1. むかしの 芯は、どうして 太かった?
1. 粘土でつなぐ芯は、太くしないと持たなかった
1. 粘土芯の限界 ── 1.5mm・1mmという太さ
鉛筆の 芯は、黒鉛という 黒い こなに、粘土を まぜて かためた ものです。むかしの シャープペンの 芯も、これと にた 作り方でした。
でも、それだと 弱くて、1.5ミリや 1ミリくらいの 太さが いりました。今の 0.5ミリより、ずっと 太い 芯です[1]。
鉛筆の芯は、黒鉛の粉に粘土をまぜ、焼き固めて作ります。シャープペンの芯も、はじめのころは同じような粘土の芯でした。
ただ、粘土の芯は強度が足りず、折れないためには1.5ミリや1ミリほどの太さが必要だったと説明されています[1]。今の0.5ミリと比べると、直径で3分の1から2分の1の細さです。
鉛筆の芯は、黒鉛と粘土を混ぜて焼き固めて作る。シャープペンシル用の芯も初期は同様の粘土芯で、強度の問題から、1.5mmや1mm程度の太さが必要だったとされる[1]。
現在の主流の0.5mmは、その3分の1、1mmの半分の直径である。細くしたい、しかし折れては困る。この2つを両立させたのが、次の章の樹脂の芯だった。
2. 1960ねん、樹脂の 芯が できた
2. 1960年、世界で初めての樹脂の芯
2. 1960年の0.9mmポリマー芯と、0.5mmへの細化(1962年)
1960ねんに、日本の 会社が 世界で はじめて、樹脂を つかった 芯を 出しました。太さは 0.9ミリです[1]。
その あと、0.7ミリ、0.5ミリ、0.3ミリと、どんどん ほそく なりました。0.5ミリは 1962ねんに 出て、画数の 多い 漢字を かく 日本の 人に ぴったりで、ひろまったと いわれます[2]。
3. 芯は、どう やって 作るの?
3. こねて、押し出して、焼く ── 樹脂が炭素に変わる
3. 混合から切断まで ── 焼成で樹脂を炭素化する
まず、黒鉛と 樹脂を まぜて、よく こねます。それを ほそい あなから おし出して、ひも みたいに ほそながく します。
つぎに、とても 高い ねつで やきます。1000度を こえると いう せつめいが あります[4]。すると 樹脂が 炭素に かわって、かたい 芯に なります[3]。
たとえば、パンの こなを ねって やくと、ふわふわだった ものが かたい かたまりに なる ことが あります。芯は パンでは ありませんが、「やくと 中身が かわる」ところが にています。ただし 本当は、パンのように ただ かたまるのでは なく、樹脂が 炭素に かわるのです。
シャープ芯は「混ぜる→練る→押し出して形にする→焼く→油をしみこませる→切る」の順に作られます[3]。黒鉛と樹脂を練り、細い穴から押し出して細長い形にし、乾かしてから焼きます。
焼く温度は、トンボ鉛筆の解説では1200℃ほどです[4]。別のメーカーの解説では1000℃以上とされ、会社や製品で表現がちがいます。
この熱で、樹脂は炭素に変わります[3]。黒鉛も炭素の仲間で、焼いた樹脂の炭素とあわせて、かたい芯ができあがります。
身近なたとえなら、パン生地です。やわらかい生地が、焼くとかたくなります。ただ、芯の場合は樹脂そのものが別の物質に変わるので、「かたまるだけ」のパンとは、本当は仕組みがちがいます。
4. やいたら、あなが あいて いる?
