1. かみは、みずに ぬれると どうなるの?
1. 紙は、なぜ濡れると弱くなるのか
1. 濡れると弱くなる紙 ── 水素結合という接着
かみは、とても ほそい きの せんいが、たくさん あつまって できて います。この せんいどうしが、おたがいを つかまえて いるので、かみは かたちを たもてます。
ところが、みずが しみこむと、この つかまえる ちからが よわく なります。かみが とけて しまうのでは ありません。せんいどうしの つながりが、ゆるむのです。
ティッシュが すぐ やぶれるのは、そのためです。では、キッチンペーパーは、どうして ゆるまないのでしょう。
2. ぬれても やぶれない くすりは、いつ できたの?
2. 1957年1月8日、実験室の最初の試作
2. 濡れ強度を与える樹脂 ── PAEの誕生
ぬれた かみを じょうぶに する くすりが あります。この くすりの ひとつ(PAE)を、さいしょに じっけんしつで つくって みた ひが、きろくに のこって います。1957ねん 1がつ 8日で、アメリカでした[1]。
くすりは、せんいと せんいを、みずが しみても はなれにくいように、しっかり つなぐ はたらきを します。ロープの あいだに もう1ぽん ひもを むすぶような ものです。ただし、ほんとうの くすりは ひもではなく、ちいさな つぶが せんいに くっつくのです。
この くすりは、タオルや ティッシュなど、ぬらして つかう かみに つかわれて います[2]。
濡れた紙を丈夫にする薬品は、湿潤紙力増強剤と呼ばれます。その代表がポリアミドアミン・エピクロロヒドリン樹脂(PAE)で、最初の実験室での試作は1957年1月8日、アメリカのハーキュリーズ社の研究者2人が行ったと、総説は伝えています[1]。特許は1960年2月23日に成立しました。
薬品のはたらきは、繊維どうしを化学的につなぐ「架橋」です。水が入っても、つながりが崩れにくくなります。タオル、ティッシュ、ワイプなど、濡れたり乾いたりを繰り返す紙製品に使われる、と説明されています[2]。
ただし、キッチンペーパーに使われている薬品は、製品ごとに異なります。
この課題に答えた樹脂が、ポリアミドアミン・エピクロロヒドリン樹脂(PAE)である。総説によれば、最初の実験室での試作は1957年1月8日、米国のハーキュリーズ社(Hercules Powder Company)の研究者2人が行い、特許は1960年2月23日に成立した[1]。
PAEは、樹脂中のアゼチジニウム基がセルロースのカルボキシ基と反応し、繊維に結びつくと説明される[2]。こうして繊維間を化学的に架橋するため、水が入っても網目が崩れにくい。ところが同じ総説は、PAEと繊維の相互作用の仕組みは完全には解明されていないとも述べる[1]。定説に細部の研究が残る、と読むのが妥当である。
用途は、濡らして使うタオル・ティッシュ・ワイプなど、濡れと乾燥を繰り返す紙製品である[2]。ただし、キッチンペーパーに使われる薬品は製品ごとに異なる。
3. くすりだけで、じょうぶに なるの?
3. 薬品だけではない ── 厚みと重ね方
3. 製品の作りの違い ── 不織布とエンボス2枚重ね
くすりの ほかに、つくりかたにも くふうが あります。ふくいけんの しょうひせいかつ センターが、25しゅるいの キッチンペーパーを しらべました[3]。
「ふしょくふ」や「フェルト」と かいて ある ものは、ひょうめんの せんいに すきまが あって、きりくちが あつぼったい ものでした。かいて ない ものは、でこぼこの かたが ついていて、2まい かさねの ものが おおかったそうです。
かみを あつく したり、かさねたり して、ぬれても やぶれにくく した しょうひんも あります[3]。
福井県消費生活センターは、令和4年度に25銘柄のキッチンペーパーを買って調べました。材質の表示があった22銘柄のうち、20銘柄はパルプだけでできていました。残る2銘柄は、洗って数回使えるとうたい、パルプにポリプロピレンなどを合わせていると考えられる、とされています[3]。
作りにも違いがありました。「不織布」「フェルト」と表示された銘柄は、表面の繊維にすき間があり、断面が分厚いものでした。表示のない銘柄は、表面に凹凸(エンボス)の加工があり、2枚重ねのものが多かったといいます[3]。
製紙各社は、既存品より厚手にして濡れても破れにくくした商品を出している、とも説明されています[3]。なお、凹凸加工がどれだけ濡れた強さを上げるかは、今回の資料には書かれていません。
では、実際の製品はどう作られているのか。福井県消費生活センターが令和4年度に25銘柄を試買した報告によれば、材質表示のあった22銘柄のうち20銘柄がパルプのみで、残る2銘柄は、洗って繰り返し使えるとうたい、パルプにポリプロピレン等を使うと考えられる[3]。この割合はこの25銘柄での値で、市販品全体の割合ではない。
構造も二手に分かれた。「不織布」「フェルト」の表示がある銘柄は表面の繊維に隙間があって断面が厚く、表示のない銘柄は表面にエンボス(凹凸加工)があり、2枚重ねが多かった[3]。製紙各社は、既存製品より厚手にして濡れても破れにくくする工夫を施した商品を出しているという[3]。
ただし、エンボスが濡れ強度をどれだけ高めるかは、参照した資料からは分からない。エンボスは、この報告では厚み・2枚重ねの文脈で述べられており、強さの原因と決めつけないほうがよい。なお、キッチンペーパーの表示や定義を定める法令はない、と報告は述べる[3]。
4. しぼって しらべたら、どうだった?
