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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

シャープペンの 芯しんは、どうして ほそいのに おれにくいの?

細いのに折れにくいシャープ芯しん ── 樹脂を焼いて炭素にする、強さと濃さの綱引き

シャープ芯しんの強度はどこから来るか ── 1960年のポリマー芯、焼成、浸油、強さと濃さのトレードオフ

分野:技術

シャープペンの 芯しんは、0.5ミリ。とても ほそい のに、字を かく くらいでは、そう かんたんには おれません。

ところが、ふつうの 鉛筆えんぴつの 芯しんを 同じ ほそさに したら、すぐ おれて しまうそうです。この ちがいは、どこから くるのでしょうか。

0.5ミリのシャープ芯しんは、字を書くくらいの力では、そうかんたんには折れません。同じ太さにした鉛筆えんぴつの芯しんがあったら、たぶん持たないでしょう。

差は、材料と作り方にあります。芯の中身をのぞきながら、「折れにくさ」と「濃さ」がぶつかりあうこと、そこに各社が知恵をしぼっていることを見ていきます。

0.5mmという細さでも、通常の筆記では簡単に折れないのが、現在のシャープ芯である。鉛筆の芯は黒鉛と粘土を焼き固めたものだが、シャープ芯は結合材が樹脂で、焼く過程で樹脂が炭素に変わる[3]。

1960年の最初の樹脂系の芯から、各社の強度向上の工夫まで、資料を突き合わせて整理する。あわせて、強さと濃さが両立しにくいという、開発者自身の言葉も確認する[6]。

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1. むかしの 芯しんは、どうして 太かった?

1. 粘土でつなぐ芯しんは、太くしないと持たなかった

1. 粘土芯の限界 ── 1.5mm・1mmという太さ

鉛筆えんぴつの 芯しんは、黒鉛こくえんという 黒い こなに、粘土ねんどを まぜて かためた ものです。むかしの シャープペンの 芯しんも、これと にた 作り方でした。

でも、それだと 弱くて、1.5ミリや 1ミリくらいの 太さが いりました。今の 0.5ミリより、ずっと 太い 芯しんです[1]。

鉛筆の芯は、黒鉛こくえんの粉に粘土ねんどをまぜ、焼き固めて作ります。シャープペンの芯も、はじめのころは同じような粘土の芯でした。

ただ、粘土の芯は強度が足りず、折れないためには1.5ミリや1ミリほどの太さが必要だったと説明されています[1]。今の0.5ミリと比べると、直径で3分の1から2分の1の細さです。

鉛筆の芯は、黒鉛こくえんと粘土ねんどを混ぜて焼き固めて作る。シャープペンシル用の芯も初期は同様の粘土芯で、強度の問題から、1.5mmや1mm程度の太さが必要だったとされる[1]。

現在の主流の0.5mmは、その3分の1、1mmの半分の直径である。細くしたい、しかし折れては困る。この2つを両立させたのが、次の章の樹脂の芯だった。

2. 1960ねん、樹脂じゅしの 芯しんが できた

2. 1960年、世界で初めての樹脂の芯しん

2. 1960年の0.9mmポリマー芯と、0.5mmへの細化(1962年)

1960ねんに、日本の 会社が 世界で はじめて、樹脂じゅしを つかった 芯しんを 出しました。太さは 0.9ミリです[1]。

その あと、0.7ミリ、0.5ミリ、0.3ミリと、どんどん ほそく なりました。0.5ミリは 1962ねんに 出て、画数の 多い 漢字を かく 日本の 人に ぴったりで、ひろまったと いわれます[2]。

戦後、大日本文具(今のぺんてる)が研究を重ね、1960年に世界で初めての0.9ミリのポリマー芯が発売されました[1]。ポリマーは、樹脂などの長い分子でできた材料のことです。

1962年には0.5ミリと0.7ミリ、1968年には0.3ミリの極細芯も出ました[1]。とくに0.5ミリは、画数の多い漢字を書くのに向いていたため、日本で広まったと紹介されています[2]。

戦後、大日本文具(現ぺんてる)が研究を進め、1960年に世界初のポリマー芯として0.9mmが発売された。1962年に0.5mmと0.7mm、1968年に0.3mmの極細芯が続いた[1]。

年の扱いには注意が要る。ある社のFAQの要約では「1962年」を合成樹脂芯の登場とするものがあるが、上の団体の資料では、0.9mmの発売が1960年、1962年は0.5mmと0.7mmの発売である。本稿は後者に従う。

0.5mmが普及した理由として、トンボ鉛筆の解説は、画数の多い漢字を使う日本語を書くのに向いていたことを挙げる[2]。

3. 芯しんは、どう やって 作るの?

