1. なんで ロボットは たおれやすいの?
1. なぜロボットは転びやすいのか
1. 2足歩行の難しさ ── 支える面がせまい
目を つぶって、かた足で 立って みて ください。 すぐに ぐらぐらして しまうはずです。りょう足で 立って いる ときも、じつは からだは 小さく ゆれて いて、 のうと きんにくが たえず ちょうせいして いるのです。
人は、この ちょうせいを むいしきに やって いますが、 ロボットは ぜんぶ、コンピュータに おしえこまなくては なりません。
片足で立つと、ぐらぐらする
目をつぶって、片足で立ってみてください。すぐにぐらぐら してしまうはずです。両足で立っているときも、実は体は 小さく揺れていて、脳と筋肉がたえず調整しているのです。
人は無意識、ロボットはすべて計算
人はこの調整を無意識にやっていますが、ロボットはすべて、 コンピュータに教えこまなくてはなりません。地面と足が 接する面積はとても小さく、そこからはみ出た瞬間に転んで しまいます。
人間が直立するとき、足裏の接地面積はきわめて小さく、 重心はそこから1メートル以上高い位置にあります。この 構造は本質的に不安定で、健常な人でも静止立位のあいだ、 脳と筋肉が絶え間なく微調整を行うことでバランスを保って います。
人間はこの調整をほぼ無意識に行いますが、二足歩行ロボット では、重心の位置・速度・加速度をセンサーで検知し、 その情報にもとづいて関節を制御するという一連の処理を、 すべて明示的に計算する必要があります。
2. さかさまの ふりこ、って なに?
2. 「さかさまのふりこ」で考える
2. 倒立振子モデル ── バランス制御の基本形
ふつうの ふりこは、上から つるされていて、ほうって おいても まん中に もどって きます。でも ロボットの からだは、その ぎゃくで、じくの 上に おもさが のって いる「さかさまの ふりこ」のような かたちです。てのひらの 上に ほうきを たてて、たおれない ように バランスを とる あそびを やった ことは ありますか。ロボットの からだは、 あれと にた じょうたいだと おもって ください。
さかさまの ふりこ(や、てのひらの 上の ほうき)は、 ほうって おくと たおれて しまいます。だから、いつも じくの ねもと(ほうきなら、ささえて いる て)を 少しずつ うごかして、たおれない ように ささえて あげる ひつようが あるのです。
ふつうの振り子と逆の形
ふつうの振り子は、上からつるされていて、放っておいても まん中にもどってきます。でもロボットの体は、その逆で、 軸の上に重さがのっている「さかさまの振り子(倒立振子)」 のような形をしています。
つねに支え続ける必要がある
さかさまの振り子は、放っておくと倒れてしまいます。 だから、いつも軸の根もと(足の接地点)を少しずつ動かして、 倒れないように支えてあげる必要があるのです。ロボット 工学では、このモデルを使って重心の動きを計算し、歩行の 制御に応用しています。
二足歩行ロボットの力学モデルとしてよく使われるのが 「倒立振子モデル」です。支点よりも重心が高い位置にある 振り子は本質的に不安定で、外力を受けなくてもわずかな ずれから倒れていく性質を持ちます。
このモデルでは、ロボット全体を、重心に質量が集中した 倒立振子として単純化して扱います。支点(足の接地点)の 位置を絶えず調整することで、重心の軌道を安定させ、 位置エネルギーと運動エネルギーの変換を利用した効率的な 歩行を目指す考え方です。次章で説明するZMP理論は、この 支点(足裏が地面から受ける力の中心)をどう計画し制御する かという問題に対する、代表的な考え方の1つです。
3. ZMPという かんがえかた
3. ZMP(ゼロモーメントポイント)という考え方
3. ZMP理論 ── 1972年に生まれた歩行制御の基礎
1972年、ユーゴスラビア(いまの セルビアなどの もとに なった 国)の 研究者ブコブラトビッチさんが、ロボットの あしうらの 中に、ある とくべつな 点を おさめつづければ、 たおれにくく あるける、と いう かんがえかたを おもいつき ました[1]。この 点は「ZMP」と よばれて います。
1985年、日本の わせだ大学が、この かんがえかたを つかって、 じっさいに あるく ロボット「WL-10RD」を つくりました [2]。
1972年に考え出された理論
