1. 空気の ない 宇宙で、なぜ すすめるの?
1. 空気のない宇宙で、なぜ進めるのか
1. 空気のない宇宙で、何を押して進むのか ── 作用・反作用の法則
ふうせんの 口を はなすと、中の 空気が いきおいよく 出て いって、ふうせんは 空気とは ぎゃくの ほうこうに とんで いきます。ボートに のって 石を 川に なげると、 ボートは 石を なげた ほうこうと はんたいに 少し うごきます。
ロケットが とぶのも、この ふうせんと にた しくみです。 ロケットの 中で もえた ガスを うしろに いきおいよく ふき出す ことで、その はんどうで ロケットは 前に すすみます。おしのける 空気が いらないので、空気の ない 宇宙でも すすめるのです。
風船が飛んでいくのと、同じしくみ
風船の口をはなすと、中の空気がいきおいよく出ていき、風船は空気とは逆の方向に飛んでいきます。これは、ものを後ろに押し出すと、その反動で自分は前に進む「作用・反作用の法則」によるものです。
空気を押しのけなくていい、という強み
ロケットも同じしくみです。ロケットの中で燃料を燃やしてできた高温のガスを、うしろに勢いよくふき出すことで、その反動で前に進みます。飛行機のエンジンとちがい、まわりの空気を押しのける必要がないので、空気のない宇宙でも進むことができるのです。
押しのける空気がない宇宙で、ロケットは何を頼りに進むのでしょうか。答えは、ニュートンの運動の第三法則(作用・反作用の法則)で説明できます。燃料を燃焼させて生じた高温・高圧のガスを後方に高速で噴射すると、その反作用としてロケット本体が前方に押し出されます。
では、燃やすための酸素はどうするのでしょうか。飛行機のジェットエンジンは、まわりの空気を取りこんで燃料と混ぜて燃やすため、空気のない宇宙空間では機能しません。一方ロケットは、燃料を燃やすために必要な酸化剤(酸素など)も自分自身で積んでいます。そのため、まわりに空気がなくても燃焼と推進が可能です。これが、こうした化学ロケットが宇宙空間を進める大きな理由です。
2. 中国で 生まれた、火の や
2. 中国で生まれた「火の矢」
2. ロケットの祖先は、中国の火薬の矢だった
ロケットの もとに なった ものは、いまから 1000年 いじょう 前、中国で 生まれた「火せん」と いう 兵器だと されて います。火やくの 力で とぶ 矢の なかまで、せんそうに つかわれました[1]。
その あと、この ぎじゅつは インドを へて イギリスに つたわり、 19世紀の はじめに「コングリーヴロケット」と いう へいきに なりました。アメリカの こっかの うたに、この ロケットの ことが うたわれて いる ほど、有名な へいきでした [1]。
1000年前の中国で生まれた「火箭」
ロケットのもとになったのは、西暦1000年ごろ中国で生まれた「火箭(かせん)」という兵器だとされています。火薬の力で飛ぶ矢のなかまで、1232年にはモンゴル軍との戦いで実際に使われた記録が残っています[1]。
インドからイギリスへ、コングリーヴロケット
この技術はインドを経てイギリスに伝わり、19世紀初め、ウィリアム・コングリーヴによって軍事用の「コングリーヴロケット」に発展しました。1814年のボルティモアの戦いで実戦投入され、アメリカの国歌『星条旗』の歌詞にもその様子が歌われています[1]。
この原理を最初に使ったのは、宇宙船ではなく兵器でした。ロケットの起源は、西暦1000年ごろの中国で発明されたとされる「火箭(かせん)」にさかのぼります。火薬の推進力を利用したこの兵器は、1232年のモンゴル軍との戦いで使用された記録があり、その後の14世紀半ばには、焦玉によって多段式ロケットの原型も作られたとされています[1]。
では、この火薬の矢は、その後どこへ伝わったのでしょうか。技術はインドを経由してイギリスに伝わり、19世紀初頭、ウィリアム・コングリーヴによって軍事用ロケットとして改良されました。「コングリーヴロケット」と呼ばれるこの兵器は、1814年のボルティモアの戦いで実戦投入されました。その様子は、アメリカ国歌『星条旗』の歌詞("the rockets' red glare")に記録されています[1]。
3. わらわれた はつめい、49年後の あやまり
