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0.4gの ゴムで、なぜ 30分も とべるの?

0.4gのゴムで30分飛ぶ ── ゴムの力の出方に合わせた工夫

ゴム動力模型機はなぜ長く飛ぶのか ── 1871年の11秒から屋内F1Dの32分9秒まで

分野:技術

1円玉より すこし おもい ひこうきが、へやの なかを 30分いじょう とぶ ことが あります。ちからを だすのは、0.4g いない の ゴムだけです[4]。

え、そんな すこしの ゴムで、どうして? ゴムの ちからの でかたと、ひこうきの くふうを 見ると、その わけが 分かります。

屋内で飛ぶゴム動力の模型機の世界記録として、32分9秒(2017年)が紹介されています[4]。使えるゴムは0.4g以内、機体も最低1.4gという、ごく軽い機体です。

そんなわずかなゴムで、どうして30分も飛べるのでしょうか。1871年に11秒だった模型機との違いを手がかりに、ゴムの力の出方と、プロペラや機体の工夫から、その理由が分かります。

屋内のF1D(ゴム動力)で、Brett Sanbornが2017年9月に32分9秒、2018年3月に27分11秒の世界記録を出したと紹介されている[4]。ゴムは0.4g以内、機体は最低1.4gという軽さで、これほど飛ぶ。

1871年のペノーの模型機は、16gの機体で11秒だった。この差はゴムのどんな性質と、どんな工夫から生まれたのか。ゴムのトルクの出方、プロペラの扱い、ゴム自体の改良という3つの論点を資料でたどると、分かっていることと、議論が残っていることの区別がつく。

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1. 1円玉より おもい ひこうきが 30分 とぶ?

1. 1円玉より少し重い機体が、30分飛ぶ

1. 屋内F1D ── 機体1.4g、ゴム0.4gで32分9秒

たいいくかんの なかを、ちいさな ひこうきが ゆっくり とんで います。はやさは、あるく より ゆっくりです。とんで いる あいだ、ずっと プロペラが まわって います[4]。

ひこうきの おもさは 1.4g いじょうです。1円玉が 1gですから、それより ちょっと おもい くらいです。ゴムは 0.4g いない と きまって います[4]。

それでも とび つづけた じかんの せかい記録きろくは、32分9秒(2017年)と しょうかい されて います[4]。

どうして こんな すこしの ゴムで、30分も とべるのでしょう。まず、ゴムの ひこうきが うまれた ころに もどって みます。

体育館のような広い屋内で、小さな機体がゆっくり飛んでいます。速さは秒速1mに届かないくらい(2〜3フィート毎秒)で、ゆっくり歩くより遅く、飛んでいるあいだはずっとプロペラが回っています[4]。

この機体は、国際航空連盟(FAI)の屋内ゴム動力機の部門「F1D」のもので、ゴムは0.4g以内、機体は最低1.4gとされています。1円玉(1g)より少し重いだけです。骨組みはバルサとボロン繊維で作り、厚さ0.5マイクロメートル(0.0005mm)のマイラー(ポリエステルの薄い膜)を張ります。1機を作るのに40〜50時間かかるそうです[4]。

記録としては、Brett Sanbornさんの32分9秒(2017年9月)と27分11秒(2018年3月)が紹介されています[4]。二つ並ぶ理由までは、紹介文から読み取れません。

なぜ、これだけわずかなゴムで、30分も飛べるのでしょうか。手がかりは、150年以上前の最初の成功にあります。

屋内のF1D級は、ゴム0.4g以内(約1,300〜1,500回巻き)、機体は最低1.4gと決まっている。バルサとボロン繊維の骨組みに、厚さ0.5マイクロメートル(0.0005mm)のマイラー(ポリエステルの薄い膜)を張り、1機の製作に40〜50時間かかる[4]。

飛行速度は約2〜3フィート毎秒(約0.6〜0.9m/s)、プロペラは約50rpmで、屋外機のような滑空の時間はなく、飛行中ずっとプロペラが回り続ける[4]。単純に1,300回を毎分50回で割ると約26分になり、記録の長さと同じ桁に収まる。ただし回転の速さは飛行中に変わるはずなので、あくまで目安だ。

記録は、Sandia Lab Newsの記事が、Brett Sanbornの32分9秒(2017年9月)と27分11秒(2018年3月)を世界記録として挙げている[4]。二つ並ぶ理由は抜粋からは読み取れず、天井高で部門が分かれ、記録が更新されることも考えると、年つきで読む必要がある。

1.4gの機体が半時間近く飛ぶなら、ゴムの使い方に理由があるはずだ。それを知るには、最初のゴム動力機がどんなものだったかを見るのがよい。

2. さいしょの ゴムひこうきは、なん秒 とんだ?