1972年、ユーゴスラビアの研究者ミオミール・ブコブラトビッチ さんが、ロボットの足の裏の中に、ある特別な点をおさめ つづければ倒れにくく歩ける、という考え方を発表しました [1]。この点は「ZMP(ゼロモーメント ポイント)」と呼ばれています。
1985年、早稲田大学が実際に歩かせた
1985年、日本の早稲田大学の加藤一郎さん・高西淳夫さんの 研究チームが、このZMP理論を使って、実際に歩くロボット 「WL-10RD」を完成させました[2]。 この考え方は、その後ホンダのASIMOなど、完成度の高い 二足歩行ロボットのほぼすべてに使われることになります [2]。
ZMP(Zero Moment Point、ゼロモーメントポイント)理論は、 1972年にユーゴスラビア・ミハイロピューピン研究所の ミオミール・ブコブラトビッチらによって提案されました [1]。ZMPとは、重力と慣性力を あわせた合力が接地面と交わる点、いいかえれば床反力の 圧力中心にあたる点です。このZMPを、足裏が地面に接する 範囲(支持多角形)の内側に保つことが、安定して歩くための 重要な条件として扱われます[1]。
支持多角形内を通るZMPの時間的な軌道をあらかじめ設定し、 それに対応する関節の動きを逆算することで、遊脚(振り出す 側の足)や上半身の質量の影響まで厳密に考慮した歩行運動を 設計できます[1]。1985年、早稲田 大学の加藤一郎・高西淳夫の研究チームが、ZMP理論にもとづく 動歩行を「WL-10RD」で成功させ、以降ホンダのASIMOやソニーの QRIOをはじめ、完成度の高い二足歩行ロボットのほぼすべてが、 ZMPを用いた軌道生成と制御を採用してきました [2]。
4. ホンダの ちょうせん ── P1から ASIMOまで
4. ホンダの挑戦 ── P1からASIMOまで
4. ホンダの二足歩行研究 ── P1からASIMOまでの道のり
日本の 会社ホンダは、1986年から 2本足で あるく ロボットの けんきゅうを はじめました。さいしょに 作った「P1」から、 すこしずつ かいりょうを かさね、1996年12月に「P2」を はっぴょうしました[3]。
P2は、せなかの ランドセルのような ぶぶんに コンピュータや でんちを 入れ、コードで つながずに あるける ように なった、 せかい はじめての「人の かたちを した」自立2本あし 歩行ロボットでした[3]。2026年には、 この せかいてきな せいかを たたえて、でんき・でんし ぎじゅつの こくさいだんたい IEEEが「マイルストーン」に みとめました[5]。そして 2000年、 より かんせいどの 高い「ASIMO」が はっぴょうされました [3]。
1986年から始まった研究
日本の会社ホンダは、1986年から2本足で歩くロボットの研究を 始めました。最初に作った「P1」から少しずつ改良を重ね、 1996年12月に「P2」を発表しました[3]。
コードなしで歩いた「P2」
P2は、胴体部分にコンピュータ・モーター駆動装置・電池・ 無線機器をすべて内蔵し、外部とコードでつながずに自立して 歩ける、世界初の人間型自立2足歩行ロボットでした [3]。階段の昇り降りや台車を押す 動作も、無線操作と自動制御で行うことができました [3]。この成果は、2026年4月に 電気・電子技術の国際学会IEEEの「マイルストーン」として 正式に認定されました[5]。そして 2000年、さらに完成度を高めた「ASIMO」が発表されました [3]。
ホンダは1986年から人間型二足歩行ロボットの研究を開始し、 P1(1993年発表)、P2(1996年12月発表)、P3(1997年9月 完成)という段階を経て、2000年にASIMOを発表しました [3]。
このうちP2は、世界初の「人間型自立2足歩行ロボット」と 位置づけられています。それまでの試作機が外部電源やケーブル に接続された状態でしか動作できなかったのに対し、P2は 胴体部にコンピュータ・モータードライブ・バッテリー・無線 通信機器をすべて内蔵し、外部と接続することなく、歩行・ 階段の昇降・台車を押す動作などを無線操作と自律制御によって 行えるようにしました[3]。この自立化 は、二足歩行ロボット研究における技術的なベンチマークを 確立した成果として、2026年4月28日にIEEEマイルストーンに 認定されました[5]。
5. どんな センサーで からだの かたむきを はかるの?