4. 25銘柄を絞ってみた試験の結果
4. 絞り試験の結果 ── 25銘柄中23銘柄が83〜100点
ふくいけんの しけんでは、キッチンペーパーを みずに つけて、りょうてで ぎゅっと しぼりました。ひろげて、やぶれぐあいを 目で 見て、てんすうを つけました[3]。
25しゅるいの うち、23しゅるいは 83〜100てん。とても やぶれにくい けっかでした。「やぶれにくい」と かいて いない ものも、やぶれにくい ばあいが ありました。
ただ、2しゅるいだけは、29てんと 46てんでした。ぜんぶが おなじでは ない ようです。
5. ぬれても、かわいた ときと おなじ つよさ?
5. 乾いた時と同じ強さにはならない
5. 濡れ強度の限界 ── 乾燥時に対する比と、洗って使う紙
ぬれても やぶれにくく なった かみは、かわいて いる ときと おなじ つよさに なる わけでは ありません。ぬれると、やっぱり すこし よわく なります。
ある けんきゅうでは、ぬれた ときの つよさが、かわいた ときの 5〜30%くらいと いう れいが ありました[2]。とくべつな じょうけんの けっかなので、ぜんぶの しょうひんが そうとは かぎりません。
それでも、2020ねんには、ぬのの ように しぼって、あらって なんども つかえる かみも うられました[4]。
薬品を使っても、濡れた紙は乾いた紙と同じ強さにはなりません。研究には、広葉樹の漂白クラフトパルプで、濡れた時の強さが乾いた時の約5〜30%という例があります[2]。特別な条件の値なので、製品一般の数字ではありません。
薬品には、効き方の違いもあります。総説によると、一時的な薬品では、10秒浸した時の濡れ強度の最大約3分の2が2時間後も残り、永続的な薬品では80〜100%が残ります。ただしこれは板紙の話で、タオルやティッシュでは「一時的」「永続的」の意味が異なる、とも書かれています[1]。
2020年4月には、日本製紙クレシアが、布のように絞って洗って繰り返し使えるペーパータオルを発売しました。通常のキッチンペーパーより濡れた状態の強度が優れているとされますが、これは企業の発表で、作りの詳しい説明はありません[4]。
それでは、薬品を使えば乾燥時と同じ強さになるのか。答えは否である。ある研究では、広葉樹晒しクラフトパルプの湿潤/乾燥強度比は約5〜30%にとどまった[2]。これは特定の実験条件での値であり、製品一般の数字ではない。
薬品の効き方にも幅がある。総説は、一時的な湿潤紙力増強剤では、10秒浸した時の湿潤強度の最大約3分の2が2時間後も残り、永続的なものでは80〜100%が残ると述べる。ただし、これは板紙の文脈の値で、タオルやティッシュでは「一時的/永続的」の意味が板紙と異なるとされ、キッチンペーパーにそのまま当てはめることはできない[1]。
なお、その先を目指した製品もある。日本製紙クレシアは2020年4月1日に、布のように絞って洗って繰り返し使えるペーパータオルを発売し、通常のキッチンペーパーより濡れた状態の強度が優れるとした[4]。ただし企業の宣伝文であり、素材・構造の詳細は発表文に書かれていない。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
いえに キッチンペーパーが 2〜3しゅるい あれば、くらべて みましょう。おなじ みずに つけて、りょうてで そっと しぼり、ひろげて みます。やぶれた ところや、あなの あいた ぐあいを、じっくり 見て ください。
ティッシュや トイレットペーパーで やると、ちがいが よく わかります。ぬらしたら、ながしや おふろばで やって、あとで ごみばこに すてましょう。
家にキッチンペーパーが2〜3種類あれば、濡らして絞り、破れ方を見比べられます。水に浸し、両手でそっと絞り、広げて、破れた場所や穴の開き方を見ます。福井県の試験と同じ手順ですが、これは目で見る比べ方なので、正確な強さの測定ではありません。同じ大きさの紙を使い、水に浸す時間もそろえると比べやすくなります。
表面の凹凸、厚み、2枚に分かれるかどうかも見てみましょう。ティッシュやトイレットペーパーで試すと、差が大きく出るはずです。使った紙は、濡れているので、水気を切って捨てます。
ふきんとして使える商品もあります。パッケージの「洗って使える」などの表示も、見比べてみるといいでしょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
数字は、総説論文・自治体の試買テスト・企業の発表を突き合わせた。乾燥時と濡れ時の強度比などは、特定の実験条件の値である。
- Ntifafa et al. (2024) BioResources 19(2), PAAE review(湿潤紙力増強剤の歴史・種類) https://bioresources.cnr.ncsu.edu/ (紙が濡れて弱くなる理由・PAEの発明・一時的/永続的の違い)
- Polymeric Wet-Strength Agents in the Paper Industry (PMC10252473) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10252473/ (架橋・用途・湿潤/乾燥強度比の例)
- 福井県消費生活センター 試買テスト結果報告書 キッチンペーパー(令和4年度) https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/shohic/shibai_d/fil/R04-02.pdf (材質・作りの違い・絞り試験の結果)
- 日本製紙クレシア ニュースリリース「スコッティ ファイン 洗って使えるペーパータオル」 https://digitalpr.jp/r/38039 (洗って使えるペーパータオル・2020年4月発売)
なおした ところ
更新履歴
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