1. 「ごみの 島」は、ほんとうに あるの?
1. 島ではなく、海にまざった「こしょう」のように広がる
1. 「ごみの島」という誤解 ── 広く薄く分布する破片
ふねで その 海に いっても、ごみの 山は 見えません。うちゅうから 見ても、島の ような ものは 見えないと いわれます[2]。
ごみは、とても 広い はんいに ちらばって います。大きさも、目に 見えにくい ほど 小さな かけらが おおいのです[1]。
たとえば、スープに こしょうを ふりかけた ところを 思いうかべて ください。こしょうは 一つぶ 一つぶ 小さくて、スープ ぜんたいに ういています。スプーンで すくっても、こしょうが ぜんぶ なくなるわけでは ありません。NOAAという アメリカの きかんも、にた ように せつめい しています[1]。ただし ほんとうの 海は、ふかさも 広さも スープの なべとは くらべものに なりません。
船でその海域に行っても、足場になるごみの島はありません。NOAAは、この海域を「ごみの島」と考えるのは誤解のもとだと説明しています。ごみは海面から深い所まで広い範囲に散らばり、多くは目に見えにくい小さな破片だといいます[1]。
NOAAはたとえとして、スープにこしょうが舞っている様子を挙げています[1]。粒の一つ一つは小さく、スープの表面をすくっても取りきれません。ただし、実際の海はスープの鍋とはけた違いに広く深いので、このたとえは「散らばり方」だけを借りたものです。
ナショナルジオグラフィックも、パッチは宇宙から見えないと、よくある主張を否定しています[4]。NOAAの別のページも、宇宙や航空機からは見えず、風と波が破片を広い海面に散らし続けると述べます[2]。
NOAAは、ガーベッジパッチという呼び名が「ごみの島」の誤解を生むと説明する。実際には、ごみは海面から海底近くまで広い範囲に散らばり、多くは目に見えにくい小片だ[1]。NOAAはこれを、すくい取れるものというより、スープの中を舞うこしょうのようなものと表現している。
NOAA Ocean Explorerは、宇宙や航空機からは見えないこと、風と波が破片を広い海面へ絶えずかき混ぜていることを述べる[2]。National Geographicも、パッチは宇宙から見えるという通説を退け、立てる地面もないとする[4]。
濃さにも幅がある。The Ocean Cleanupは、固い塊にはならないが、中心部では1km²あたり数百kg、周縁部では約10kgと濃さが変わると説明する[6]。数字の出どころは同財団で、海域の場所によって幅がある点に注意が必要だ。
2. どうして、この 海に あつまるの?
2. 大きな渦のような海流が、物を真ん中へ寄せる
2. 亜熱帯環流 ── 収束する海流と集積
この 海は、大きな 環流の 中に あります。環流とは、海の 水が ぐるっと まわる、とても 大きな ながれです。
NOAAは、環流を 大きな うずまきの ようだと いいます。うかんだ ものが、ながれに のって、まん中の ほうへ よせられて いきます[1]。
おふろで、水を ぐるぐる かきまぜた あとを 思いだして ください。うかべた おもちゃが、まん中に よって くる ことが あります。ただし 海の 環流は、もっと ゆっくり、もっと 大きく、うごきます。
ごみが集まる場所は、海の水がゆっくり大きく回る「環流(かんりゅう)」の中にあります。NOAAは、環流を大きな渦のようなもので、物を一か所、たいていは中心付近へ引き寄せると説明します。北太平洋のパッチは、この環流の中、ハワイとカリフォルニアの間にあたります[1]。
The Ocean Cleanupは、この海域の海流が収束していることが、プラスチックを集める一因だと説明します。環流に入った浮くプラスチックは、太陽・波・生き物のはたらきで小さく砕けながら、その海域にとどまり続けるといいます[6]。
おふろの水をかき回すと、浮かべたおもちゃが真ん中に寄ることがあります。ただし、実際の環流は大陸や風の影響を受けて、はるかに大きく遅い動きです。イメージのたとえと考えてください。
NOAAは、亜熱帯環流(ジャイル)を、物を中心へ引き寄せる大きな渦のような海流の系と説明する。北太平洋のパッチは、ハワイとカリフォルニアの間の北太平洋環流にある[1]。NOAA Ocean Explorerは、この海流のパターンがごみの濃縮を助けていると述べる[2]。
The Ocean Cleanupは、環流に入った浮遊プラスチックは収束する海流で運ばれ、太陽・波・生物の作用で小さく砕けながら、その海域に長くとどまりうると説明する[6]。Lebretonらの推定でも、パッチへの流入は流出を上回り続けているとされる[5]。ただしこの点は同論文を紹介したScienceDailyの記事による二次的な確認で、論文本文では確かめていない。
集積の要点は、流れが集めることと、抜け出しにくいことの2つに整理できる。この整理は本稿のものであり、出典の用語ではない。
3. その 海は、どれくらい 広いの?