4. 焼いた芯にできる、目に見えない小さな穴
4. 気孔と浸油 ── 濃さと滑らかさを後から与える
やいた あとの 芯には、目に 見えない くらい 小さな あなが たくさん できます。
その あなに、こさと なめらかさを 出す ための 油を しみこませます[3]。スポンジに 水を すわせるように、と 考えると 分かりやすいかもしれません。
焼き終えた芯の中には、数えきれないほどの小さな穴(気孔)ができています。そこで、濃さと滑らかさを出すための油を、その穴の中にしみこませます。これを浸油と呼びます[3]。
焼くだけでは、芯はかたいけれど、紙にこすってもあまり色がつかないのかもしれません。油の工程があるのは、書き味のためです。
熱処理後の芯には無数の気孔ができる。その気孔の中に、濃さと滑らかさを与える油を含浸させる。これが浸油である[3]。
焼成で強度を、浸油で書き味を担う、という分担の説明である。油を入れる量や種類の細かい設計は、今回の資料には出ていない。
5. つよい 芯と こい 芯は、りょうりつ できる?
5. 強くすると薄く、濃くすると折れやすい
5. 強度と濃さのトレードオフ ── 開発者の言葉から
ぺんてるの 作り手は、こう 話して います。おれにくく しようと すると、字の 色が うすく なる。こく しようと すると、おれやすく なったり、手や 紙が よごれやすく なったりする、と[6]。
つよい ことと こい ことは、いっしょに ふやすのが むずかしいのです。だから 会社ごとに、いろいろな くふうを して います。
ぺんてるの開発者は、折れにくくしようとすると筆記線の濃さが薄くなり、逆に濃くしようとすると折れやすくなったり、手や紙が汚れやすくなったりする、と話しています[6]。
強さと濃さは、片方をのばすともう片方が下がりやすい関係にあるということです。ですから、シャープ芯の開発は、この2つの間でどこに着地するかを探す仕事でもあります。
ぺんてるのAin開発を振り返る記事で、開発者は、折れにくくすると筆記線の濃さが薄くなり、濃くすると折れやすく、手や紙も汚れやすくなる、と述べている[6]。強度と濃さがトレードオフの関係にあることの、当事者の言葉である。
これは一社の開発者の説明であり、あらゆる芯に当てはまる法則ではない。ただ、各社が異なる仕組みで強度を出そうとしている事実は、次章のとおり資料から確かめられる。
6. 会社は、どんな くふうを したの?
6. 内側にフレーム? 4億個の粒? ── 各社の工夫
6. シリカのフレームとナノダイヤ ── 強度を出す2つの設計
ぺんてるの ある 芯は、芯の 中に ほねぐみの ような ものを 作って、うちがわから ささえる、と せつめいして います[7]。
みつびしの 芯は、芯の すきまに、とても 小さな ダイヤモンドの つぶを 入れたと いわれます。1本に 4おく こ くらいだそうです[8]。
どちらも、「かたち」と 「ざいりょう」の くふうで、細くても おれにくく しようと して います。
7. つよさは、どうやって しらべるの?
7. 「折れにくい」を、どう確かめるか
7. 300人の実験と三点曲げ ── 強度の測り方
ぺんてるの 人たちは、しゃいんの 300人に 芯を つかって もらう じっけんを しました。ノックを 3回 して、おれない 人が 99%くらいに なったら、つよく なったと いう 目じるしに した、と 書いて います[9]。
また、0.3ミリは ほそすぎて、作る とき、強く おすと 太さが きれいに そろわない 問題が あった そうです[9]。ほそい ほど、作るのが むずかしいのです。
ぺんてるは、強度の確かめ方として、社員300人に芯を使ってもらう実験を行いました。「ノック3回」で折れない人が約99%になれば、強度が上がったとみなす基準を、自社で設けたと述べています[9]。この基準は、ぺんてる社内の目標です。
細さのほうにも難しさがあります。0.3ミリ芯では、成形のときに圧力をかけると、正確な太さにならないことが難関で、材料や配合を見直して対応したそうです[9]。
工業製品としての規格もあります。JIS S 6005は、シャープ用の芯を、黒鉛などの黒い材料と結合材でできた固体の筆記材料として定めています[10]。
ぺんてるのシャープペン研究部は、社員300人に替芯を使ってもらう実験で、「3回ノック」の状態で折れない人が約99%になれば強度が上がったとする基準を設けた[9]。これは同社の社内目標で、業界共通の基準ではない。
細さの難しさについて、0.3mm芯は成形時に圧力を加えると正確な芯径にならないのが難関で、材料・配合の見直しで対応したという[9]。
