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しんかんせんの さきっぽは、どうして ながく とがって いるの?

新幹線の先頭はなぜ長いのか ── トンネルの出口で鳴る「ドン」との戦い

新幹線の先頭形状とトンネル微気圧波 ── 0系3.9mからN700系・E5系まで

分野:技術

しんかんせんの さきっぽを、よく 見て みましょう。くちばしのように ながく のびて います。ふつうの でんしゃとは ずいぶん ちがいます。

はやく はしる ためだと 思うかも しれません。でも、もうひとつ、ねらいが あります。それは、トンネルの でぐちで おこる 「ドン」と いう おとに かんけい して います。

新幹線の先頭は、くちばしのように長くとがっています。空気を切り裂いて速く走るため、と考えるのが自然です。

ところが、資料をたどると、もう一つの大きな理由が出てきます。トンネルの出口で鳴る「ドン」という音です。形の変化と、日本の地形とのつながりを見ていきます。

新幹線の先頭部(ノーズ)が長く絞られている主な理由の一つは、トンネルに高速で突入した列車が起こす圧力波、トンネル微気圧波(俗に「トンネルドン」)を抑えるためである[1]。

この記事では、鉄道総合技術研究所やJR東海の資料、解説記事を突き合わせ、現象の仕組み、速度との関係、0系からN700系までの形の変遷、外国の高速列車との違いを整理する。二次資料にしか数字がない箇所は、その旨を書く。

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1. さきっぽは、どれくらい ながいの?

1. 先頭の長さを比べる ── 0系とE5系

1. 先頭部はどう長くなったのか ── 3.9mから15mへ

1964ねんに はしりはじめた 0けいでは、さきっぽの ながさは 3.9メートルほどと いわれます[4]。

いま はしって いる E5けいでは 15メートルです。くるまの ながさは 27メートルなので、はんぶん より ながい ことに なります。

どうして こんなに のびたのでしょう。

1964年に走りはじめた0系新幹線の先頭は、長さが3.9mほどとされます[4]。

いま東北新幹線などを走るE5系・H5系では、先頭が15mあります。1両の長さは27mなので、半分より長い計算です[4]。

500系も、全長の半分以上にあたる15mにわたって、断面を少しずつ細くしています[5]。長くなった理由は、空気の流れだけでは説明しきれません。

0系(1964年)の先頭部は3.9m、E5系・H5系(最高320km/h)は15mで、27mの車体の半分以上を占める[4]。0系の3.9mは解説記事に記載された値である。

500系は1997年3月22日に営業運転を開始し、全長の半分以上の15mにわたって断面を徐々に絞る形をもつ。営業最高速度は300km/h、設計最高速度は320km/hである。この長さは航空宇宙技術研究所(当時)の流体解析で導かれたとされる[5]。

先頭部が長い理由を、次章以降で見る。

2. トンネルの でぐちで、なにが おきるの?

2. トンネルの出口で起きる「ドン」の正体

2. トンネル微気圧波の発生機構

しんかんせんが トンネルに はいると、まえの くうきが ぎゅっと おされます。おされた くうきは、あつい かたまりのように なって、おとの はやさで トンネルの なかを すすみます[1]。

そして でぐちに つくと、「ドン」と いう あつりょくの なみと なって、そとへ とびだします。これが 「トンネルドン」です。

ストローの かたほうを ゆびで ふさいで、すばやく くうきを おしこむと、はんたいがわから ふっと かぜが でます。それに すこし にて います。ただし ほんとうは、もっと ずっと おおきな ちからです。

列車がトンネルに高速で突入すると、前にある空気が押し縮められます。この縮んだ空気の波を圧縮波といいます。圧縮波は音の速さでトンネルの中を進み、反対側の出口から、短い衝撃のような圧力波として外へ放たれます[1]。[2]にも、ほぼ同じ説明があります。

