1. 虫めがねで 紙が こげるのは、なぜ?
1. 虫眼鏡が熱を出すわけではないのに、なぜ紙は焦げるのか
1. 焦げる仕組みは2段階 ── 光を集める、光を熱に変える
ひなたで 虫めがねを 紙に むけて、まぶしい 丸を 小さく していきます。しばらく すると、紙から けむりが 出ます。
これを 見ると、虫めがねが ねつを 出して いるように おもえます。でも、そうでは ありません。虫めがねは、ひかりを あつめる だけです[4]。
ねつに かわるのは、あつまった ひかりを 紙が うけとった ときです。では、ひかりは どれくらい あつまって いるのでしょう。
集める仕事と、熱にする仕事
日なたで虫眼鏡を黒い紙に向け、光の丸を絞っていくと、やがて煙が出ます。この場面だけを見ると、レンズが熱を出しているように感じます。
けれども、レンズは熱を作っていません。凸レンズがするのは、太陽光を1点に集めることです。その点に黒い紙を置くと、紙が光を受け取って焦げます[4]。つまり仕事は2つに分かれます。光を集めるのがレンズ、光を熱に変えるのが紙です。
まず1つめの仕事から見ます。光は、どれくらい濃くなっているのでしょうか。
凸レンズは、太陽の光を焦点の近くに集める。レンズ自体が熱を作るわけではない。黒い紙をその点に置くと焦げる[4]。したがって現象は、①広い面に届く光を小さな面に集める(集光)、②その光を黒い面が吸収して熱に変える、の2段階に分けて考えられる。
では、集光でどれほど光が濃くなるのか。次章で、直径5cmの虫眼鏡を例に見積もる。
2. ひかりは どれくらい あつまるの?
2. 太陽の光は、小さな点でどれくらい濃くなるのか
2. 集光倍率の見積もり ── 直径5cm・焦点距離15cmの場合
はれた 日の 地面では、太陽に むいた 1平方メートルあたり、およそ 1000ワットほどの ひかりが とどく めやすです[2]。まぶしく かんじても、紙は すぐには こげません。ひかりが 広い ところに ひろがって いるからです。
ここで、直径 5センチ、しょうてんまで 15センチの 虫めがねを かんがえます。けいさんでは、点の 大きさは 1.4ミリほど。ひかりは、およそ 1300ばいの こさに あつまります[5]。
ただし これは、ひかりが ぜんぶ とおると した ときの、いちばん 大きい 数です。ほんとうの 虫めがねでは、もっと 小さく なります。
ところで、もっと 大きな 虫めがねなら、点も 大きく なるのでしょうか。
1平方メートルあたり、約1000ワット
晴れた日の地表で、太陽に垂直な面が受ける日射は、正午ごろで1平方メートルあたり1000ワット前後が目安です。大気が光の一部を吸収したり散らしたりするため、大気の上端で届く約1361ワットより小さくなります[2][1]。
直径5cmの虫眼鏡の場合
この光を、直径5cm・焦点距離15cmの虫眼鏡で集めるとします。光の点の直径は、15cmを110で割って約1.4mmです。レンズの面積は約19.6cm²、点の面積は約1.5mm²なので、光はおよそ1300倍に集まる計算になります[5]。
これは、レンズでの反射や吸収による損失を無視した上限の値です。実際の濃さはこれより小さくなります。
ここで、点の大きさを決める「110」という数字が気になります。この数字は、どこから来るのでしょうか。
地表で太陽光に垂直な面が受ける日射は、晴天の正午ごろ1000W/m²前後が目安とされる[2]。大気上端の全太陽放射照度(TSI)は約1361W/m²で、かつては1366W/m²と見積もられていた[1]。地表の値が小さいのは、大気が一部を吸収・散乱するためである。
直径5cm・焦点距離15cmの虫眼鏡なら、像の直径は15cm÷110≒1.4mm。レンズ面積約19.6cm²に対し像の面積は約1.5mm²で、面積比は約1350、つまり約1300倍になる[5]。この数は筆者が式から計算した値で、レンズの反射・吸収損失を無視した上限にあたる。実際の集光はこれより小さい。
では、像の大きさを決めている「110」とは何なのか。
3. 大きな 虫めがねだと、点も 大きいの?
