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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

義足ぎそくは どうして あるいたり はしったり できるの?

義足はどうして歩いたり走ったりできるのか ── ソケット・膝・バネの3つの分担

義足はどう設計されるのか ── ソケット・膝継手・足部と競技用板バネ

分野:技術

ふつうの 義足ぎそくには、かかとが あります。ところが、はしる ための 義足ぎそくには、かかとが ありません。

かかとが ない のに、どうして はしれるのでしょうか。義足ぎそくが どんな 部分で できて いて、それぞれ なにを して いるのかを、見て いきます。

日常用の義足には、かかとがあります。ところが、競技用の義足にはかかとがなく、つま先で跳ねるように走ります[6]。同じ「足」なのに、なぜここまで形がちがうのでしょうか。

その答えは、義足の中の役割分担にあります。体を支える部分、膝の曲がりを受け持つ部分、バネの足。3つを順に見て、走る義足の板バネの設計と、「バネが強ければ速いのか」という問いまで進みます。

日常用の義足の足部にはかかとがあるが、競技用にはかかとがなく、つま先で跳ねるように走る[6]。この差は、義足が「体を支える」「膝を制御する」「エネルギーを蓄えて返す」という別々の部品の組み合わせで成り立っていることから説明できる。

ソケット・膝継手・足部の役割を整理し、1980年代以降のカーボン製板バネの設計、体重や走り方に合わせる調整、そして「エネルギー返還率が高いほど速いのか」という論点を、出典つきでたどる。

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1. 義足ぎそくは 3つの ぶぶんで できて いる

1. 義足は「支える・曲げる・跳ねる」の部品でできている

1. 義足は何でできているか ── ソケット・継手・足部

義足ぎそくは、1つの かたまりでは ありません。いくつかの 部品を つないで できて います。

この ページでは、3つに しぼります。からだと つながる「ソケット」、ひざが ない 人の 義足ぎそくに つく「ひざ継手つぎて」、つま先の ほうの「足部」です。

ぜんぶ ちがう しごとを して います。ひとつでも うまく いかないと、あるくのは むずかしく なります。

義肢(ぎし)は、いくつかの構成要素を組み合わせて作られます。MSDマニュアルには、ソケット、体につなぎとめる懸垂システム、制御システム、関節にあたる継手、先端の足部や手部などが挙げられています[2]。

この記事では、足の義肢のうち、ソケット、膝の継手、足部の3つに絞ります。体に近いほうから順に、支える、曲がりを受け持つ、地面と向き合う、という分担になっています。

義肢の構成要素には、ソケット、懸垂システム、制御システム、継手、先端部(足部・手部)などがある[2]。下肢の義足ではこのうち、ソケット(体との接点)、膝継手(大腿切断の場合の屈伸の制御)、足部(地面との接点)が機能の中心になる。

以下、この3つを体に近い順に扱う。競技用の板バネは、最後の足部の一種にあたる。

2. ソケットは どうして 1日の なかでも ととのえるの?

2. ソケット ── 体の形は1日のうちでも変わる

2. ソケット ── 残存肢との接点と、容積変化

ソケットは、のこった あしを 入れる ところです。からだを ささえて、あるく ときの 力を のこった あしに つたえます。いちばん だいじな 部品と いわれて います。

のこった あしの 大きさは、よく うごいた あとや、天気などで、1日の うちでも 少し かわります。だから、ソケットは その 大きさの かわり方に 合わせて、ととのえる ひつようが あります。

くつが きつく なったり ゆるく なったり するのと、すこし にて います。ただし ソケットは、からだの 重さを ささえる ぶん、ずっと むずかしい 合わせ方が いります。

ソケットは、切断された脚の残った部分(残存肢)を包み、体重を支え、動くときの力を残存肢に伝えます。MSDマニュアルは、これを最も重要なコンポーネントとしています[1]。

ここに難しさがあります。残存肢の大きさは、活動量や天候などで1日の中でも変わるのが正常な過程だと説明されています[1]。夕方に足がむくんで靴がきつくなる経験に似ていますが、ソケットは体重を預ける部品なので、合わなければ痛みや動きにくさに直結します。

