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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

トカゲの しっぽは、どうして じぶんで きれるの?

トカゲが尾を切り離せる理由:壊れるのではなく、切れる場所が最初からある

トカゲは尾をどうやって切り離すのか:椎体を通る自切面、動脈の括約筋、再生尾の軟骨管

分野:生きもの

トカゲを つかまえたと おもったら、手に のこったのは しっぽだけ。トカゲは もう にげて います。

しっぽは、どこが、どうやって きれるのでしょう。しらべた 人たちの 話を たどります。

つかんだ瞬間、トカゲの尾だけが手に残り、本体は走り去る。尾が「ちぎれた」ようにも見えますが、動物学の論文には、尾には最初から切れる場所が用意されていると書かれています。

切れ目はどこにあるのか。血は出ないのか。切れた尾も、生えてきた尾も、元の尾とは何が違うのか。論文や解説をつき合わせて見ていきます。

多くのトカゲは、捕食者に襲われると尾の一部を切り離す。これを尾の自切(caudal autotomy)という[1]。尾は傷ついて折れるのではなく、尾椎にあらかじめある自切面で割れることが、複数の論文で報告されている[2][3]。

このメモでは、自切面の構造、出血を抑える血管、切れた尾の動き、再生尾の違い、代償、進化上の古さを、論文と解説を突き合わせて整理する。ただし研究対象の種は限られ、全種にそのまま当てはまるとは言えない。

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1. きれた しっぽは、どうなる?

1. 尾を切り離す「自切」とは

1. 尾の自切(caudal autotomy)の定義

おおくの トカゲは、てきに おそわれると、しっぽの 一ぶを きりはなします。これを 「じせつ」と いいます[1]。

きれた しっぽは、すぐには とまりません。びくびく、くねくねと うごきつづけます。てきが そちらを 見て いる あいだに、トカゲは にげる のでは、と 考えられて います[4]。

ただ しっぽが ちぎれた だけなら、きずぐちは ぼろぼろの はずです。じつは、きれる ばしょは さいしょから きまって いる、と ろんぶんには あります。

敵に襲われたとき、尾を残す

多くのトカゲは、捕食者に襲われると尾の一部を切り離します。これを尾の自切といいます[1]。

切れた尾はしばらく動き続け、敵の注意を引くと考えられています[4]。敵が動く尾に気を取られている間に、トカゲは逃げるという見方です。

ただ、力まかせにちぎれるのなら、傷口は荒れるはずです。論文には、切れる場所は体の中にあらかじめ用意されているという説明が出てきます。

多くのトカゲは、捕食者に襲われると尾の一部を切り離す。この行動が尾の自切(caudal autotomy)である[1]。切れた尾は体から離れたあとも動き続け、捕食者の注意を引くと考えられている[4]。

以下では、尾がなぜ決まった場所で切れるのか(構造)、切れたときの出血、切れた尾の動き、再生尾の違いを順に見る。

2. きれめは、骨ほねの 中に ある

2. 切れ目は骨の中にあらかじめある

2. 自切面(fracture plane):椎体と神経弓を通る破断面

しっぽの 中には、骨ほねが ならんで います。その 一つ 一つに、もともと われやすい 「きれめ」が あります。ろんぶんでは、これを 「じせつめん」と よびます[2]。

かたい 竹の ふしに 切りこみが 入って いて、そこから ぽきんと おれる ところを 思いうかべて みて ください。ただし 本当は、竹の ように 外から 見える きずでは なく、骨ほねの 中に ある われやすい めんです。

この めんは、骨ほねが できて いく とき、となりあう 元の ぶぶんが、ぴったりとは くっつかなかった ために できる、と 考えられて います[1]。

尾の骨にある弱い面

トカゲの尾には、小さな骨(尾椎)が連なっています。その尾椎の多くには、あらかじめ壊れやすい面があります。論文はこれを自切面と呼び、骨がその面に沿って割れて離れると説明しています[2]。

この面は、骨の中心部と、その上のアーチ状の部分を通っています[2]。つまり、骨と骨の継ぎ目を外すのではなく、骨そのものが最初から二つに割れる形になっているわけです。ただし、骨の途中で割れる種と、骨と骨の間で離れる種があり、種によって違うとされます。

