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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

めんえきは、どうやって「てき」を みわけて いるの?

免疫は、どうやって「敵」を見分けているのか

免疫は、どうやって「敵」を見分けているのか

分野:からだ

からだは、まだ であった ことの ない ウイルスが 入って きても、それに たいこうする じゅんびを、あらかじめ ととのえて いる。

どうして、そんな ことが できるのだろう。

体は、まだ出会ったことのないウイルスが入ってきても、それに対抗する準備を、あらかじめ整えている。

どうして、そんなことができるのだろう。

私たちの体は、まだ出会ったことのない未知のウイルスが侵入してきても、あらかじめ対抗する準備ができている。

なぜそんなことができるのか。その謎を解いた日本人研究者の発見から、自然免疫の力技、獲得免疫の精密さ、そして一度戦った敵を忘れないメモリー細胞の仕組みまでをたどる。

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1. あいてが だれでも、まず 食べて しまう

1. 相手が誰でも、まず食べてしまう

1. 好中球とマクロファージが、力ずくで初期防衛する

ばいきんが からだに 入ると、まっさきに かけつけるのが 「こうちゅうきゅう」と いう 白けっきゅうの なかまだ。あいてが なんの ばいきんかは たしかめず、見つけしだい 食べて しまう[1]

「マクロファージ」も おなじように、からだに 入って きた、あぶなそうな あいてを 見つけると、どんどん のみこんで しまう。まるで、あやしい ものを 見つけしだい とりおさえる、パトロールカーの ような ものだ。ただし ほんとうは、車では なく、からだの 中を うごきまわる、目に 見えない くらい 小さな さいぼうだ[1]

細菌が体に入ると、まっさきに駆けつけるのが「好中球」という白血球の仲間だ。相手が何の細菌かはたしかめず、見つけしだい食べてしまう[1]

「マクロファージ」も同じように、体に入ってきた、危なそうな相手を見つけると、どんどん飲みこんでしまう。まるで、あやしいものを見つけしだい取りおさえる、パトロールカーのようなものだ。ただし本当は、車ではなく、体の中を動きまわる、目に見えないくらい小さな細胞だ[1]

病原体が体内に侵入すると、最も早く現場に駆けつけるのが好中球である。好中球は白血球の中で最も数が多い細胞の一つで、病原体を貪食する細胞でもあり、感染部位に真っ先に移動して病原体を食べ、酵素で消化・殺菌する[1]

マクロファージも同様に、体内に侵入した異物を非特異的に(相手の種類を問わず)貪食する。これらの働きは「自然免疫」と呼ばれ、生まれつき備わった、迅速だが相手を選ばない初期防衛にあたる[2]

2. たたかうより、じょうほうを つたえる

2. 戦うより、情報を伝える

2. 樹状細胞が、獲得免疫への橋渡しを担う

「じゅじょうさいぼう」も あいてを 食べる。でも それより 大きな やくわりは、食べた あいての とくちょうを、つぎの 部たいに つたえる 「じょうほうやく」だ[1]

つたえられる さきは、「T さいぼう」と いう、もっと せいみつに たたかう 部たいだ。まだ その あいてと 出会った ことの ない T さいぼうを、はじめて うごかす ことが できる[1]

「樹状細胞」も相手を食べる。でもそれより大きな役割は、食べた相手の特徴を、次の部隊に伝える「情報役」だ[1]

伝えられる先は、「T細胞」という、もっと精密に戦う部隊だ。まだその相手と出会ったことのないT細胞を、はじめて動かすことができる[1]

樹状細胞もマクロファージと同様に異物を貪食するが、大きな特徴は、まだ抗原と出会ったことのないナイーブT細胞を活性化できる点にある[1]

樹状細胞は取り込んだ異物の断片をリンパ節でT細胞に提示し(抗原提示)、これを引き金にT細胞が活性化する。この働きにより、樹状細胞は自然免疫と、より特異性の高い獲得免疫とをつなぐ橋渡し役とされている[2]

3. 1つの さいぼうが、1しゅるいの てきだけを おぼえる

3. 1つの細胞が、1種類の敵だけを覚える

3. 抗原受容体が、精密に敵を識別する

T さいぼうや、「B さいぼう」と いう べつの なかまは、それぞれ じぶんだけの 「かぎ」を もって いる。その かぎに ぴったり あう 「かぎあな」を もつ あいてだけに、はたらきかける ことが できる[1]

