海の こうつうルール

海の交通ルール

海の交通ルール ── 信号も車線もない海で、船はどうすれ違うのか

分野:海・釣り

道には、信号しんごうや 白線が ありますよね。でも 海には、そういう ものが ありません。

船は、どうやって ぶつからずに すれちがって いるのでしょうか。

この きじでは、海の こうつうルールを 見て いきます。

道には、信号や白線がありますよね。でも海には、そういうものがありません。

船は、どうやってぶつからずにすれちがっているのでしょうか。

この記事では、海の交通ルールを見ていきます。

陸の交通には、信号機や車線という目に見える仕組みがありますが、海にはそうした設備がありません。それでも、世界中の船は一定のルールにしたがって航行しています。

この記事では、「ポート」「スターボード」という呼び名の由来、夜を照らす航海灯、汽笛による合図、すれ違いのルール、そしてこうしたルールが国際的に統一されてきた歴史までをたどります。

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1. 右と 左に、とくべつな よび名が ある

1. 右と左に、特別な呼び名がある

1. 由来 ── 「ポート」と「スターボード」

船では、右と 左を「うげん」「さげん」と よびます。えいごでは、 右を「スターボード」、左を「ポート」と いいます。

むかしの 船は、船の うしろの 右がわに、かじを とりつけて いました。かじの ことを えいごで「スティアボード」と いった ことから、「スターボード」に なったと されて います[1]。かじが 右に あったので、 船は 左がわを みなとに つけて にもつを おろして いました。 これが「ポート(みなと)」の ゆらいだと されて います [1]

「スターボード」は、かじのある側

船では、右と左を「右舷(うげん)」「左舷(さげん)」と呼びます。英語では、右を「スターボード」、左を「ポート」と言います。

「ポート」は、港に着ける側

昔の船は、船尾の右側に舵(かじ)を取り付けていました。舵を意味する古い英語「スティアボード」から、「スターボード」という呼び名が生まれたとされています[1]。舵が右側にあったため、船は左側を港につけて荷物を降ろしていました。これが「ポート(港)」という呼び名の由来だとされています[1]

船舶では、船首に向かって右側を「右舷(スターボード)」、左側を「左舷(ポート)」と呼びます。「スターボード(starboard)」は、古英語で舵を意味する「steorboard」に由来するとされ、初期の船が船尾右側に操舵用の舵を取り付けていた歴史を反映しています[1]

舵が右側にあったことで、船は左側を岸に着けて荷の積み降ろしを行うのが一般的でした。この慣習から、左舷は「港に面した側」を意味する「ポート(port)」と呼ばれるようになったとされています。かつては左舷を「larboard」と呼ぶ表記もありましたが、「starboard」と発音が似て聞き間違いによる事故の懸念があったため、19世紀半ばごろから「port」への統一が進められました[1]

2. 夜を てらす、赤と みどりの あかり

2. 夜を照らす、赤と緑の灯り

2. 航海灯 ── 色で伝える、船の向き

じてんしゃの 前と うしろの ライトの 色が ちがうと、 くらい 中でも どちらが 前か わかりますよね。船の あかりも それと にた やくわりです(ただし 本当は、 じてんしゃとは ちがい、船は 左右で 色が わかれて います)[2]。船には、夜に つける 「こうかいとう」と いう ランプが あります。左がわ (ポート)は 赤、右がわ(スターボード)は みどり、と きまって います[2]

べつの 船から この あかりの 色を 見れば、くらい 海でも、 あいての 船が どちらを むいて すすんで いるかが わかるのです。

船には、夜につける「航海灯」というランプがあります。左側(ポート)は赤、右側(スターボード)は緑、と決まっています[2]

別の船からこの灯りの色を見れば、暗い海でも、相手の船がどちらを向いて進んでいるかが分かります。赤が見えれば相手の左側、緑が見えれば相手の右側が、こちらに向いているということです。

船舶は夜間、左舷に赤色、右舷に緑色の舷灯(げんとう)を点灯することが国際的に定められています[2]。暗い海上でも、他船の灯火の色を見るだけで、その船がどちらの方向を向いて航行しているかを瞬時に判断できます。

船尾には白色の灯火(船尾灯)も点灯され、これらの灯火の組み合わせから、相手船の進行方向や自船との位置関係を読み取ることができます。信号機のない海上で、灯火は船どうしが意思疎通をはかるための基本的な手段の1つです。

