イワシは、どこへ 行ったの?

イワシはどこへ行ったのか ── 増えたり減ったりする魚の話

イワシはどこへ行ったのか ── 魚種交代とレジームシフト

分野:生きもの

むかし、日本の 海では、マイワシが 山のように とれた 時代が ありました。でも、ある とき から、きゅうに とれなく なって しまいました。

そのかわりに ふえたのは、カタクチイワシと いう にた 魚でした。海の 中で、なにが おきて いたのでしょう。いっしょに しらべて いきましょう。

昔、日本の海では、マイワシが山のように獲れた時代がありました。でも、ある時から、突然獲れなくなってしまいました。

そのかわりに増えたのは、カタクチイワシという似た魚でした。海の中で、何が起きていたのでしょうか。海の研究機関や水産庁の資料でたどります。

かつて、日本の近海ではマイワシが大量に漁獲された時代があった。しかし、ある時期を境に、漁獲量は急激に減少した。

そのかわりに増加したのが、近縁種のカタクチイワシである。海の中で何が起きていたのか。海洋研究機関や水産庁の資料でたどる。

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1. とれる 魚が、まるごと 入れかわる

1. 獲れる魚が、まるごと入れ替わる不思議

1. 魚種交代という現象

マイワシと カタクチイワシ。この 2しゅるいの 魚には、おもしろい かんけいが あります。

いっぽうが おおい ときは、もう いっぽうが すくない。まるで シーソーの ように、りょうが 入れかわるのです。

マイワシから カタクチイワシへの、この 入れかわりを「ぎょしゅこうたい」と いいます。

なぜ、こんな ことが おきるのでしょう。

マイワシとカタクチイワシ。この2種類の魚には、面白い関係があります。

一方が多いときは、もう一方が少ない。まるでシーソーのように、量が入れ替わるのです。

マイワシからカタクチイワシへの、この入れ替わりを「魚種交代」といいます。

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

マイワシとカタクチイワシ。この近縁の2種には、興味深い関係がある。

一方の資源量が多いときは他方が少ないという、シーソーのような関係である。

マイワシからカタクチイワシへの、この入れ替わりは「魚種交代」と呼ばれる。

なぜこのような交代が起きるのか。

2. すう字で 見る、大きな なみ

2. 数字で見る、マイワシの乱高下

2. 漁獲量の推移:400万トンから10万トン以下へ

1980年代、日本ぜんこくで とれる マイワシは、1年に 400万トン いじょうも ありました[2]

ところが 1990年代に なると、きゅうに とれなく なりました。2000年代の 前半には、10万トンを 切るまでに へって しまいました。いちばん おおかった ときの、40分の1いかです[2]

その後、2010年代に 入ってから、また すこしずつ とれる ように なって います[3]

なぜ、こんなに 大きく 上がったり 下がったり するのでしょう。

1980年代、日本全国で獲れるマイワシは、1年に400万トンを超えていました[2]

ところが1990年代に入ると、突然獲れなくなりました。2000年代前半には、10万トンを切る水準にまで落ちこみました。もっとも多かった時期の40分の1以下です[2]

その後、2010年代に入ってから資源量が回復し、漁獲量も再び増えてきています[3]

なぜ、こんなに大きく増えたり減ったりするのでしょうか。

1980年代、日本全国のマイワシ漁獲量は年間400万トンを超えるピークに達していた(1988年には約449万トン)[2]

しかし1988年ごろから漁獲量は急減し、2000年代前半には10万トンを切る水準で推移した。ピーク時の40分の1以下である[2]

その後、2010年代に入って資源量の回復傾向が確認され、漁獲量も増加している[3]

なぜ、資源量がこれほど大きく変動するのか。

3. 海の きぶんが かわる「レジームシフト」

3. 海の「気分」が変わる、レジームシフト

3. レジームシフト:数十年周期の気候変化

海の 水おんや 風の ようすが、すう十年 たんいで、きゅうに かわる ことが あります。これを「レジームシフト」と いいます[2]

