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せっけんは、なぜ よごれを おとせるの?

石けんは、なぜ汚れを落とせるのか

石けんは、なぜ汚れやウイルスを落とせるのか

分野:技術

水で あらっても おちない あぶらの よごれが、せっけんを つけると、するりと おちる ことが ある。なぜだろう。

その ひみつは、せっけんの ちいさな つぶが もつ、「水とも あぶらとも なかよく なれる」と いう ふしぎな せいしつに ある。

水で洗っても落ちない油汚れが、石けんをつけると、するりと落ちることがある。なぜだろう。

その秘密は、石けんの小さな粒が持つ、「水とも油ともなかよくなれる」という不思議な性質にある。

水で洗っても落ちない油汚れが、石けんをつけると、するりと落ちることがある。その秘密は、石けんの小さな分子が持つ、水とも油ともなじむという矛盾した性質にある。

汚れを包んで運ぶミセルの仕組み、古代シュメール人の記録と「サポーの丘」の伝説、家庭でも起きるけん化という化学変化、そして新型コロナウイルスのような脂の膜を持つウイルスを壊す力までを見ていく。

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1. 水も あぶらも すきな、ふしぎな つぶ

1. 水も油も好きな、不思議な粒

1. 石けんの分子は、水と油の両方になじむ

水と あぶらは、まぜても すぐに 分かれて しまう。なかが わるいからだ。でも せっけんの つぶは、この 2つの あいだを とりもつ ことが できる[1]

せっけんの つぶは、水と なかよく なれる ぶぶんと、あぶらと なかよく なれる ぶぶんの りょうほうを もって いる。水と あぶらを つなぐ、右手と 左手の ような ものだ。ただし ほんとうは、手では なく、目に 見えない ちいさな ぶんしという つぶだ[1]

水と油は、混ぜてもすぐに分かれてしまう。仲が悪いからだ。でも石けんの粒は、この2つのあいだを取りもつことができる[1]

石けんの粒は、水となかよくなれる部分(親水基)と、油となかよくなれる部分(親油基)の両方を持っている。水と油のあいだを取りもつ、仲人のようなものだ。ただし本当は、人ではなく、目に見えない小さな分子という粒だ[1]

水と油は互いに混じり合わない性質を持つ。しかし界面活性剤である石けんの分子は、この両者のあいだをつなぐ働きを持っている[1]

石けんの分子は、水になじみやすい「親水基」と、油になじみやすい「親油基」という、性質の異なる2つの部分を一つの分子内に持つ[1]

2. よごれを つつんで、水に うかせる

2. 汚れを包んで、水に浮かせる

2. ミセルが、油汚れを水中に分散させる

あぶらの よごれに せっけんが つくと、あぶらが すきな ぶぶんが、よごれを ぐるりと とりかこむ。水が すきな ぶぶんは、外がわを 向いて、水と なかよく する[1]

こうして できた、よごれを つつんだ 小さな たまを 「ミセル」と いう。ミセルは 水に とけて うかぶ ので、水で ながせば、よごれも いっしょに ながれて いく[1]

油汚れに石けんが付くと、油が好きな部分が、汚れをぐるりと取り囲む。水が好きな部分は、外側を向いて、水となかよくする[1]

こうしてできた、汚れを包んだ小さな球を「ミセル」という。ミセルは水になじんで浮かぶので、水で流せば、汚れもいっしょに流れていく[1]

油汚れに石けん分子が接触すると、親油基が汚れの表面を取り囲み、親水基が外側を向く形で汚れの粒子を包み込む[1]

このとき形成される、汚れを内部に閉じ込めた球状の集合体を「ミセル」と呼ぶ。ミセルの外側は親水基でおおわれているため水中に安定して分散し、すすぎ水とともに洗い流すことができる[1]

3. せっけんは、いつから あるの?

3. 石けんは、いつから使われてきたのか

3. シュメール人の粘土板に、石けんの作り方が残っている

いまから 5000年 いじょうも まえ、メソポタミアに すんで いた シュメール人が、木の はいと あぶらを にて つくる せっけんの ような ものの 作り方を、ねん土の 板に のこして いる[2]

むかし ローマで、ひつじを 火で やいて いた とき、あぶらが 木の はいに おちて、せっけんの ような ものが ぐうぜん できた、と いう 話も 語りつがれて いる。でも これは 「言いつたえ」であって、本当に あった ことかは わかって いない[2]

今から5000年以上も前、メソポタミアに住んでいたシュメール人が、木の灰と油を煮て作る石けんのようなものの作り方を、粘土板にくさび形の文字で残している[2]