3. きてきの 音で つたえる ことば

3. 汽笛の音で伝えることば

3. 音響信号 ── 長音と短音の組み合わせ

船には「きてき」と いう、大きな 音の 出る どうぐが あります。長く 鳴らす 音と、みじかく 鳴らす 音を くみあわせて、まわりの 船に「これから こう すすみます」 と つたえて いるのです[3]

船には「汽笛」という、大きな音の出る道具があります。長く鳴らす「長音」と、短く鳴らす「短音」を組み合わせて、まわりの船に「これからこう進みます」と伝えているのです[3]

長音はおよそ4〜6秒、短音は約1秒の長さと決められています。短音を1回鳴らせば「右に舵を切ります」、2回鳴らせば「左に舵を切ります」というように、鳴らす回数や組み合わせで意味が変わります[3]

船舶には汽笛による音響信号のルールがあり、4〜6秒間続く「長音」と、約1秒間の「短音」を組み合わせて、自船の操船の意図や注意喚起を伝えます[3]

たとえば短音1回は「右に舵を切る」、短音2回は「左に舵を切る」、短音3回は「後進(エンジンを逆に回している)」を意味します。霧などで視界が悪いときには、長音を一定間隔で鳴らし続けることで、自船の存在を周囲に知らせます[3]

4. どっちが よける? すれちがいの きまり

4. どっちがよける? すれ違いの決まり

4. 航法のルール ── 避航船と保持船

2せきの 船が まっすぐ むかいあって しまった ときは、 おたがいに 右に むきを かえて、あいての 左がわを とおりぬけます[4]

2せきの 船の コースが ななめに まじわる ときは、 あいての 船を 自分の 右がわに 見る ほうの 船が、 よけます[4]

正面から出会ったら、右へ

2隻の船がまっすぐ向かいあってしまったときは、おたがいに右に向きを変えて、相手の左側をすり抜けます[4]

斜めに交わるときは、右に見える船がよける

2隻の船のコースが斜めに交わるときは、相手の船を自分の右側に見るほうの船(避航船)がよけ、相手の船を左側に見るほうの船(保持船)は、そのまま針路と速力を保ちます[4]

海上衝突予防法では、船どうしの位置関係ごとに航法が定められています。2隻が真正面から行き合う「行会い船」の状況では、双方が針路を右に変え、互いの左舷を通過するのが原則です[4]

2隻の針路が斜めに交わる「横切り船」の状況では、相手を自船の右舷側に見る船が「避航船(義務船)」となって進路を譲り、後方を通過します。相手を左舷側に見る船は「保持船(権利船)」として、針路と速力を維持する義務を負います[4]。この原則は「右側通行」とも呼ばれます。

5. ルールが 1つに まとまるまで

5. ルールが1つにまとまるまで

5. 国際化の歴史 ── 1889年から1972年へ

むかしは、国に よって 船の ルールが バラバラでした。 1889年、アメリカの ワシントンで かいぎが ひらかれ、 はじめて 国どうしで きまった ルールが できました [5]

その あと なんども 見なおされ、1972年に いまの もとに なる ルールが できました。いまでは 164の 国が この ルールを つかって います[5] [6]

1889年、ワシントンでの国際会議

蒸気船が増え、国境をこえて船が行き来するようになると、国によってバラバラだったルールが原因の事故が起きるようになりました。1889年、アメリカのワシントンで国際会議が開かれ、はじめて近代的な国際ルールが作られました[5]

1972年、いまのルールへ

その後、船の大型化や高速化、レーダーなどの新しい機器の登場にあわせて何度も見直され、1972年に、いまの国際ルールの基礎になる条約が作られました。2024年時点で164の国がこのルールを結んでいます[5] [6]

19世紀末、蒸気船の普及によって国際海上輸送が急速に拡大すると、国ごとに異なる衝突予防規則が事故の一因となるケースが増えていきました。この状況を受けて1889年10月、ワシントンで開かれた国際海事会議で、はじめて近代的な国際海上衝突予防規則が制定されました[5]

その後、船舶の巨大化・高速化、エアクッション船や水中翼船といった新しい船型の登場、航海用機器の発達などを反映する形で規則は繰り返し改正され、1972年、国際海事機関(IMO)主催の会議で現行の「1972年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREG)」が採択されました。2024年10月時点で164の国がこの条約の締約国になっています[5][6]

6. いまは レーダーも つかって いる

6. いまはレーダーも使っている

6. 現代の補助技術 ── レーダーとAIS

いまの 船には、あかりや きてきだけで なく、レーダーや 「AIS」と いう しくみも あります。これらを つかうと、 きりの 日や 夜でも、まわりの 船の いちや うごきを がめんで かくにん できます。