1度 レジームシフトが おきると、その あとの じょうたいが、また すう十年 つづきます。

海の 水おんは、たった すうどしか かわりません。でも、とれる 魚の りょうは、すう十ばい、すう百ばいも かわる ことが あります[2]

なぜ、そんなに 小さな 水おんの ちがいが、そんなに 大きな ちがいを 生むのでしょう。

海の水温や風のようすが、数十年単位で急に変わることがあります。これを「レジームシフト」といいます[2]

一度レジームシフトが起きると、その後の状態が、また数十年つづきます。

海面の水温は、レジームシフトの前後でも、たった数度しか変わりません。ところが、浮き魚(マイワシのような群れで泳ぐ魚)の漁獲量は、数十倍から数百倍も変わることがあります[2]

なぜ、そんなに小さな水温の違いが、そんなに大きな違いを生むのでしょうか。

海洋の水温や風系といった気候要素が、数十年周期で急激に変化する現象を「レジームシフト」と呼ぶ。変化後の状態は、その後数十年にわたって持続する[2]

1950年代末から1970年代にかけて、このような急激な変化が複数回起きたことが分かっている[2]

その一方で、海面水温そのものの変化幅は、レジームシフトの前後でもわずか数℃にとどまる。にもかかわらず、マイワシなど群れで表層を泳ぐ魚(浮魚類)の漁獲量には、数十倍、時に数百倍という桁違いの変動が生じる[2]

なぜ、これほど小さな環境変化が、これほど大きな資源変動を引き起こすのか。

4. 水が つめたい 年ほど、マイワシは ふえる

4. 水温が低い年ほど、マイワシが育ちやすい

4. 黒潮続流域の水温が低いほど、仔魚の生残率は上がる

マイワシの あかちゃん(しぎょ)は、ふゆから はるに かけて、くろしおの さきの あたりで そだちます。

この あたりの 水おんが ひくい 年は、マイワシの あかちゃんが 生きのこる わりあいが 高く なる けいこうが あります[1]

これは、水おんが ひくいと 水の 上の ほうが かきまぜられやすく なり、エサに なる プランクトンが ふえやすく なる ためだ、と かんがえられて います[1]。まるで、水が かきまぜられる ことで、あかちゃんの ための ごはんが 山もりに なるような ものです(ただし 本当は、目に 見えない くらい 小さな プランクトンの 話です)。

つまり、水おんの すこしの ちがいが、あかちゃん 魚の 生きのこりの わりあいを 大きく 左右するのです。

マイワシの赤ちゃん(仔魚)は、冬から春にかけて、黒潮の続流域と呼ばれるあたりで育ちます。

このあたりの水温が低い年は、マイワシの赤ちゃんが生き残る割合が高くなる傾向があります[1]

これは、水温が低いと海の表層がかき混ぜられやすくなり、エサになるプランクトンが増えやすくなるためだと考えられています[1]

つまり、水温のわずかな違いが、赤ちゃん魚の生き残りの割合を大きく左右するのです。

マイワシの仔稚魚は、冬季から春季にかけて黒潮続流域に分布する。

この海域の海面水温が低い年ほど、マイワシ仔魚が1歳まで生き残る割合(初期生残率)が高くなる傾向がある[1]

冬季の海面水温は、表層の混合層の厚さの指標でもある。水温が低いと表層混合が進み、下層から栄養塩が供給されやすくなるため、植物プランクトン、さらにそれを餌とする動物プランクトンが増えやすくなると考えられている[1]

水温というわずかな環境の違いが、食物連鎖を通じて仔魚の生残率を左右しているのである。

5. マイワシと カタクチイワシ、なぜ 入れかわる

5. なぜマイワシとカタクチイワシが入れ替わるのか

5. 産卵場の変化とエサの競合:魚種交代のしくみ

マイワシと カタクチイワシは、おなじような プランクトンを エサに して います。

海の かんきょうが かわると、どちらの 魚が たまごを うむのに よい ばしょも かわります。カタクチイワシの たまごを うむ ばしょが せまく なると、その あとを おうように、マイワシの たまごを うむ ばしょが ひろがる、と かんがえられて います[4]