B さいぼうは、あいてに ぴったり くっつく 「こうたい」と いう ものを つくりだす。こうたいが くっつくと、あいては うごきを とめられたり、こうげきされたり する[1]

T細胞や、「B細胞」という別の仲間は、それぞれ自分だけの「鍵」をもっている。その鍵にぴったり合う「鍵穴」をもつ相手にだけ、はたらきかけることができる[1]

B細胞は、相手にぴったりくっつく「抗体」というものをつくりだす。抗体がくっつくと、相手は動きを止められたり、攻撃されたりする[1]

T細胞・B細胞はそれぞれ固有の「抗原受容体」を細胞表面に持つ。B細胞は抗原の分子構造に直接結合できるのに対し、T細胞は主に、HLAによって細胞表面に示された抗原の断片を認識する。どちらも、特定の相手だけに反応する、鍵と鍵穴のような特異性の高い仕組みである[3]

B細胞の主な役割は、抗原に特異的に結合する「抗体」を作り出すことである。抗体が抗原に結合すると、病原体を直接無力化したり、他の免疫細胞による攻撃の目印になったりする[3]

4. なぜ 100おくも の かぎを 作れるのか

4. なぜ100億もの鍵を作れるのか

4. 利根川進が、抗体多様性の遺伝的原理を解明した

1つ 1つの あいてに あわせて、べつべつの いでんしを もって いたら、からだの 中には いでんしが 入りきらない。では、100おく しゅるいも の かぎは、どうやって 作られて いるのだろう[4]

日本人の 研究しゃ、とねがわ すすむは、いでんしの 一ぶひんを、さいころの 目のように くみかえる ことで、すくない ぶひんから たくさんの しゅるいの かぎを 作れる ことを あきらかに した。この 発見で、1987年に ノーベルしょうを うけとった[4]

1つ1つの相手に合わせて、別々の遺伝子をもっていたら、体の中には遺伝子が入りきらない。では、100億種類もの鍵は、どうやって作られているのだろう[4]

日本人の研究者、利根川進(とねがわ すすむ)は、遺伝子の部品を、サイコロの目のように組み替えることで、少ない部品からたくさんの種類の鍵を作れることを明らかにした。この発見で、1987年にノーベル賞を受け取った[4]

抗体の種類は100億にも達すると考えられているが、その一つひとつに対応する遺伝子が個別に存在するわけではない。少数の遺伝子断片から、これほど多様な抗体がどう生まれるのかは、長く謎とされていた[4]

利根川進は、抗体の可変部位をコードする複数の遺伝子断片(V・D・Jと呼ばれる領域)が、細胞の成長過程でランダムに組み合わさり、遺伝的組換えを起こすことを実験的に証明した。限られた部品の組み合わせによって、天文学的な数の抗体パターンが生み出される仕組みであり、この発見により1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した[4]

5. てきを 見分ける まえに、「じぶん」を しって おく

5. 敵を見分ける前に、「自分」を知っておく

5. HLAという目印で、自己と非自己を区別する

てきを 見分けるには、まず 「じぶんの めじるし」を しって いなければ ならない。からだの ほとんどの さいぼうの ひょうめんには、「HLA」と いう めじるしが ついて いる[5]

この めじるしの くみあわせは、人に よって ほとんど ちがう。めんえきは、この めじるしや、てきの とくちょうを てがかりに して、「じぶん」と 「じぶんでは ない もの」を 見わけて いる[5]

敵を見分けるには、まず「自分の目印」を知っていなければならない。体のほとんどの細胞の表面には、「HLA」という目印がついている[5]

この目印の組み合わせは、人によってほとんど違う。免疫は、この目印や、敵の特徴を手がかりにして、「自分」と「自分ではないもの」を見分けている[5]

免疫が非自己を攻撃するには、その前提として「自己」を認識できなければならない。赤血球を除くほぼすべての細胞の表面には、HLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる分子が発現している[5]

HLAは複数の遺伝子座それぞれに数十種類の型があり、その組み合わせは数万通りともいわれ、個人ごとにほぼ固有の識別符号として機能する。免疫細胞はこの目印の有無や違いをもとに、自己と非自己を識別している[5]