3. レンズを大きくしても、光の点は大きくならない
3. 像の直径は焦点距離の約110分の1 ── 太陽の見かけの大きさで決まる
雨の 日に、じょうごで 水を コップに あつめる ところを おもって ください。大きな じょうごほど、水は たくさん あつまります。でも、出口の 太さは かわりません。
虫めがねの ひかりも にて います。レンズを 大きく しても、点の 大きさは かわりません。ふえるのは、あつまる ひかりの 量です。ただし ひかりは 水と ちがい、レンズが むきを かえて あつめます。
点の 大きさは、太陽の 見える 大きさで きまります。太陽は 空で、およそ 0.5度の 大きさに 見えます[6]。この ため 点の 直径は、レンズから 点までの きょりの、およそ 110ぶんの 1です[5]。
点は 同じ 大きさなのに、あつまる ひかりが ふえる。では、その ひかりは、どうして ねつに なるのでしょう。
点の大きさを決めるもの
レンズの直径を大きくしても、光の点は大きくなりません。点の直径は、焦点距離のおよそ110分の1です。レンズの大きさで変わるのは、点の大きさではなく、集まる光の量です[5]。
理由は、太陽が空で広がりを持って見えることにあります。太陽の見かけの直径は約0.5度(32分角)です[6]。この角度が、焦点距離の約110分の1という点の大きさに対応しています[5]。
たとえば、直径5cmを10cmにすると、レンズの面積は4倍になります。点の大きさは同じなので、光の濃さは理想的な計算で4倍になります。これは筆者の計算で、損失は考えていません。
点の大きさは変わらず、光の量だけが増える。それでは、集まった光は、なぜ熱に変わるのでしょうか。
4. あつまった ひかりは、どうして ねつに なるの?
4. 集まった光を熱に変えるのは、黒い面
4. 光が熱に変わる条件 ── 黒い面は光をよく吸収する
ひかりは、ものに あたると、はねかえるか、ものに すいこまれます。すいこまれた ぶんが、ねつに なります。黒い 色は ひかりを すいこみやすく、すいこんだ ぶんが ねつに なります。ひかりを あつめた 点に 黒い 紙を おくと、こげます[4]。
ひかりを はかる きかいも、この せいしつを つかいます。気象庁の 日しゃ計には、ガラスの ドームの 中に 黒い ぶぶんが あります。ここで ひかりを うけると、でんきが 生まれます[3]。
つまり 虫めがねは ひかりを あつめる 係、黒い 紙は ひかりを ねつに かえる 係です。虫めがねが ひかりを あつめ、黒い 紙が それを ねつに かえます。
やってみよう。黒い 紙と 白い 紙を、同じ 大きさに きって、日なたに ならべます。しばらく して、手の ひらを のせ くらべます。あつい ときは、すぐ 手を はなしましょう。虫めがねで 太陽を 見たり、紙を こがしたり しては いけません。
では、ひかりが あつまる ことは、家の 中でも おきるのでしょうか。
黒い紙は多くの光を熱に変える
光は、物に当たると反射されたり、吸収されたりします。吸収された分が熱になります。黒い色は光を吸収しやすく、集めた光の点に黒い紙を置くと焦げます[4]。
この性質は、日射を測る道具にも使われています。気象庁の日射計は、ガラスドームの中に「受感部」という黒い部分があります。ここで日射を受けると、強さに応じた電気の力(熱起電力)が生じます[3]。
つまり、光を集めるレンズと、光を熱に変える黒い面が組み合わさって、紙は焦げます。
やってみよう:黒い紙と白い紙
同じ大きさの黒い紙と白い紙を日なたに並べて、少し待ってから手のひらをのせて比べます。熱いと感じたら、すぐ手を離してください。虫眼鏡で太陽を見ること、紙を焦がすことはしません。
光が集まるのは、実験のときだけではありません。家の中でも、思わぬところで起きます。
5. 家の 中でも、ひかりが あつまる ことは あるの?