3. こねて、押し出して、焼く ── 樹脂が炭素に変わる

3. 混合から切断まで ── 焼成で樹脂を炭素化する

まず、黒鉛こくえんと 樹脂じゅしを まぜて、よく こねます。それを ほそい あなから おし出して、ひも みたいに ほそながく します。

つぎに、とても 高い ねつで やきます。1000度を こえると いう せつめいが あります[4]。すると 樹脂じゅしが 炭素たんそに かわって、かたい 芯しんに なります[3]。

たとえば、パンの こなを ねって やくと、ふわふわだった ものが かたい かたまりに なる ことが あります。芯しんは パンでは ありませんが、「やくと 中身が かわる」ところが にています。ただし 本当は、パンのように ただ かたまるのでは なく、樹脂じゅしが 炭素たんそに かわるのです。

シャープ芯は「混ぜる→練る→押し出して形にする→焼く→油をしみこませる→切る」の順に作られます[3]。黒鉛こくえんと樹脂じゅしを練り、細い穴から押し出して細長い形にし、乾かしてから焼きます。

焼く温度は、トンボ鉛筆の解説では1200℃ほどです[4]。別のメーカーの解説では1000℃以上とされ、会社や製品で表現がちがいます。

この熱で、樹脂は炭素たんそに変わります[3]。黒鉛こくえんも炭素の仲間で、焼いた樹脂の炭素とあわせて、かたい芯ができあがります。

身近なたとえなら、パン生地です。やわらかい生地が、焼くとかたくなります。ただ、芯の場合は樹脂そのものが別の物質に変わるので、「かたまるだけ」のパンとは、本当は仕組みがちがいます。

製造工程は、混合、混練、押出成型、焼成、浸油、切断の順である。黒鉛こくえんと樹脂を練り、細いノズルから押し出して成形し、乾燥・焼成しょうせいの熱処理で樹脂を炭素化して強度と書き味を与える[3]。

焼成温度は資料で異なる。トンボ鉛筆の解説は1200℃程度とし[4]、他社の解説では1000℃以上とされる。会社・製品によるため、ここでは「1000℃を超える」程度にとどめる。

焼くと樹脂が炭素化し、黒鉛(これも炭素)とともに、硬い芯を形づくる[3]。作る前の芯は樹脂を含むので、炭素になるのは焼いたあとの話である。

4. やいたら、あなが あいて いる?

4. 焼いた芯しんにできる、目に見えない小さな穴

4. 気孔と浸油 ── 濃さと滑らかさを後から与える

やいた あとの 芯しんには、目に 見えない くらい 小さな あなが たくさん できます。

その あなに、こさと なめらかさを 出す ための 油を しみこませます[3]。スポンジに 水を すわせるように、と 考えると 分かりやすいかもしれません。

焼き終えた芯の中には、数えきれないほどの小さな穴(気孔)ができています。そこで、濃さと滑らかさを出すための油を、その穴の中にしみこませます。これを浸油と呼びます[3]。

焼くだけでは、芯はかたいけれど、紙にこすってもあまり色がつかないのかもしれません。油の工程があるのは、書き味のためです。

熱処理後の芯には無数の気孔ができる。その気孔の中に、濃さと滑らかさを与える油を含浸させる。これが浸油である[3]。

焼成で強度を、浸油で書き味を担う、という分担の説明である。油を入れる量や種類の細かい設計は、今回の資料には出ていない。

5. つよい 芯しんと こい 芯しんは、りょうりつ できる?

