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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

センザンコウの うろこは、どうして まるまれるの?

センザンコウはなぜ丸まれるのか ── 爪と同じ材料の板と、重なり方のひみつ

センザンコウの鱗はどう体を守るのか ── ケラチンの板の重なりと内部構造

分野:生きもの

センザンコウの うろこは、わたしたちの つめや かみの けと おなじ ざいりょうで できて います。つめと おなじように、いっしょう のびつづけると いわれます[1]。

つめの ような かたい いたが、どうして ボールの ように まるまれるのでしょう。この きじでは、うろこの ならびかたと、なかの つくりが わかります。

センザンコウは、硬い鱗を重ねた体を丸めて、身を守ります。その鱗は、人の爪や髪と同じ材料でできていて、爪と同じように一生のび続け、すり減った分を補うと報告されています[1]。

爪のように硬い板を並べたのに、どうしてボールのように丸まれるのでしょうか。この記事では、鱗の並び方、板の内部の層、水分との関係から、その答えが分かります。

センザンコウの鱗はケラチンでできており、人の髪や爪と同じ材料である。鱗は髪や爪のように生涯のび続け、すり減りを補うと報告されている[1]。

それほど硬い板が並んでいるのに、なぜ体を球状に丸められるのか。この記事では、鱗の重なり方(幾何学)、板の内部構造、含水度による力学的性質の変化から、その理由が分かる。

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1. まるまった とき、そとに むくのは どこ?

1. 丸まったとき、外に向くのはどこか

1. 丸まった体の表面 ── 外に向くのは縁のとがった鱗

センザンコウは、てきに おそわれると、からだを まるめて ボールの ように なります[2]。

そとに むくのは、かたくて ふちの とがった うろこだけです[1]。

なまえの ペンゲリンは、マレーごで 「まるまる もの」という いみだと いわれます[1]。なまえが、こたえを さきに いって いるようです。

うろこは、せなかや よこ、あしの そとがわを おおって います。おなかは うろこが なく、やわらかいので、まるまると なかに かくれます[1]。

では、その うろこは、なにで できて いるのでしょう。

襲われたセンザンコウは、体を丸めてボールのようになります。頭・背・体の側面・手足の外側は松かさのような鱗におおわれていて[2]、丸まると、硬くて縁のとがった鱗だけが外に向きます[1]。

英語の pangolin という名前は、マレー語の pengguling、「丸まるもの」に由来するとされています[1]。名前が、この動物の得意技を先に言っているわけです。

鱗は、腹側の頭や胴、手足の内側、足の裏にはありません[1]。柔らかい腹は、丸まったときに内側に隠れます。

では、この鱗は何でできているのでしょうか。

センザンコウは脅されると体を球状に丸め、硬く縁の鋭い鱗だけが外側を向く[1]。日本語の辞典でも、頭・背・体側・四肢の外側を松かさ状の堅い鱗が覆い、敵に襲われると丸まって身を守ると説明される[2]。

英語名 pangolin の由来は、マレー語 pengguling(「丸まるもの」)とされる。ただし論文が辞書を引く形なので、語源は「とされる」にとどめる[1]。

鱗は腹側の頭部・胴体・四肢内側・足裏を覆わない[1]。防御は、鱗のない柔らかい腹側を、内側に丸め込むことで成り立っている。では、その鱗は何でできているのか。

2. うろこは、なにで できて いるの?

2. 鱗の正体は、爪や髪と同じ材料

2. 材料はケラチン ── 髪・爪と同じ、一生のび続ける

うろこの ざいりょうは、ケラチンと いいます。わたしたちの かみの けや つめも、おなじ ケラチンで できて います[1][4]。

つめは、きっても また のびて きます。うろこも おなじで、いっしょう のびつづけて、すりへった ぶんを おぎなうと いわれます[1]。

ところで、つめは かたいのに、ぎゅっと まるめる ことは できません。うろこの ならんだ からだが まるまるのは、どうしてでしょう。

鱗の材料はケラチンです。人の髪や爪も同じケラチンでできています[1][4]。

爪は切っても伸びてきますが、鱗も髪や爪と同じく一生のび続け、すり減った分を補うと報告されています[1]。硬い鎧を身につけたまま、使うたびに少しずつ作り足している動物、と考えることもできます。

ところが、爪の形を思い出してください。硬い爪を、ボールのように丸めることはできません。同じ材料の板が、なぜ体を丸める動きにつき合えるのでしょうか。

鱗の材料はケラチンで、人の髪・爪と同じ素材である[1][4]。鱗は髪や爪と同様に生涯のび続け、摩耗による損失を補う[1]。なお、鱗と皮膚を合わせた重さが体重の約25%を占めるとされるが、これは鱗だけの割合ではない[1]。

鱗が毛の変化したものかどうかは、資料によって扱いが分かれるため、ここでは「髪・爪と同じ材料」までにとどめる。

では、爪と同じ硬い素材の板で覆われているのに、なぜ体を丸められるのか。板の性質より、板の並べ方に鍵があると考えて、次に見ていく。

3. かたい いたなのに、どうして まるまれるの?