2. 1871年、パリの庭で11秒

2. ペノーの「プラノフォア」── 16gの機体で40m・11秒

1871年8月18日、フランスの パリに ある ひろい にわで、ちいさな もけいの ひこうきが とびました。つくった ひとは、アルフォンス・ペノーです[1]。

ゴムを ねじって、プロペラを まわす しかけです。ゴムは 240回ほど ねじられました。40mほど、11秒 とびました[1]。

ひこうきの おもさは 16gで、そのうち ゴムが 5gです。ゴムが 3分の1 くらいも あった ことに なります[1]。

ゴムに ちからが たまる しくみは かんたんです。ひこうきの ぼうと プロペラを ゴムで つなぎ、プロペラを まわして ゴムを ねじります。てを はなすと、ゴムが もどろうと して プロペラが まわり、まえに すすみます[6]。

ペノーは、つばさの さきを 上に そらせ、うしろの よこの つばさの かたむきを、まえの つばさより ちいさく しました。ひとりでに あんていして とぶ かたちです[1]。

では、ねじった ゴムは、ほどける あいだ ずっと おなじ つよさで プロペラを まわして くれるのでしょうか。

1871年8月18日、パリのチュイルリー庭園で、アルフォンス・ペノー(フランス)の模型機「プラノフォア」が飛びました。ゴムを約240回ねじってプロペラを回し、約40mを11秒で飛んだと紹介されています[1]。

全長51cm、翼幅46cm、重さ16gで、そのうちゴムが5gでした。ゴムが機体の約3分の1(5÷16で約31%)を占めていたことになります[1]。

しくみは、胴体とプロペラをゴムでつなぎ、プロペラを回してゴムにエネルギーをため、手を離すとプロペラが回って前に進む、というものです。おもちゃの解説では、巻くほど長く飛べるとも説明されます[6]。巻ける回数には限りがあるので、ゴムの力をどう使うかが工夫のしどころになります。

ペノーは、翼の先を上へ反らせ、後ろの水平尾翼の取り付け角を主翼より小さくして、機体が自然に安定して飛ぶ形にしました。資料には、空気の力で安定して飛ぶ模型として世界初とする書き方もありますが、これは資料の評価です[1]。

では、ねじったゴムは、ほどけるあいだずっと同じ強さで回してくれるのでしょうか。

1871年の最初の成功例は、機体16gのうち5gをゴムが占めていた(5÷16で約31%)。プラノフォア(Planophore)を作ったペノー(Pénaud)は、8月18日にパリのチュイルリー庭園で、ゴムを約240回ねじって約40mを11秒飛ばした[1]。全長51cm、翼幅46cmである。

ゴム動力の原理は、胴体とプロペラをゴムでつなぎ、プロペラを回してゴムにエネルギーを蓄え、手を離すと巻きが戻る力でプロペラが回る、というものだ[6]。ゴムが機体の3割ほどを占めるなら、そのエネルギーをどう配分するかが飛行時間を左右する。

ペノーは、翼端を上に反らせ(上反角)、水平尾翼の取り付け角を主翼より小さくして、自動的に安定する形にした[1]。「世界初の空力的に安定した飛ぶ模型」という位置づけは資料の評価であり、断定は避ける。

では、蓄えたエネルギーは、巻きが戻るあいだ同じ強さで出続けるのか。

3. ゴムの ちからは、いつ いちばん つよい?

3. 満巻きの直後に「どっと」出る力

3. トルク曲線 ── 満巻き直後の山と、長い平らな部分

ゴムを いっぱいに まいた ばかりの ときが、ちからが いちばん つよく なります。でも その ちからは、すぐに ぐっと よわく なります[2]。

そのあとは、ながい あいだ、ほとんど おなじ くらいの ちからが つづきます。さいごに もう いちど よわく なって、やがて プロペラが とまります[2]。

たとえば ふうせんの くちを はなすと、さいしょに いきおいよく くうきが でます。ゴムの ちからにも、さいしょに どっと でる ところが あります。ただし ふうせんと ゴムは べつの ものなので、にて いるのは「はじめが つよい」ところ だけです。

この どっと でる ちからを、プロペラは どう うけとめる のでしょう。

ゴムのモーターは、満巻きにした直後にいちばん大きなトルク(回す力)を出します。ところがその力は最初に急に下がり、そのあと平らな部分(プラトー)が続き、最後にもう一度下がってプロペラが止まります[2]。

