1. きれた しっぽは、どうなる?
1. 尾を切り離す「自切」とは
1. 尾の自切(caudal autotomy)の定義
おおくの トカゲは、てきに おそわれると、しっぽの 一ぶを きりはなします。これを 「じせつ」と いいます[1]。
きれた しっぽは、すぐには とまりません。びくびく、くねくねと うごきつづけます。てきが そちらを 見て いる あいだに、トカゲは にげる のでは、と 考えられて います[4]。
ただ しっぽが ちぎれた だけなら、きずぐちは ぼろぼろの はずです。じつは、きれる ばしょは さいしょから きまって いる、と ろんぶんには あります。
2. きれめは、骨の 中に ある
2. 切れ目は骨の中にあらかじめある
2. 自切面(fracture plane):椎体と神経弓を通る破断面
しっぽの 中には、骨が ならんで います。その 一つ 一つに、もともと われやすい 「きれめ」が あります。ろんぶんでは、これを 「じせつめん」と よびます[2]。
かたい 竹の ふしに 切りこみが 入って いて、そこから ぽきんと おれる ところを 思いうかべて みて ください。ただし 本当は、竹の ように 外から 見える きずでは なく、骨の 中に ある われやすい めんです。
この めんは、骨が できて いく とき、となりあう 元の ぶぶんが、ぴったりとは くっつかなかった ために できる、と 考えられて います[1]。
3. どこで、どうやって きれるの?
3. 切れる位置と、筋肉のはたらき
3. 尾の根元ではなく、その先で筋肉が切り離す:非自切椎(pygal)と筋収縮
きれる ばしょは、しっぽの いちばん ねもとでは ありません。ねもとに ちかい 骨には、きれめが なく、うしろあしを うごかす 筋肉が ついて います[2]。きれめは、すこし さきの ほうに ならんで います。
きれる ときには、しっぽの 筋肉が ぎゅっと ちぢんで、きれめから わるのを たすけます[2]。てきに さわられて いなくても、トカゲの 体の ちからで きれる ことが ある、と 書かれて います。
4. ちは、どうして あまり でないの?
4. 血が出すぎない仕組み
4. 尾動脈の平滑筋括約筋による出血の抑制
しっぽには、ちを はこぶ ふとい 血管が とおって います。この 血管の まわりには、あつい 筋肉の わが あります。しっぽが きれた あとで、この わが ぎゅっと ちぢんで、ちが でるのを ちいさく します[3]。
「ぜんぜん でない」わけでは ありません。ろんぶんには、「さいしょうげんに おさえる」と 書かれて います。
血管を締める筋肉
尾には、血を送る太い動脈(尾動脈)が通っています。この動脈には、厚い平滑筋の輪(括約筋)があり、尾が切れたあとに収縮して、出血を最小限に抑えると説明されています[3]。
骨が決まった場所で割れる仕組みと、切れたあとで血管が締まる仕組みが、セットで用意されていることになります。ただし、血がまったく出ないという意味ではなく、あくまで「最小限」です。
尾を支配する主要動脈(尾動脈)には、厚い平滑筋の括約筋が備わっており、自切後に収縮して失血を最小限にとどめる[3]。出血を「ゼロにする」のではなく、「最小化する」と記述されている点に注意する。
骨の破断構造(自切面)と血管の括約筋という二つの仕組みが組み合わさって、自切が成立していると読める。ただし、この整理は複数の資料からの筆者の読み方であり、論文が一つの図式として述べているわけではない。
5. きれた しっぽは、なぜ うごくの?
5. 切れた尾は、体から離れても動く
5. 離断後の尾の運動:ヒョウモントカゲモドキの実験
きれた しっぽは、トカゲの 体から はなれて いても うごきます。ヒョウモントカゲモドキという トカゲの なかまで しらべた けんきゅうでは、はねる ような、ひっくりかえる ような うごきが、さいだい 30ぷんほど つづいた と つたえられて います[4]。
ただし これは、この なかまを しらべた ときの 話です。すべての トカゲが 30ぷん うごく、という 意味では ありません。
ただ揺れるのではない
ヒョウモントカゲモドキ(ヤモリの仲間)で調べた研究では、切れた尾が、単に揺れるだけでなく、高さ約3cmの宙返りのような複雑な動きを、最大約30分続けたと報告されています[4]。
体から離れた尾には、脳からの指令は届きません。それでも動くので、この動きは、神経の回路が体の外でどう筋肉を動かすかを調べる手がかりにもなっているそうです。ただし、これはヒョウモントカゲモドキを調べた研究の話です。
ヒョウモントカゲモドキ(ヤモリ類)の実験では、自切後の尾が最大約30分にわたり、単純な揺れにとどまらず、高さ約3cmの宙返りを含む複雑な運動パターンを示した[4]。この値は当該種に限った結果であり、すべてのトカゲに一般化はできない。
離断後の尾には高次中枢の制御が及ばないため、その運動は、中枢パターン発生器(CPG)のような神経回路が筋を動かす様子を調べる系として使われている、と報告されている。ただし、これはヒョウモントカゲモドキを対象にした研究の記述である。
6. あたらしく はえた しっぽは、おなじ?