カタクチイワシでは、あかちゃんの エサに なる プランクトンが へると、あかちゃんが 生きのこりにくく なる、と いう けんきゅうが あります[5]

つまり、水おんの ちがいが、たまごを うむ ばしょや エサの りょうを とおして、どちらの 魚が ふえるかを きめて いるのです。

こうして、マイワシと カタクチイワシは、海の かんきょうに あわせて、かわりばんこに ふえて きました。では、その マイワシたちは、海全体に とって どれくらい たいせつな そんざいなのでしょう。

マイワシとカタクチイワシは、似たようなプランクトンをエサにしています。

海の環境が変わると、どちらの魚が卵を産むのに良い場所かも変わります。カタクチイワシの産卵場所が狭くなると、そのあとを追うように、マイワシの産卵場所が広がる、と考えられています[4]

カタクチイワシでは、赤ちゃんのエサになるプランクトンが減ると、赤ちゃんが生き残りにくくなる、という研究報告があります[5]

つまり、水温の変化が、産卵場所やエサの量を通じて、どちらの魚が増えるかを決めているのです。

こうして、マイワシとカタクチイワシは、海の環境にあわせて交代してきました。では、そのマイワシたちは、海全体にとってどれくらい大切な存在なのでしょうか。

マイワシとカタクチイワシは、動物プランクトンという共通の餌資源を利用する。

海洋環境の変化にともない、カタクチイワシの産卵場が縮小すると、それを追うようにマイワシの産卵場が拡大する現象が、長期の産卵調査から報告されている[4]

カタクチイワシでは、仔魚期の主な餌であるカイアシ類などの動物プランクトンが減少すると、仔魚の生残率が著しく悪化するという研究報告がある[5]

つまり、水温変化は、産卵場の分布と餌資源の量という2つの経路を通じて、どちらの魚種が優占するかを左右しているのである。

こうして、マイワシとカタクチイワシは海洋環境に応じて交代を繰り返してきた。では、そのマイワシは、海洋生態系全体にとってどれほど重要な存在なのか。

6. イワシは「地球を だいひょうする 魚」

6. イワシは「地球を代表する魚」

6. 世界最大の漁獲量を持つ魚種としての位置づけ

イワシの なかまは、せかいで いちばん たくさん とられて いる 魚です[6]

小さな 魚ですが、プランクトンを たべて、大きな 魚や 鳥、クジラに たべられます。海の「食べる・食べられる」の つながりを ささえる、たいせつな やくわりを もって います。

だから、イワシが ふえたり へったり する ことは、海全体、そして わたしたちの くらしにも かかわって いるのです。

日本では、イワシの かんづめの ねだんや、しゅるいが 年に よって かわる ことが あります。それも、この 魚の りょうの 上下と かんけいが あるのです。

イワシの仲間は、世界でいちばん多く漁獲されている魚です[6]

小さな魚ですが、プランクトンを食べて、大きな魚や鳥、クジラに食べられます。海の食物連鎖を支える、大切な役割を持っています。

だから、イワシが増えたり減ったりすることは、海全体、そして私たちの暮らしにも関わっているのです。

日本では、イワシの缶詰の値段や種類が、年によって変わることがあります。それも、この資源の増減と関係しているのです。

イワシ類は、世界で最も漁獲量の多い魚種である[6]

小型のプランクトン食者でありながら、大型魚・海鳥・鯨類の重要な餌資源であり、海洋の食物連鎖を支える中間的な位置を占める。

そのため、イワシ資源の増減は、海洋生態系全体、さらには人間の水産業・食生活にも波及する。

日本国内でも、イワシ缶詰の価格や原料魚種が年によって変動することがあるが、これも資源量の増減と無関係ではない。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