そのため、ソケットは一人ひとりの体に合わせて作られ、あとから調整されるのがふつうだとされます。

ソケットは残存肢を収め、体重を支え、動作時の圧力や力を残存肢へ伝える。MSDマニュアルは最も重要なコンポーネントとする[1]。

設計上の難所は、残存肢の大きさが活動や天候などにより1日の中でも正常な過程として変化する点である[1]。固定された形状の硬い容器が、変動する軟部組織に密着し続ける必要があるため、ソケットには継続的な適合の調整が要る。

なお、型取りなど製作工程の詳細は、ここでは扱わない。

3. ひざは 「まがる」より 「まがりすぎない」が むずかしい?

3. 膝継手 ── 曲がりすぎない工夫

3. 膝継手 ── 膝折れの防止と油圧・電子制御

ふとももから 先を うしなって、ひざの 関節かんせつも ない 人の 義足ぎそくには、膝ひざの ところに ひざの かわりの 関節かんせつが いります。ここで むずかしいのは、まがる ことより、まがりすぎない ことです。

むかしからの ふとももの 義足ぎそくには、まがった ひざに 体重を かけにくい ものが あり、がくんと 折おれて しまう ことが あります。これを「膝ひざ折おれ」と いいます。とくに 下り坂で ころびやすい、と 報告ほうこくされて います。

そこで、ゆっくり まがる しくみや、ロックする しくみが 作られました。ある ひざの 部品は、油の 入った 筒つつを つかって、ゆっくり あるく ときから はしる ときまで 合わせます。これで 階段かいだんも 1だんずつ のぼり おりが できるように なりました。

大腿(太もも)から先を失い、膝の関節も失った人の義足には、膝継手が必要です。ここで難しいのは、曲げることよりも「曲がりすぎない」ことです。

従来の大腿義足では、曲がった膝に体重をかけられず、膝折れが起こるものがあります。すると階段や坂道を左右の足で交互に昇り降りすることができません。特に下り坂で膝折れして転倒し、けがをする例が多い、と厚生労働省の開発報告に書かれています[3]。

その解決の1つが、同じ報告書で紹介されたNAL-Knee(S)という膝継手です。動力も電子制御も使わず、油圧シリンダーだけで、ゆっくり歩く場面からランニングまで対応するとされます。膝折れ防止、ゆっくり曲がる機能(イールディング)、ロック機構によって、階段の交互昇降ができるそうです[4]。

さらに、コンピューターで制御する膝・足首の継手では、安全性や安定性が高まり、エネルギー消費や近くの関節・脊椎への負担が減るとされています[1]。

大腿切断者の義足では、膝継手が屈伸と安定性を担う。従来の大腿義足は、屈曲した膝に体重をかけられないため膝折れが生じるものがあり、階段や坂道の交互昇降ができず、とくに下り坂での転倒・受傷例が多いとされる[3]。

厚生労働省の自立支援機器開発で報告されたNAL-Knee(S)は、動力も電子制御も用いず、油圧シリンダーによって平地の低速歩行からランニングまで対応する。膝折れ防止、ゆっくり曲がるイールディング、ロック機構により、階段の交互昇降を可能にした高機能膝継手とされる[4]。

一方、マイクロプロセッサー制御の膝・足継手には、安全性・安定性の向上、エネルギー消費の低減、隣接する関節や脊椎への負荷軽減が得られるとの記述がある[1]。機械式(油圧)と電子制御のどちらが適するかは、使う人の活動や生活で変わるとみられるが、比較の根拠は本記事の出典にはない。

5. はしる 義足ぎそくは どんな 形で、どう えらぶの?

