1. カナリアが おしえて くれた こと
1. カナリアが教えてくれたこと
1. 1896年、ハルデーンが提案した「鳥を連れていく」方法
むかし、せきたんを ほる「たんこう」と いう しごとばでは、 目に 見えない どくの ある ガスで、じこが おきる ことが ありました。
そこで 人びとは、カナリアという 小さな 鳥を いっしょに つれて いく ことに しました。カナリアは、 どくの ある ガスに とても 気づきやすい 鳥だったのです [1]。
カナリアが なきやんだり、とまり木から おちたり したら、 それは きけんの サインでした。人びとは それを 見て、 すぐに にげる ことが できたのです。
イギリスでは昔、石炭を掘る炭鉱で、目に見えない有毒ガスによる事故がたびたび起きていました。1896年、炭鉱で大きな爆発事故が起きたあと、イギリスの学者ジョン・スコット・ハルデーンは、炭鉱に鳥を連れていくことを提案しました[1]。
選ばれたのはカナリアでした。カナリアは、人間よりも呼吸のしくみが敏感で、有毒ガスの影響を早く受けます[1]。
危険を知らせる歌声
炭鉱で働く人たちは、カナリアが鳴きやんだり、とまり木から落ちたりする様子を見て、危険に気づいて逃げることができました。この方法は長く使われましたが、1986年12月、イギリスは炭鉱でのカナリア使用を正式にやめました[1]。
イギリスでは19世紀、石炭を掘る炭鉱で、目に見えない有毒ガス(一酸化炭素など)による事故が相次いでいた。1896年、南ウェールズのタイロースタウン炭鉱で爆発事故が起きたのち、スコットランドの生理学者ジョン・スコット・ハルデーンは、炭鉱に「鳥またはネズミ」を連れていくことを提案した[1]。
選ばれたのはカナリアだった。カナリアは、鳥に特有の呼吸のしくみを持つため、有毒ガスが体の中をめぐるのが人間より速く、症状が命にかかわるレベルに達するはるか前から苦しみはじめる[1][7]。
危険を知らせる歌声
炭鉱夫たちは、カナリアがさえずるのをやめたり、とまり木から落ちたりする様子を見て、危険を察知して避難した。この方法は長く使われ続け、イギリスが炭鉱でのカナリア使用を正式に廃止したのは、1986年12月のことだった[1]。
2. なぜ 生きもので わかるの?
2. なぜ生きものでわかるの?
2. 指標生物というしくみ
カナリアの ように、かんきょうの へんかに びんかんな 生きものを「指標生物」と いいます。
どんな 生きものが、どれくらい いるかを 見るだけで、きかいを つかわなくても、かんきょうの ようすが わかるのです。
生きもの じしんが、いわば「いきた ものさし」なのです。
カナリアのように、環境の変化に敏感な生きものや、決まった環境でしか生きられない生きものを「指標生物」と呼びます。
指標生物がいるかいないか、多いか少ないかを見れば、機械を使わなくても、環境の様子をだいたい知ることができます[2]。
生きもの自体が「生きたものさし」の役目をしているのです。
カナリアのように、特定の環境条件に敏感に反応する生きものを「指標生物」と呼ぶ。指標生物がいるかいないか、あるいは多いか少ないかを調べることで、専門的な機械を使わなくても、環境の状態をおおまかに推測できる[2]。
たとえば、汚れた水でも平気な生きものと、きれいで酸素の多い水を好む生きものがいれば、その川に何がすんでいるかを見るだけで、水のきれいさの見当がつく。生きもの自体が、いわば「生きたものさし」の役割をはたしているのだ。
3. 川に すむ 虫で 水を しらべる
3. 川にすむ虫で水質を調べる
3. 全国水生生物調査 ── 川底の虫で水質を測る
日本には、川に すむ 虫を しらべて、水の きれいさを はかる ちょうさが あります。
石を ひっくりかえすと、いろいろな 虫が 見つかります。きれいな 水には カワゲラという 虫が すみ、きたない 水には べつの 虫が すんで いるのです [3]。
この ちょうさは、せんもんかで なくても、しょうがくせいでも さんかできます。まいとし、たくさんの 人が さんか して います[4]。
日本では1984年から、環境省と国土交通省が「全国水生生物調査」を続けています[4]。川底の石をひっくり返して見つかる虫の種類によって、水のきれいさを4つの階級に分ける調査です[3]。
虫の種類で分かる水のきれいさ
きれいな水にはカワゲラやヒラタカゲロウ、少し汚れた水にはコガタシマトビケラ、汚れた水にはミズカマキリやタイコウチ、とても汚れた水にはセスジユスリカなどがすんでいます[3]。
この調査のよいところは、専門家でなくても、小中学生を含めただれでも参加できることです。2024年度は全国でおよそ3万8千人が参加しました[4]。
日本では昭和59年度(1984年)から、当時の環境庁(現・環境省)と建設省(現・国土交通省)が「全国水生生物調査」を続けている[4]。川底の石をひっくり返して見つかる水生昆虫の種類によって、水質を4つの階級に分ける調査だ[3]。