この弱い面は、骨ができる過程で、隣り合う組織が完全には融合しなかった場所に生じると考えられています[1]。

尾椎には、自切面(fracture plane)と呼ばれる脆弱な面がある。トカゲの尾椎はこの面に沿って破断し、面は椎体(centrum)と神経弓(neural arch)を貫く[2]。皮膚・筋肉・脂肪を横に仕切る結合組織の隔壁が、一つの尾椎を前後に分ける形で存在するとも記述されている[3]。

自切面は、椎骨の発生過程で隣接する椎節(sclerotome)が不完全にしか融合しなかった箇所に生じるとされる[1]。ただし、破断が椎体内で起こる型と椎骨間で起こる型は種によって異なるとされ、日本産のトカゲの型は、今回の資料では確認できていない。

3. どこで、どうやって きれるの?

3. 切れる位置と、筋肉のはたらき

3. 尾の根元ではなく、その先で筋肉が切り離す:非自切椎(pygal)と筋収縮

きれる ばしょは、しっぽの いちばん ねもとでは ありません。ねもとに ちかい 骨ほねには、きれめが なく、うしろあしを うごかす 筋肉きんにくが ついて います[2]。きれめは、すこし さきの ほうに ならんで います。

きれる ときには、しっぽの 筋肉きんにくが ぎゅっと ちぢんで、きれめから わるのを たすけます[2]。てきに さわられて いなくても、トカゲの 体の ちからで きれる ことが ある、と 書かれて います。

根元は切れない

自切面があるのは、尾の付け根より少し先に並ぶ尾椎です。付け根に近い尾椎(pygal椎骨と呼ばれます)には自切面がなく、後ろ足を動かす筋肉がついています[2]。切れる位置が根元ではなく、いくらか先にあるのは、足を動かす筋肉を残すためだと考えられます。

筋肉が割るのを助ける

自切面での破断には、尾の筋肉の収縮が関わるとされています[2]。また、自切は必ずしも敵にふれられなくても起こり、本人の制御下にあるとも書かれています。「気持ちで切る」と言い切れるかどうかは別にして、少なくとも、外から引きちぎられるだけの現象ではないようです。

自切面をもつ尾椎は、尾の基部より遠位の一連の尾椎(post-pygal)である。基部側の尾椎(pygal)は非自切性で、後肢を動かす尾大腿筋(caudifemoralis longus)が付着する[2]。自切位置は尾の根元そのものではない。

破断には、尾の能動的な筋収縮が寄与するとされる[2]。また、この論文は自切が個体の意識的制御下にあり、捕食者が接触しなくても起こりうると記述している。ただし「意識的」は論文の用語であり、筋の力で自切面を破断させることと、意思で切ることとは、資料の範囲では区別して読む必要がある。

4. ちは、どうして あまり でないの?

4. 血が出すぎない仕組み

4. 尾動脈の平滑筋括約筋による出血の抑制

しっぽには、ちを はこぶ ふとい 血管けっかんが とおって います。この 血管けっかんの まわりには、あつい 筋肉きんにくの わが あります。しっぽが きれた あとで、この わが ぎゅっと ちぢんで、ちが でるのを ちいさく します[3]。

「ぜんぜん でない」わけでは ありません。ろんぶんには、「さいしょうげんに おさえる」と 書かれて います。

血管を締める筋肉

尾には、血を送る太い動脈(尾動脈)が通っています。この動脈には、厚い平滑筋の輪(括約筋)があり、尾が切れたあとに収縮して、出血を最小限に抑えると説明されています[3]。

骨が決まった場所で割れる仕組みと、切れたあとで血管が締まる仕組みが、セットで用意されていることになります。ただし、血がまったく出ないという意味ではなく、あくまで「最小限」です。

尾を支配する主要動脈(尾動脈)には、厚い平滑筋の括約筋が備わっており、自切後に収縮して失血を最小限にとどめる[3]。出血を「ゼロにする」のではなく、「最小化する」と記述されている点に注意する。

骨の破断構造(自切面)と血管の括約筋という二つの仕組みが組み合わさって、自切が成立していると読める。ただし、この整理は複数の資料からの筆者の読み方であり、論文が一つの図式として述べているわけではない。

5. きれた しっぽは、なぜ うごくの?