これが微気圧波、俗にいう「トンネルドン」です。出口では、圧力が急に変わるのが問題になります。

ストローの片方をふさいで反対から息を押し込むと、逆側から風が出る、という小さな例でイメージできます。ただし本物は、力がずっと大きい現象です。

列車が高速でトンネルに突入すると、トンネル内に圧縮波が形成され、音速で伝わって反対側の出口から、パルス状の圧力波として外部へ放射される。この現象がトンネル微気圧波である[1]。JR東海の中央新幹線の環境影響評価資料も、山岳トンネルでは坑口や非常口から圧力波が放射される現象として、同様に説明している[2]。

微気圧波の強さは、圧縮波の圧力勾配(時間あたりの圧力の変化の急さ)で評価される。立ち上がりが急なほどパルスは鋭くなるため、突入時の圧力の上がり方をゆるやかにする対策が研究されてきた[3]。

3. はやくなると、どう なるの?

3. 速くなるほど、急に強くなる

3. 突入速度と微気圧波の強さ

この「ドン」は、しんかんせんが はやいほど、ぐんと つよく なります。つよさは、はやさを 3かい かけた ぶんだけ ふえると いわれます[3]。

たとえば、はやさが 1.5ばいに なると、つよさは 3ばいより すこし おおきく なります。

むかしの とうかいどうしんかんせんは、さいこう 210キロでした。この ころは、あまり もんだいに ならなかったと いわれます[6]。

ところが、さんようしんかんせんが できて はやく なると、おとが つよく なって いったと されます。

微気圧波の強さは、列車がトンネルに突入するときの速度の3乗に比例する、と報告されています[3]。これは音の大きさの単位ではなく、圧力波そのものの強さの話です。

3乗に比例すると、速度が1.5倍になれば、強さは約3.4倍(1.5×1.5×1.5)になります。時速200kmが300kmになれば、ドンは約3.4倍です。車両やトンネルの条件が同じなら、という前提です。

最高210km/hだった東海道新幹線では、この問題は当初あまり目立ちませんでした。山陽新幹線が造られたころから、列車の高速化などに伴って、衝撃波が強まっていったとされます[6]。ただし年号は、二次資料のため断定しません。

微気圧波の強さはトンネル突入速度の3乗に比例するため、列車の高速化には軽減が不可欠とされる[3]。これは圧力波の強さの話で、音の大きさ(dB)ではない。単純計算では、速度が1.5倍になれば強さは約3.4倍、210km/hから300km/hなら約2.9倍((300÷210)³)となる。ただしトンネルの形や車両形状などの条件を同じにした場合の比較である。

東海道新幹線(最高210km/h)では当初この問題は少なかったが、山陽新幹線の建設以降、列車の高速化とスラブ軌道化に伴い衝撃波が強まったとされる[6]。二次資料のみのため、時期の特定は避ける。

4. ドンを へらす くふうは、どんな もの?

4. 代表的な二つの対策 ── 車両の形と、トンネルの口

4. 低減対策 ── 車両側の形状最適化と地上側の緩衝工

だいひょうてきな くふうは、ふたつ あります[1]。

ひとつめは、トンネルの ほうに つける しかけです。トンネルの あなの くちに、あなの あいた もうひとつの トンネルのような ものを つけて、くうきを すこし にがして やります。これを かんしょうこうと いいます。

ふたつめは、しんかんせんの さきっぽを ながく して、かたちを くふうする ことです。くうきを ゆっくり おしこむ ように します。

いまは、この くふうの おかげで、ドンの もんだいを おさえながら、さいこう 320キロで はしって います[1]。

代表的な対策は大きく二つあります[1]。一つは地上側の設備で、トンネルの坑口に取り付ける緩衝工です。圧縮された空気の一部を開口部から逃がし、圧力の上がり方を時間をかけてゆるやかにして、出口のドンを弱めます。