虫の種類で分かる水のきれいさ
Ⅰ級(きれいな水)の指標はカワゲラ、ヒラタカゲロウ、ナガレトビケラなど。Ⅱ級(少し汚れた水)はコガタシマトビケラ、オオシマトビケラ、ヒラタドロムシなど。Ⅲ級(汚れた水)はミズカマキリ、タイコウチ、ミズムシなど。 Ⅳ級(大変汚れた水)はセスジユスリカ、チョウバエ、サカマキガイなどだ[3]。
この調査の大きな特徴は、専門家だけでなく、小中学生を含む誰でも参加できる点にある。令和6年度は全国で約3万8千人が参加した[4]。
4. じっけんしつの ミジンコ
4. 実験室のミジンコ
4. ミジンコの急性遊泳阻害試験 ── 化学物質の安全性を調べる
川や 海の 生きものだけで なく、実験室でも、 しひょうと なる 生きものが つかわれます。
その ひとつが「ミジンコ」です。ミジンコは、からだが ちいさくて 透明で かんさつしやすく、わずかな かがくぶっしつにも 敏感に 反応します [6]。
あたらしい かがくぶっしつが、ミジンコに どれくらい どくと なるかを しらべて いるのです。
指標生物は、川や海の「今の状態」を調べるだけでなく、「これから使う化学物質がどのくらい強い毒性を持つか」を事前に確かめるためにも使われています。代表例がミジンコです。
OECD(経済協力開発機構)は1984年、「ミジンコ急性遊泳阻害試験」という決まった試験方法を採択しました[5]。生まれたばかりのミジンコを、いろいろな濃さの化学物質にさらし、泳げなくなる数を調べる試験です。2004年には、試験の時間が24時間から48時間に延ばされました[5]。
ミジンコが選ばれる理由は、体が小さく透明で観察しやすいこと、増えるのが速いこと、そしてわずかな化学物質にも敏感に反応することです[6]。
指標生物は、川や海の「今の状態」を調べるだけでなく、「これから使う化学物質がどのくらい強い毒性を持つか」を事前に確かめるためにも使われている。代表例がミジンコだ。
OECD(経済協力開発機構)は1984年4月、「ミジンコ急性遊泳阻害試験」という試験方法(テストガイドライン202)を採択した[5]。生まれて24時間以内の若いミジンコを、濃度の異なる化学物質にさらし、泳げなくなる(遊泳阻害)個体の割合を調べる試験だ。2004年の改訂では、試験時間が24時間から48時間に延長された[5]。
ミジンコが選ばれる理由は、体が小さく透明で観察しやすいこと、短い世代時間で増えるのが速く実験室で育てやすいこと、そしてわずかな化学物質の濃度にも敏感に反応することにある[6]。
5. 生きもので わかる こと・わからない こと
5. 指標生物でわかること・わからないこと
5. 指標生物の強みと限界
生きものを 見るだけで、かんきょうの ようすが わかるのは べんりです。でも、生きものだけで すべてが わかる わけでは ありません。
きせつや ばしょ、しらべる 人に よって、けっかが かわる ことも あります。
だから、生きものを 見る しらべかたと、きかいを つかった せいみつな しらべかたは、おたがいを おぎないあって います。
指標生物による調査には、専門的な機械がなくても、多くの人がすぐに参加して環境の様子を知ることができるという強みがあります。実際に川に入って生きものを観察する経験そのものにも、大きな価値があります。
季節や人によって変わる結果
ただし、限界もあります。水生生物調査で分かるのは水のきれいさの大まかな傾向で、どんな化学物質がどれくらい入っているかまでは分かりません。季節や場所、調べる人によって、結果が変わることもあります。
だからこそ、指標生物による簡単な調査と、機械による細かい測定は、おたがいを補い合う関係にあります。
指標生物による調査には、専門的な機械がなくても、多くの人がすぐに参加して環境の様子を知ることができるという強みがある。全国水生生物調査のように、市民が実際に川に入り、生きものを観察する経験そのものにも大きな価値がある。
季節や人によって変わる結果
ただし、限界もある。水生生物調査で分かるのは水質の大まかな傾向であり、特定の化学物質の濃度までは分からない。季節や採集場所、判定する人によって結果にばらつきが出ることもある。
だからこそ、指標生物による簡易な調査と、機械による精密な測定は、互いを補い合う関係にある。どちらか一方だけで環境のすべてが分かるわけではない。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
じぶんでも、身の まわりの 生きものを かんさつして みましょう。
あんぜんな ばしょで できる こと
- 家の まわりの 生きものを かんさつして みる。 ダンゴムシは どんな ばしょを このむか、かぞくと さがして みましょう。