エネルギーの量は、この力の曲線の下の面積で表されます[2]。グラフにすると、最初の山、長い平ら、最後の下がり、という形です。

山の部分は力が強くても時間が短く、飛ぶ時間の多くは、そのあとの弱く長く続く平らな部分が受け持つと考えられます。強い力と弱い力の両方を、うまく使う必要があります。

ゴムの力は、満巻き直後の一番強いところだけを見ても、全体は分かりません。この強い力を、プロペラはどう受けとめるのでしょうか。

ゴムのモーターは、満巻き直後に最大のトルクを出すが、その値は最初に急に下がり、平らな部分(プラトー)を経て、最後にもう一度下がってプロペラが止まる[2]。エネルギーはトルク曲線の下の面積で表される。つまり、最初の山は高いが短く、あとの平らな部分は低いが長い。

巻き数の最後の約2割にエネルギーの多くがあるという解説もある。ただしこの数字は参考値として扱う[2]。

そのため設計では、大きく出る力と、弱く長く出る力の両方に、プロペラを合わせる必要がある。ではどう合わせるのか。

4. つよい ちからを、プロペラは どう うけとめる?

4. 力の出方に合わせて、プロペラの角度を変える

4. 可変ピッチプロペラと折りたたみ ── 屋外機と屋内機の違い

そとで とばす ゴムの ひこうきには、プロペラの かくどが ひとりでに かわる ものが あります。ゴムの ちからが つよい あいだは、その ちからに あわせた かくどで まわります[2]。

ゴムの ちからが おわると、プロペラの はねは たたまれて、どうたいに ぴったり くっつきます。そのあとは すべるように とびます。くうきの じゃまが へるからです[2]。

そとの きょうぎ では、ゴムは 30gまで、ひこうきは 200g いじょうと きまって います[2]。へやの ひこうきは ゴムが 0.4g、ひこうきが 1.4gです。おなじ ゴムの ひこうきでも、おおきさが ぜんぜん ちがいます。

へやの ひこうきは、すべる じかんが ありません。とんで いる あいだ ずっと、プロペラが まわります[4]。

ところで、ゴムは むかしより よく なったのでしょうか。

屋外で飛ばす競技機には、自動で羽根の角度が変わる可変ピッチプロペラを使うものがあります。満巻き直後の強い力が出ているあいだは、その力に合った角度で回ります[2]。

動力が終わると、プロペラの羽根は胴体に沿って折りたたまれます。滑空中の空気抵抗を減らすためです[2]。

屋外のF1B(ウェイクフィールド級)は、ゴムが最大30g、機体は最低200gとされています[2]。屋内F1Dはゴム0.4g以内で機体は最低1.4gなので[4]、同じゴム動力でも大きさが大きく違います。

屋内F1Dでは滑空する時間がなく、飛行中ずっとプロペラが回ります[4]。折りたたむ場面がない飛び方です。

ゴムの力の出方に合わせる工夫は分かりました。では、ゴムそのものは、昔よりよくなったのでしょうか。

屋外機では、満巻き直後の強い力が出るあいだ、自動で角度が変わる可変ピッチプロペラで力に合わせる。動力が終わると羽根は胴体に沿って折りたたまれ、滑空中の抵抗を減らす[2]。

FAIのF1B(ウェイクフィールド級)は、ゴム最大30g、機体は最低200g、という規定が紹介されている[2]。屋内F1Dはゴム0.4g以内、機体最低1.4gなので[4]、紹介されている値で比べると、ゴムの上限だけで約75倍(30÷0.4)の差になる。

屋内F1Dは飛行中ずっとプロペラが回り、滑空時間がない[4]。折りたたみの工夫は要らず、長い平らな部分をどう保つかが中心になる。

では、ゴム自体の性能向上は、どれほど記録に効いているのか。

5. ゴムが よく なったから? それとも…

5. 記録をのばしたのは、ゴム? 機体?

5. ゴムの改良と空力の寄与 ── 数字が割れる論点

ゴムは むかしより よく なった、と いわれます。1950年だいの ゴムより、いまの ゴムの ほうが、エネルギーが 6わりほど おおい、という せつめいが あります[3]。

でも、ゴムが よく なった だけ では ない、という いけんも あります。ふえた ぶんは そんなに おおくなく、のびた いちばんの りゆうは、ひこうきの かたちが くうきを うまく うけながす ように なった ことだ、という はなしです[5]。けいじばんの はなしなので、そのまま しんじる ことは できません。

どちらが ただしいのか、この きじの しりょうでは きめられません。りょうほうが かかわって いる のかも しれません。

11秒から 32分9秒まで、ずいぶん のびました。ひこうきの ようすを、じぶんの 目で たしかめて みたく なります。

ゴムのエネルギーは、1950年代のものと比べて現代のゴムは約6割多いとされます。1ポンドあたり2,700フィートポンドに対して、今は4,200〜4,400の範囲だという説明です(4,300÷2,700で約1.6倍)[3]。

