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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ウミガメは、なぜ なみだを ながして いるように 見えるの?

ウミガメの涙のひみつ ── 目の後ろの塩類腺と、ワニやウミヘビとのちがい

ウミガメの塩類腺 ── 海水の約2倍の濃度で塩を排出する仕組みと、海生爬虫類における収れん進化

分野:生きもの

水族館の ウミガメが、ねむって いる ときに、目の ところから 一本の すじが 出て いる ことが あります。まるで、ないて いるようです[2]。

でも、かなしくて ないて いるわけでは ないようです。この メモでは、あの 「なみだ」の しょうたいと、海の どうぶつたちが しおを 出す くふうを、たどります。

水族館で、眠っているウミガメの目元に、糸を引くような一筋の液が見えることがあります[2]。ウミガメは、悲しくて泣いているのでしょうか。

調べていくと、あの液は、体にたまった余分な塩を出す仕組みの一部のようです。この仕組みがどこにあり、どれほど濃い塩水を出せるのか、そして、ほかの海の爬虫類はどうしているのかを、複数の資料を突き合わせてたどります。

水族館のウミガメの目元に、一筋の液が糸を引いて見えることがある[2]。これは感情による涙ではなく、塩類腺から出る濃い塩水だと説明されている。

塩類腺はどこにあり、なぜ必要で、どのくらい濃い液を作れるのか。アオウミガメの実験(J Exp Biol)の数値、ワニ・ウミヘビの塩類腺との場所のちがい、1958年の Nature の報告までを、水族館や研究団体の解説と論文の要旨から追う。

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1. その なみだは、いつも 出て いるの?

1. 眠っていても流れる「涙」

1. 24時間続く排出 ── 「涙」に見える液の正体

水族館の 人の 話では、この 「なみだ」は、ウミガメにとって、二十四時間、一年じゅう 出て いる ふつうの ことだ そうです[2]。おなかが すいた ときも、ねて いる ときも、出て います。

ただし、水族館で いつも 目で 見える とは かぎりません。見える ときも あれば、見えない ときも あります。

では、あの ものは、なんなのでしょう。

水族館のトリーターの解説によると、この液が出るのは、上陸したときや産卵のときだけではありません。ウミガメにとっては、24時間365日起こっている普通の状態だそうです[2]。

悲しみや痛みで泣くとき、人の涙は感情と結びついています。ウミガメの場合は、そういう説明とは別の仕組みで出ている液だと考えられています。もちろん、いつも目で見えるとは限りません。

この液の正体は何なのでしょうか。

新江ノ島水族館のトリーター日誌は、この排出が上陸時や産卵時だけのものではなく、ウミガメにとって24時間365日続く普通の状態だと説明している[2]。眠っている個体の目元に、糸を引く一筋の液が見えることがあるという。

ここで見えているのは、感情による涙ではなく、塩類腺の分泌物だ[1]。ただし、常に目で確認できるとは限らない。肉眼で見えるかどうかは、分泌量や液のたまり方に左右されると考えられる。

なぜ、そんな腺が必要なのか。

2. どうして しおが たまって しまうの?

2. 海の生きものが塩をためこむ理由

2. 塩の取りこみと、爬虫類の腎臓の限界

ウミガメは、海の 中で ごはんを たべます。ごはんに なる ものの 中には、体の 中より こい しおを ふくむ ものが ある、と いわれて います[5]。ごはんと いっしょに、よぶんな しおも のみこんで しまうのです。

ところが、ウミガメを ふくむ は虫るいの じんぞうは、おしっこだけで たくさんの しおを 出すのが にがて、と いわれて います[4]。

そこで、目の うしろに、しおを 出す とくべつな しくみが あるのです。

ウミガメは、海藻や海草、海の小さな生きものを食べます。名古屋港水族館の解説では、こうした餌の塩分は、ウミガメの体液より高いとされ、食べるたびに余分な塩も取りこんでしまいます[5]。日本ウミガメ協議会は、体液の約3倍という数字を挙げていますが、目安として受け取ってください。

体液の塩分濃度が大きく乱れると細胞に影響するため、一定に保つ必要があります[5]。ところが、爬虫類の腎臓は、大量の塩を尿で効率よく出すのが得意ではない、と説明されています[4]。

そこで別の出口が使われています。

ウミガメの餌である無脊椎動物や海藻・海草は、体液より塩分が高く、摂食と同時に過剰な塩を取りこむ。日本ウミガメ協議会は体液の約3倍という数字を挙げるが[1]、原論文では確認していない。体液の塩分濃度は、大きく乱れると細胞に影響するため、狭い範囲に保つ必要があるという[5]。

ところが爬虫類の腎臓は、大量の塩を尿として効率よく排出できない[4]。この制約を補うのが、腎臓の外にある塩類腺だ。

その塩類腺は、どこにあるのか。

3. しおを 出す ところは、どこに あるの?

