995). doi:10.2108/zsj.12.475 (視覚を奪った個体は池に到達でき、嗅覚を失った個体は到達できなかったという移動実験)
  6. “A toad's journey home: towards elucidating the neural and sensory basis of amphibian navigation”, Proceedings of the Royal Society B 292 (2025). PubMed の書誌情報 (両生類のナビゲーション研究の現在地をまとめた総説)
  7. 東京都建設局「アズマヒキガエル」 東京都建設局のページ (都内の河川・水辺の生きものとしての解説)

なおした ところ

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