6. 生えてきた尾は、元の尾と同じではない
6. 再生尾:軟骨管、長い筋繊維、自切面の欠如
トカゲの しっぽは、また はえて きます。でも、あたらしい しっぽの 中には、ならんだ 骨では なく、つながった 1本の 軟骨の くだが とおって います[5]。筋肉の すじも、もとの ものより ながい と 書かれて います。
この けんきゅうで しらべたのは、グリーンアノールと いう トカゲです。ほかの トカゲも おなじとは かぎりません。
あたらしい しっぽには、きれめが ありません[6]。もとの しっぽより、まがりにくい とも 考えられて います。
7. きって よかった、だけでは ない?
7. 切ることの代償と、大昔からの仕組み
7. 自切の費用と、進化上の起源(ペルム紀前期)
しっぽを きると、いのちは たすかっても、いい ことばかりでは ないようです。ちからが よわく なったり、ダニなどの えいきょうを 受けやすく なったり する、と しょうかい されて います[8]。
この 仕組みは、とても むかしの 生きものにも あったかも しれません。やく 2おく 9千万年 まえの 化石に、その あとが あると 考えられて います[1]。ただし、「もし じせつ して いたなら」という 書きかたで、はっきり きまった 話では ありません。
ヒトデの 一ぶや、ナマコの ないぞうも、ちかい 仕組みだ とされて います[8]。
尾を失うと何が起こるか
自切は命を助けますが、代償があります。尾を失うと免疫が弱まり、ダニなどの影響が大きくなると紹介されています[8]。生き残る力や繁殖、走る力、エネルギーの使い方への費用は、約20年分の研究をまとめた総説で整理されています[7]。
とても古い仕組み
尾の自切の最古級の証拠は、約2億9000万年前のペルム紀前期に生きていた、カプトルヒヌス類の化石とされます[1]。ただし論文は「もし自切していたなら」と条件をつけていて、最古と断定はしていません。トカゲの仲間とは別に進化したらしい、とも述べています。
自切はトカゲだけのものでもなく、腕を切り離すヒトデの一部、内臓を放出するナマコなどにも、似た仕組みがあります[8]。
8. もっと しりたく なったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
いま できること
トカゲの しゃしんや ずかんを 見て、しっぽの ねもとと さきを くらべて みましょう。トカゲを つかまえて しっぽを きらせると、トカゲに 負たんが かかる ことも あるので、見るだけに しましょう。
おでかけで
どうぶつえんや はくぶつかんで、トカゲや ヤモリを 見て みましょう。
今日できること
図鑑や写真で、トカゲの尾の付け根の近くと先の方を見比べてみましょう。自切面が骨の中にあるのなら、切れる位置の見当も、写真から少しはつけられるかもしれません。生きているトカゲをつかんで尾を切らせると、負担がかかります。観察は見るだけにしてください。
出かけてできること
動物園や博物館で、トカゲの尾の付け根から先までを見てみましょう。
今日できること
本メモの論文は、[1][2][3]が自切の構造、[4]が切れた尾の運動、[5][6]が再生尾に関する記述である。図鑑や展示写真で、尾の付け根と先を見比べてみるのもよい。
出かけてできること
動物園・博物館の爬虫類の展示で、尾の付け根から先までの形を観察する。生体に触れて自切を起こさない。
公式情報・一次資料
自切の一般的な説明は、Wikipedia の Autotomy の項目[8]にまとまっている。ただし一次資料ではないので、論文[1]〜[7]とあわせて読むとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料。原文は英語で、URL を開いて確かめられるものを載せている。
- Scientific Reports (2018), Palaeozoic reptiles の尾の自切に関する論文 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5838224/ (自切の定義、自切面の発生、ペルム紀の化石)
- Scientific Reports (2022), Egernia kingii の尾の自切面に関する論文 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9054770/ (自切面の位置、pygal 尾椎、筋収縮)
- Journal of Experimental Biology (2017), 尾の再生に関するレビュー https://journals.biologists.com/jeb/article/220/16/2858/33520/Tail-regeneration-and-other-phenomena-of-wound (結合組織の隔壁、動脈の括約筋、再生尾の動き)
- Higham & Russell (2010), Biology Letters, "Flip, flop and fly" https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsbl.2009.0577 (切れた尾の動き。検索結果の要旨で確認)
- Arizona State University のニュース (2012), 再生尾の構造の研究 https://news.asu.edu/content/researchers-discover-regenerated-lizard-tails-are-different-originals (軟骨の管、長い筋繊維)
- ScienceDaily (2012), 再生尾の解説 https://www.sciencedaily.com/releases/2012/10/121009092416.htm (再生尾の柔軟性)
- Bateman & Fleming (2009), Journal of Zoology, 尾の自切の費用に関するレビュー https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-7998.2008.00484.x (自切の費用。検索結果の要旨で確認)
- Wikipedia, "Autotomy" https://en.wikipedia.org/wiki/Autotomy (他の動物の自切、免疫への影響の紹介)
なおした ところ
更新履歴
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