3. 目の後ろにある塩類腺

3. 塩類腺の位置と分泌液の組成

しおを 出す 「えんるいせん」は、目の うしろに あります。頭の ほねの 中でも、けっこう 大きな ばしょを しめて いる そうです[1]。

この えんるいせんから 出た 水は、目じりの ほうの 出口から 出ます。だから、なみだの ように 見えるのです[1]。

アオウミガメの 研究では、出て くる 水の 中身は、おもに 海水と にた しおの なかま(ナトリウムと クロール)で、ブドウとうは ほとんど ふくまれて いませんでした[3]。

塩類腺は、ウミガメの眼球の後ろ側にあり、頭蓋骨の中でかなり大きな空間を占めています[1]。この腺から出る液の出口が目尻に開いているため、出た塩水が涙のように見えるのです[1]。

アオウミガメの塩類腺を調べた実験では、分泌された液は主にナトリウムとクロールでした。その割合は海水と似ていて、カリウム、マグネシウム、炭酸水素イオンもある程度含まれ、ブドウ糖はほとんど含まれていません[3]。主にナトリウムと塩化物を含む液として、余分な塩分を出している、と読めます。

どのくらい濃い塩水を出せるのでしょうか。

日本ウミガメ協議会の解説によれば、塩類腺は眼球の後ろにあり、頭蓋内でかなり大きな空間を占める。分泌管の開口部は目尻にあるため、分泌物が涙のように見える[1]。

アオウミガメを対象にした Journal of Experimental Biology の研究は、分泌液の組成を測った。主成分は Na⁺ と Cl⁻ で、相対的な濃度は海水に近い。K⁺・Mg²⁺・HCO₃⁻ も相当量含み、グルコースは無視できる量だった[3]。主にNa⁺とCl⁻を含む液として、余分な塩分を排出している。

この液はどこまで濃くなるのか。

4. なみだは、海水より こいの?

4. 海水の約2倍の濃さ

4. 濃縮のしくみ ── 最初の液から水を回収する

ウミガメの なみだ(しおの 水)は、海水の 二ばいぐらいの こさまで、こく なる ことが あると いわれます[2]。海水よりも こい しお水を 出せるから、体の 中の しおを 海に 出せるのです。

ただし、「二ばい」は、いちばん こく できた ときの 話です。いつでも その こさ、とは かぎりません。

ウミガメの涙は、浸透圧が血液の約6倍、海水の約2倍まで濃くなる、と新江ノ島水族館は説明しています[2]。日本ウミガメ協議会や名古屋港水族館も、海水の約2倍と紹介しています。海水より濃い塩水を出せるので、体の外の海水より塩分の高い液を出すことで、体内の塩を減らせるのです。

ただし、この2倍は最大の濃縮能力です。常にその濃さで出ているとは限りません。

アオウミガメの実験では、体重1kgあたり約4.5mmolの塩を負荷したあたりが、塩類腺が働き始める目安になっていました。分泌液は、最初は等浸透圧の液として作られ、あとから水が再吸収されて濃くなります。初めの液の約83%の水が回収される計算です[3]。この「約83%」は水の回収の割合で、上で見た「血液の約6倍」という濃さの比とは別の数字です。どちらも実験室の値で、野外のすべてのウミガメに当てはまる数字ではありません。

水族館や研究団体の解説では、涙は血液の約6倍、海水の約2倍の浸透圧まで濃縮できるとされる[2]。ただし2倍は最大の濃縮能力であり、常にこの濃さとは限らない。

J Exp Biol の研究は、アオウミガメで、体重1 kgあたり約4.5 mmolのイオン負荷が、塩類腺のオン・オフを分けるしきい値になると報告した。分泌液は、最初は等浸透圧の分泌液として作られ、水が再吸収されて濃くなる。初期液の約83%が回収されるという計算だ[3]。

100 ÷ (100 − 83) ≒ 5.9 で、液の体積が約6分の1になる計算になる(浸透圧の比とは別の指標だが、「血液の約6倍」という別資料の値とほぼ合う)。ただし、これは筆者が二つの資料を並べた確認にすぎず、研究者自身がそう述べているわけではない。しきい値も83%も、実験下のアオウミガメの値で、全種・野外の固定値ではない[3]。

5. ほかの 海の は虫るいは、どうして いるの?

5. 塩の出口は、動物によってちがう

5. 塩類腺の場所のちがいと収れん進化

海に すむ は虫るいは、ウミガメだけでは ありません。ウミヘビや ワニのなかまも、しおを 出す えんるいせんを もって います。ただし、場所は ちがいます[6]。

えんるいせんは、目や はな、口の まわりに ある、と しょうかい されて います。ウミガメは 目の うしろに ありました。

おなじ 「しおを 出す」しごとを、どうぶつに よって、ちがう ばしょで やって いるのです。

塩類腺があるのは、ウミガメだけではありません。Wikipediaの解説によると、爬虫類や鳥類の塩類腺は、頭の中や表面の、目・鼻・口のまわりにあると紹介されています[6]。動物によって、出口の場所がちがうのです。

爬虫類・鳥類の塩類腺とサメなどの軟骨魚類の腺は、別々に似た役目を持つようになったもの(収れん進化)だと説明されています[6]。塩分の多い暮らしをする動物が、それぞれ塩の出口を持つようになったのです。この記事で確認できたのは出口の位置までで、個々の動物でどの器官がもとになったのかは、ここでは扱いません。

塩類腺の位置は動物ごとに異なる。爬虫類・鳥類の塩類腺は頭蓋の内外の、目・鼻・口の周辺にあると紹介されている[6]。爬虫類・鳥類の腺と軟骨魚類の腺は、別々に似た機能を獲得した収れん進化の例とされる。今回確認できたのは出口の位置までで、個々の動物でどの器官がもとになったのかは、ここでは扱わない。

では、この腺は、いつ知られたのか。

6. この しくみは、いつ わかったの?