3. 笑われた発明と、49年後の訂正
3. なぜ新聞は、ゴダードの研究を酷評したのか(1926年)
1926年3月16日、アメリカの ロバート・ゴダードと いう 人が、はじめて えきたい 燃料の ロケットを うちあげました。とんだ 高さは わずか 12メートル、とんだ じかんは 2.5びょうでした[2]。
でも、ある 新聞は、ゴダードの けんきゅうを ばかにして、 きじで わらいものに しました。それから 49年後の 1969年、アポロ11号が 月へ むけて うちあげられた つぎの日、その 新聞は 「まちがって いたのは わたしたちでした」と、あやまりの きじを のせました[2]。
1926年、12メートルを飛んだ挑戦
1926年3月16日、アメリカの発明家ロバート・ゴダードが、世界で初めて液体燃料ロケットの打ち上げに成功しました。飛んだ高さはわずか約12メートル、飛行時間は2.5秒でした[2]。
新聞にばかにされてから、49年後の訂正
しかしニューヨーク・タイムズ紙は1920年、ゴダードの研究を「基本的な物理法則も分かっていない」と酷評する記事をのせていました。それから49年後の1969年7月17日、アポロ11号が月に向けて打ち上げられた翌日、同紙は「訂正」という見出しの記事で、みずからの誤りを認めました[2]。
宇宙をめざす挑戦は、最初は笑われました。1926年3月16日、ロバート・ゴダードはマサチューセッツ州の農場で、世界初の液体燃料ロケット(ガソリンを燃料、液体酸素を酸化剤とする)の打ち上げに成功しました。ただし、到達高度は約12メートル、飛行時間2.5秒、飛行距離は約56メートルにすぎませんでした[2]。
批判は、この成功の前から始まっていました。ゴダードは1919年の著書で宇宙への到達を論じましたが、ニューヨーク・タイムズ紙は1920年1月、「真空中では反動で進めないはずだ」という誤った物理理解にもとづき、彼の研究を酷評する社説を掲載したのです。ところが、この評価は覆ります。49年後の1969年7月17日 ──アポロ11号打ち上げの翌日──、同紙は「訂正」という記事を掲載し、真空中でもロケットは推進できることを認め、誤りを謝罪しました[2]。
4. せんそうの 中で、宇宙に とどいた ロケット
4. 戦争の中で、宇宙に届いたロケット
4. 兵器のロケットが、はじめて宇宙に届いた(V2、1944年)
だい2じ せかいたいせんの あいだ、ドイツは「V2ロケット」 と いう へいきを つくりました。中心と なって つくった 人は、フォン・ブラウンと いう わかい けんきゅうしゃです。 このロケットは 多くの まちを こうげきする ために つかわれ、多くの 人が ぎせいに なりました。
1944年6月20日、この V2ロケットの 1つが、地上から 100キロメートルより 上まで とびました。これは、空と 宇宙の さかいめの めやすを こえた 高さです。人が 作った ものとして はじめて 宇宙に とどきました [3]。へいきとして 作られた ロケットが、はからずも 宇宙へ とどいた しゅんかんでした。
戦争のための兵器として開発
第二次世界大戦のあいだ、ドイツは「V2ロケット」という兵器を開発しました。中心となったのは、若い研究者ヴェルナー・フォン・ブラウンです。多くの都市を攻撃するために使われ、大きな被害を出しました。
1944年、はからずも宇宙に到達
1944年6月20日、テスト飛行で打ち上げられたV2ロケットの1機が、宇宙空間とされる高度100キロメートル(カーマンライン)を超え、人類が作ったものとして初めて宇宙に到達しました[3]。兵器として開発された技術が、結果的に宇宙への扉を開いた出来事でした。
宇宙に最初に届いたのは、探査機ではなく、戦争のために作られた兵器でした。第二次世界大戦中、ドイツは弾道ミサイル「V2ロケット(A4)」を開発しました。中心人物は若手研究者ヴェルナー・フォン・ブラウンで、1930年代からベルリンで液体燃料ロケットの研究を進めていた人物です。V2は多数の都市攻撃に実戦投入され、多くの犠牲者を出しました。また、その製造には強制労働がともなうなど、開発と利用の両面で多くの悲劇を生んだ兵器でもあります。