規格面では、JIS S 6005:2019が、シャープ用芯(黒芯)を黒色材(黒鉛など)と結合材でできた固体の筆記材料と定義し、曲げ強さ試験は中央に荷重をかける三点曲げで、σ=8Fl/(πd³)で計算する(F:荷重、l:支点間距離、d:直径)[10]。同規格の表の最小曲げ強さの数値は、要約間で食いちがったため、ここでは挙げない。
式の分母にdの3乗が入っている点は、直径が小さいほど同じ荷重で応力が大きくなりやすいことを示唆する。ただし、これは式からの筆者の読みである。
8. じぶんでも たしかめて みたく なったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
8. 自分でも調べてみたくなったら
やってみよう。おうちに ある シャープ芯の はこや ふくろを、じっくり 読んで みましょう。「つよい」「こい」など、どんな ことが 書いて あるでしょうか。
もう 1つ。ちがう 会社や、ちがう 太さの 芯が あれば、同じ 紙に、同じ くらいの 力で 線を ひいて、こさを くらべて みましょう。芯を わざと おる ことは しなくて だいじょうぶです。
次のようなことを、試したり調べたりできそうです。
- 家にあるシャープ芯の箱やケースの表示を読み、「強い」「濃い」など、どんな言葉で特長が書かれているかを見てみましょう。
- 会社や太さがちがう芯があれば、同じ紙に同じくらいの力で線を引き、濃さを見比べます。折るための実験はしなくて大丈夫です。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:業界団体、文具メーカーの解説と商品ページ、開発者の記事、規格の転載サイト、ニュース記事を突き合わせて使った。メーカーの説明には、自社の技術を紹介する立場が含まれる。
- 日本筆記具工業会「シャープ芯の歴史」。 https://www.jwima.org/sharp-pencil/s01-1sharp-pencil/s01-1sharp-pencil.html (粘土芯の太さ、1960年のポリマー芯、細い芯の発売年について)
- トンボ鉛筆「シャープペンシルの歴史」。 https://www.tombow.com/sp/kids/mechanicalpencil/history_world.html (0.5mm芯が日本で広まった理由について)
- 日本筆記具工業会「シャープ芯のできるまで」。 https://jwima.org/sharp-pencil/s03-1sharp-pencil/s03-1sharp-pencil.html (製造工程、樹脂の炭素化、気孔と浸油について)
- トンボ鉛筆「シャープ芯の作り方」。 https://www.tombow.com/mamechishiki/s56/ (焼成温度の説明について)
- 三菱鉛筆「ユニ ナノダイヤ」商品解説。 https://www.mpuni.co.jp/products/pencils/black/school/nano_dia.html (炭素化した芯の説明について。要約のみ確認)
- ぺんてる「Pentel Ain 開発物語」。 https://www.pentel.co.jp/magazine/mono-monogatari_202302/ (強さと濃さの関係について)
- ぺんてる「Ain替芯 シュタイン」。 https://www.pentel.co.jp/products/mechanicalpencil/lead_ain_stein/ (強化シリカのフレームについて)
- ITmedia「三菱鉛筆ユニ ナノダイヤ」。 https://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0809/12/news075.html (ナノダイヤの量と強度の数字について。要約のみ確認)
- ぺんてる シャープペン研究部 note。 https://note.com/pentel_sharppen/n/n8dbc85ef3f68 (299人の実験、0.3mm芯の成形の難しさについて)
- JIS S 6005:2019(規格の転載サイト)。 https://kikakurui.com/s/S6005-2019-01.html (芯の定義、曲げ強さの試験について。要約のみ確認)
なおした ところ
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