3. 板がずれて重なると、丸まってもすき間が出ない

3. 六角形状に重なる鱗 ── すべりとずれが柔軟性をつくる

こたえは、いたの ならびかたに ありました。

トランプを、ぴったり よこに ならべて まげると、そとがわに すきまが できます。すこしずつ ずらして かさねて おくと、まげても すきまが できません。うろこも、これと にて います。ただし ほんとうは、うろこは たてにも よこにも かさなって います。

ある けんきゅうでは、うろこ 1まいは、まわりに ろっかっけいの ように ならんだ うろこの まんなかに あります。うらがわは したの 3まいを、おもてがわは うえの 3まいに、すこしずつ おおわれて います[1]。

かさなった うろこは、たがいに すべって ずれます。だから からだを まるめても、はだが むきだしに なりません[3]。

ただ、うろこの なかには、われにくい ひみつも あるようです。

答えは、板そのものより、板の重ね方にあるようです。

トランプを隙間なく横に並べて曲げると、外側に隙間があきます。少しずつずらして重ねておくと、曲げても隙間ができません。鱗の重なり方は、これに似ています。ただし本当は、鱗は縦にも横にも重なっています。

中国センザンコウとアフリカの樹上で暮らすセンザンコウを調べた論文によると、鱗は1枚ごとに、六角形状に並んだ周りの鱗の中心に位置します。内側の面は下の3枚を部分的におおい、外側の面は上の3枚に部分的におおわれます[1]。この重なりで、体が動いたり丸まったりしても、皮膚を覆いきれます[1]。

重なった鱗は互いにすべり、ずれることで、柔軟な防護面になります。丸まっても、板と板のあいだに皮膚がむき出しになる場所ができにくい、と説明されています[3]。

ところで、板が硬いだけなら、割れてしまうこともあるはずです。鱗の中は、どうなっているのでしょうか。

Wang らの論文では、各鱗は六角形状に配置された周囲の鱗の中心に位置し、内面は下の3枚を部分的に覆い、外面は上の3枚に部分的に覆われる。これにより、体が動いたり丸まったりしても皮膚を完全に覆える[1]。この観察の対象は中国センザンコウとアフリカ樹上性センザンコウの2種で、全種に一般化はしない。

板一枚の大きさは、中国センザンコウで幅10〜30mm・長さ20〜40mm・厚さ0.4〜3mm、アフリカ樹上性では平均で幅18mm・長さ40mm・厚さ約1.5mmである[1]。調べられたこの2種では、小さな板をずらして重ねているので、曲げても皮膚のすき間が出にくいと考えられる。

重なった鱗は互いにすべってずれ、モジュール状の柔軟な防護面になる[3]。硬い素材でも、板を小さく分けてずらして重ねれば、全体としては曲がる。柔らかさには、材料だけでなく構造も関わる。

では、板の一枚ずつはどれだけ割れにくいのか。内部の構造を見る。

4. いた いちまいは、われないの?

4. 板の中の層が、ひびの向きを曲げる

4. 内部構造 ── 交差ラメラ構造とひびの偏向

うろこの なかを のぞくと、ひらたい さいぼうが、みっしり かさなった そうに なって います[1]。

うろこの ちからは、その ならびかたから きて いると いわれます。ひびが はいっても、むきの ちがう そうに ぶつかって、ひびの すすむ むきが まがります。ささりにくく、ちからも すいとりやすい つくりです[4]。

ただし、これは かいせつ きじの まとめで、ライオンなどが かんでも たえる、と かんたんに いえる わけでは ありません。

鱗の内部は、3つの領域に分かれています。平らなケラチンの細胞が、密に積み重なった層になっていて、向きが場所によって違います[1]。

向きの違う層があると、ひびは進む向きを曲げられます。突き刺しにくく、力を吸収しやすい構造で、この高い粘り強さは、ケラチンの並び方に由来するとされています[4]。

もうひとつ、粘り強さには条件があります。それが水分です。

鱗の内部は、ケラチン化した細胞の形状と向きによって3つの領域に分けられ、扁平な細胞が密に積み重なった層をなす。多くのケラチン素材と異なり、約5μmの交差ラメラ構造と約50μmの交差繊維をもつ[1]。

向きの異なる層があると、ひびは進む向きを変えられ、貫通しにくくなる。高い破壊靱性(ひびが広がりにくい性質)は、素材そのものでなく、ケラチンの並び方に由来するとされる[4]。

ただし、この点は解説記事による整理で、個々の実験値は本文では扱わない。ライオンの咬みつきにも耐えるという説明も、実験そのものではなく、論文の図の場面から来ている。

この性質は、水分量にも左右される。

5. みずを ふくむと、どう なるの?