では、そのV2が宇宙に届いたのは、いつのことなのでしょうか。1944年6月20日、テスト機「MW 18014」が高度約174〜188キロメートルに達し、人類が製造した物体として初めて、宇宙空間の目安とされる高度100キロメートル(カーマンライン)を超えました[3]。戦後、フォン・ブラウンはアメリカに移り、のちのアポロ計画で中心的な役割を果たすことになります。
5. 米ソが きそった、宇宙への みちのり
5. 米ソが競った、宇宙開発競争
5. 小さな衛星の衝撃は、アメリカを何に向かわせたのか
1957年10月4日、ソビエトれんぽう(いまの ロシアなどに わかれた 国)は、 「スプートニク1号」と いう じんこうえいせいを、 はじめて うちゅうに うちあげる ことに せいこうしました [4]。
これに おどろいた アメリカも 宇宙かいはつを いそぎ、 1969年、アポロ11号で 人を つきに おくる ことに せいこうしました。ソれんと アメリカが きそいあった この じだいを「宇宙かいはつきょうそう」と よびます。
1957年、ソ連が人工衛星を打ち上げた
1957年10月4日、ソビエト連邦(いまのロシアなどに分かれた国)は、世界初の人工衛星「スプートニク1号」を宇宙に打ち上げることに成功しました[4]。重さ約84キログラムの球形の衛星で、電波を出しながら地球のまわりを回りました。
アメリカも追いつき、月へ
これに衝撃を受けたアメリカは宇宙開発を急ぎ、1969年、アポロ11号で人類を初めて月に送ることに成功しました。ソ連とアメリカが張り合ったこの時代を「宇宙開発競争」と呼びます。
アメリカに強い危機感を与えたのは、1つの小さな衛星でした。1957年10月4日、ソビエト連邦は世界初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功しました。重さ約83.6キログラム、直径58センチメートルの球形の衛星で、20メガヘルツと40メガヘルツの電波を発信しながら地球を周回しました[4]。この成功は「スプートニク・ショック」と呼ばれました。
では、その衝撃は何を生んだのでしょうか。これをきっかけに、アメリカとソ連は宇宙開発で激しく競い合う「宇宙開発競争」の時代に入りました。アメリカは1969年、アポロ11号で人類を初めて月面に着陸させ、この競争は1つの到達点を迎えました。V2ロケットの技術者だったフォン・ブラウンは、このアポロ計画のロケット開発を率いた人物でもあります。
6. くりかえし つかえる、いまの ロケット
6. くりかえし使える、いまのロケット
6. 使い捨てだったロケットを、なぜ着陸させるのか
むかしの ロケットは、1回 うちゅうに 行ったら、それで おわりでした。花火みたいに、1回 きりの つかいすてだったのです。
でも 2015年12月22日、アメリカの スペースXと いう 会社が、うちゅうに 行った あと の ロケットの 1ぶぶんを、 地上に そっと ちゃくりくさせる ことに はじめて せいこうしました[5]。おなじ ロケットを 何回も つかえれば、うちゅうに 行く ひようを へらせます。
これまでは、使い捨てが当たり前だった
昔のロケットは、1回宇宙に行ったらそれで終わりの「使い捨て」が当たり前でした。花火のように、二度と使えないものだったのです。
2015年、着陸に初めて成功
しかし2015年12月22日、アメリカのスペースX社が、打ち上げに使ったロケットの1段目を、地上の着陸場にそっと着陸させることに初めて成功しました[5]。同じロケットを何回も使い回せれば、宇宙に行く費用を大きく減らせます。
打ち上げのたびに、高価な機体を捨てていたら、費用はどうなるのでしょうか。伝統的なロケットは、機体を使い捨てる方式が主流であり、その機体の製造コストが、宇宙開発費用の大部分を占める要因になっていました。
そこで、この状況を変えたのが、アメリカのスペースX社です。2015年12月22日、Falcon 9ロケットは、衛星を軌道に投入したあと、第1段機体を逆噴射させてケープカナベラルの着陸地点に垂直着陸させることに初めて成功しました[5]。2017年3月には、着陸した機体を再整備して再び打ち上げる「再使用」にも成功し、ロケットを航空機のように繰り返し使うという発想が、現実のものになりました。
7. じぶんでも ロケットって 作れる?
