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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

くじゃくの オスは、どうして 大きな はねを ひろげるの?

クジャクの飾り羽は、なんのためにあるのか ── ダーウィンの悩みと、まだ続く研究

クジャクの飾り羽は、メスに選ばれるためか ── ダーウィンの手紙(1860年)から目玉模様をめぐる実験(1994〜2013年)まで

分野:生きもの

くじゃくの オスは、ながくて きれいな はねを ひろげます。でも、あの はねは、てきから にげる ときには じゃまに なりそうです。

ダーウィンという 人は、あの はねを 見ると、気分が 悪く なると 手紙に 書きました。どうして なのか、いっしょに 見て いきましょう。

クジャクのオスが広げる大きな飾り羽は、敵から逃げるには邪魔になりそうです。ダーウィンは、この羽を見ると気分が悪くなる、と手紙に書きました。

その悩みから生まれた考えと、「メスは何を見て選ぶのか」を調べた実験や観察を、順にたどります。実験どうしで結果が割れているところも、そのまま紹介します。

クジャクのオスの飾り羽は、生き残りに不利に見える。ダーウィンは1860年の手紙で、この羽の1枚を見るたびに気分が悪くなる、と書いた[1]。この悩みが、のちに性選択の考えへつながった。

この記事では、羽の正体と生え変わりを確かめ、メスが何を基準に選ぶのかを調べた1994年・2008年・2011年・2013年の研究を並べる。結果は一致しておらず、いまも研究が続いている点を、確かなことと分けて書く。

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1. 「見ると 気分が 悪く なる」と 書いた 人

1. ダーウィンが「気分が悪くなる」と書いた羽

1. 1860年、アサ・グレイ宛の手紙 ── 生存に不利に見える羽

1860ねん、ダーウィンは 友だちに 手紙を 書きました。「くじゃくの はねを 一まい 見る たびに、気分が 悪く なる」と いう 手紙です[1]。

ダーウィンは、生きものが どう 生きのこるかを 考えて いた 人です。あんなに 大きくて 目立つ はねは、てきに 見つかりやすく、生きのこるのに むずかしそうに 見えました。

それでも、オスは その はねを もって います。なぜでしょうか。

1860年4月3日、ダーウィンは友人のアサ・グレイに宛てた手紙に、クジャクの羽の1枚を見るたび気分が悪くなる、と書きました[1]。ここでいう「羽」は、尾羽全体ではなく、1枚の羽のことです。

ダーウィンは、生き物がどう生き残るかを考えていました。大きくて目立つ羽は、敵に見つかりやすく、動くにも重そうです。生き残りの考え方では説明しにくいものでした。

それなのに、なぜオスはこの羽を持っているのでしょうか。

ダーウィンは1860年4月3日付のアサ・グレイ宛の手紙に、「クジャクの尾の羽を1枚見るたび、見ている間ずっと気分が悪くなる」という趣旨のことを書いた[1]。ここで問題になっているのは、feather、つまり羽1枚である。

自然選択の考えでは、生き残りやすい特徴が残ると説明される。大きく目立つ飾り羽は、この説明に合わないように見えた。ダーウィンの悩みは、生存に不利に見える特徴が、なぜ残ったのかという問いだった。

2. あの はねは、しっぽでは なかった

2. 「尾」ではなく腰の羽 ── 春に生え、毎年生え変わる

2. 上尾筒と繁殖期 ── 尾羽ではない飾り羽と、生え変わり

くじゃくが ひろげる、あの ゆうめいな はね。じつは、しっぽの はねでは ありません。こしの 上から はえて いる、ながい はねです[2]。

数は 150まいぐらいで、ひろげると、体ぜんたいの 長さの 6わりより 長く なります。赤や 青や 金いろの、目玉のような もようが あります[3]。

オスが この はねを ひろげるのは、春から 夏の はじめごろです。それが おわると はねは ぬけおちて、また 次の 春に むけて はえかわります[2]。一年じゅう ひろげて いる わけでは ありません。

クジャクのオスが広げる大きな羽は、本来の尾羽ではありません。「上尾筒(じょうびとう)」と呼ばれる、腰のあたりから生える羽です[2]。

約150枚あり、広げると全体の長さの6割を超えます。赤・青・金などの、目玉のような模様があります[3]。数や長さは資料によって書き方に幅があるので、「約」と考えてください。