5. 窓辺のペットボトルや鏡が「虫眼鏡」になる
5. 収れん現象と収れん火災 ── 起こりやすい季節と時間帯
太陽の ひかりが、レンズや かがみで まがったり はねかえったり して、1か所に あつまる ことを「しゅうれん」と いいます。そこに もえる ものが あると、火事に なる ことが あります[8]。
もとに なる ものは、かがみや すきとおった 丸い ものが 多いです。ペットボトル、金魚ばち、花びん、きゅうばん、車の ホイールなども あります[8]。
火事は、夏の 昼より、太陽が 低くて 家の 中に 長く ひかりが 入る 夕方や 冬に、わりと 多いそうです[9]。ふせぎ方は かんたんです。ひかりが 当たる 場所に、もえる ものを おかない。ペットボトルや かがみは、日の 当たらない ところに おきます[9]。
ひかりを 大きく あつめる ことを、わざと 考えた 人たちも います。
収れん現象とは
太陽光がレンズや鏡で屈折・反射して1点に集まる現象を、収れん現象と呼びます。その点に燃えやすい物があると、火災になることがあります。原因になる物は、鏡や透明な球体が多く、拡大鏡・ペットボトル・金魚鉢・花瓶・吸盤・車のホイールなど、身近な物ばかりです[8]。
夏の昼より、夕方や冬
柏市消防によると、収れん火災は日差しの強い夏や日中より、太陽の高度が低く、室内に光が長く差し込む夕方や冬に比較的多く起きています[9]。鹿児島県が示した事故情報でも、1月・11月・4月に多く、出火は15時台が最多でした。ただしこれは、平成22年4月〜令和2年9月に報告された20件の事故情報で、全国の火災数ではありません[8]。
予防は、レンズの働きをする物を直射日光の当たらない場所に置く、カーテンで光を遮る、光が集まる場所に燃える物を置かない、の3つです[9]。
身近な物がたまたま光を集めるなら、光を大規模に、わざと集めたらどうなるでしょうか。
収れん現象は、太陽光がレンズや鏡で屈折または反射して1点に集まることをいい、その場所に可燃物があると火災に至る[8]。原因物は鏡や透明な球体が多く、拡大鏡・ペットボトル・金魚鉢・花瓶・吸盤・車のホイールなど身近な物である[8]。
柏市消防は、夏の日中よりも、太陽高度が低く室内に光が長く差しこむ夕方や冬に、比較的多く発生するとする[9]。鹿児島県の資料でも、事故情報は1月・11月・4月に多く、出火時刻は15時台が最多だった。ただし対象は、平成22年4月〜令和2年9月に報告された事故情報20件であり、全国の火災件数ではない[8]。件数が少なく、傾向も限られた集計にもとづく点は割り引いて読むべきだ。
予防策は、凸・凹レンズの働きをする物を直射日光の当たらない所に置く、カーテンで遮る、光が集まる位置に燃える物を置かない、の3点である[9]。
こうした偶然の集光を、意図的に大規模にすると、どこまで届くのか。
6. 大きな かがみで あつめたら、どう なる?
6. 巨大な鏡で太陽を集める ── 約3500℃の太陽炉
6. 太陽炉 ── 大型レンズから、凹面鏡とヘリオスタットへ
ひかりを あつめる 道具は、レンズだけでは ありません。かがみでも あつめられます。学校の 理科の 授業で、丸くへこんだ かがみを つかった 例が あります。いちばん まぶしい 点に ロウを おくと、とけました[7]。
むかしの 人も、ひかりを あつめる 道具を つかいました。1772年、ラボアジエという 人は、ガラスの 入れものに ダイヤモンドを 入れ、太陽の ひかりで あたためました。できた ものから、ダイヤモンドは 炭素でできていると わかりました[12]。
フランスの オデイヨには、太陽炉という 大きな しせつが あります。63まいの たいらな かがみが 太陽を おいかけ、大きな かがみに ひかりを おくります。いちばん あつい ところは 約3500度に なると いわれます[10]。
虫めがねの 点も、この しせつも、やっている ことは 同じです。ひかりを、あつめる。ただ、あつめる 広さが ちがいます。
レンズだけでなく、凹面鏡にも焦点がある
山梨県の理科教材では、太陽焦熱炉と呼ぶ凹面鏡の最もまぶしい点に置いたロウが溶け、凸レンズと同じく凹面鏡にも焦点があると確かめられています[7]。
ダイヤモンドを燃やした実験
1772年、ラボアジエは酸素入りのガラス容器に入れたダイヤモンドを太陽光で加熱し、生じた二酸化炭素から、ダイヤモンドが炭素でできていると示したと伝えられます。1797年にはテナントが確認しました[12]。
20世紀の太陽炉
太陽炉の研究は、1940年代にフェリックス・トロンブらが始めました。ラボアジエの研究をよみがえらせたものです。1949年にはモンルイに50kWの太陽炉ができ、のちにオデイヨに移されました[11]。オデイヨでは、63枚の平面鏡(ヘリオスタット)が太陽を追って光を大きな放物面鏡に送り、最高約3500℃に達するといわれます[10]。
虫眼鏡で紙を焦がす仕組みと、原理は同じです。光を集める面積が、桁違いに大きいのです。
光を集める道具は凸レンズだけではなく、理科の授業では凹面鏡の焦点でロウが溶けた例もある[7]。歴史をさかのぼると、1772年にラボアジエが、酸素入りのガラス容器の中のダイヤモンドを集光で加熱し、生じた二酸化炭素から炭素でできていると示したと伝えられる(1797年にテナントが確認)[12]。
