1. ボイジャーが 見つけた、ふしぎな かたち
1. ボイジャーが見つけた、六角形の謎
1. 発見 ── ボイジャーの写真に写っていた、6つの角
土星は、たいようけいで 2番目に 大きい わくせいです。 その 北極には、雲が 六角形の かたちに ならんで 見える、 めずらしい ばしょが あります。
この かたちは、1980年から1981年に かけて、アメリカの たんさき「ボイジャー1ごう・2ごう」が とった 写真に、すでに うつって いました。でも、それが はっきり「六角形」だと わかったのは 1987年に なってから でした。2004年に べつの たんさき 「カッシーニ」が 土星に とどき、2006年に あらためて この かたちを くわしく しらべました[1]。
2. しょうたいは、はやい かぜの ながれ
2. 正体は、速いジェット気流
2. 正体 ── 秒速89メートルのジェット気流
六角形は、もようでは ありません。じつは、とても はやい かぜの ながれ「ジェットきりゅう」が つくる かたちです。
かぜの はやさは、びょうそくで やく89メートル(じそくに すると やく320キロメートル)。地球の たいふうの かぜよりも はやい スピードです[1]。この かぜが、 北極の まわりを ぐるっと まわりながら、 6つの かどを つくって ながれて います。
六角形の 1つ1つの へんの ながさは、やく14500キロメートル。 地球の さしわたし(やく12700キロメートル)よりも おおきいのです[2]。
台風よりも速い風
六角形は、雲の模様ではありません。実は、非常に速い風の流れ 「ジェット気流」が作っている形です。風の速さは秒速およそ 89メートル(時速およそ320キロメートル)。地球の台風の風速を こえるスピードです[1]。このジェット 気流が、北極のまわりをぐるっと取り巻きながら、6つの角を 作って流れています。
地球より大きな六角形
六角形の一辺の長さはおよそ14500キロメートルで、六角形全体の 幅は29000キロメートルを少しこえます。これは地球の直径 (およそ12700キロメートル)よりも大きい数字です [2]。雲の高さでいうと300キロ メートルほどの厚みにわたって、この立体的な渦が続いていると 考えられています[2]。
六角形は単なる雲の模様ではなく、秒速89メートル(時速約320 キロメートル)という高速のジェット気流が形成する構造です [1]。これは地球の台風の最大風速を 上回る速さです。このジェット気流は北緯77度付近を取り巻きながら、 6つの頂点を持つ波打った形で流れています。
六角形の一辺の長さは約14500キロメートル、全体の幅は29000 キロメートルをわずかに超え、地球の直径(約12700キロメートル)を 上回ります[2]。さらにこの構造は 雲頂から300キロメートルほどの高さにわたって存在する立体的な 渦であることもわかっています[2]。
六角形はほぼ一定の速さで自転しており、その周期は10時間 39分24秒。これは土星内部からの電波放出の周期と一致しており、 六角形が土星本体の自転と結びついた、深い場所にまで根ざした 構造である可能性を示しています[2]。
3. すいそうの じっけんで わかった こと
3. なぜ六角形なのか ── 水そうの実験でわかったこと
3. 六角形の成因 ── ロスビー波と回転水槽実験
はやい かぜの ながれと、まわりの ゆっくりした くうきが こすれ合うと、ながれが まっすぐに すすめなくなり、 なみのように ゆれはじめます。この なみが 6つに おちついた かたちが、六角形なのです[1]。
イギリスの オックスフォード大学の 研究者たちは、まるい 水そうに 水を 入れて、まん中と そとがわを ちがう はやさで まわす じっけんを しました。すると、水の おもてに 三角形から 八角形までの いろいろな かたちが あらわれ、いちばん よく あらわれたのが 六角形でした[2]。
波の名前は「ロスビー波」
速い風の流れと、そのまわりのゆっくりした大気がこすれ合うと、 流れがまっすぐ進めなくなり、波打つように揺れはじめます。この 「ロスビー波」と呼ばれる波が、ちょうど6つの山と谷で安定した 形が、六角形の正体だと考えられています[1]。
水そうの実験でも六角形ができた
なぜ「6つ」なのかを確かめるため、イギリスのオックスフォード 大学の研究チームは、円形の水そうに水を入れ、中心付近と外側を 異なる速さで回転させる実験を行いました。すると水面に三角形 から八角形までさまざまな形の波が現れ、そのなかでもっとも よく現れたのが六角形でした[2]。 ただし、なぜ土星の六角形が何十年も同じ形を保ち続けているのかは、 まだ完全には解明されていません。
高速のジェット気流と、その外側を流れる比較的ゆっくりとした 大気とがせめぎ合うと、流れは直進できずに蛇行しはじめます。この 蛇行が「ロスビー波」と呼ばれる波動現象で、ちょうど6つの山と 谷を持つ形で安定したものが、土星の六角形の正体だと考えられて います[1]。
なぜ波の数が「6」に落ち着くのかを検証するため、オックスフォード 大学の研究チームは円形の水槽に液体を入れ、中心部と周縁部を 異なる角速度で回転させる室内実験を行いました。その結果、水面 には三角形から八角形までのさまざまな多角形状の波が再現され、 そのなかでもっとも頻繁に現れたのが六角形でした[2]。 この実験は、ジェット気流の速度差という単純な条件だけで多角形の 定常波が生じうることを示しましたが、なぜ土星の六角形が40年 以上にわたってほぼ同じ形を保ち続けているのかについては、いまも 完全には解明されていません。
4. 地球の たいふうとは、ちがうの?