オスがこれを広げてメスに見せるのは、繁殖期の3〜7月ごろです。繁殖期が終わると羽は抜け落ち、オスもメスに似た体つきになって、翌年の春に向けて生え変わります[2]。地域や飼育の環境で、時期は前後します。

クジャクのオスの飾り羽は、尾羽ではなく、腰のあたりから生える上尾筒(じょうびとう)である[2]。約150枚あり、広げると全体長の6割を超え、赤・青・金などの目玉模様がある[3]。枚数や長さの表現は資料で異なるため、ここでは概数として扱う。

繁殖期は3〜7月ごろで、その間にオスは上尾筒を広げてメスにアピールする。繁殖期が終わると抜け落ち、毎年春に向けて生え変わる[2]。時期は野生・地域・飼育で前後する。

毎年抜け落ちて生え変わる、という点は、この羽を持つことの負担になる可能性がある。

3. ダーウィンの 考え ── メスが えらんで いるのでは?

3. ダーウィンの答え ── メスが選ぶから、羽は大きくなった?

3. 性選択の考え(1868年・1871年)── メスの選り好みという仮説

ダーウィンは、ひとつの 考えを だしました。メスが 目立つ オスを えらんで いるなら、オスの はねは、だんだん 大きく なって いくはずだ、という 考えです[1]。

メスの くじゃくは、りっぱに 見える オスを えらんで いて、それで オスの はねが 長く なったのでは ないか、と ダーウィンは 友だちに 書いて います[1]。

ただし これは、ダーウィンの 予想です。そのころは、たしかめられて いませんでした。

ダーウィンは1871年の『人間の由来』で、メスが自分の美しさの基準で最も魅力的なオスを選べば、次の世代の姿が変わっていく、という考えを示しました。これが「性選択」です[1]。

その前の1868年3月、ウォレスへの手紙には、メスのクジャクが豪華に見えるオスを選び、尾が長くなったのだろう、という推測を書いています[1]。

ただし、これは当時は実際に確かめられていない推測でした。一般向けの動物の解説では、いまも「メスは羽の大きさ・色・豪華さで選ぶと考えられている」と書かれていますが[3]、研究者のあいだでは、実験や観察の結果が割れています。

ダーウィンは1868年3月のウォレス宛の手紙で、メスのクジャクが豪華に見えるオスを選び、尾が長くなったのだろうと推測した[1]。1871年の『人間の由来』では、メスが自分の「美の基準」で最も魅力的なオスを選べば、次世代の姿が変わるという性選択の考えを示した[1]。

これは当時、実証されていない推測だった。一般向けの解説には「メスは大きさ・色・豪華さで相手を選ぶと考えられている」という書き方が残るが[3]、以下に見るように、実験・観察の結果は割れている。

4. 目玉の もようを とって みたら

4. 目玉模様を取り除く実験(1994年)

4. Petrie & Halliday(1994年)と Petrie の観察 ── 目玉模様の数と交尾

それから 100年より あとの 1994ねん。ある 研究けんきゅうで、オスの はねから 目玉の もようを 20こぐらい とる 実験じっけんが おこなわれました[4]。

すると、もようを とった オスは、とらなかった オスよりも、メスと ペアに なりにくく なりました[4]。

メスは 目玉の もように 気づいて いる のかも しれません。ただ、これは ひとつの 研究の けっかです。

ダーウィンの推測から100年以上たった1994年、ペトリーとハリデーは、オスの羽から外側の目玉模様を約20個以上取り除く実験を行いました[4]。取り除いたオスは、何もしなかったオスより、交尾に成功する割合が下がったと報告されています。

ペトリーらの観察では、メスは必ず複数のオスを訪ねてから相手を決めていました。11例中10例で、訪ねたオスのうち目玉模様の数が最も多いオスと交尾しています[5]。ただし11例という小さな観察です。

「目玉模様の数がメスの選ぶ手がかりになる」という考えを支える結果でした。では、ほかの群れでも同じだったのでしょうか。

Petrie & Halliday(1994年)は、オスの外側の目玉模様を約20個以上取り除く実験を行い、処置を受けたオスは、処置を受けていないオスより交尾の成功が下がったと報告した[4]。20個は「約20個以上」という条件つきの数で、それより少ない場合の結果は、ここでは示されていない。なお、この研究の原論文の要旨は認証のため直接確認できず、大学の解説を通して確かめた。

Petrie 自身がまとめた観察では、メスは必ず複数のオスを訪ねたうえで交尾し、11例中10例で、訪ねたオスのうち目玉模様の数が最も多いオスが選ばれた[5]。11例と小さい観察であり、次に見る別の群れの結果とは食い違う。