5. 切れた尾は、体から離れても動く

5. 離断後の尾の運動:ヒョウモントカゲモドキの実験

きれた しっぽは、トカゲの 体から はなれて いても うごきます。ヒョウモントカゲモドキという トカゲの なかまで しらべた けんきゅうでは、はねる ような、ひっくりかえる ような うごきが、さいだい 30ぷんほど つづいた と つたえられて います[4]。

ただし これは、この なかまを しらべた ときの 話です。すべての トカゲが 30ぷん うごく、という 意味では ありません。

ただ揺れるのではない

ヒョウモントカゲモドキ(ヤモリの仲間)で調べた研究では、切れた尾が、単に揺れるだけでなく、高さ約3cmの宙返りのような複雑な動きを、最大約30分続けたと報告されています[4]。

体から離れた尾には、脳からの指令は届きません。それでも動くので、この動きは、神経の回路が体の外でどう筋肉を動かすかを調べる手がかりにもなっているそうです。ただし、これはヒョウモントカゲモドキを調べた研究の話です。

ヒョウモントカゲモドキ(ヤモリ類)の実験では、自切後の尾が最大約30分にわたり、単純な揺れにとどまらず、高さ約3cmの宙返りを含む複雑な運動パターンを示した[4]。この値は当該種に限った結果であり、すべてのトカゲに一般化はできない。

離断後の尾には高次中枢の制御が及ばないため、その運動は、中枢パターン発生器(CPG)のような神経回路が筋を動かす様子を調べる系として使われている、と報告されている。ただし、これはヒョウモントカゲモドキを対象にした研究の記述である。

6. あたらしく はえた しっぽは、おなじ?

6. 生えてきた尾は、元の尾と同じではない

6. 再生尾:軟骨管、長い筋繊維、自切面の欠如

トカゲの しっぽは、また はえて きます。でも、あたらしい しっぽの 中には、ならんだ 骨ほねでは なく、つながった 1本の 軟骨なんこつの くだが とおって います[5]。筋肉きんにくの すじも、もとの ものより ながい と 書かれて います。

この けんきゅうで しらべたのは、グリーンアノールと いう トカゲです。ほかの トカゲも おなじとは かぎりません。

あたらしい しっぽには、きれめが ありません[6]。もとの しっぽより、まがりにくい とも 考えられて います。

骨のかわりに軟骨の管

グリーンアノールで調べた研究では、再生した尾は、尾椎が連なる元の構造ではなく、一本につながった軟骨の管に支えられていました。筋肉の繊維も、元の短いものと違って、尾の長さにわたって長く伸びているといいます[5]。

切れ目がない

再生した尾には、自切面がありません。軟骨の管も長い筋繊維も、元の尾のような細かい動きには向かないため、元より曲がりにくいと考えられています[6]。それでも再生尾がもう一度切れることはあり、その場合も、激しく動いて敵の注意をそらせるとされています[3]。ただし、決まった場所で割れる元の仕組みとは違い、何回でも同じように切れるとは書かれていません。

再生尾は、尾椎の連なりではなく、一本の連続した軟骨管に支えられる。筋繊維も、元の尾の短い繊維とは異なり、尾の全長にわたって長い[5]。この所見はグリーンアノールの研究に基づき、全種に当てはまるとは限らない。

再生尾には自切面がなく、軟骨管と長い筋繊維では元の尾のような微細な運動は難しく、柔軟性は低いと考えられる[6]。再生尾が再び自切された場合も、独立して活発に動き、捕食者の注意をそらすことができるという[3]。ただし、決まった破断面をもつ元の尾と同じ仕組みで、何度でも同様に切れる、とは書かれていない。

7. きって よかった、だけでは ない?

7. 切ることの代償と、大昔からの仕組み

7. 自切の費用と、進化上の起源(ペルム紀前期)

しっぽを きると、いのちは たすかっても、いい ことばかりでは ないようです。ちからが よわく なったり、ダニなどの えいきょうを 受けやすく なったり する、と しょうかい されて います[8]。

この 仕組みは、とても むかしの 生きものにも あったかも しれません。やく 2おく 9千万年 まえの 化石かせきに、その あとが あると 考えられて います[1]。ただし、「もし じせつ して いたなら」という 書きかたで、はっきり きまった 話では ありません。