5. センサーで体の傾きを測る
5. IMU ── 加速度とジャイロで姿勢を知る
ロボットの からだの 中には、かたむきや ゆれを はかる 小さな そうちが 入って います。「IMU」と よばれる、 ジャイロセンサー(まわる はやさを はかる)と かそくどセンサー(うごく はやさの へんかを はかる)を あわせた そうちです。
この そうちが、1びょう間に なんかいも からだの かたむきを はかり、たおれそうに なったら すぐに あしの いちを ちょうせいします。
「IMU」という装置
ロボットの体の中には、傾きや揺れを測る小さな装置が 入っています。「IMU(慣性計測装置)」と呼ばれる、 ジャイロセンサー(回転の速さを測る)と加速度センサー (動く速さの変化を測る)を組み合わせた装置です。
1秒間に何度も測って、すぐ調整する
この装置が、1秒間に何度も体の傾きを測り、倒れそうになったら すぐに足の位置や関節の角度を調整します。最新のロボットは、 カメラやレーザーで周りの地形も同時に把握しながら、この 調整を行っています。
現代の二足歩行ロボットの多くは、姿勢を検知するために 「IMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)」を搭載 しています。IMUは、角速度を検知するジャイロスコープと、 並進加速度を検知する加速度センサーを組み合わせた装置で、 両者のデータを融合することで、ノイズに強い姿勢角の推定が 可能になります。
IMUによる姿勢フィードバックは全身制御の中核をなし、外部 からの押し込みや、床面の傾き・凹凸といった不整地でも、 リアルタイムで姿勢を修正し、転倒を防ぐことができます。 近年の人間型ロボットでは、深度カメラ・LiDAR・ステレオ ビジョンといった視覚センサーも組み合わせ、自己位置の推定 と周辺環境のマッピングを同時に行いながらバランスを維持する 設計が広がっています。
6. いまの ロボットは、どう ちがうの?
6. いまのロボットは、どう違うのか
6. 制御方式の変化 ── 強化学習によるロボット制御
さいきんの ロボットは、ZMPの けいさんだけでなく、 コンピュータに 何回も なんかいも れんしゅうを させて、 じぶんで バランスの とりかたを 見つけさせる ほうほうも つかわれて います。これを「きょうかがくしゅう」と いいます。
2026年1月には、アメリカの ロボット会社が つくった 「アトラス」という ロボットが、じどうしゃ こうじょうの 中で、じっさいの さぎょうを して いる ようすが、 テレビばんぐみで しょうかいされました[4]。
「強化学習」という新しい方法
最近のロボットは、ZMPの計算だけでなく、コンピュータに シミュレーションの中で何度も何度も練習をさせて、自分で バランスの取り方を見つけさせる方法も使われています。 これを「強化学習」と呼びます。
工場で働くロボットへ
2026年1月、アメリカのロボット会社ボストン・ダイナミクスが 作った「アトラス」というロボットが、自動車工場の中で実際の 作業をしているようすが、テレビ番組で紹介されました [4]。関節が人間よりずっと大きく 回転できる構造になっていて、 転びそうになっても人間にはできない体勢で持ちこたえたり、 転んでも自分で立ち上がったりできるようになっています [4]。
近年、二足歩行の制御方式には大きな変化が起きています。 従来のZMP理論にもとづく軌道生成に加えて、シミュレーション 環境で試行錯誤を繰り返しながら制御方策を獲得する「強化 学習」を用いる手法が広がっています。
2026年1月、ボストン・ダイナミクスが開発する人間型ロボット 「Atlas」が、ジョージア州にある現代自動車グループの工場で 部品の仕分け作業を行っているようすが、テレビ番組で紹介 されました[4]。Atlasは関節が360度近くまで 回転できる構造を持ち、人間には取れない体勢からでも転倒を 回避したり、転倒してしまっても自力で起き上がったりできる ことが特徴とされています[4]。ZMP という単一の理論だけに頼らず、学習と物理モデルを組み合わせ て頑健性を高める方向へと、二足歩行ロボットの制御は進化を 続けています。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