4. 地球の台風とは、どこが違うのか
4. 地球の気象と比べる ── 同じロスビー波、違う結果
六角形は、たいふうの 目のような、まんまるの うずでは ありません。かどの ある、めずらしい かたちです。
じつは 地球にも、六角形と おなじ しくみで できる「なみ」が あります。天気よほうで 出てくる「へんせいふう」も、この なみに よって、うねうねと まがりながら ふいて います [1]。でも 地球には 山や 海が あって、じめんの でこぼこが かぜの ながれを みだすので、 土星のように きれいな かたちには なりません。
土星には かたい じめんが なく、ガスだけで できて います。 かぜの ながれが じゃまされにくい ことが、六角形の かたちが 40年いじょうも くずれずに つづいて いる りゆうの ひとつ かもしれない、と 考えられて います。
台風の目とは、まったく違う形
六角形は、台風の目のようなまん丸の渦ではありません。角の ある、めずらしい形をしています。実は地球にも、六角形と同じ しくみで生まれる「波」があります。天気予報でおなじみの 「偏西風」も、ロスビー波と呼ばれる波によって、うねうねと 曲がりながら地球を取り巻いています[1]。 台風そのものは暖かい海面から生まれる別のしくみの嵐ですが、 その進路は、この偏西風の蛇行に大きく左右されます。
地面がない土星だからこそ
ただし地球には、山脈や海と陸の境目のような地形のでこぼこが あり、それが風の流れを複雑に乱すため、土星のようにきれいな 六角形にはなりません。土星は表面がすべて気体でできた「ガス 惑星」で、地面のでこぼこがありません。だからこそ、風の流れが 乱されにくく、六角形の形が40年以上もくずれずに保たれている と考えられます。
六角形は、台風の目のような円形の渦とは異なり、角を持つ多角形 の定常波という点で特異です。実は地球の大気にも、同じ物理現象 が存在します。天気予報で扱われる偏西風も、ロスビー波によって 南北に蛇行しながら地球を周回しています。台風は暖かい海面や 水蒸気を主なエネルギー源として発達する別のしくみの熱帯低気圧 ですが、その進路は偏西風の蛇行に大きく左右されます [1]。ロスビー波そのものは、20世紀の 気象学者カール=グスタフ・ロスビーが地球の大気循環を説明する ために提唱した理論で、土星の六角形にも同じ数理的な枠組みが 応用されています。
両者の決定的な違いは、地表の有無です。地球には山脈や海陸の 境界といった地形の凹凸があり、これが大気の流れを複雑に乱す ため、偏西風はロスビー波としての性質を持ちながらも、土星の ような幾何学的に整った形にはなりません。一方、土星は表面が 液体・気体で構成される「ガス惑星」であり、地形による摩擦や 乱れがほとんど存在しません。この違いが、土星の六角形を40年 以上にわたってほぼ同じ形のまま存在させている一因と考えられて います。
5. 六角形の いろが、青から きんいろに
5. 六角形の色が、青から金色に変わった
5. 色の変化 ── 土星の「季節」が生み出すもや
カッシーニが とった 写真を くらべると、六角形の 中の いろが かわって いる ことが わかります。2013年ごろは 青っぽい いろでしたが、2016年から2017年ごろには きんいろに かわりました [2]。
土星も 地球と おなじように、きせつが あります。でも 土星が 太陽の まわりを 1しゅうするのに やく29年も かかるので、 1つの きせつは やく7年も つづきます。北極に 太陽の 光が たくさん あたるように なると、空気の 中で 「もや」が つくられて、六角形が きんいろに 見えるように なるのです[2]。
2013年から2017年にかけての変化
探査機カッシーニが撮影した写真を比べると、六角形の中の色が 変わっていることがわかります。2013年ごろは青っぽい色を していましたが、2016年から2017年ごろにかけて、金色に変わって いきました[2]。
29年かけて1周する、土星の季節
土星にも地球と同じように季節がありますが、太陽のまわりを 1周するのに約29年もかかるため、1つの季節はおよそ7年間も 続きます。2009年の春分をすぎて北極に太陽の光が長くあたる ようになると、大気の中で光化学反応による「もや」がつくられる ようになり、これが六角形を金色っぽく見せていると考えられて います[2]。
探査機カッシーニが撮影した一連の画像を比較すると、六角形内部 の色が経時的に変化していることが確認されています。2013年 時点では六角形の内側全体が青みがかった色でしたが、2016年から 2017年にかけて、中心部の極渦を除くほぼ全域が黄色みを帯びた 色へと変化しました[2]。