3. 推定で約160万km²。フランス本土の約3倍
3. 面積と質量の推定(Lebreton et al. 2018)
2018ねんの けんきゅうでは、その 海の ひろさを、およそ 160まん へいほうキロメートルと しました[3]。フランスという 国の 本土の、およそ 3ばいだと いいます[5]。
うかんで いる プラスチックは、すくなくとも 7まん 9せんトンと、けんきゅうでは 考えられて います[3]。ただし これは「すいてい」で、ほんとうの かずは もっと おおきい かも しれませんし、ちいさい かも しれません。
ちいさな 島どころか、フランス本土の およそ 3ばいの ひろさに、うすく ひろがって います。
2018年、Lebretonらは、この海域の面積を約160万km²、浮かぶプラスチックを少なくとも約7万9千トンと推定しました。推定の幅は4万5千〜12万9千トンで、従来の推定の4〜16倍にあたると報告されています[3]。ScienceDailyの紹介では、面積はフランス本土の約3倍、個数は約1.8兆個とされます[5]。
これは確定値ではなく、推定です。「少なくとも」という下限で書かれ、幅もかなり広く、NOAAは、調査船が少ないためにパッチの正確な大きさは決めにくいと述べます[2]。
The Ocean Cleanupの説明でも、パッチはプラスチックが濃い部分から薄い部分へ、境目のはっきりしない広がり方をしています。中心の数百kg/km²から、縁の約10kg/km²まで変わります[6]。1km²は、1辺が1kmの正方形なので、その中に数百kgというのは、サッカー場100個ほどの広さに数百kgです。
Lebretonらは2018年、調査船・航空機による観測をもとに、GPGPの面積を約160万km²、浮遊プラスチックの質量を少なくとも約7.9万トン(推定幅4.5万〜12.9万トン)とし、従来推定の4〜16倍と報告した[3]。本稿はこの論文の本文には当たれておらず、検索で得た要旨と、二次資料(ScienceDaily)によっている。
ScienceDailyによると、個数は約1.8兆個で、面積はフランス本土の約3倍[5]。フランス本土の面積を約55万km²とすれば、約3倍は約165万km²で、論文の推定と桁が合う。ただし、フランス本土の面積の値は本稿が外から補った数字である。
数値は「以上」の下限であり、確定値ではない。NOAAは、調査船が少ないため正確な大きさは決めにくいとする[2]。The Ocean Cleanupは、濃さが中心の数百kg/km²から周縁の約10kg/km²まで変わり、固い塊にはならないとする[6]。1km²はサッカー場100個ほどに相当する広さだ。最新の推定が更新されているかは、本稿では確かめていない。
4. かずが おおいのは? おもいのは?
4. 個数では小さな破片が多数、重さでは大きな物が主役
4. 個数と質量のずれ ── 微小片が94%、しかし質量の約8%
ごみの かずで 見ると、いちばん おおいのは、ものすごく 小さな かけらです。5ミリより 小さな かけらを マイクロプラスチックと いいます。かずでは、94パーセントが これに あたると いわれます[4]。
ところが、おもさで くらべると、マイクロプラスチックは 8パーセントほどです[5]。のこりの ほとんどは、もっと 大きな ものでした。
かずは たくさんでも、ひとつ ひとつが かるい からです。あなたの てのひらに のせた 小石 100こと、大きな 石 1こを くらべる ような ものです。ただし、これは かずと おもさが ずれる りゆうを つたえる ための たとえです。
個数と重さでは、主役が入れかわります。ナショナルジオグラフィックによると、約1.8兆個のうち、マイクロプラスチックが94%を占めます。しかし重さでは全体の約8%にすぎません[4]。ScienceDailyも、質量の92%はより大きな物、5mm未満のマイクロプラスチックは8%だと紹介しています[5]。
重さの主役は何か。論文の集計では、重さの少なくとも46%が漁網で、5cmを超える破片が質量の大半を占めるとされます[4]。ペットボトルやレジ袋を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、重さでは漁網が大きな割合をもちます。
このずれは、調べ方で結果が変わることを教えてくれます。個数を数えれば小さな破片が目立ち、重さを量れば大きな物が目立ちます。「何を数えるか」で、ごみの姿は変わって見えるのです。
個数と質量では構成が逆転する。National Geographicによると、推定約1.8兆個のうちマイクロプラスチックは94%だが、質量では約8%にとどまる[4]。ScienceDailyは、質量の92%が大きな物で、5mm未満は8%だと紹介する[5]。
質量の内訳では、論文の集計として、少なくとも46%が漁網で、5cmを超える破片が質量の大半(4分の3以上)を占める[4]。ただしこの内訳は、本稿では論文の本文でなく、報道と検索要旨による二次的な確認である。
ここで、数値の読み方に注意が要る。個数の94%と質量の8%は、同じ約1.8兆個・約8万トンの別の切り口であり、矛盾しない。個数で語るか質量で語るかで、問題の見え方が変わる。
5. ごみは、どこから きたの?