自分の からだで、バランスを とる かんかくを たしかめて みましょう。
きょう できる こと
- 目を とじて、かた足で 立って みる。 なんびょう たてるか、おうちの人と いっしょに はかって みましょう(あんぜんな ばしょで やって くださいね)。
- 科学かんで ロボットを 見て みる。 近くの 科学かんに、あるく ロボットの てんじが あるか しらべて みましょう。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「ZMPって なに?」だけで じゅうぶんです。
自分の体で、バランスを取る感覚を確かめてみましょう。
今日できること
- 目を閉じて、片足で立ってみる。 何秒立てるか、おうちの人といっしょに測ってみましょう (安全な場所でやってくださいね)。
- 科学館でロボットを見てみる。 近くの科学館に、歩行ロボットの展示や実演があるか 調べてみましょう。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口に なります。「倒立振子って、他にどんな乗り物に使われて いるの?」だけでも十分です。
自分の体のバランス調整を意識的に観察してみると、二足歩行 制御の難しさが実感できます。
手を動かして確かめる
- 片足立ちで、体の微調整を観察する。 目を閉じて片足で立ち、足の裏のどこに重心がかかっている かを意識してみると、絶え間ない微調整が行われていることを 体感できます。
- 身近な倒立振子を探してみる。 セグウェイや電動一輪車も倒立振子の原理を応用した乗り物 です。仕組みを調べて比べてみましょう。
一次情報にあたる
ホンダやボストン・ダイナミクスの公式サイトでは、開発の 歴史や最新の研究成果が公開されています。ZMP理論と強化 学習、それぞれの手法にどんな得意・不得意があるのかを 比べてみると理解が深まります。
気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。 「P2は1996年、ASIMOは2000年」という年表でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:Wikipediaは百科事典、Hondaは自社の開発史を公表した公式サイト、eWeekはIT・ロボット専門のニュースサイトです。
- Wikipedia「ゼロモーメントポイント」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ゼロモーメントポイント (1972年のZMP理論の提案、定義、歩行制御への応用についての解説)
- Wikipedia「二足歩行ロボット」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/二足歩行ロボット (1985年の早稲田大学WL-10RDによるZMP理論の実証、その後の応用についての解説)
- Honda「ロボット開発の歴史|ASIMO|テクノロジー」。 https://global.honda/jp/tech/ASIMO/history/ (P1・P2・P3・ASIMOの開発年表、P2の自立2足歩行についての公式解説)
- eWeek, “Boston Dynamics' Atlas Humanoid Robot Enters the Factory Floor”(英語)。 https://www.eweek.com/news/boston-dynamics-atlas-humanoid-robot-hyundai/ (2026年1月、現代自動車グループ工場でのAtlasの稼働がテレビ番組で紹介されたことについての報道)
- Honda, “Honda P2 Humanoid Bipedal Robot Recognized as IEEE Milestone”(英語)。 https://global.honda/en/topics/2026/c_2026-04-28aeng.html (2026年4月28日、P2がIEEEマイルストーンに認定されたことについての公式発表)
なおした ところ
更新履歴
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