昔のローマで、羊を火であぶっていたとき、脂が木の灰に落ちて、石けんのようなものが偶然できた、という話も語り継がれている。でもこれは「言い伝え」であって、本当にあったことかは分かっていない[2]

石けんに関する最古級の記録とされるのが、紀元前3000年ごろのメソポタミアのシュメール人による粘土板である。木灰とさまざまな油を煮て作る製法がくさび形文字で記されており、石けんに関係する記述と解釈されている[2]

英語のsoap(石けん)の語源としてよく紹介されるのが、古代ローマの「サポーの丘」の逸話だ。丘の神殿で羊を焼いて神に供える際、したたり落ちた脂が木の灰と混ざり、石けんのようなものが偶然できたという話である。ただしこの逸話を裏づける確かな史料は見当たらず、語源を説明するための言い伝えとして紹介されることが多い[2]

4. あぶらと はいから、せっけんが 生まれる

4. 油とアルカリから、石けんが生まれる

4. 油とアルカリを混ぜる「けん化」で石けんができる

せっけんは、しょくぶつの あぶらと、アルカリと いう くすりのような ものを まぜて 作られる。この 2つが であうと、化学へん化が おきて、せっけんと、グリセリンと いう べつの ものに 生まれかわる[3]

むかしの 人が つかった 「木の はい」にも、アルカリの せいしつが ある。だから あぶらと はいを にると、せっけんに にた ものが できたと かんがえられて いる[3]

石けんは、植物の油と、アルカリという薬品のようなものを混ぜて作られる。この2つが出会うと化学変化が起き、石けんと、グリセリンという別のものに生まれ変わる[3]

昔の人が使った「木の灰」にも、アルカリの性質がある。だから油と灰を煮ると、石けんに似たものができたと考えられている。この化学変化を「けん化」と呼ぶ[3]

石けんは、油脂(脂肪酸とグリセリンが結合したエステル)に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリを加えることで作られる。この反応を「けん化」と呼び、脂肪酸のアルカリ塩である石けんと、副産物のグリセリンが生成される[3]

木灰にも炭酸カリウムなどアルカリ性の成分が含まれるため、油脂と木灰を煮ることでけん化が進み、石けんに似たものができる[3]

5. せっけんは、ウイルスの まくも こわす

5. 石けんは、ウイルスの膜もこわす

5. 脂の膜を持つウイルスを、石けんが壊す

コロナウイルスなどの 中には、外がわが あぶらの まくで おおわれて いる ものが いる。せっけんは、あぶらの よごれを つつむのと おなじ しくみで、この まくを こわす ことが できる[4]

まくが こわれた ウイルスは、人に うつる ちからを うしなって しまう。せっけんで 手を あらう ことが、かぜや ウイルスを ふせぐのに やくだつのは この ためだ[4]

新型コロナウイルスなどの中には、外側が油の膜でおおわれているものがいる。石けんは、油汚れを包むのと同じ仕組みで、この膜をこわすことができる[4]

膜がこわれたウイルスは、人にうつる力を失ってしまう。石けんで手を洗うことが、かぜやウイルスを防ぐのに役立つのはこのためだ[4]

新型コロナウイルスなどの一部のウイルスは、粒子の最も外側が「エンベロープ」と呼ばれる脂質二重膜でおおわれている。このエンベロープは、宿主細胞の細胞膜に由来する構造である[4]

エンベロープはその大部分が脂質でできているため、石けんなどの界面活性剤によって、油汚れと同じ仕組みで破壊できる。膜が壊れたウイルスは感染力を失うため、石けんによる手洗いが感染対策として有効とされている。なお、膜を持たない「ノンエンベロープウイルス」には、脂質膜を壊すこの仕組みは同じようには働かない。ただし、手洗いには汚れやウイルスを物理的にすすぎ落とす働きもあり、その効果とは区別して考える必要がある[4]

6. せっけん じしんが、よごれに なる ことも ある

6. 石けん自身が、汚れになることもある

6. 石けんとミネラルが結びつくと「石けんカス」になる

おふろの かべに つく、白い ざらざらした よごれを 見た ことは ないだろうか。じつは これ、せっけんと、水の 中の ミネラルが むすびついて できた、べつの よごれなのだ[5]

ミネラルの 多い 水を「こうすい」と いう。こうすいでは、せっけんが あわだちにくく、この よごれも できやすい[5]