5. 7ねん 見つづけたら…

5. 7年間の観察で、目玉模様の数は関係なかった(2008年)

5. Takahashi ら(2008年)── 半野生の群れの7年間の観察

2008ねん、日本の 研究者たちが、べつの 調べかたを しました。しずおかけんの 公園に いる、はんやせい(にんげんに かわれながら 野生に ちかい くらし)の くじゃくの むれを、7ねん 観察かんさつしたのです[6]。

すると、はねの 長さや 目玉の もようの 数は、オスが ペアに なれるかどうかと、つながって いませんでした。よく はねを ふるわせる オスの ほうが、ペアに なれて いました[6]。

では、メスは はねを 見て いないのでしょうか。そうとは 言えません。この むれでは、オスの はねの ちがいが 小さかった、と 言う 人も います。

2008年、高橋らは、静岡県の公園にいる半野生のクジャクの群れを、1995〜2001年の7年間観察しました[6]。尾の長さ・目玉模様の数・左右のつり合いは、オスの交尾の成功をうまく説明できませんでした。成功が多かったのは、羽をよく震わせるオスでした。

この結果から「メスは飾り羽を気にしない」とまでは言えません。この群れではオスの羽の差が小さかったのでは、という指摘があります。

同じクジャクを調べて、なぜ結果が割れたのか。次に、実験をやり直した研究を見ます。

高橋ら(2008年、Animal Behaviour)は、静岡県の公園にいた半野生の群れを1995〜2001年の7年間観察した。尾の長さ・目玉模様の数・左右対称性は、オスの交尾成功を説明しなかった。成功が多かったのは、羽をよく震わせるオスだった[6]。原論文の要旨は取得できず、報道・大学の解説で確認した。

ただしこの結果から「メスは飾り羽を気にしない」と断定はできない。集団内でオスの尾の差が小さかった点も指摘されている。1994年の実験(目玉を人為的に大きく減らした)と、この観察(自然な範囲の個体差を見た)では、比べている差の大きさが異なる可能性がある。

6. やりなおした 調べと、メスの 目

6. 実験のやり直しと、メスの視線(2011年・2013年)

6. Dakin & Montgomerie(2011年)と Yorzinski ら(2013年)── 「数」より「見る場所」

2011ねん、べつの 研究者が、目玉の もようを へらす 実験じっけんを やりなおしました。目玉を たくさん へらした オスは、ペアに なりにくく なりました。でも、ふつうの はねの オスの なかでは、目玉の 数では えらんで いませんでした[7]。

2013ねんには、メスの 目線を きかいで しらべる 研究も ありました。メスは、オスに すぐ ちかくで さそわれる とき、はねの 下がわを おもに 見て いました。下がわを かくすと、上がわを 見て、とおくから ちかづきました[8]。

くじゃくの はねは、とおくから 見える 大きな かんばんと、ちかくで 読む 小さな 文字の ように、はたらきが ちがうのかも しれません。ただし 本当は、まだ はっきり しません。

2011年、ダキンとモンゴメリーは目玉を取り除く実験をやり直しました。目玉を大きく減らしたオスは交尾が少なかった一方で、ふつうの範囲の尾を持つオスの間では、目玉の数で選んでいる様子は見られませんでした[7]。目玉の数のばらつきの多くは、羽の折れや脱落によるものでした。

2013年の視線追跡では、メスは近くで求愛を受けるとき、主に尾の下側を見ていました。頭や冠羽、上側はほとんど見ていません。下側を隠すと、メスは上側を見て遠くから近づきました[8]。上側は遠くから引きつける合図、下側は近くで見るところ、という解釈が出ています。

遠くから見える看板と、近くで読む小さな文字のような分担かもしれません。ただし、羽が何の役に立つかの決着はついていません。

Dakin & Montgomerie(2011年)は目玉除去実験を再実施し、目玉を大きく減らしたオスは交尾が少なかった一方、通常の範囲の尾では目玉の数で選んでいないと報告した。成鳥の目玉の最大数は約165〜170個で、数のばらつきの多くは羽の折れや脱落によるとされる[7]。1994年の結果は、極端に減らした場合には再現されたが、自然な個体差の範囲では選択の手がかりとは言えない、という形で整理できる。ただし、原論文の要旨は検索結果の抜粋で確かめた。