この流れを20世紀に「よみがえらせた」のが、1940年代にフェリックス・トロンブらが始めた太陽炉の研究だ。1949年にモンルイで50kWの太陽炉が作られ、のちにオデイヨに移された[11]。オデイヨでは63枚の平面鏡(ヘリオスタット)が太陽を追尾して光を大型の放物面鏡に送り、最高約3500℃に達するといわれる[10]。
3500℃は、虫眼鏡と同じ原理を、鏡の枚数と面積で拡大した結果だ。光を集める面積が増えるほど、点に入る光の量は増える。
7. じぶんでも しらべて みよう
7. 窓辺と資料から、自分で確かめてみる
7. 出口 ── 身近な集光の点検と、資料の読みどころ
まず、家の 窓の そばを 見て みましょう。ペットボトルや かがみ、すきとおった 丸い ものが、日の 当たる ところに ないか さがします。あれば、日の 当たらない ところへ うつして、大人に つたえます。
火や 虫めがねで 紙を こがす 実験は、あぶないので しません。太陽を 直せつ 見ることも やめましょう。
もっと 知りたくなったら、柏市の 消防や 鹿児島県の ページを、大人と いっしょに 見てみましょう。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:NASA・気象庁・山梨県・鹿児島県・柏市消防・CNRSなどの公的資料と、解説サイトを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- NASA Goddard Space Flight Center, Solar Irradiance. https://earth.gsfc.nasa.gov/climate/projects/solar-irradiance/science (大気上端の太陽放射照度の値について)
- Ossila「標準太陽光スペクトル」解説。https://ossila.com/pages/standard-solar-spectrum (地表で受ける日射の範囲と基準値について。二次資料)
- 気象庁「日射と日照をはかる」。https://www.data.jma.go.jp/sendai/knowledge/kyouiku/sokki/kansoku/sun.pdf (日射計の黒い受感部について)
- メルボルン大学物理学科の講義デモ「黒い面と白い面の放射の吸収」。https://physics.unimelb.edu.au/lecture-demonstrations/heat-and-thermodynamics/heat-transfer/hc-5-absorption-of-radiation-by-black-and-white-surfaces (黒い面が光を多く吸収することについて。検索で得た抜粋にもとづく)
- Ask a Mathematician「What determines the size of the bright spot when you focus sunlight with a lens?」(2017年)。https://www.askamathematician.com/2017/10/q-what-determines-the-size-of-the-bright-spot-when-you-focus-sunlight-with-a-lens/ (光の点の大きさと、集光の計算の式について。二次資料)
- astro4edu 用語集「angular size」。https://www.astro4edu.org/resources/glossary/term/9/ (太陽の見かけの大きさについて。検索で得た抜粋にもとづく)
- 山梨県教育委員会 教材『太陽焦熱炉』。https://www.pref.yamanashi.jp/documents/102950/1chutaiyo.pdf (凹面鏡の焦点でロウが溶けた授業の例について)
- 鹿児島県「収れん火災に注意」(消費者庁の注意喚起)。https://www.pref.kagoshima.jp/ab11/kurashi-kankyo/syohi/kinkyu/shouhianzen021127.html (収れん現象の説明、原因になる物、事故情報の傾向について)
- 柏市消防「収れん火災に注意」。https://www.city.kashiwa.lg.jp/yobo/fdk/anshinjoho/kasaiyobo/chui/6237.html (起こりやすい季節・時間帯と予防について)
- Odeillo solar furnace(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Odeillo_solar_furnace (オデイヨの太陽炉の構成と、最高約3500℃といわれることについて。二次資料)
- CNRS PROMES「太陽炉」。https://www.promes.cnrs.fr/?p=3733 (太陽炉研究のはじまりについて。検索で得た抜粋にもとづく)
- GIA「Reading List: Synthesize Diamond」。https://www.gia.edu/reading-list-synthesize-diamond (ラボアジエのダイヤモンドの実験について。二次資料)
なおした ところ
更新履歴
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- 初版を公開。
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