6. 1958年の報告

6. 1958年の Nature 論文

1958ねんに、二人の 研究者が、「ネイチャー」と いう ざっしに、海の は虫るいの しおを 出す えんるいせんの ことを のせた、と いう きろくが あります[7]。この ろんぶんの 中身は、ここでは あつかいません。

海の爬虫類の塩類腺は、1958年に、Schmidt-Nielsen と Fänge が、科学雑誌『Nature』に「Salt Glands in Marine Reptiles」という題名で報告した、という書誌情報が確認できます[7]。

報告の中身は、ここでは扱いません。

Schmidt-Nielsen と Fänge による「Salt Glands in Marine Reptiles」が、Nature 182: 783–785(1958)に載っている、という書誌は確認できる[7]。海の爬虫類の塩類腺に関する初期の報告の一つと考えられるが、内容と、これが最初の報告かどうかは、ここでは扱わない。

原典(英語)は、図書館や大学のデータベースで本文を探せる場合がある。まずは日本語の解説で、塩類腺がいつごろから知られているのかを調べてみるのもよい。

7. じぶんでも しらべて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

水族館に 行く ことが あれば、ウミガメの 目の ところを 見て みましょう。ちかづいて おどかしたり、水そうを たたいたり しては いけません。見えなくても ふつうです。

おうちでは、ずかんや 本で、ウミガメ、ワニ、ウミヘビの 三つの どうぶつの、しおを 出す ばしょを しらべて、かみに かいて くらべて みましょう。

水族館では、ウミガメの目元をそっと観察してみましょう。眠っている個体の目元に、一筋の液が見えることがあるそうです[2]。水槽をたたいたり、大きな声を出したりはしないでください。見えなくても、それは普通のことです。

家では、ウミガメ、ワニ、ウミヘビの塩類腺の場所を、図鑑や資料で調べて、体の絵に印をつけてみるのも面白そうです。塩類腺の場所のちがいを、絵で比べられます。

公式の情報としては、日本ウミガメ協議会のサイトの解説「カメの涙」が読めます[1]。

日本ウミガメ協議会「カメの涙」[1]を読み、名古屋港水族館の「涙の正体は??」[5]や新江ノ島水族館の日誌[2]と見比べて、説明がそろっている点とちがう点を探してみる。

資料を読むなら:数値の根拠になっている J Exp Biol の Salt Gland Function in the Green Sea Turtle の要旨[3](英語)がある。

次のような問いも立てられる。

  • 「約2倍」は最大値だが、実際に野外の個体がどの程度の濃さで出しているか、資料は何と述べているか。
  • 収れん進化とは、別々の系統の生きもので、似た機能がそれぞれ独立して進化することを指す。ウミガメ・ウミヘビ・ワニで、塩類腺のもとになった器官が何か、日本語で読める図鑑や資料でどこまで調べられるか、試してみる。

水族館で観察するときは、水槽をたたく、大きな音を出すなどの行為は避ける。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:日本ウミガメ協議会・水族館の解説、論文の書誌情報や要旨、百科事典を突き合わせて使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 日本ウミガメ協議会「カメの涙」. https://www.umigame.org/umigamenitsuite/cn11/kyoukasho_namida.html (塩類腺が目の後ろにあることと、出口が目尻にあることについて)
  2. 新江ノ島水族館 トリーター日誌「涙と鼻水」. https://www.enosui.com/diaryentry.php?eid=04856 (24時間続く排出と、海水の約2倍という濃縮について)
  3. Salt Gland Function in the Green Sea Turtle. Journal of Experimental Biology 144:171. https://journals.biologists.com/jeb/article/144/1/171/5563/Salt-Gland-Function-in-the-Green-Sea-Turtle (分泌液の組成としきい値、水の再吸収による濃縮について)
  4. Olive Ridley Project "Why do sea turtles cry?". https://oliveridleyproject.org/ufaqs/why-do-sea-turtles-cry/ (爬虫類の腎臓が大量の塩を尿で出しにくいことについて)
  5. 名古屋港水族館「涙の正体は??」. https://nagoyaaqua.jp/study/column/26163/ (餌と一緒に塩を取りこむことについて)
  6. Wikipedia "Salt gland". https://en.wikipedia.org/wiki/Salt_gland (動物ごとの塩類腺の場所と収れん進化について)
  7. Schmidt-Nielsen K, Fänge R (1958) Salt Glands in Marine Reptiles. Nature 182:783-785(書誌情報). https://www.nature.com/articles/182783a0 (海の爬虫類の塩類腺の報告について。本文は未確認)

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