Yorzinski ら(2013年、J Exp Biol)の視線追跡では、メスは近距離の求愛時に主に尾の下側を見て、頭・冠羽・上側はほとんど見なかった。下側を隠すと、上側を見て遠くから近づいた[8]。上側は遠距離での誘引信号、下側は近距離での評価に使われる、と解釈されている。尾を震わせる動きがメスの注意を引く点は、2008年の観察でよく震わせるオスが成功していた結果と重なる。

「目玉模様が何に役立つか」は、ここで紹介した研究だけでは決められない。

7. じぶんでも 見て みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら ── 原典に当たるなら

くじゃくの いる 動物園や 公園に 行けたら、おうちの 人と いっしょに 見て みましょう。いきなり ひろげて くれる とは かぎりません。はねが ぬけて いる ときも あります。

もし ひろげて いたら、はねの ついて いる ばしょが、こしの 上か、しっぽか、たしかめて みて ください。オスが はねを ふるわせて いるかも、見て みましょう。

行けない ときは、ずかんや しゃしんで、はねの ついて いる ばしょを 見て みましょう。

クジャクを見られる動物園や公園があれば、次のことを見てみてください。羽を広げていない時期もあるので、見られなくても気にしなくてかまいません。

  • 羽が腰のあたりから生えているか、尾からか。
  • オスが羽を広げるとき、震わせているか。
  • メスは、オスのどこを見ているように見えるか。

行けなければ、写真や図鑑で、羽の付け根の位置を確かめるだけでも、ダーウィンが悩んだ羽の正体に近づけます。

まず、日本語の図鑑や動物園の解説の写真で、羽の付け根の位置と、目玉模様の並び方を見比べてみてほしい。目玉模様はどの羽にも同じようにあるのか、羽の端に近いほど目立つのか、自分の目で確かめられる。ダーウィンの手紙や1994年・2008年・2011年・2013年の研究の原典は、巻末の情報源の題名・雑誌名から探せる[1][4][6][7][8]。

国内の動物園の解説(野毛山動物園)は、上尾筒や繁殖期の説明が日本語で読める[2]。目玉模様の数と成功を結びつけた研究と、結びつかなかった研究が、なぜ割れたのかを、自分なりに考えてみてほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

手紙の解説・動物園の解説・論文の要旨・報道。URLは調べた日(2026-09-29)に確認したもの。論文は要旨が取得できなかったものがあり、大学・報道の解説で確認した。

  1. Darwin Correspondence Project, "Sexual selection". https://www.darwinproject.ac.uk/commentary/evolution/sexual-selection (1860年アサ・グレイ宛、1868年ウォレス宛の手紙、『人間の由来』の性選択の考え)
  2. 野毛山動物園(横浜市)ブログ「クジャク」。 https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/details/post-11458.php (上尾筒・繁殖期・生え変わり)
  3. ナショナルジオグラフィック日本版「クジャク」(2014年12月18日)。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428956/ (羽の大きさ・目玉模様、一般向けの「メスが選ぶと考えられている」という説明)
  4. Petrie, M. & Halliday, T. (1994) Experimental and natural changes in the peacock's (Pavo cristatus) train can affect mating success. Behavioral Ecology and Sociobiology 35:213-217. https://link.springer.com/article/10.1007/BF00167962 (目玉模様を約20個取り除く実験。要旨は認証で取得できず、大学の解説で確認)
  5. Petrie, M. (2021) Frontiers in Ecology and Evolution(Perspective)。 https://www.frontiersin.org/journals/ecology-and-evolution/articles/10.3389/fevo.2021.786868/full (メスの訪問行動と、11例中10例の観察)
  6. Takahashi, M. et al. (2008) Animal Behaviour。報道: ABC Science (2008-03-27)。 https://abc.net.au/science/articles/2008/03/27/2200822.htm (半野生の群れの7年間の観察。原論文の要旨は取得できず、報道で確認)
  7. Dakin, R. & Montgomerie, R. (2011) Animal Behaviour 82:21-。解説: ScienceDaily (2011-04-27)。 https://www.sciencedaily.com/releases/2011/04/110427131926.htm (目玉除去実験のやり直し、目玉の最大数、数のばらつきの原因)
  8. Yorzinski, J. L. et al. (2013) Through their eyes: selective attention in peahens during courtship. Journal of Experimental Biology 216:3035-3046. https://journals.biologists.com/jeb/article/216/16/3035/11559/Through-their-eyes-selective-attention-in-peahens (メスの視線追跡。要旨の抜粋で確認)

なおした ところ

更新履歴

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