土星は公転周期が約29年であるため、地球の四季にあたる季節 変化は約7年ごとに訪れます。2009年8月の春分以降、北極域が 太陽光にさらされる時間が長くなったことで、大気中で光化学 反応によるもや(エアロゾル)の生成が進み、これが六角形を 金色っぽく見せる原因になっていると考えられています [2]。六角形を形づくるジェット気流 そのものが、このもやを内側に閉じこめる壁のような役割を 果たしている可能性も指摘されています[2]。
6. 南極にも、10かっけいが 見つかった
6. 新発見 ── 南極にも「十角形」が見つかった
6. 2026年の新発見 ── 南極に現れた十角形
この きじを 書いて いる 2026年9月、あたらしい はっけんが ありました。土星の 南極にも、 六角形に にた 10かっけいの かたちが 見つかったのです [3]。
2026年9月2日、NASAと ハッブル宇宙ぼうえんきょう の チームが はっぴょうしました。この 10かっけいは、2023年の しゃしんに すでに うつって いましたが、はっきり わかる かたちに なったのは 2025年に なってから でした[3]。
北極の 六角形は 40年いじょう おなじ かたちを たもって いますが、 この 10かっけいは いま まさに かたちが そだって いる さいちゅうだと 考えられて います[3]。
2026年9月、ハッブルが発表
この記事を書いている2026年9月、新しい発見がありました。土星の 南極にも、六角形に似た十角形の形が見つかったのです [3]。2026年9月2日、NASAとハッブル 宇宙望遠鏡のチームが発表しました。研究を率いたのはスペイン・ バスク大学のアグスティン・サンチェス=ラベガ博士です。
2023年の写真に、すでに写っていた
この十角形は2023年のハッブルの観測データにすでに写っていた ことがあとからわかりました。2024年には地上からの観測で うねる帯状の模様として気づかれ、2025年の追加観測とハッブル 画像で、はっきりとした十角形として確認されました [3]。北極の六角形が40年以上ほとんど 同じ形を保っているのに対し、この十角形はいままさに形が発達 している最中だと考えられています。土星の南半球で、これほど 規則正しい多角形のジェット気流が見つかったのは初めてのこと です[3]。
この記事を執筆している2026年9月、新たな発見が報告されました。 土星の南極にも、六角形に類似した十角形の大気構造が確認された のです[3]。
2026年9月2日、NASAとハッブル宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の チームが、学術誌Science Advancesにこの発見を発表しました [4]。研究を主導したのはスペイン・ バスク大学のアグスティン・サンチェス=ラベガ博士で、NASA ゴダード宇宙飛行センターのエイミー・サイモン博士、カリフォル ニア大学バークレー校のマイケル・ウォン博士らが共同研究者に 名を連ねています[3]。
この十角形は、2023年のハッブル観測データにすでにその兆候が 写っていたことが後の解析でわかっています。2024年には地上の 天体観測家トレヴァー・バリー氏とジャン=ポール・オジェ氏らが うねる帯状の模様に気づき、2025年8月から9月にかけての観測で、 はっきりとした十角形の輪郭を持つ構造として確認されました [3]。
北極の六角形が少なくとも40年以上ほぼ同じ形を保ち続けている のに対し、南極の十角形は現在も形が強まりつつある、発達途上の 構造だと考えられています。土星の南半球でこれほど規則正しい 多角形のジェット気流が確認されたのはこれが初めてで、なぜ 北極と南極で異なる角の数(六角形と十角形)になるのかは、 今後の研究課題です[3]。
じぶんでも やって みる
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
土星は、ぼうえんきょうが あれば、わっかの かたちまで 見る ことが できます。六角形じたいは ちいさすぎて 見えません。
きょう できる こと
- プラネタリウムに 行って みる。 近くの プラネタリウムで、土星の わっかや 北極の もようを 見せて もらえることが あります。
- まわる 水を 見て みる。 おふろの おゆを かきまぜて、まん中と そとがわで はやさが ちがう ようすを、おうちの人と いっしょに 見て みましょう。
きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「ジェットきりゅうって なに?」だけで じゅうぶんです。
