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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

かたつむりは どうして からを ぬげないの?

カタツムリの殻は、なぜ体からはずせないのでしょうか

カタツムリの殻は体の器官である ── 殻軸筋・外套膜・修復から読む

分野:生きもの

あじさいの はっぱの 上で、かたつむりの つのを、そっと ふれた とします。つのは すっと ひっこみ、体ぜんたいが からの 中へ 入って しまいます。

ヤドカリは、からを かえて 引っこしを します。かたつむりは、どうして できないのでしょうか。しらべて みましょう。

雨上がりの葉の上で、カタツムリにそっと触れると、体がするりと殻の中へ引き込まれます。この殻を、ヤドカリのように脱いだり着替えたりできたら、と考えたことはないでしょうか。

できないのには理由があります。殻の正体と、体とのつながり方、殻が大きくなる仕組みを、順に見ていきます。

研究者が寄生虫を調べるためにカタツムリを解剖するとき、殻は外せないので、割って体を取り出すという。この事実の背景にある、殻と体のつながり(殻軸筋)、殻の形成(外套膜)、損傷後の修復について、貝類の解説資料と論文をもとに整理する。

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1. ヤドカリは、どうして お引っこしが できるの?

1. ヤドカリの殻は「借り物」

1. 対比の基準 ── ヤドカリの宿貝

ヤドカリは、エビや カニの なかまです。おなかが やわらかくて、かたい こうらで おおわれて いません[7]。

だから、まきがいの からに おなかを 入れて、まもって います。この からは、ヤドカリが つくった ものでは ありません。

大きく なって からが きゅうくつに なると、べつの からに お引っこしを します[8]。ちょうど いい からが すぐ 見つかるとは かぎりません。

ヤドカリは、エビやカニと同じ甲殻類です。腹部がやわらかく、甲羅で覆われていないため、巻貝の殻に腹を入れて身を守ります[7]。この殻は、ヤドカリ自身がつくったものではありません。ほかの巻貝が残したものを借りているのです。

成長して殻が窮屈になると、ヤドカリはほかの貝殻へ引っ越します[8]。ちょうどよい殻がすぐ見つかるとは限らない、とも紹介されています。

ヤドカリは甲殻類で、腹部が柔らかく甲羅に覆われていないため、巻貝の殻に腹部を入れて保護する[7]。殻は自ら形成したものではなく、他種が残した殻の借用である。

成長にともなって殻が窮屈になれば、別の貝殻へ移る[8]。適した殻がすぐ見つかるとは限らない。このように、ヤドカリは別の貝殻へ移れる。以下では、カタツムリと比べる。

2. かたつむりの からは、体の いちぶ

2. 殻は「家」ではなく体の一部

2. 殻は体の器官の一つ

かたつむりの からは、ヤドカリの からとは ちがいます。かたつむりの 体の 一つの 部分で、からの 中に ないぞうが 入って います[1]。からは 体と つながって いて、かたつむりが からの 中に おさまって いるのです。

むりに からを とろうと すると、かたつむりは 死んで しまうと せつめいされて います[1]。ですから、生きた まま からを はずす ことは できません。

カタツムリの殻は、体とは別物ではありません。殻は体の器官の一つで、その中に内臓が収まっています[1]。着ている服ではなく、体とつながった部分です。殻と、殻の中に収まる体は、ひとつながりで考える必要があります。

殻が大きく壊れたり、無理に取ったりすると、カタツムリは死んでしまうため、生きたまま殻を外すことはできない、と説明されています[1]。

カタツムリの殻は体と別個の構造物ではなく、体の器官の一つで、殻の内部に内臓が収まる[1]。殻を体から安全に外すことはできない[1]。

実際、寄生虫の調査でカタツムリを解剖するときには、殻を割って体を取り出す[9]。殻を外すのではなく、壊すしかない。なお、ナメクジは殻が目立たない(またはない)陸の貝で[10]、カタツムリから殻を取ればナメクジになるわけではない。体のつくりが違う。

3. からと 体を つなぐ きんにく

3. 殻と体をつなぐ筋肉

3. 殻軸筋による固定

かたつむりの からは、ぐるぐると まいて います。その まんなかの じくに、体を からへ つなぐ きんにくが つきます。「かくじくきん」と いいます[2]。

かたつむりが からの 中へ ひっこむのは、この きんにくが ちぢむ からです[1]。ゴムを ひっぱって はなすと 手もとに もどるのと、少し にて います。ただし、ほんとうは きんにくで、ゴムでは ありません。