- 大人と いっしょに、ちかくの 川や 池で 石を ひっくりかえして、虫を さがして みる。 すべりやすい 石には 気を つけて、大人と いっしょに やりましょう。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「カナリアは、どくガスに 気づきやすい 鳥だった」だけで じゅうぶんです。
自分でも、身の回りの生きものを観察してみましょう。
今日できること
- 家の周りの生きものを観察してみる。ダンゴムシやアリは、どんな場所を好むか、家族とさがしてみましょう。
- 大人といっしょに、近くの川や池で石をひっくり返して、虫をさがしてみる。すべりやすい石には気をつけて、大人といっしょにやりましょう。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「全国水生生物調査って、いつ参加できるの?」だけでも十分です。
指標生物という視点を持つと、身の回りの環境がより身近に感じられます。
手を動かして確かめる
- 近所の川や池で、環境省の「全国水生生物調査」がいつ開催されるか調べてみる。自治体や地域の自然観察会が主催していることも多い。
- 家の周りの身近な生きもの(ダンゴムシ、アリなど)が、どんな環境を好むか観察してみる。湿った場所、日なた、落ち葉の下など、条件を変えて比べてみましょう。
一次情報にあたる
環境省の報道発表資料には、全国水生生物調査の毎年の参加人数や結果がまとめられています。
気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「ミジンコの試験は1984年に決められた」という一文でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:Wikipedia、政府機関(環境省)、OECDの公式資料、科学ジャーナリズムのサイトを使っています。
- "What Happened to the Canary in the Coal Mine?" - Smithsonian Magazine。 https://www.smithsonianmag.com/smart-news/what-happened-canary-coal-mine-story-how-real-life-animal-helper-became-just-metaphor-180961570/ (1896年のジョン・スコット・ハルデーンによる提案、カナリアの呼吸のしくみ、1986年12月のイギリスでの使用廃止についての解説)
- 指標生物 - Wikipedia(日本語版)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/指標生物 (指標生物の一般的な定義についての解説)
- 「水生生物による簡易水質調査」の指標生物と水質階級 - 環境省。 https://www.env.go.jp/press/files/jp/1303.html (全国水生生物調査で使われる水質階級Ⅰ〜Ⅳと、各階級の代表的な指標生物についての解説)
- 令和6年度全国水生生物調査の結果及び令和7年度の調査の実施について - 環境省。 https://www.env.go.jp/press/press_05029.html (全国水生生物調査の実施主体、令和6年度の参加人数についての解説)
- Test No. 202: Daphnia sp. Acute Immobilisation Test - OECD(DOI経由)。 https://doi.org/10.1787/9789264069947-en (1984年4月の試験方法の採択、2004年の改訂内容についての解説)
- "Daphnia as a model organism to probe biological responses to nanomaterials" - Frontiers in Toxicology(学術論文)。 https://www.frontiersin.org/journals/toxicology/articles/10.3389/ftox.2023.1178482/full (ミジンコが生態毒性試験に使われる理由。透明な体・短い世代時間・汚染物質への感受性についての解説)
- "Cage for reviving canary" - Science Museum Group Collection。 https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co8412250/cage-for-reviving-canary (カナリアの呼吸器の解剖学的特性により、有毒ガスの症状が人間より早く現れることについての解説)
なおした ところ
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