スーパーや 魚やさんで、じっさいに たしかめて みましょう。

やって みる

  • おうちの「ちりめんじゃこ」や「にぼし」を 見て みる。これらは おもに カタクチイワシの あかちゃんです。マイワシの あかちゃんが まじって いる ことも あります[7]
  • スーパーや 魚やさんで、イワシの しゅるいや ねだんを 見て みる。マイワシと カタクチイワシ、どちらが 多いか かんさつする。
あんぜんの ために

お店の 中を あるく ときは、まわりの 人や たなに 気を つけましょう。

スーパーや魚屋で、実際に確かめてみましょう。

やってみる

  • おうちの「ちりめんじゃこ」や「煮干し」を見てみる。これらは主にカタクチイワシの赤ちゃんです。マイワシの赤ちゃんが混じっていることもあります[7]
  • スーパーや魚屋で、イワシの種類や値段を見てみる。マイワシとカタクチイワシ、どちらが多いか観察する。
  • 水産庁のウェブサイトで、マイワシの資源評価結果を見てみる。グラフで漁獲量の推移を確かめる[3]
安全のために

お店の中を歩くときは、周りの人や棚に気をつけましょう。

自分の手で確かめる

  • ちりめんじゃこ・煮干しの原料魚種を調べる。主にカタクチイワシだが、時期や産地によってマイワシ・ウルメイワシが混じることもある[7]
  • スーパーや魚屋で、イワシの種類・産地・値段を記録し、時期による変化を観察する。
  • 水産庁の資源評価結果のページで、マイワシ太平洋系群の最新の漁獲量データを確認する。[3]

原典で確かめる

  • レジームシフトと魚種交代の関係について、海洋政策研究所の解説をもっと詳しく読む。[2]
安全のために

お店の中を歩くときは、周りの人や棚に気をつけましょう。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:水産研究・教育機構、笹川平和財団(海洋政策研究所)、水産庁、サカナト、豊海おさかなミュージアム、Wikipediaの公開情報を使いました。漁獲量の数字は年度・統計の取り方によって多少異なることがあります。このメモは、これらの機関・企業のものではなく、個人のまとめです。

  1. 水産研究・教育機構「2003–2020年におけるマイワシ太平洋系群の成長変動要因を探る」(日本水産学会誌)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfo/87/2/87_93/_article/-char/ja (黒潮続流域の冬季水温とマイワシ仔魚の生残率の関係)
  2. 笹川平和財団 海洋政策研究所「資源変動と海洋生態系~マイワシを例に~」(Ocean Newsletter)。 https://www.spf.org/opri/newsletter/257_2.html (1980年代の漁獲量ピーク、1990年代の急減、レジームシフトの年代と魚種交代のしくみ)
  3. 水産庁「令和6年度我が国周辺水域の水産資源に関する評価結果」。 https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/240830.html (マイワシ太平洋系群の資源評価。近年の資源量回復傾向)
  4. サカナト「<マイワシとカタクチイワシの魚種交換>長期産卵調査で解明」。 https://sakanato.jp/33209/ (産卵場の変化を通じた魚種交代のしくみ。水産系ニュースサイトの解説記事)
  5. 水産研究・教育機構「餌のプランクトン減少がカタクチイワシの再生産に悪影響」(プレスリリース、2022年11月18日)。 https://www.fra.go.jp/home/kenkyushokai/press/pr2022/20221118.html (動物プランクトンの減少が仔魚の生残率に与える影響)
  6. 豊海おさかなミュージアム「世界はイワシでできている」。 https://museum.suisan-shinkou.or.jp/guide/iwashi-world/3518/ (世界最大の漁獲量を持つ魚としてのイワシ、1980年代の漁獲量、90年代の急減)
  7. Wikipedia「ちりめんじゃこ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ちりめんじゃこ (原料はイワシ類の仔稚魚で、収量が多いカタクチイワシが多く使われること)

なおした ところ

更新履歴

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