5. 走る義足の設計 ── かかとをなくし、体重に合わせて選ぶ

5. 競技用板バネの設計と選定・アライメント

はしる ための 義足ぎそくは、かかとが なくて、つま先で はねる ように はしります。ふつうの 義足ぎそくには かかとが あります。

新しい 板バネの ひとつは、つま先から 土ふまずの ところまで、なみのような カーブに 作られて います。地面に ふれる ところを いつも 同じに して、はね返りを 安定させる ねらいだと 説明せつめいされて います。

板バネは、体重に 合わせて えらびます。ある入門用の 板バネでは、体重 50キロまでの 人には 約やく285グラム、65キロまでの 人には 約やく310グラムの ものが あります。

強い バネを えらべば いい、とは かぎりません。体に 合う バネを えらんで、ならべ方も 調整する ことが、むずかしい 仕事だと いわれて います。

競技用義足は、日常用と違ってかかとがなく、つま先で跳ねるように走ります。国際的な規定では、計算式に基づく長さ、動力を使わないこと、市販品であることが基本とされています[6]。

形の工夫の例として、ミズノと今仙技術研究所の新しい板バネは、つま先から土踏まずにかけて波形のカーブに設計されています。接地部分を一定にして、地面からの反発を安定させる狙いだと紹介されています[7]。

板バネは体重に合わせて選びます。入門向けのKATANAαには体重区分ごとのサイズがあり、L1(体重50kgまで)で板バネのみ約285g、L2(65kgまで)で約310gです。素材は炭素繊維強化プラスチックです[8]。

さらに、体重や競技の特性に合わせて板バネを選び、義足全体の角度や位置を整える「アライメント調整」が、義足でスポーツをするときの難題とされています。この製品では、その選び方と組み付けの情報を結びつけるマッチングの仕組みが開発されました[8]。

競技用義足は日常用と異なりかかとを持たず、つま先で跳ねるように走る。国際規定では、計算式に基づく長さ、動力なし、市販品であることが基本とされる[6]。

形状の一例として、ミズノと今仙技術研究所が開発した板バネは、つま先から土踏まず部にかけて波形のカーブとし、走行中の接地部分を一定にすることで反発を安定させる設計とされる[7]。

板バネは体重区分ごとに選ぶ。入門向けKATANAαは、素材が炭素繊維強化プラスチック、ソールがポリウレタンで、L1(〜50kg)が板バネのみ約285g、L2(〜65kg)が約310gである[8]。この区分は当該製品のもので、一般則ではない。

同じ資料は、体重・競技特性に応じた板バネの選択と組み付け(アライメント:各部品の並びや角度の調整)が義足スポーツの難題であるとし、その情報をマッチングするシステムを開発したと述べる[8]。

6. バネが 強ければ、はやく はしれるの?

6. 「バネが強ければ速い」とは言えない

6. エネルギー返還率と走行の力学 ── 数値の読み方

バネは、ふんだ 力を ためて、かえします。人の あしも、はしる ときは バネのように はねて いると いわれます。

けんきゅうでは、義足ぎそくの バネは、ためた 力の 9わり いじょうを かえした、という ものも あります。でも、しらべ方によって 数字が ちがい、63パーセントから 100パーセントまで ばらつく、とも 書かれて います。

だから、「返す 力が 大きい ほど はやい」とは いえません。体と 走り方に 合うか どうかが、大事に なります。

ランニングでは、人の脚はバネのように振る舞い、跳ねる動きをします。義足の板バネについては、90%を超える弾性エネルギーの返還を示した研究が、論文の中で引用されています[10]。ただし、この数字は引用された先行研究の値です。

英国のボーンマス大学の博士論文では、既存のFlex Run足部のエネルギー返還効率が99%を超えると報告されました。同じ論文は、先行研究の値が63〜100%とばらつくことも示しています[9]。測り方によって値が違うということです。

実際の走りを調べた研究もあります。片側の下腿(すね)に義足を着けたエリートの短距離走者では、義足側の接地中の平均的な垂直方向の力が、もう一方の脚より約9%小さかったと報告されています。脚を振り戻す時間は左右で有意な差がありませんでした[11]。

返還率が高いから速い、という単純な関係ではなさそうです。体に合うバネを選び、走り方に合わせて調整することが欠かせません。

ランニングでは脚がバネのように振る舞う跳ね歩容をとり、義足の板バネについて90%超の弾性エネルギー返還を示した研究が引用されている。ただし、これはMurataらの論文が引く先行研究(Brüggemannら2008、Beckら2016)の値である[10]。

ボーンマス大学の博士論文は、既存のFlex Run足部の返還効率が99%超と報告する一方、先行研究の値が63〜100%と広くばらつくことも示す[9]。測定法により値が変わりうるため、返還率の高さが速さに直結するとは読めない。