7. 自分でもロケットって作れるのか
7. 自作できるのか ── 水ロケットという答え
本物の ロケットを つくる ことは できませんが、おなじ しくみを つかった「水ロケット」なら、じぶんでも とばす ことが できます。
ペットボトルに 水を すこし 入れて、くうきを おしこむと、 水が いきおいよく うしろに ふき出て、その はんどうで ロケットが とんで いきます [6]。ためす ときは、 せんようの はっしゃだいを つかい、かならず 大人と いっしょに、ひろい ばしょで やりましょう。これも、 さいしょの 章で 出て きた「はんどう」の なかまです。
「水ロケット」なら、自分で飛ばせる
本物のロケットを作ることはできませんが、同じしくみを使った「水ロケット」なら、自分で飛ばすことができます。
水と空気の力だけで飛ぶ
よく使われるのは1.5リットルのペットボトルで、水を3分の1ほど入れ、専用の発射台にセットして空気入れで空気を送りこむと、加圧された空気が水を勢いよく後ろにふき出し、その反動でロケットが飛んでいきます[6]。第1章で説明した「作用・反作用」と、まったく同じしくみです。
個人が本物のロケットを製造することは現実的ではありませんが、同じ作用・反作用の原理を利用した「水ロケット」は、学校の授業や自由研究でも広く使われている安全な自作方法です。
よく使われるのは炭酸飲料用の1.5リットルペットボトルで、水を3分の1程度入れ、ノズルと尾翼を取り付けた発射台にセットし、空気入れで内部の気圧を高めます。圧縮された空気が水を高速で噴射することで、その反作用によって機体が飛び出します[6]。発射時は、大人といっしょに、人のいない広い場所で行い、空気を入れているあいだはノズルをのぞきこまないことが、安全に飛ばすための基本です。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
まずは、みぢかな もので「はんどう」を かんじて みましょう。
あんぜんな ばしょで できる こと
- ふうせんを ふくらませて、口を はなして みる。 どっちの ほうこうに とんで いくか、かんさつして みましょう。
- 水ロケットの イベントを さがして みる。 大人と いっしょに、ちかくで 水ロケットを とばせる きょうしつが ないか さがして みましょう(要そうだん)。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「はんどうって なに?」だけで じゅうぶんです。
まずは、身近なもので「反動」を感じてみましょう。
今日できること
- 風船をふくらませて、口をはなしてみる。どっちの方向に飛んでいくか、観察してみましょう。
- 水ロケットのイベントをさがしてみる。大人と一緒に、近くで水ロケットを飛ばせる教室がないかさがしてみましょう(要相談)。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「ゴダードって、他に何を発明したの?」だけでも十分です。
風船や水ロケットで作用・反作用を体感すると、この記事で扱った原理が身近に感じられます。
手を動かして確かめる
- 水ロケットの打ち上げイベントに参加する。自治体や科学館が主催する体験教室がないか、大人と一緒に調べてみましょう(要相談)。
- 風船カーを作ってみる。風船の反動で走る簡単な模型で、作用・反作用を観察してみましょう。
一次情報にあたる
英語版Wikipediaの「Robert H. Goddard」「V-2 rocket」の項目には、この記事で扱った歴史の出典が、注釈つきで掲載されています。
気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「1926年、ゴダードの初飛行」という一文でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:Wikipediaは百科事典です。英語版と日本語版を使い分けています。
- Wikipedia「ロケット」(日本語版)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ロケット (中国の火箭、コングリーヴロケット、ボルティモアの戦いについての解説)
- Wikipedia「Robert H. Goddard」(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_H._Goddard (1926年3月16日の世界初の液体燃料ロケット打ち上げ、ニューヨーク・タイムズ紙による1920年の酷評と1969年の訂正記事についての解説)
- Wikipedia「V-2 rocket」(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/V-2_rocket (V2ロケットの開発とフォン・ブラウン、1944年6月20日の宇宙到達についての解説)
- Wikipedia「スプートニク1号」(日本語版)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/スプートニク1号 (1957年10月4日の世界初の人工衛星打ち上げについての解説)
- Wikipedia「ファルコン9」(日本語版)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ファルコン9 (2015年12月22日の再使用ロケット初着陸についての解説)
- JAXA宇宙教育センター「JAXA×宇宙兄弟 連携企画 いろいろなロケット!」。 https://edu.jaxa.jp/contents/other/rocket/ (水ロケットが、ペットボトルを本体に、水と空気の力で飛ぶしくみについての公式解説)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
- 中学生むけの文章を、問いとつなぎのある書き方に直した(事実・数字・出典は変えていない)。
- 低学年むけで、「インドを経てイギリスへ」の抜けを補い、高さ100キロメートルの意味を足し、水ロケットに大人と一緒に行う注意を加えました。低学年むけと高学年むけで、ソビエト連邦を「いまのロシア」とだけ書いていた説明を「いまのロシアなどに分かれた国」に直しました(先生の目での読み直しによる)。
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