土星は、家庭用の望遠鏡でもリング(環)の形まで見ることが できます。六角形そのものは小さすぎて見えませんが、その存在を 知って観察すると、見え方が変わってきます。
今日できること
- 土星の観測画像をさがしてみる。 NASAやJAXAの公式サイトでは、カッシーニやハッブルが撮った 六角形の写真を見ることができます。
- 回転する水の実験をやってみる。 おうちの人といっしょに、バケツやおけに入れた水をかき回し、 中心と外側で流れの速さがどう違うかを観察してみましょう。
出かけてできること
- プラネタリウムや科学館で、土星のリングと六角形の模型や映像を見てみる。
気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口に なります。「ロスビー波って、地球にもあるの?」だけでも 十分です。
土星は口径の小さな望遠鏡でもリング(環)を観察できます。 六角形そのものを直接見ることはできませんが、その存在を知って 観察すると、見え方が変わってくるはずです。
手を動かして確かめる
- 回転する流体の実験を再現してみる。 円形の容器に水を入れ、中心付近と外側を異なる速さでかき 混ぜてみると、水面に波打つ模様が現れることがあります。 安全に配慮しながら、家庭でできる範囲で試してみてください。
- 地球の偏西風の蛇行を天気図で確認する。 気象庁の高層天気図などでは、偏西風がロスビー波として 蛇行しているようすを見ることができます。
一次情報にあたる
南極の十角形は、2026年9月に発表されたばかりの、発達途上の 発見です。今後の観測でどう変化していくのか、NASAやSTScIの 公式発表を追いかけてみてください。
気になった数値や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。 「六角形の自転周期が、土星の電波放出の周期と同じ」という 関係でもかまいません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
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出典について:Wikipediaは百科事典、NASAはアメリカ航空宇宙局という公的機関、STScIはハッブル宇宙望遠鏡を運用する科学研究所です。
- Wikipedia「土星の六角形」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/土星の六角形 (六角形の発見、風速、ロスビー波による成因、地球の偏西風との関係の解説)
- Wikipedia, “Saturn's hexagon”(英語)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Saturn's_hexagon (発見の詳細な経緯、サイズ・高さ・自転周期の数値、色の変化、回転水そう実験の解説)
- NASA Science, “NASA's Hubble Tracks New Decagon Encircling Saturn's South Pole”(英語)。 https://science.nasa.gov/missions/hubble/nasas-hubble-tracks-new-decagon-encircling-saturns-south-pole/ (2026年9月2日発表の、南極の十角形の発見についてのNASA公式記事)
- STScI News Release 2026-022, “NASA's Hubble Tracks New Decagon Encircling Saturn's South Pole”(英語)。 https://www.stsci.edu/contents/news-releases/2026/news-2026-022 (発表日、掲載学術誌名(Science Advances)についてのハッブル宇宙望遠鏡科学研究所の公式発表)
なおした ところ
更新履歴
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このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。 誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、 その理由をこの欄に残します。この記事は、2026年9月に発表された ばかりの、発達途上の発見(南極の十角形)についても書いています。 今後の観測で内容が更新された場合は、このルールに沿って 更新履歴に記録します。