片側下腿切断のエリート短距離走者を調べたGrabowskiら(2009)では、義足側の接地中の平均鉛直床反力が健側より約9%小さく、脚の振り戻し時間には有意差がなかった[11]。

競技用義足の性能を人の足首と比べる議論には、方法への異論もあり、評価は分かれる。数値を比べるときは、何をどう測った値かを原典で確かめる必要がある。

7. もっと しりたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

いえで できる ことを、ひとつ ためして みましょう。いすに すわって、ゆかに 足の うらを つけ、かかとを ゆっくり 上げ下げして みます。

あしくびが、バネのように のびちぢみ する ことが 感じられます。はしる ための 義足ぎそくは、その うごきを 板バネに まかせて いる、と 考えると わかりやすく なります。むりを せず、いたく なったら すぐ やめましょう。

図書館や 学校で、「義足ぎそく」の 本や、パラスポーツの 本を 探さがして みるのも いいです。

今日できること:いすに座り、足裏を床につけて、かかとをゆっくり上げ下げしてみます。足首が伸び縮みして、バネのように働くのが感じられます。競技用義足は、この動きの一部を板バネに任せた設計だと考えられます。痛みが出たらすぐやめてください。

出かけてできること:地域の図書館で、義足やパラスポーツの本を探してみます。パラスポーツの大会で、競技用義足の形を見られるかもしれません。

公式情報:MSDマニュアル家庭版の義肢のページ、厚生労働省の自立支援機器開発の報告書などが公開されています。

今日できること:出典欄のうち、日本語の資料から読む。とくに厚生労働省のNAL-Knee(S)報告書は、膝折れの問題設定から設計の狙いまでが日本語でまとまっている[3]。

出かけてできること:図書館で義肢装具学やパラスポーツの本を探す。板バネの返還率など、値が測り方で変わる数字は、Bournemouth大学の論文[9]やGrabowskiら[11]のような原典の方法の節を読むと、何を測った値かが分かる(英語なので、慣れてからでよい)。

公式情報:MSDマニュアル家庭版、厚生労働省の自立支援機器開発の報告書を参照した。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の事実は、次の資料をもとに、自分の言葉で書き直しました。

  1. MSDマニュアル家庭版「義肢のパーツ」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/26-その他の話題/義肢/義肢のパーツ (ソケット・継手の役割)
  2. MSDマニュアル家庭版「義肢のオプション」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/26-その他の話題/義肢/義肢のオプション (義肢の構成要素)
  3. 厚生労働省 自立支援機器開発 NAL-Knee(S)報告 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/cyousajigyou/jiritsushienkiki/H22/S15/15report.pdf (膝折れの問題)
  4. 厚生労働省 自立支援機器開発 NAL-Knee(S)概要 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/cyousajigyou/jiritsushienkiki/H22/S15/15report_01.pdf (油圧膝継手)
  5. 臨床リハ 義肢足部の記事(医書.jp) https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.32118/cr034020113 (エネルギー蓄積型足部)
  6. JST サイエンスポータル http://scienceportal.jst.go.jp/stories/20190329_w04/ (競技用義足の歴史・かかと)
  7. Sportiva パラスポプラス https://sportiva.shueisha.co.jp/paraspoplus/sports/6188/ (板バネの形)
  8. ミズノ・今仙技術研究所 プレスリリース(2021-09-01) https://corp.mizuno.com/sites/corp/files/2022-06/210901_KATANA.pdf (体重区分・アライメント)
  9. Bournemouth University 博士論文 https://eprints.bournemouth.ac.uk/22507/ (エネルギー返還効率)
  10. Murata et al. 2021 Front. Bioeng. Biotechnol. https://www.frontiersin.org/journals/bioengineering-and-biotechnology/articles/10.3389/fbioe.2021.793651/pdf (脚のバネ的な動き)
  11. Grabowski et al. 2009 Biology Letters https://bpb-us-w1.wpmucdn.com/sites.usc.edu/dist/1/927/files/2023/02/BioLetters-2009_uniAmp-1.pdf (短距離走者の力学)

なおした ところ

更新履歴

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