もう一つが、車両の先頭部を小型化・延長し、形を最適化する方法です。車両を細長くすると、トンネルに入るときに、空気を少しずつ押し込めるからです。

両方の組み合わせで、いまは微気圧波の問題をおさえつつ、最高320km/hの営業運転が行われています[1]。緩衝工を付ける目安は、たとえば民家の近くでピーク値が20Pa以上、出口から20mの地点で原則50Pa以上とする案があるそうです[2]。

実用化された低減対策のうち代表的なものは、地上側のトンネル緩衝工と、車両側の先頭部の小型化・延伸・形状最適化に大別される。両者が組み合わされ、現在は微気圧波の問題をクリアしつつ最高320km/hの営業運転が実現している[1]。緩衝工は地上側の設備で、車両の工夫とは別である。

緩衝工は、圧縮された空気の一部を開口部から逃がすことで圧力上昇に時間をかけ、出口側のパルス波を弱める。標準的なものはトンネル本体より断面積が大きく、側面に開口部がある、と解説される。設置する側(入口側か出口側か)は資料により表現が分かれ、この記事では判断しない。

設置の目安として、鉄道・運輸機構の設置基準案は、民家近傍でピーク値20Pa以上、坑口中心から20m地点で原則50Pa以上を挙げる[2]。

5. コンピュータは、かたちを どう きめたの?

5. N700系 ── 約5000通りを試して決めた形

5. N700系の先頭形状 ── 遺伝的アルゴリズムによる最適化

N700けいの さきっぽは、ながさが 9.62メートルです。まえの 700けいより 37センチ ながい だけです[7]。

もっと ながく したくても、おきゃくさんの いる ばしょを へらす わけには いきません。そこで、コンピュータで 5000とおりほどの かたちを ためして、いちばん よい ものを えらんだと いわれます。

ちからの ピークを ばらけさせて、「ドン」を ちいさく する ためです[7]。

N700系の先頭「エアロ・ダブルウィング」は、長さが9,620mmで、700系の9,250mmより370mm(37cm)長いだけです[7]。

700系の形のまま300km/hで走ると、微気圧波は約1.26倍になる試算でした。かといって、先頭を大きく伸ばすと客室が狭くなります。

そこで、約5000パターンのコンピュータシミュレーションと、生物の進化になぞらえた計算方法(遺伝的アルゴリズム)で形を選び、圧力のピークを分散させたとされます[7]。

N700系の先頭「エアロ・ダブルウィング」は9,620mmで、700系の9,250mmより370mm長い[7]。700系の形のまま300km/hで運転すると微気圧波が約1.26倍になるという試算があったが、客室を大きく削れないため、約5000パターンのシミュレーションと遺伝的アルゴリズムを用いて形を決め、ピークを分散させた、と解説される。

資料によって先頭の長さの記載は異なる。

6. がいこくの でんしゃは、みじかいの?

6. 外国の高速列車は、なぜ先頭が短いのか

6. 欧州の高速列車と新幹線では、先頭形状がどう違うのか

フランスの TGVは、じそく 300キロで はしりますが、さきっぽは にほんの しんかんせんより みじかくて、かんたんな かたちだと いわれます[8]。

どうして ちがうのでしょう。日本は やまが おおく、トンネルが おおい ことが かんけい するようです。ヨーロッパは トンネルが おおきく、おとの きまりも ゆるやか だからと いわれます[8]。

日本の なかでも、E7けいや W7けい(じそく 275キロ)は、E5けい(320キロ)より かんたんな かたちです[8]。はやさに あわせて、かたちが かわるのです。

フランスのTGV-Duplexは時速300kmで走りますが、先頭の形は日本の新幹線より短く、単純だとされます[8]。

違いの理由は、日本は山が多くトンネルが多いことに加え、欧州はトンネルの断面が大きく、騒音の規制が比較的ゆるいことによるとされます[8]。

日本国内でも、時速275kmのE7系・W7系は、時速320kmのE5系より単純な先頭形状です。速さと走る場所に合わせて、形を選んでいるようです。

欧州ではTGV-Duplexが時速300kmで走るが、先頭形状は日本の新幹線より短く単純だとされる。違いの理由は、日本は山が多くトンネルが多いこと、欧州はトンネル断面が大きく、騒音規制が緩いことなどが挙げられる[8]。日本のトンネルの割合を示す数字(「山が7割」など)は、原文で確認できていないため引用しない。