殻は渦を巻いた形をしていて、その巻きの中心の軸を「殻軸」といいます。ここに付く筋肉が殻軸筋です[2]。殻軸筋は体を殻の内側につないでいて、縮むと体が殻の中に引き込まれます[1]。

つまり、ヤドカリのように、体をするりと出し入れしているわけではありません。殻の軸に筋肉で固定されているので、体の一部ごと殻の中に収まったり出たりするのです。

殻の巻きの中心軸(columella)には、殻軸筋(引き込み筋、columellar muscle)が付着し、内臓塊を殻に固定する[2]。この筋肉が収縮すると、体は殻内へ引き込まれる[1]。

この構造ゆえに、殻を持つ巻貝は、ヤドカリのように殻を出入りできない[2]。

4. からは、だれが つくるの?

4. 殻をつくる外套膜

4. 外套膜による分泌と三層構造

からを つくるのは、体を つつんで いる 「がいとうまく」と いう まくです。この まくが、からの もとに なる ざいりょうを 出して、からを つくります[3]。

からの おもさの ほとんどは、石の ような 「ミネラル」だと、かいせつ記事では 書かれて います[4]。

殻をつくるのは、体を包んでいる外套膜です。外套膜の表面の細胞が、炭酸カルシウムとコンキオリンというたんぱく質を出して、殻をつくります[3]。殻は3つの層でできていて、どの層も外套膜がつくります[2]。

殻の重さの95〜99%は、炭酸カルシウムなどの鉱物で、残りの1〜5%が有機物、という解説記事があります[4]。

外套膜の上皮は炭酸カルシウムとコンキオリンを分泌し、殻を形成する[3]。巻貝の殻は三層構造で、いずれも外套膜が分泌する。最外層は殻皮(periostracum)で、中間は炭酸カルシウムが有機基質に沈着した層である[2]。

組成は、重量比で95〜99%が鉱物、1〜5%が有機物との解説がある[4]。

5. からは、どうやって 大きく なるの?

5. 殻は、入り口のふちで大きくなる

5. 殻口縁での成長

かたつむりが 大きく なると、からも 大きく なります。からは、入り口の ふちの ところで、ざいりょうが すこしずつ たされる、と せつめいされて います[2]。

いちばん さいしょに できた 小さな まきは、てっぺんに のこって います。そこから、まきが 少しずつ 大きく なって いくのです。

だから、小さな からを ぬいで、大きな からに 着がえる ひつようが ありません。体と いっしょに、からも そだって いきます。

殻のいちばん上には、生まれたころにつくられた小さな巻きが残っていて、そこから巻きが少しずつ大きくなります[2]。殻の入り口(殻口)のふちで、外套膜が材料を足していくためです[2]。

だから、カタツムリは殻を着替える必要がありません。殻は体と一緒に育っていきます。ヤドカリが引っ越しで大きさを合わせるのとは、育ち方の仕組みが根本から違います。

殻の頂部には初期殻(protoconch)があり、そこから体層に向けて巻きが徐々に大きくなる[2]。成長は、殻口縁で外套膜が材料を追加することによると解説されている[2]。

殻は体と並行して大きくなるため、取り替える必要がない。この点が、宿貝を取り替えるヤドカリの成長様式との決定的な違いである。

6. からが われたら、なおるの?

6. 傷ついた殻は、どう直るのか

6. 損傷と修復 ── 内側に足される新しい材料

からに きずが ついても、がいとうまくが、からを なおして くれる ことが あります[5]。ただ、大きく われた ときは、死んで しまう ことも あると せつめいされて います[1]。

うみの 貝の なかまの かさがいで、こんな 研究が あります。からに あなを あけると、あなは うめられるのでは なく、からの 内がわに あたらしい ざいりょうが たされて ふさがりました[6]。ただし、これは うみの 貝の 研究です。かたつむりで 同じ ことが おきるとは 言えません。

カタツムリの殻が傷ついたとき、殻をつくる外套膜が修復することがある、と博物館の解説にあります[5]。修復は、いちばん大きな巻き(体層)の破損のほうが、完全に近くなる傾向があるようです。

海のカサガイを使った研究では、殻にあけた穴は、そのまま埋められるのではなく、殻の内側に新しい材料が足されてふさがりました[6]。ただし、これは陸のカタツムリではなく、別の貝の研究です。カタツムリにそのまま当てはまるとは限りません。