5. 中身の多くは、漁業で使われた道具
5. 発生源 ── 漁業由来の比重と、文字の手がかり
ごみの 中には、漁に つかう 網が たくさん ありました。The Ocean Cleanupという ところは、この 海の プラスチックの 75〜86パーセントが、漁に かんけいすると つたえて います[6]。
ものに 書かれた もじを 見ると、3ぶんの 1くらいが 日本語、3ぶんの 1くらいが 中国語だったと いいます[4]。
でも、もじが 書いて あるからと いって、「その 国の 人が すてた」とは かぎりません。もじは、ものの ゆくえを たどる 手がかりの ひとつです。
The Ocean Cleanupによると、この海域のプラスチックの75〜86%は、漁業に由来するとされています[6]。漁網やロープなど、海で使う道具です。
ナショナルジオグラフィックは、拾い上げた物に書かれた文字の約3分の1が日本語、約3分の1が中国語で、約2割が2011年の東日本大震災の津波に由来するとされる、と紹介しています[4]。
ただし、文字は国を示す手がかりであって、捨てた国の断定ではありません。船の道具は国を越えて売買されますし、海流は国境を知りません。だれの責任かを決める材料としては、慎重に扱う必要があります。
The Ocean Cleanupは、GPGPのプラスチックの75〜86%が漁業由来だとする[6]。National Geographicは、物に書かれた文字の約3分の1が日本語、約3分の1が中国語で、約2割が2011年の東日本大震災の津波由来とされると紹介する[4]。
ここで、文字は国の由来を示す手がかりにすぎず、廃棄した国の断定ではない。船・漁具は国際的に流通するうえ、海流が運ぶあいだに元の場所とは離れる。「日本語の文字が多い」ことから日本が原因と結論するのは、飛躍がある。
2022年のScientific Reportsには、北太平洋亜熱帯環流の浮遊プラスチックに漁業の盛んな国々が大きく寄与するとの報告もあるが、本稿では題名以外を確認できておらず、数値は扱わない。
6. ごみは、そのあと どうなるの?
6. 砕けて小さくなり、沈むものもある
6. 破砕と沈降 ── 海面の量は全体の一部か
ういて いる プラスチックは、お日さまや なみに あたって、すこしずつ こわれて いきます。大きな あみも、小さな かけらに なります[6]。
そして、しずむ ものも あります。JAMSTECという けんきゅうじょは、ういて いた プラスチックに 藻や フジツボが つくと、おもく なって しずる ことが あると せつめい します。するがわんの 水の ふかさ 2000メートルくらいでも、レジぶくろが えいぞうに うつりました[7]。
だから、海の 上に 見える ごみは、海の プラスチックの 一部かも しれません。
浮かぶプラスチックは、環流の中で太陽・波・生き物のはたらきを受け、小さく砕けます。漁網のような大きな物も、砕けてマイクロプラスチックになるとThe Ocean Cleanupは説明します[6]。
浮いていたものが、そのまま浮き続けるとは限りません。JAMSTECの紹介では、藻類やフジツボなどの生き物が付いて重くなり、やがて沈むことがあります。駿河湾の水深2000m付近でも、レジ袋が映像に写ったそうです[7]。
そのため、海面で見つかる量は、海に出たプラスチック全体の一部かもしれません。ただ、海面に浮く量が全体のどれくらいなのか、確かな数字はまだありません。
日本の周りの海も、無関係ではありません。環境省の調査では、日本周辺の沖合でもマイクロプラスチックが広く分布し、東北沖や四国・九州の太平洋側沖で密度が高い傾向がありました[8]。
The Ocean Cleanupは、浮遊プラスチックが環流内で太陽・波・生物の作用により小片へ砕け、漁網などの大型物もマイクロプラスチックになると説明する[6]。
一方、JAMSTECは、藻類やフジツボが付着して重くなり、浮いていたプラスチックが沈むことがあると紹介し、駿河湾の水深約2000mでレジ袋が映像に写った例を挙げる[7]。この例は日本近海の一地点であり、GPGP海域の状況を直接示すものではない。
海面の推定量が、海に出た総量のどれだけにあたるかは、確かな数字を確認できなかった。環境省の平成26〜28年度の調査結果を合わせると、日本周辺の沖合でもマイクロプラスチックが広く分布し、東北沖や四国・九州の太平洋側沖で高密度の傾向がある[8]。海面のGPGPだけを見ても、全体像にはならない。
「ごみの 島」の つづきを 自分で しらべるには