ところが、改善はもっと小さいという反論もあります。改善はもっと小さく、性能向上の主な理由は機体の空気力学的な効率だ、という意見が掲示板で紹介されています[5]。改善の幅には議論があり、掲示板の数字は原典までは確かめていないので、ここでは挙げません。

ゴムがよくなったのか、機体がよくなったのか、この記事の資料だけでは決められません。二つの寄与が混ざっていて、議論が続いているということです。

1871年の11秒から2017年の32分9秒まで、およそ175倍(1929秒÷11秒)です。ただし、屋外と屋内、機体もまったく別物なので、単純な比べ方は目安にすぎません。

ゴムの飛行機は、自分でも飛ばして観察できます。

現代のゴムは1950年代のものより約6割エネルギーが多いとされる(2,700対4,200〜4,400 ft-lb/lb、4,300÷2,700で約1.6倍)[3]。

これに対し、掲示板の議論には、ゴムの改善幅を大きく見る主張と、改善は小さく性能向上の主因は機体の空力効率だとする反論があり、幅には議論がある[5]。これは掲示板上のやりとりで、原典の数値は確認していないため、数字は挙げない。

そのため、ゴムの改良と空力の寄与の配分は、この資料からは決められない。数字がそろわないときは、出どころの種類(雑誌記事か、掲示板の議論か)を区別して読む必要がある。

11秒から32分9秒までは約175倍(1929秒÷11秒)だが、屋外と屋内の別の機体を比べているので、単純な倍率は目安にすぎない。

では、自分で確かめるには何ができるか。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

ゴムで うごく ひこうきの おもちゃが あれば、ゴムを まく かずを かえて、とばして みましょう。かぞえながら、すこしずつ ふやします。まきすぎると ゴムが きれる ことが あります。かおや 目の ちかくで まかないで ください。ひとに むけて とばしては いけません。

とばす まえに、プロペラの まわり かたが、はじめと おわりで ちがうか、見て みましょう。どのくらい とんだか、なん秒か はかって みると、まきかずと とんだ じかんの かんけいが 見えて きます。

ゴムで動くおもちゃの飛行機があれば、巻く回数を変えて飛ばしてみましょう。数えながら少しずつ増やし、飛んだ時間をはかります。巻きすぎるとゴムが切れることがあるので、顔や目の近くで巻かないでください。人に向けて飛ばすのもやめてください。

飛ばす前に、プロペラの回り方が飛び始めと終わりでどう違うか、目で見てみましょう。今回の記事で出てきた「最初にどっと、あとは弱く長く」が、自分の目で見えるかを確かめてみると、資料の説明が身近になります。

身近な確認としては、おもちゃのゴム動力機で、巻き数と飛行時間を記録する方法がある。巻き数を少しずつ増やし、切れる手前まで無理に巻かない。顔や目の近くで巻かず、人に向けて飛ばさない。飛び始めと終わりでのプロペラの回転の違いも観察の対象になる。

資料としては、Sandia Lab Newsの記事[4]が、屋内F1Dの仕様と記録の入口になる。ゴムの性能の議論は、Model Aviationの記事[3]とrara.jpの掲示板[5]を読み比べると、数字の出どころが違うことが見える。FAIの規則(Sporting Code)の原文は今回参照していないので、現行の数値は原典で確かめるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

Wikipedia、雑誌記事、研究所の広報記事、掲示板を突き合わせました。ゴムの改善幅は出典で食い違うため、数字は目安として扱っています。

  1. Wikipedia「Alphonse Pénaud」 https://en.wikipedia.org/wiki/Alphonse_P%C3%A9naud (1871年の飛行と機体の設計)
  2. Wikipedia「Free flight (model aircraft)」 https://en.wikipedia.org/wiki/Free_flight_(model_aircraft) (トルク曲線、可変ピッチプロペラ、F1Bの規定)
  3. Model Aviation「FF Duration」 https://library.modelaviation.com/article/ff-duration-21 (ゴムのエネルギーの比較)
  4. Sandia Lab News「F1D」 https://www.sandia.gov/labnews/2018/11/21/f1d/ (屋内F1Dの仕様と世界記録)
  5. rara.jp ゴム動力模型飛行機掲示板 https://rara.jp/rubbermodel/link7 (ゴムの改善幅をめぐる議論)
  6. ナゾロジー「ゴム動力プロペラ飛行機」 https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/127905 (ゴム動力機の基本のしくみ)

なおした ところ

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