殻が大きく壊れたり、無理に取ったりすると死んでしまうことがあるため[1]、殻を脱ぐことはできません。壊れた殻は、体の一部が傷ついた状態に近いからです。

陸貝では、殻の損傷は外套膜によって修復されうる。ただし修復は、最後の大きな巻き(体層)の破損のほうが完全に近い傾向があるとされる[5]。

修復様式は、カサガイ(Patella vulgata)の衝撃実験が手がかりになる。穴やひびは埋められるのではなく、殻の内側に新しい材料が沈着する形で修復され、開けた穴は2〜4か月で内側の新材料によりふさがった[6]。これは海産の腹足類の結果であり、陸のカタツムリの修復速度や範囲にそのまま流用することはできない。

一方、殻の大きな損傷は死につながりうると説明されている[1]。殻が単なる外装なら、こうはならない。

からを 見て みよう

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

あき からを 見つけたら

げんかんの まわりや こうえんで、かたつむりの あきがらを 見つけたら、ようすを 見て みましょう。もちろん、生きて いる かたつむりを、つかまえて とる ひつようは ありません。見つからない ときは、いえに ある 図かんや しゃしんの かたつむりで、まきの かずを かぞえても いいですよ。

  • まきの かずを かぞえる。てっぺんから 入り口まで、ぐるぐる 何かい まいて いるか、ゆびで なぞって みます。
  • 入り口の ふちを 見る。ふちの ちかくに、すじや、われて なおった あとが ないか、さがして みましょう。

見つけたら、手を あらいましょう。

今日できること

空き殻が見つかれば、次の2点を観察できます。生きているカタツムリを、採ったり触ったりしなくてかまいません。空き殻が見つからなければ、家にある図鑑や写真で巻きの数を数えてみてもよいでしょう。

  • 巻きを頂上から数える。殻口のふちまで、何回巻いているか。大きい殻と小さい殻で、巻きの数がどう違うか比べる。
  • 殻口のふちと殻の表面を見る。成長した跡のような筋や、割れて直ったような跡がないかを探す。ある場合、どこが厚くなっているか。

観察のあとは、手を洗ってください。

自分で確かめてみる

空き殻を観察する。殻頂の初期殻から殻口へ巻きを数え、殻口縁付近の成長線と、傷の跡がないかを探して、上の説明(殻口縁での成長、内側に足される修復)と照らしてみる。生きた個体には手を出さない。観察後は手を洗う。

続けて観察するなら

大きさの違う空き殻を並べ、巻きの数と殻口の厚みを比べる。見つからなければ、図鑑や写真で代用してよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

殻と体のつながり、殻の形成、修復、ヤドカリとの対比を、複数の資料で突き合わせました。いずれも解説資料が多く、一次論文は[6]だけです。

  1. カタツムリ - Wikipedia(日本語)。殻と体の関係、殻軸筋、殻を外せない理由。 https://ja.wikipedia.org/wiki/カタツムリ (殻と体の関係)
  2. Gastropod shell - Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Gastropod_shell (殻軸、三層、成長)
  3. Mantle (mollusc) - Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Mantle_(mollusc) (外套膜が殻をつくること)
  4. ナゾロジー、カタツムリの殻の記事。 https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/88446 (殻の成分の割合)
  5. Carnegie Museum of Natural History: Mollusks. https://www.carnegiemnh.org/science/mollusks/predators.html (殻の修復)
  6. Impact damage and repair in shells of the limpet Patella vulgata. Journal of Experimental Biology 219(24), 2016. https://journals.biologists.com/jeb/article/219/24/3927/16554/Impact-damage-and-repair-in-shells-of-the-limpet (カサガイの殻の修復)
  7. 環境省 せとうちネット、ヤドカリの解説。 https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/g1/g1chapter4/g1chapter4-2/ikimono-yadokari.html (ヤドカリが殻を借りること)
  8. 名古屋港水族館、ヤドカリのお家事情。 https://nagoyaaqua.jp/study/column/26175/ (ヤドカリの引っ越し)
  9. 科学バー、カタツムリとナメクジについて。 https://kagakubar.com/snail/02.html (解剖で殻を割ること)
  10. Snail - Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Snail (ナメクジとカタツムリ)

なおした ところ

更新履歴

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