でも、こうした きかいが あっても、航海灯こうかいとうや きてきの ルールは いまも かわらず つかわれて います。

いまの船には、灯りや汽笛だけでなく、レーダーや「AIS」というしくみもあります。AISは、船の位置や速さ、行き先などの情報を、電波を使ってまわりの船と自動的にやりとりするしくみです[7]。これらを使うと、霧の日や夜でも、まわりの船の位置や動きを画面で確認できます。

しかし、こうした機器があっても、航海灯や汽笛のルールはいまも変わらず使われています。機器が使えないときの最後のよりどころとして、目と耳で確認できるルールが残されているのです。

現代の船舶には、灯火や汽笛に加えて、レーダーやAIS(Automatic Identification System、船舶自動識別装置)が搭載されています。AISは、船名・位置・針路・速力などの情報をVHF帯の電波で自動的に送受信するしくみで、国内法上、国際航海に従事する300総トン以上の船舶などに搭載が義務づけられています[7]。霧などで視界が悪い状況でも、他船の動きを画面上で把握できます。

こうした電子機器の発達にもかかわらず、航海灯・汽笛という伝統的なルールが廃止されていないのは、機器の故障や電源喪失といった非常時にも、船どうしが確実に意思疎通できる手段を残しておく必要があるためです。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

港や 海の ちかくに 行った とき、船を かんさつして みましょう。

あんぜんな ばしょで できる こと

  • 船の 右と 左に ついて いる あかりの 色を さがして みる。 夜の 港で、赤と みどりの あかりが 見えるか さがして みましょう(大人と いっしょに)。
  • 「ポート」「スターボード」を おぼえて みる。 右と 左を、この よび名で いいかえて みましょう。
メモの すすめ

きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「きてきって なに?」だけで じゅうぶんです。

港や海の近くに行ったとき、船を観察してみましょう。

今日できること

  • 船の右と左についている灯りの色をさがしてみる。夜の港で、赤と緑の灯りが見えるかさがしてみましょう(大人と一緒に)。
  • 「ポート」「スターボード」を覚えてみる。右と左を、この呼び名で言いかえてみましょう。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「AISって、飛行機にもあるの?」だけでも十分です。

港や海辺で船の灯火を観察したり、汽笛の音に注意してみたりすると、この記事で扱ったルールが身近に感じられます。

手を動かして確かめる

  • 船の航海灯の色と位置を観察する。夜の港や、フェリーなどで実際の航海灯を確認してみましょう。
  • AISの情報をウェブで見てみる。船舶の位置情報を公開しているサイトで、近くの海域を航行している船を調べてみましょう。

一次情報にあたる

海上保安庁や海難審判所のサイトには、海上交通ルールについての解説が公開されています。

メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「1972年、COLREG条約」という一文でもかまいません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:Wikipediaは百科事典、専門メディアは海事分野の解説記事です。

  1. ポートサービス「船の左右はなぜ『ポート』と『スターボード』?」。 https://www.portservice.jp/businessblog/yokohama/20250522170.html (「ポート」「スターボード」という呼び名の語源についての解説)
  2. ポートサービス「航海灯はなぜ赤と緑?色でわかる船の進行方向」。 https://www.portservice.jp/businessblog/yokohama/2022111545.html (航海灯の色(左舷赤・右舷緑)についての解説)
  3. ポートサービス「汽笛の回数で意味が違う?港で聞こえる『船の会話』」。 https://www.portservice.jp/businessblog/yokohama/20251007192.html (汽笛の長音・短音と、その意味についての解説)
  4. 国土交通省 海難審判所「行会い船の航法・横切り船の航法」。 https://www.mlit.go.jp/jmat/monoshiri/houki/houkinyumon/koutsunyumon.htm (行会い船・横切り船の航法、避航船・保持船についての公式解説)
  5. Wikipedia「海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約 (1889年のワシントン国際海事会議と1972年のCOLREG条約制定の経緯についての解説)
  6. IMO(国際海事機関)「Convention on the International Regulations for Preventing Collisions at Sea, 1972 (COLREGs)」。 https://www.imo.org/en/about/conventions/pages/colreg.aspx (2024年10月時点で164か国が締約しているという公式情報)
  7. 海上保安庁「AISを活用した航行支援システム」。 https://www.kaiho.mlit.go.jp/soshiki/koutsuu/toudai/ais-info.html (AIS(船舶自動識別装置)のしくみと搭載義務についての公式解説)

なおした ところ

更新履歴

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