5. 強くすると薄く、濃くすると折れやすい

5. 強度と濃さのトレードオフ ── 開発者の言葉から

ぺんてるの 作り手は、こう 話して います。おれにくく しようと すると、字の 色が うすく なる。こく しようと すると、おれやすく なったり、手や 紙が よごれやすく なったりする、と[6]。

つよい ことと こい ことは、いっしょに ふやすのが むずかしいのです。だから 会社ごとに、いろいろな くふうを して います。

ぺんてるの開発者は、折れにくくしようとすると筆記線の濃さが薄くなり、逆に濃くしようとすると折れやすくなったり、手や紙が汚れやすくなったりする、と話しています[6]。

強さと濃さは、片方をのばすともう片方が下がりやすい関係にあるということです。ですから、シャープ芯の開発は、この2つの間でどこに着地するかを探す仕事でもあります。

ぺんてるのAin開発を振り返る記事で、開発者は、折れにくくすると筆記線の濃さが薄くなり、濃くすると折れやすく、手や紙も汚れやすくなる、と述べている[6]。強度と濃さがトレードオフの関係にあることの、当事者の言葉である。

これは一社の開発者の説明であり、あらゆる芯に当てはまる法則ではない。ただ、各社が異なる仕組みで強度を出そうとしている事実は、次章のとおり資料から確かめられる。

6. 会社は、どんな くふうを したの?

6. 内側にフレーム? 4億個の粒? ── 各社の工夫

6. シリカのフレームとナノダイヤ ── 強度を出す2つの設計

ぺんてるの ある 芯しんは、芯しんの 中に ほねぐみの ような ものを 作って、うちがわから ささえる、と せつめいして います[7]。

みつびしの 芯しんは、芯しんの すきまに、とても 小さな ダイヤモンドの つぶを 入れたと いわれます。1本に 4おく こ くらいだそうです[8]。

どちらも、「かたち」と 「ざいりょう」の くふうで、細くても おれにくく しようと して います。

ぺんてるのAin替芯シュタインは、芯の内部に強化シリカでできたフレームを作り、内側から芯全体を支える構造で強度を出した、と説明されています[7]。シリカは、砂やガラスの主な成分です。

三菱鉛筆のユニ ナノダイヤは、2008年に発売されました。芯の隙間に、1本あたり約4億個のナノダイヤを配合したとされます[8]。

2社の方法はちがっていて、片方は「内側の骨組み」、もう片方は「隙間をうめる微粒子」です。強さを出すやり方が1つに決まっていないのが分かります。

ぺんてるのAin替芯シュタインは、芯の内部に強化シリカによるフレームを確立し、内側から芯全体を支える構造で強度を出したと自社で説明する[7]。強度の根拠は自社の説明であり、第三者の比較値ではない。

三菱鉛筆のユニ ナノダイヤ(2008年発売)は、芯の隙間に1本あたり約4億個のナノダイヤを配合したとされる[8]。

2社の設計は、内部にフレームを作るものと、隙間を粒子で埋めるものとで、方向が異なる。

7. つよさは、どうやって しらべるの?

7. 「折れにくい」を、どう確かめるか

7. 300人の実験と三点曲げ ── 強度の測り方

ぺんてるの 人たちは、しゃいんの 300人に 芯しんを つかって もらう じっけんを しました。ノックを 3回 して、おれない 人が 99%くらいに なったら、つよく なったと いう 目じるしに した、と 書いて います[9]。

また、0.3ミリは ほそすぎて、作る とき、強く おすと 太さが きれいに そろわない 問題が あった そうです[9]。ほそい ほど、作るのが むずかしいのです。

ぺんてるは、強度の確かめ方として、社員300人に芯を使ってもらう実験を行いました。「ノック3回」で折れない人が約99%になれば、強度が上がったとみなす基準を、自社で設けたと述べています[9]。この基準は、ぺんてる社内の目標です。

細さのほうにも難しさがあります。0.3ミリ芯では、成形のときに圧力をかけると、正確な太さにならないことが難関で、材料や配合を見直して対応したそうです[9]。

工業製品としての規格もあります。JIS S 6005は、シャープ用の芯を、黒鉛などの黒い材料と結合材でできた固体の筆記材料として定めています[10]。

ぺんてるのシャープペン研究部は、社員300人に替芯を使ってもらう実験で、「3回ノック」の状態で折れない人が約99%になれば強度が上がったとする基準を設けた[9]。これは同社の社内目標で、業界共通の基準ではない。