5. 湿ると、粘り強くなる

5. 含水度依存性 ── 湿度が高いと破壊靱性が上がる

うろこの ちからは、すいぶんの りょうで かわります。しめった ほうが、ねばり づよく なると いわれます[4]。

つめも、かわくと われやすく、しめると ねばり づよく なります。おふろに はいったあとの つめは、やわらかい でしょう。うろこも、にた ところが あるようです。

つめと おなじ ざいりょうの いたが、ならびかたと、すいぶんで、からだを まもる よろいに なって いる。ふしぎですね。

鱗の力学的な性質は、水分量に大きく左右されます。湿度が高いと、ひびが広がりにくくなるという報告があります[4]。乾いた爪がもろく、潤った爪が粘り強いのに似ています。

爪と同じ材料の小さな板が、ずれて重なる並び方、中の層、水分の力を借りて、体を守る鎧になっている。丸まるという動きは、その全部を使って成り立っているのです。

鱗の力学的性質は含水度に強く依存し、湿度が高いほど破壊靱性が向上するとされる。乾いた爪が脆く割れ、潤った爪が粘り強いのと似た関係である[4]。

Wang らの引っぱり試験では、引張強さ60〜100MPa、力学的応答は方向によらない(横等方性)と報告され、含水度への依存が大きいとされる[1]。60〜100MPaは、断面1mm²あたり60〜100Nの力に相当する。試験条件で値が変わるため、数値は目安である。

丸まる防御は、爪と同じ材料の板を、六角形状の重なり・層構造・含水度が支えることで成り立っている。原理は分かってきたが、柔軟性と強度の折り合いは、種や湿度による違いを含め、なお調べる余地がある。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

おなじ おおきさの かみの カードか ふせんを 10まい ようい します。ぴったり よこに ならべて、ペットボトルに テープで とめながら まきつけて みます。つぎに、おなじ まいすうを すこしずつ ずらして かさねて、おなじ ところまで まきつけます。すきまの できかたを くらべて みましょう。

出かけてできること

まつぼっくりを 見つけたら、かさの ひとつ ひとつが どう かさなって いるか、よく 見て みましょう。センザンコウの うろこは、まつかさの ように なって いると いわれます。

こうしきの 情報じょうほう

どうぶつえんや ずかんの センザンコウの ページにも、ヒントが あります。

今日できること

同じ大きさの紙のカードか付箋を10枚ほど用意します。隙間なく横に並べてペットボトルにテープで留めながら巻きつけたときと、同じ枚数を少しずつずらして重ね、同じ範囲まで巻きつけたときで、隙間の出方を比べてみてください。

出かけてできること

松ぼっくりを見つけたら、鱗片がどう重なっているかを観察してみましょう。センザンコウの鱗が松かさ状と説明されているのは、この重なり方が似ているからでしょう。

公式情報

動物園や図鑑のセンザンコウの解説を読んで、鱗の重なりや丸まり方を調べてみてください。

今日できること

紙のカードを同じ枚数ずつ用意し、隙間なく並べたものと、ずらして重ねたものを、同じ範囲を覆うようテープで円筒に留めて巻きつけ、隙間の出方を比べる。鱗が、板を小さく分けて重ねることで柔軟性を得ている理由を、手で確かめられる。

出かけてできること

松ぼっくりの鱗片の重なりを観察し、センザンコウの鱗の配置(六角形状に並び、上下の3枚と重なる)と比べる。

公式情報

動物園や図鑑のセンザンコウの解説を読み、鱗の重なりや体の丸め方が種によって違うかを調べる手がかりにするとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

今回は、鱗の重なり・材料・内部構造は学術論文(中国センザンコウとアフリカ樹上性センザンコウが対象)と解説記事を突き合わせた。水分の影響は解説記事による。日本国内の動物園での展示や観察の記録は確認できていない。

  1. Wang et al. 2016, Acta Biomaterialia 41:60-74(センザンコウの鱗の構造と力学) https://meyersgroup.ucsd.edu/papers/journals/Meyers 425.pdf (重なり方・材料・内部構造・名前の由来・鱗の範囲)
  2. コトバンク センザンコウ(日本大百科全書ほか) https://kotobank.jp/word/センザンコウ-3157342 (丸まる防御・松かさ状の鱗)
  3. AskNature Scales provide flexible, strong protection https://asknature.org/strategy/scales-provide-flexible-strong-protection/ (すべりとずれによる柔軟性)
  4. Atlas of Science Internal structure of scaly armor enables bite resistance in the African pangolin https://atlasofscience.org/internal-structure-of-scaly-armor-enables-bite-resistance-in-the-african-pangolin/ (ケラチン・層構造・水分の影響)

なおした ところ

更新履歴

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