ごうせい せんざいは、せっけんとは ちがう しゅるいの ぶんしを つかって いる ものが 多く、この よごれが できにくい。それが せっけんとの おおきな ちがいの 1つだ[5]

お風呂の壁に付く、白いざらざらした汚れを見たことはないだろうか。実はこれ、石けんと、水の中のミネラル(カルシウムやマグネシウム)が結びついてできた、別の汚れなのだ[5]

ミネラルの多い水を「硬水」という。硬水では、石けんが泡立ちにくく、この白い汚れもできやすい[5]

合成洗剤は、石けんとは異なる種類の分子(合成界面活性剤)を使っているものが多く、硬水でもこの汚れができにくい。製品によっては、金属イオンの影響を抑える添加剤が配合されていることもある[5]

浴室に付着する白い不溶性の汚れは、「石けんカス」と呼ばれる。これは石けん分子が水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと反応し、水に溶けない「金属石けん」に変化したものである[5]

ミネラル分を多く含む水は「硬水」と呼ばれ、硬水中では石けんが泡立ちにくく、金属石けんも生じやすい。この反応は石けんが水中のミネラルと出会えば自然に起こるため、純石けんを使う限り避けられない[5]

市販の合成洗剤の多くは、石けんとは構造の異なる合成界面活性剤を主成分としており、硬水中でも金属イオンと反応して沈殿しにくいものが多い。製品によっては、金属イオンの影響を抑えるビルダー(金属封鎖剤)などが配合されることもある[5]

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

コップに 水と サラダあぶらを 入れて、よく まぜて みよう。すぐに また 分かれて しまうはずだ。こんどは そこに せっけん水を すこし たらして、もう いちど まぜて みよう。あぶらの つぶが 小さく なり、白く にごって まざりあう ようすが 見られる。

コップに水とサラダ油を入れて、よく混ぜてみよう。すぐにまた分かれてしまうはずだ。今度はそこに石けん水を少したらして、もう一度混ぜてみよう。油の粒が細かくなり、白くにごって混ざりあう様子が見られる。これがミセルの状態に近い。

コップに水とサラダ油を入れて混ぜても、油はすぐに分離してしまう。そこに石けん水を数滴たらして混ぜると、油の粒が細かく分散し、白く濁った状態になる様子を観察できる。余裕があれば、水道水(軟水)とミネラルウォーター(硬水)とで石けんの泡立ち方に違いが出るかも試してみよう。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. さいたま市「サイエンスなび/石けんと洗剤の科学」、日本界面活性剤工業会「界面活性剤の主な性質と種類」。 https://www.city.saitama.lg.jp/sciencenavi/kurashi/004/p039256.html https://jp-surfactant.jp/surfactant/nature/index.html (界面活性剤が親水基と親油基を持つ分子構造であること、親油基が油汚れを取り囲み親水基を外側に向けることで「ミセル」という球状の集合体が形成され汚れが水中に分散すること)
  2. 石鹸百科「石鹸の歴史」、国立国会図書館レファレンス協同データベース「石鹸の歴史(発祥)と利用のされ方」。 https://www.live-science.com/honkan/soap/soaphistory01.html https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?page=ref_view&id=1000047965 (紀元前3000年ごろのシュメール人が石けんの製法を粘土板に記していたこと、古代ローマの「サポーの丘」の逸話がsoapの語源説として紹介される一方、史実というより伝説として位置づけられていること)
  3. 花王「石けんはどんな成分からどのようにして作られるの?」。 https://www.kao.com/jp/qa/detail/16485/ (石けんが油脂とアルカリからけん化によって作られること、石けんとグリセリンが生成されること)
  4. Gakken「水で洗っても落ちないよごれやウイルスが、石けんで落ちるのはなぜ?」、花王「エンベロープウイルスの特徴」。 https://kids.gakken.co.jp/jiyuu/category/art/2020_special_02/ https://www.kao.com/jp/innovation/research-development/hygiene-science/expert/new-coronavirus-knowledge/enveloped-viruses/ (新型コロナウイルスなどのエンベロープウイルスが脂質二重膜でおおわれていること、界面活性剤である石けんがこの膜を破壊し感染力を失わせること、ノンエンベロープウイルスには同様に働かないこと)
  5. 石鹸百科「石鹸カスとは」。 https://www.live-science.com/honkan/soap/soapbasic09.html (石けんが水中のカルシウム・マグネシウムイオンと反応し水に溶けない金属石けんになること、硬水で石けんカスが生じやすいこと、合成洗剤には金属石けんの生成を防ぐ添加剤が配合されていること)

なおした ところ

更新履歴

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