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること:ちずか ちきゅうぎで、日本から ひがしへ ゆびで たどって みましょう。ハワイと カリフォルニアの あいだが、ごみが あつまる 海です。日本と つながって いるか、かんがえて みましょう。
おうちの 人と:かたづけの ときに、プラスチックの ものに 書かれた もじを 見て みましょう。どこの 国の もじが 多いか、ぜんぶ 数えなくても、3つ 見つけるだけで いいです。
くわしく 知るには:JAMSTECや、かんきょうしょうの ページに、日本語の せつめいが あります。
今日できること:地図や地球儀で、日本から東へ、ハワイとカリフォルニアの中間まで指でたどってみましょう。その海域に、日本の周りの海から流れ込む道はあるのか、地図をながめながら考えてみます。
家にある物で:家のプラスチックの物に書かれた文字や国名を、3つ探してみましょう。文字は作られた国の手がかりであって、捨てられた国の証拠ではない、という第5章の話を思い出しながら見ます。
公式の情報:JAMSTECの「深海のプラスチック」の記事や、環境省の海洋ごみ調査のページには、日本語で読める資料があります。
今日できること:GPGPの位置(北太平洋亜熱帯環流の東側、ハワイとカリフォルニアの間)を、地図帳で確認し、日本から海流でつながる経路を自分で推論してみる。この推論は本稿の課題であり、出典に答えが書いてあるわけではない。
資料を読むなら:Lebretonら(2018)の論文は、面積・質量の推定とその方法が書かれた一次資料。The Ocean Cleanupの「Great Pacific Garbage Patch」のページ、NOAAのGarbage Patchesのページ(いずれも英語)は、集積の仕組みを短くまとめている。日本語では、JAMSTECの深海プラスチックの記事、環境省の海洋ごみ調査の報告が読める。
宿題として残るもの:最新の推計の更新、海面に浮く量が海に出た総量に占める割合、国別の寄与。本稿では確認できていない。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
記事で使った資料。海外の一次資料は英語のものが含まれます。
- NOAA Ocean Service, "Garbage Patches" https://oceanservice.noaa.gov/education/tutorial-coastal/marine-debris/md05.html (ごみの島の誤解、環流のしくみ)
- NOAA Ocean Exploration, "Garbage Patch" https://oceanexplorer.noaa.gov/ocean-fact/garbagepatch/ (見えにくさ、大きさを決めにくい理由)
- Lebreton, L. et al. (2018) Scientific Reports 8:4666 https://www.nature.com/articles/s41598-018-22939-w (面積・質量の推定。要旨のみ確認)
- National Geographic, "Great Pacific Garbage Patch is bigger and mostly made of fishing gear" https://www.nationalgeographic.com/science/article/great-pacific-garbage-patch-plastics-environment (個数と質量、漁網、文字の手がかり)
- ScienceDaily, Lebreton論文の紹介 https://www.sciencedaily.com/releases/2018/03/180322123755.htm (個数・フランスとの比較・質量の内訳)
- The Ocean Cleanup, "Great Pacific Garbage Patch" https://theoceancleanup.com/great-pacific-garbage-patch/ (濃さの変化、砕けかた、漁業由来の割合)
- JAMSTEC BASE「深海のプラスチック」 https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/explore-20240221/ (沈むプラスチック)
- 環境省「平成28年度海洋ごみ調査」 https://www.env.go.jp/press/104995.html (日本周辺のマイクロプラスチック)
なおした ところ
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