細さの難しさについて、0.3mm芯は成形時に圧力を加えると正確な芯径にならないのが難関で、材料・配合の見直しで対応したという[9]。

規格面では、JIS S 6005:2019が、シャープ用芯(黒芯)を黒色材(黒鉛など)と結合材でできた固体の筆記材料と定義し、曲げ強さ試験は中央に荷重をかける三点曲げで、σ=8Fl/(πd³)で計算する(F:荷重、l:支点間距離、d:直径)[10]。同規格の表の最小曲げ強さの数値は、要約間で食いちがったため、ここでは挙げない。

式の分母にdの3乗が入っている点は、直径が小さいほど同じ荷重で応力が大きくなりやすいことを示唆する。ただし、これは式からの筆者の読みである。

8. じぶんでも たしかめて みたく なったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

やってみよう。おうちに ある シャープ芯しんの はこや ふくろを、じっくり 読んで みましょう。「つよい」「こい」など、どんな ことが 書いて あるでしょうか。

もう 1つ。ちがう 会社や、ちがう 太さの 芯しんが あれば、同じ 紙に、同じ くらいの 力で 線を ひいて、こさを くらべて みましょう。芯しんを わざと おる ことは しなくて だいじょうぶです。

次のようなことを、試したり調べたりできそうです。

  • 家にあるシャープ芯の箱やケースの表示を読み、「強い」「濃い」など、どんな言葉で特長が書かれているかを見てみましょう。
  • 会社や太さがちがう芯があれば、同じ紙に同じくらいの力で線を引き、濃さを見比べます。折るための実験はしなくて大丈夫です。
  1. 各社の商品ページや開発者の記事を読み比べ、強度・濃さの説明の仕方の差を見る[7][5][9]。数値がどの条件での比較かに注目する。
  2. 規格の原文や各社の技術資料で確かめる余地がある。
  3. 手元の芯の箱の表示を読み、同じ紙・同じ力で線を引いて濃さを比べる。折るための試験はしなくてよい。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:業界団体、文具メーカーの解説と商品ページ、開発者の記事、規格の転載サイト、ニュース記事を突き合わせて使った。メーカーの説明には、自社の技術を紹介する立場が含まれる。

  1. 日本筆記具工業会「シャープ芯の歴史」。 https://www.jwima.org/sharp-pencil/s01-1sharp-pencil/s01-1sharp-pencil.html (粘土芯の太さ、1960年のポリマー芯、細い芯の発売年について)
  2. トンボ鉛筆「シャープペンシルの歴史」。 https://www.tombow.com/sp/kids/mechanicalpencil/history_world.html (0.5mm芯が日本で広まった理由について)
  3. 日本筆記具工業会「シャープ芯のできるまで」。 https://jwima.org/sharp-pencil/s03-1sharp-pencil/s03-1sharp-pencil.html (製造工程、樹脂の炭素化、気孔と浸油について)
  4. トンボ鉛筆「シャープ芯の作り方」。 https://www.tombow.com/mamechishiki/s56/ (焼成温度の説明について)
  5. 三菱鉛筆「ユニ ナノダイヤ」商品解説。 https://www.mpuni.co.jp/products/pencils/black/school/nano_dia.html (炭素化した芯の説明について。要約のみ確認)
  6. ぺんてる「Pentel Ain 開発物語」。 https://www.pentel.co.jp/magazine/mono-monogatari_202302/ (強さと濃さの関係について)
  7. ぺんてる「Ain替芯 シュタイン」。 https://www.pentel.co.jp/products/mechanicalpencil/lead_ain_stein/ (強化シリカのフレームについて)
  8. ITmedia「三菱鉛筆ユニ ナノダイヤ」。 https://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0809/12/news075.html (ナノダイヤの量と強度の数字について。要約のみ確認)
  9. ぺんてる シャープペン研究部 note。 https://note.com/pentel_sharppen/n/n8dbc85ef3f68 (299人の実験、0.3mm芯の成形の難しさについて)
  10. JIS S 6005:2019(規格の転載サイト)。 https://kikakurui.com/s/S6005-2019-01.html (芯の定義、曲げ強さの試験について。要約のみ確認)

なおした ところ

更新履歴

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