ヒトデの 一ぶや、ナマコの ないぞうも、ちかい 仕組みだ とされて います[8]。

尾を失うと何が起こるか

自切は命を助けますが、代償があります。尾を失うと免疫が弱まり、ダニなどの影響が大きくなると紹介されています[8]。生き残る力や繁殖、走る力、エネルギーの使い方への費用は、約20年分の研究をまとめた総説で整理されています[7]。

とても古い仕組み

尾の自切の最古級の証拠は、約2億9000万年前のペルム紀前期に生きていた、カプトルヒヌス類の化石とされます[1]。ただし論文は「もし自切していたなら」と条件をつけていて、最古と断定はしていません。トカゲの仲間とは別に進化したらしい、とも述べています。

自切はトカゲだけのものでもなく、腕を切り離すヒトデの一部、内臓を放出するナマコなどにも、似た仕組みがあります[8]。

自切には代償があり、尾を失うと免疫が弱まってダニなどの影響が強まると紹介される[8]。また、生存・繁殖・移動能力・代謝への費用は、約20年分の研究をまとめた総説で扱われている[7]。

尾の自切の最古級の証拠は、約2億9000万年前(ペルム紀前期)のカプトルヒヌス類(captorhinids)の化石とされる。ただし論文は「もし自切していたなら」と条件をつけている点に注意が必要で、トカゲ類とは独立に進化したらしい[1]。

自切は他の動物にもみられ、ヒトデの腕の切り離しや、ナマコの内臓の放出も自切の一種とされる[8]。

8. もっと しりたく なったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

いま できること

トカゲの しゃしんや ずかんを 見て、しっぽの ねもとと さきを くらべて みましょう。トカゲを つかまえて しっぽを きらせると、トカゲに 負たんが かかる ことも あるので、見るだけに しましょう。

おでかけで

どうぶつえんや はくぶつかんで、トカゲや ヤモリを 見て みましょう。

今日できること

図鑑や写真で、トカゲの尾の付け根の近くと先の方を見比べてみましょう。自切面が骨の中にあるのなら、切れる位置の見当も、写真から少しはつけられるかもしれません。生きているトカゲをつかんで尾を切らせると、負担がかかります。観察は見るだけにしてください。

出かけてできること

動物園や博物館で、トカゲの尾の付け根から先までを見てみましょう。

今日できること

本メモの論文は、[1][2][3]が自切の構造、[4]が切れた尾の運動、[5][6]が再生尾に関する記述である。図鑑や展示写真で、尾の付け根と先を見比べてみるのもよい。

出かけてできること

動物園・博物館の爬虫類の展示で、尾の付け根から先までの形を観察する。生体に触れて自切を起こさない。

公式情報・一次資料

自切の一般的な説明は、Wikipedia の Autotomy の項目[8]にまとまっている。ただし一次資料ではないので、論文[1]〜[7]とあわせて読むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料。原文は英語で、URL を開いて確かめられるものを載せている。

  1. Scientific Reports (2018), Palaeozoic reptiles の尾の自切に関する論文 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5838224/ (自切の定義、自切面の発生、ペルム紀の化石)
  2. Scientific Reports (2022), Egernia kingii の尾の自切面に関する論文 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9054770/ (自切面の位置、pygal 尾椎、筋収縮)
  3. Journal of Experimental Biology (2017), 尾の再生に関するレビュー https://journals.biologists.com/jeb/article/220/16/2858/33520/Tail-regeneration-and-other-phenomena-of-wound (結合組織の隔壁、動脈の括約筋、再生尾の動き)
  4. Higham & Russell (2010), Biology Letters, "Flip, flop and fly" https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rsbl.2009.0577 (切れた尾の動き。検索結果の要旨で確認)
  5. Arizona State University のニュース (2012), 再生尾の構造の研究 https://news.asu.edu/content/researchers-discover-regenerated-lizard-tails-are-different-originals (軟骨の管、長い筋繊維)
  6. ScienceDaily (2012), 再生尾の解説 https://www.sciencedaily.com/releases/2012/10/121009092416.htm (再生尾の柔軟性)
  7. Bateman & Fleming (2009), Journal of Zoology, 尾の自切の費用に関するレビュー https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-7998.2008.00484.x (自切の費用。検索結果の要旨で確認)
  8. Wikipedia, "Autotomy" https://en.wikipedia.org/wiki/Autotomy (他の動物の自切、免疫への影響の紹介)

なおした ところ

更新履歴

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