E7系・W7系(時速275km)はE5系(時速320km)より単純な先頭形状で、速度に応じた設計になっている[8]。先頭の形は速さだけでなく、路線のトンネル条件や地域の規制とも結びついて決まると読める。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること

かみに、0けいと E5けいの さきっぽを かいて みましょう。E5けいは 0けいの 4ばいくらい ながいので、かみの はしまで のばして くらべます。

出かけてできること

えきで しんかんせんを 見る ことが あれば、さきっぽの かたちを よく 見て みましょう。いろいろな かたちが あります。

こうしきの じょうほう

てつどうの ほんや、てつどうの はくぶつかんの ひとに 聞いても おもしろいです。

今日できること

紙に、0系とE5系の先頭の横顔を描いて比べてみてください。E5系の先頭は15m、0系は3.9mなので、車体の長さを27mとして、同じ縮尺で描くと差がよく分かります。

出かけてできること

駅で新幹線を見る機会があれば、先頭の形の違いを観察します。速さや路線ごとに、先頭の形が違うか、考えてみてください。

公式情報

鉄道総合技術研究所やJR各社のホームページに、微気圧波や先頭形状の解説があります。

もっと調べる

「緩衝工」で写真を探すと、トンネルの坑口(あなの入口や出口)にある変わった形の建物が見つかります。

今日できること

0系・500系・N700系・E5系・E7系の先頭部の写真を同じ縮尺で並べ、長さと断面の変化を比べる。先頭が長いほど速いのか、走る路線の条件も関係するのか、仮説を立てる。

出かけてできること

駅で複数の形式を見比べ、速度・路線と形の関係を観察する。トンネル坑口の緩衝工も、安全に見られる場所があれば探してみるとよい。

公式情報

鉄道総合技術研究所の技術解説、JR東海の環境影響評価資料、数値流体力学シンポジウムの論文を読み、圧力勾配と先頭形状の関係、緩衝工の設置側の記述の食い違いを一次資料で確かめてみるのもよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

現象の仕組みと対策は鉄道総研とJR東海の資料による。0系の長さ・500系・N700系・外国との比較は解説記事による二次資料で、一次資料は未確認。

  1. 鉄道総合技術研究所「トンネル微気圧波低減対策」 https://www.rtri.or.jp/rd/division/rd51/rd5120/rd51200101.html (現象の仕組み・二つの対策・最高320km/h)
  2. JR東海 中央新幹線 環境影響評価(静岡県)9 トンネル微気圧波 https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document/shizuoka/_pdf/eis1_shizuokas09.pdf (現象の説明・緩衝工の設置目安)
  3. 第29回数値流体力学シンポジウム D09-4 https://www2.nagare.or.jp/cfd/cfd29/data/cfd29_web_publications/paper_web/D09-4.pdf (速度の3乗・圧力勾配)
  4. 乗りものニュース「新幹線にも『翼』がある? 先頭車のノーズ」 https://trafficnews.jp/post/81122 (0系とE5系の先頭の長さ)
  5. 新幹線500系電車(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/新幹線500系電車 (500系の先頭と営業開始)
  6. トンネル微気圧波(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/トンネル微気圧波 (問題が強まった経緯)
  7. エアロ・ダブルウィング(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/エアロ・ダブルウィング (N700系の先頭の長さ・最適化)
  8. 鉄道コム「新幹線の先頭部が長い理由」 https://www.tetsudo.com/column/968/ (TGVとの比較・E7系との違い)

なおした ところ

更新履歴

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