6. いちど たたかった てきは、わすれない

6. 一度戦った敵は、忘れない

6. メモリー細胞が働き、ワクチンが効く

いちど たたかった てきの じょうほうは、「メモリーさいぼう」と いう さいぼうに のこされる。おなじ てきが もういちど からだに 入って くると、メモリーさいぼうは、1かいめよりも はやく、つよく たたかう ことが できる[6]

よぼうせっしゅ(ワクチン)は、この しくみを りようした ものだ。てきを よわめたり、うごけなく したり した ものを さきに からだに 入れて おく ことで、メモリーさいぼうに じょうほうを のこして おく[6]

一度戦った敵の情報は、「メモリー細胞」という細胞に残される。同じ敵がもう一度体に入ってくると、メモリー細胞は、1回目よりも速く、強く戦うことができる[6]

予防接種(ワクチン)は、この仕組みを利用したものだ。病原体を弱めたり、活動できないようにしたりしたものを先に体に入れておくことで、メモリー細胞に情報を残しておく[6]

一度目の感染では、抗体を作れるようになるまでに数日を要する。しかしこのとき作られたメモリーB細胞・メモリーT細胞は、同じ抗原の情報を長期にわたって保持する[6]

同じ抗原が再び侵入すると、メモリー細胞は一次応答よりもはるかに速やかに、かつ大量に抗体産生細胞へと分化する。予防接種は、弱毒化・不活化した病原体などをあらかじめ投与してこの一次応答を経験させ、メモリー細胞を形成させることで、実際の感染時に迅速な二次応答を引き出す仕組みである[6]

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

母子手帳(ぼしてちょう)や、よぼうせっしゅの おしらせには、いままで うけて きた ワクチンの きろくが のこって いる。おうちの 人と いっしょに、見て みたい ところだ。

母子手帳や、予防接種のお知らせには、今まで受けてきたワクチンの記録が残っている。家の人といっしょに、見てみたいところだ。

母子手帳や予防接種のスケジュール表には、これまでに受けたワクチンの記録が残っている。1回で終わるものと、複数回の接種が必要なものがあるのはなぜだろうか。メモリー細胞の仕組みと結びつけて考えてみるのもおもしろい。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. ヤクルト「健康管理ラボ/免疫細胞の種類と役割とは?」。 https://www.yakult.co.jp/shirota/immunity/immune-cells-types-and-roles/ (好中球が白血球で最も多い貪食細胞であること、マクロファージが異物を貪食し情報をT細胞に伝えること、樹状細胞がナイーブT細胞を活性化できること、T細胞・B細胞・NK細胞それぞれの役割)
  2. マクロフィ「自然免疫・獲得免疫とは?わかりやすく免疫の仕組みを解説します!」。 https://www.macrophi.co.jp/special/1435/ (自然免疫が生まれつき備わった迅速な防御であること、獲得免疫が病原体の情報を記憶し再侵入時に速やかに対処する学習型の防御であること、樹状細胞が自然免疫と獲得免疫の橋渡し役であること)
  3. 滋賀医科大学病理学講座「免疫」。 https://www.shiga-med.ac.jp/~hqpatho2/lecture3.html (T細胞・B細胞が抗原受容体によって特異的に抗原を認識すること、B細胞が抗体を作り抗原に結合させることで無力化・攻撃の目印にすること)
  4. くまもと免疫学「抗体ができるメカニズムが解明されるまで」、子供の科学「【ノーベル医学・生理学賞】利根川進先生の研究」。 https://www.immunology-kumamoto.com/免疫学の昔話/抗体ができるメカニズムの解明/ https://www.kodomonokagaku.com/read/28023/ (利根川進が抗体の可変部位をコードする遺伝子断片(V・D・J領域)の組換えにより抗体の多様性が生まれることを実験的に証明し1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞したこと、抗体の種類数が100億にも達すると考えられていること)
  5. HLA研究所「HLAについて」。 https://hla.or.jp/about/ (HLAが赤血球を除くほぼ全ての細胞に発現していること、複数の遺伝子座の組み合わせにより個人ごとにほぼ固有の型となること、自己と非自己の識別に関与する重要な免疫機構であること)
  6. 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「メモリーB細胞が再感染から速やかに体を守る仕組みを解明」。 https://www.jst.go.jp/pr/announce/20130712/index.html (メモリーB細胞が、1回目の感染よりも再感染時に速やかに大量に抗体産生細胞へ分化すること、ワクチンがこの一次応答・メモリー細胞形成の仕組みを利用していること)

なおした ところ

更新履歴

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